7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。本稿では24日に行われた講演「『アストロボット』 テンポ良く遊べる3Dレベルデザイン」のレポートをお届けする。
The Game Awards 2024でのGame of the Year受賞をはじめ、2024年に発売されたゲームで屈指の高評価を獲得したアクションゲームである「アストロボット」。

そんな本作のおもしろさを支えたレベルデザイン(ここでは、プレイヤーが気持ちよくゲームをプレイするための、オブジェクトや敵の配置なども含めた地形のデザインを指す)において追求されたのは、徹底した“テンポの良さ”だった。
これを実現するための創意工夫の中身が、リードゲームデザイナーを担当したPlayStation Studios Team ASOBIに所属する矢徳浩章氏の講演により、明らかになった。

“説明なしで教える”、“操作できない時間を減らす”などの徹底も
講演では以下の7つの項目に分けて、「アストロボット」のレベルデザインを支える30のこだわりが明かされた。
・準備編
・ジオメトリ編
・レイアウト編
・調整編
・ひみつ編
・カメラ編
・考え方編

本稿では、とくにTeam ASOBIの開発哲学が垣間見えた、前半部の準備編、ジオメトリ編、レイアウト編、調整編の内容をピックアップする。
「アストロボット」のレベルデザインには、“良い素材を見つける”という下準備があったという。たとえば“スポンジ”というモチーフからは、主人公のアストロが「水を吸って巨大化し、水を放出しながら縮む」というアクションを考案。


アイデアは複数人でブレインストーミングを行うことで大量に出してゆき、良いアイデアはプロトタイプのステージで試していった。下の画像は製品版にも取り入れられた“隠しゴール”の仕様を試しているときのものだ。

多くのアイデアが集まったら、それらを活かすべくステージのバリエーションを作っていく。バランス良く、豊富なステージを作るため、“ゲームプレイ+アートテーマ”を設定。各ステージの色合いや、自然が多いステージ、人工物が多いステージなど、偏りが生じないように意識したという。
本作では1ステージごとにレベルデザイナーがひとりでデザインしており、ステージ資料はたった1枚で完結。これをもとにそのステージでどんな体験をさせたいか、最初から最後まで設計していたのだという。


ここからは、いよいよレベルデザイン自体のノウハウについて。寄り道も可能な構造になっている「アストロボット」のステージ設計では、ゴールまでの道筋である“メインパス”を分かりやすくすることが重要だ。“安心して寄り道する”ためにも、ゴールに向かいたくなったときにすぐメインパスが分かることが、テンポの良いゲームプレイを実現する上で大事だということだった。
「行けるのかパッと見で分からない場所がある」のも、テンポが良いゲームプレイを阻害する。行けない場所は分かりやすく絶壁にするなど、“曖昧さをなくす”デザインも徹底された。
3Dアクションゲームの場合、「パッと見ではすぐ傍にあると思った足場が、実は遠くにあった」ということがあり得る。こうした奥行きに関する分かりづらさは、“同じサイズの床を連続で配置”したり、“隣り合う地形の隣接する部分の長さを合わせる”ことで解消。
また、地形でプレイヤーの移動ルートをコントロールしつつ、床を構成する素材の質感の切り替わりでも“テンポの良さ”を演出するといった工夫も。コントローラーによる操作のリズム感、新しいアクションが使えるようになったら、それを連続で使ってもらうなど、アクションに直接関わる部分でプレイヤーを最大限に楽しませるためのこだわりが、これでもかと詰め込まれていることも分かった。
“メインパスを分かりやすく”と共通する考え方だと感じた部分だが、“大事なものは中央に置く”というのも徹底しているという。




“調整編”では、個人的にこれがとくに「アストロボット」を素晴らしいアクションゲームたらしめていると感じたポイントへのこだわりが解説された。本稿はここで締めたいと思う。
まずは“説明なしで教える”ということ。「アストロボット」では新しい能力が手に入ると、すぐにそれを試すためのギミックが登場。説明なしで直感的に活用できる工夫が徹底されている。その上で、ゲームに不慣れな人を見越して、プレイヤーがしばらく迷っている様子を見せると遅れて操作方法が画面左上に映像として表示されるのだ。

これはボス戦などの局面でも徹底されている。ボスと戦うときに活用するギミックは、ボス戦の直前に同様のギミックで倒す敵を配置するといった工夫が成されており、説明がなくてもどんなアクションを活用すればいいか察せた人がほとんどだろう。
“操作できない時間を減らす”というのも、本作の手触りの良さに大きく貢献していた部分だと感じる。ボス戦の登場演出などでプレイヤーの操作を奪わず、自由に動かせる状態を維持したままシームレスに戦えたのは気持ちが良かった。
“1秒先を計画できる”、そして“ゴールに向けて盛り上げる”レベルデザインというのも、「アストロボット」のテンポの良い攻略が可能な気持ちよさ、そして多幸感に繋がっていたと思う。「アストロボット」のテンポ良く喜びがもたらされるゲームプレイを改めて味わいたくなる、素敵な講演だった。



本講演は、8月4日10時までタイムシフト配信が行われている。より詳細な内容を知りたい人や、後半のひみつ編、カメラ編、考え方編の内容が気になった人は、こちらでチェックしてほしい。
CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/
(C)2024 Sony Interactive Entertainment Inc. Developed by Team Asobi. Astro Bot is a trademark of Sony Interactive Entertainment LLC.
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