【ゲームとアニメの≒】第26回「Sonny Boy」おもしろさをエピソード、ビジュアル、音楽の要素から紐解く

ゲームとアニメの≒
0コメント 藤津亮太

アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第26回は2021年7月より放送中のTVアニメ「Sonny Boy」を取り上げます。

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は、「ワンパンマン」「ACCA13区監察課」などの監督として知られる夏目真悟氏が監督・脚本・原作を務め、制作のマッドハウス、キャラクター原案の江口寿史氏といったスタッフ陣による、2021年7月より放送中のオリジナル“SF青春群像劇”アニメ「Sonny Boy」を取り上げます。

こんなゲームファンにオススメ!

第26回「Sonny Boy」

「Sonny Boy」は、とてもおもしろい。閉じた箱の中に手を入れて、触れたものがなにかを想像するような、そんな独特の感触がある作品だ。

異世界の無人島に学校ごと漂着した中学3年生たち36人。彼らは漂着と前後して特殊な能力を身につける。例えば主人公の長良の能力は「テレポート」。自分のいる場所を別の空間へと移動させることができる。瑞穂はさまざまな商品をネコが届けてくれる「ニャマゾン」。彼らはその能力を使ってこの世界から脱出する方法を模索することになる。

まず序盤の「ルール」をめぐるエピソードがおもしろい。放送前の時点ではもっとサバイバルに力点が置かれるかとも思ったが、衣食住の苦労はほとんどない。その代わり力を入れて描かれるのは、この奇妙な世界を支配する奇妙なルールの探求だ。そもそも無人島に到達する以前の第1話からして校内を統治するためのルールを巡るエピソードだった。見えないルールを探り出そうあれこれ思考する展開の多い前半は、SFミステリー的なおもしろさがあった。

ところが物語は後半戦に入り転調する。突如現れたあき先生の扇動により生徒たちが分断され、あき先生のもと脱出を試みるグループと、長良たちを中心としたグループなどに分かれていく。ところが、そこに「ビートニク」というグループが登場し、世界の真相を匂わせつつ、さらに長良自身のあり方に迫っていくことになる。この転調もまたおもしろかった。

次にビジュアルの作り方がおもしろい。波や炎のエフェクトはまるで油絵のようなタッチだし、ロングショットになった時は、キャラクターも主線がなくなって美術のスタイルで描かれている。全般的に「絵だけど本物に思ってほしい」というより「アニメなんだから絵であっていい」という意識が前に立っている印象だ。第1話で朝風が能力を使う時も、画面そのものにガラスが割れたような特殊な効果を加えていて、絵そのものの異常さで能力を示していた。第3話では青空の背景が急に布バックになってまくれ上がり、別世界へと入り込む表現もあった。美術そのものも筆のタッチが見えるようなスタイルで、だからこそ生まれる雰囲気も魅力になっている。

そして音楽の使い方。音楽を流すシーンが徹底的に絞られていて、だからこそキャラクターの感情に関する演出的誘導が薄く、視聴者の感情は誰かに寄り添うというより、36人の漂流生活にその場で立ち会っているような感覚になる。本作の独特の後味は、この音楽の使い方によるところが大きい。

果たしてこの漂流はどんな結末を迎えるのか。最終回を見るのが楽しみだ。

TVアニメ「Sonny Boy」公式サイト
https://anime.shochiku.co.jp/sonny-boy/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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