リリースから3年、PS VRユーザーの軌跡と直近の傾向を探る。PS VRコンテンツ開発へのサポートも!【CEDEC 2019】

0コメント アサミリナ

パシフィコ横浜にて9月4日~6日にわたって開催の「CEDEC 2019」。ここでは、9月6日に行われたセッション「PlayStation VRの振り返り」の内容をお届けする。

登壇者はソニー・インタラクティブエンタテインメント東京グローバルデベロッパーテクノロジー部の秋山賢成氏。秋山氏は日本・アジアエリアにといてPS4やPS VRの技術講演を実施し、技術デモの制作・ディレクションなども行っている。

PS VRの発売から約3年が経ち、2019年3月の時点でPS VRの世界累計実売台数が420万台以上、全世界リリース済みタイトルは約500タイトル、そしてPS4は2018年12月の時点で販売台数9,160万台にのぼっている。今回のセッションは、リリースから3年が経ったPS VRの傾向をユーザデータから解析しつつ、PS VRにまつわる話までを、大きく3つに分けてするという。

ひとつめは「データから見る世界のトレンド・動向」。ふたつめは「コンテンツ制作時にハマったポイント」。みっつめは「制作時のちょっとした小話」。普段はなかなか見ることができない貴重なデータなども多数公開された、本セッション。PS VRを遊ぶ側からも、開発する側からも、興味深い話が多数飛び出した。

データから見る世界のトレンド・動向

ここでは、北米のPS VRコンテンツのトップダウンロードランキングが2018年3月から2019年7月のものまで公開された。

北米でしか遊べないタイトルも多いが、「Job Simulator」や「Superhor VR」が人気だった中、2018年12月のランキングにいきなりトップに躍り出た「Beat Saber」が、2019年7月までほぼずっとランキングのトップにいるのが特徴的だ。

これらのデータから、北米ではモーションコントローラ(PS Move)を利用したタイトルがとても人気が高く、そして【上位のタイトルは、長期間にわたってコンスタントにダウンロードされる】傾向にあり、シューターも根強い人気があることがわかる。

それではPS VRのリリース以降3年間分のデータから、ワールドワイド VS 日本の比較と、PS VR本体に対するアタッチレート、累積起動時間、1回のプレイ時間の情報を比較・分析していこう。

なお、これ以降は公開できないデータを用いて秋山氏が分析した情報となる。具体的なタイトル名は明かせないものの、説明文などからおおよその想像はつくだろう。その想像が正しいか否かはともかく、思考を張り巡らせながら読んでいただければ幸いだ。

まず、ワールドワイドで見たコンテンツアタッチレートは、無料コンテンツが人気。そして有料コンテンツはプレイステーションのゲームとして発売されたタイトルがVR化されたものの人気が高いという。やはりお金を払う以上は前もって知っているタイトルのほうが安心感があるのだろう。一方、ノンゲームコンテンツも人気が高く、VR内で動画を再生するコンテンツの支持が高いようだ。

次にワールドワイドで見た累計セッション時間は、VR入門的なコンテンツのプレイ時間が最も長い一方で、シナリオがあるコンテンツのプレイ時間も同じくらい長い。また、ユーザー間でのコミュニケーションをベースにしたコンテンツも長いプレイ時間だそう。

ワールドワイドで見たアカウント単位でのセッション時間は、ユーザー間でのコミュニケーションがあるものが上位を占め、その中でもユーザー毎に役割が与えられるようなコンテンツが人気で、繰り返し長く楽しむコンテンツが増えてきており、逆にシューターコンテンツは上位にいないという。

では、まったく同じデータを日本市場で見るとどうなるのだろうか。

日本市場で見たコンテンツアタッチレートは、ワールドワイドと比較すると圧倒的に動画コンテンツの人気が高く、その中でも人気アニメコンテンツのVRのダウンロード数が高く、ノンゲームコンテンツの人気が強い。だが、ゲームに関してだけ言えば、かなりしっかり作り込まれたボリュームのある作品が人気だという。

日本市場の累計セッション時間は、現状こちらも動画コンテンツが圧倒的で、ノンゲームコンテンツは激しいアクション性がないものが人気。ゲームコンテンツはワールドワイド同様、プレイステーションのゲームとして発売されたタイトルがVR化されたものが長く遊ばれているそうだ。

そして日本市場のアカウント単位でのセッション時間は、RPG要素が強いコンテンツの人気が異常に高く、戦略的な駆け引きや長考するコンテンツも上位、動画コンテンツはやはり上位であるものの、ワールドワイドと比較しても日本はこの分野だけかなり特殊な状況にあり、日本のユーザーはダウンロード数の高い低いに関係なく、気に入ったゲームをひたすら遊んでいるユーザーが多いようだ。

次は、直近半年の動向のデータから見た分析。ワールドワイドでみると、リリース日に関わらずStoreの人気コンテンツが毎月多く起動されており、入門系のVRも上位に入っていることから新規ユーザーも順調に増えていっているようだ。また、この半年でVR内コミュニケーションのあるコンテンツがトータルプレイ時間をかなり増やしている。そして何故か、5~6月にかけてほぼすべてのコンテンツが起動累計時間を伸ばしているそうだ。これはアカウント単位で見てもあまり変化がなく、コミュニケーションのあるコンテンツが上位を占め、人気コンテンツは落ちることなく継続してプレイされる傾向にあるという。

日本では、動画コンテンツがずっと1位を占めているが、ワールドワイドで強いアクションゲームも最近人気が出てきている。そして日本はワールドワイドと比較すると離脱率が早く、比較的新作が出ると新作に乗り換えていくような遊び方をするユーザーが多いようだ。だが、アカウント単位で見ると、RPG要素が強いコンテンツがダントツの人気で、ワールドワイドと比較しても1ユーザーあたりの起動時間は圧倒的に長く、同コンテンツで比較しても2倍以上の時間が遊ばれており、また日本は趣向が特定の分野に偏りがちらしい。直近半年では動画コンテンツを連続再生する時間自体は短いものの、累計はダントツで多く、連続起動時間を減らし、こまめに動画コンテンツを見るユーザーが多いのがわかったそうだ。

コンテンツ制作時にハマったポイント

次は、より良いPS VRコンテンツをリリースするために、SIEで取り組んでいる「VRコンサルテーション」というサービスについて語られた。

「VRコンサルテーション」で実際に見つかった問題の一覧、ということだが、恐らく開発者でなければ下図の表を見てもいまいちピンとこないだろう。例えば「Black OLED Smear」は、黒染みのことだという。

ゲームとしてはレーシングゲームなどで、VRに慣れていないユーザーや、、ゲームの操作になれていないユーザー、VRとしてチャレンジな実装をしているような作品ほど、酔いやすくなる、という指摘がある。また、VRに遊び慣れてきて、もっとアグレッシブな体験がしたいというユーザーが増えてきた。だがその要望に応えようとすると、今度はVR初心者にはついていけない内容になってしまう。よって、アグレッシブな作品にはワーニング表示を出すようにして色んなユーザーに配慮したほうがいい、と、秋山氏は述べた。

また、最近のVRコンテンツには、立ってPS Moveを持って遊ぶものも増えてきている。プレイヤーは世界観に入ってしまうと周囲のことを忘れがちで、机に脚をぶつけてしまったり、周囲に物があることを忘れてコントローラを振り回してしまうと大変危険なため、そういう立ち姿勢で遊んでもらう時には、必ず注意を促すようにしてもらったり、プレイヤーがセンターから外れた場合にも、必ずワーニングを出すようにしてもらっているという。

FPSでは、メニューをどのように表示させるかが難しい。VRの場合、メニューの置き場次第で視点が彷徨ってしまい、結果的にそれが酔いに繋がるため、距離感がわからないようなメニューはあまりよくないという。コンテンツによって色々なパターンがあるため正解はないものの、意外と開発をしているときに抜けがちな視点を、「VRコンサルテーション」では指摘をさせてもらい、問題を見つけていくのだそう。

「VRアプリケーションのターゲットフレームレートはどうするべきか」については、ターゲットのフレームレートを適切に決める必要があると、秋山氏。特に60Hz(リプロジェクション120Hz)では使い方によって残像が出ることがあるそうなので、コンテンツの特性を見極めて採用するかどうかを決めないと、これも酔いの原因になるという。

逆に、絵がぶれるからといってその理由が60Hz(リプロジェクション120Hz)が原因だと決めつけないようにしてほしい反面、実装の仕方次第では確かにぶれる原因にはなるとのこと。ブレてしまった原因の実例として、リプロジェクションの使い方を間違えている、フレームレートが足りていない、などが挙げられた。ちなみに普段はギリギリで動いていたのだが、それに気づいておらず、ある日突然落ちてしまう、というケースは結構あるそうだ。

SIEでは、VRコンフォートサンプルを出しており、不適切な設定をしようとするとどういう問題が起こるのかを体験できる。テストも用意されており、テストにはVR開発上級者向けの難問もあるという。QAチームのトレーニングにも使えるような内容になっており、「これはバグなのか」ということが解り、どうしたら直るのかも書かれているため、こういった機能も活用してほしいと語った。

制作時のちょっとした小話

秋山氏はVRコンテンツの最適化について、ゲームエンジンの機能を活用し、VR modeを有効にしただけでは不十分であること、そのままではCPUもGPUもコストが増加してしまうことや、Unreal Engine 4もInstanced StereoだけではなくMulti-Viewもつけるべきだと述べた。

他にも、VR専用の描画手法の活用としてFoveated Rendering手法の検討を取り入れることを提案。視線の中心から端にむかって解像度をさげる手法で、エンジンへの組み込みや調整には時間がかかるもののその分効果が大きいこと、実際に他社製のエンジンに組み込んで成功した事例も何件かあったことを挙げた。

他、Non-VRでは普通に見える処理がVRでは無駄な処理が生じることもあり、無駄な処理が存在していることに開発後期まで気づかなかった実例もあったそうだ。Overdrawもよく見られる「無駄な処理」のひとつで、見えない中身もわざわざきちんと処理/描画されていたり、草や森になると遮蔽以外にも更にアルファ抜きされたピクセルへの処理が無駄になり、9割以上のPixel Shadingが全部捨てられてしまうケースもあるという。こういった事柄を防ぐには、先にデプスを完成させて無駄を省くという方法もある。

最適化は地道で大変な作業だが、うまくいけば見返りは大きい、と秋山氏。ただ、開発後期にやろうとすると非常に工数がかかる改善を必要とする場合もあるので、最適化作業は事前戦略を立てることが重要だとした。

また、SIEでは様々な情報を取りながら最適化できるツールも出している。ハードウェアの特性をぜひ理解していってほしい、と、セッションを締めくくった。

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