バンダイナムコゲームスより2011年10月13日発売予定のPS3/Xbox 360「エースコンバット アサルト・ホライゾン」。その開発の中心に携わる6名にインタビューをする機会が得られたので、全2回にわたり紹介する。
目次
前編では、ゲームデザインディレクター・井崎夏樹氏、リードプログラマー・大田黒鉄也氏、サウンドディレクター・小林啓樹氏へのインタビューをお届けしよう。
ゲームデザインディレクター・井崎夏樹氏インタビュー
――本作ではどのセクションを担当されているのでしょうか?
井崎氏:今作ではゲームデザインディレクターという立ち位置で、ゲーム中の入力などインタラクティブな部分、いわゆるゲーム性の部分をディレクションしています。
――今作ではゲーム性が大幅に変わったと伺ったのですが、その中でも特に注力した点はどこでしょうか?
井崎氏:(「エースコンバット」シリーズには)フライトとかフライトシミュレーターなどいろいろなイメージがあったとは思うのですが、僕らが作っているのは“シューティング”だというところです。戦闘機を題材としたシューティングというのは、撃って壊すという快感が中心にあるだろうと考えて、狙って撃って、上手に壊して気持ち良い、壊れるリアクションを感じて気持ち良い、という破壊の爽快感を楽しめるように開発しました。
世界の中ではいろいろなシューティングがありますが、我々がやっている「戦闘機+シューティング」というのは、間違えるとすごくニッチなものになってしまうものの、同時に他にはないすごく強みでもあるなと。
戦闘機だからこそ持っている、前に進む速度だけでなく空で入り乱れる激しいスピード感や、人間が持つことのできないほどの強力な火器の破壊力、映画みたいなかっこいい空中戦など。振り返るとそれらを今までは上手くひとつにまとめて良さを引き出すことができていませんでした。それが今回のシステムになったときに「あれ?これは全部収まるんじゃないかな」と思い、進めていきました。
――実際に「ドッグファイト・モード」を体験させていただいたのですが、誰でもシンプルにドッグファイトが楽しめるようになっていたと思います。
井崎氏:そう言っていただけると「大成功!」という感じです(笑)。
今までの「エースコンバット」だと、接近して後ろから狙うという、思い描いているような戦闘の形は一部の上手な人の特権で、なかなかそこに辿り着けなかったんですよね。ただ同時に、上達した方には非常に支持を頂いていた所でもあったので、どなたでも入れる、しかもただ手加減された簡単な遊びではなくて、その中で「こんなコツがあった」とか「こうすると上手くなる」ことに気づいて、どんどん上手くなっていくというところを目指しました。
また、かつてのユーザーさんたちが「エースコンバット」で大事にしていた、自由に飛んで狙っていくとか、倒したい敵を倒したい距離で攻撃するなどの戦い方でも遊べるようになっています。
これから遊んでいただける方も、今まで遊んできていただいた方も、どちらにも満足いただけるようにしたところが一番苦労したところでしたね。
――攻撃ヘリミッションもプレイさせていただいたのですが、プレイ方法がかなり違っていて別のゲームで遊んでいるようでした。機体ごとに異なった遊び方ができるのでしょうか?
井崎氏:一番最初に、すごい破壊力を持っていてスピード感がある、いわゆる航空兵器はなんでも入れよう、「『エースコンバット』は変わるんだ」というメッセージを込めようということでいろいろな機体を入れようとなったのですが、最初は「この乗り物の遊びはどう料理してもこういう風になる以外にはなかろう」というありふれたイメージで考えていました。
しかし、それぞれの機体を担当したスタッフたちが勝手に発明をし出しまして(笑)。「え!何これ!?」と私自身がやってて飽きないものになっていましたので、いろいろな乗り物があるという点については期待してもらっていいと思います。
――今回のシステムについては新規ユーザーよりな印象があるのですが、既存のユーザーに向けてアピールする点はありますか?
井崎氏:今作についてインターネットのファンサイトで書かれていることからなんとなく伝わってくるのは、従来からの「エースコンバット」の遊び方はスポイルされて(損なわれて)しまったのではないかと心配されているのかなということです。
しかし、そこに関しては逆に「ドッグファイト・モード」や「エアストライク・モード」がなかったとしても、今までの中で最強のシステムに仕上がりました。
敵のAIであったり、実機の遊びやすさなどについては一番良くできていまして、その上に「ドッグファイト・モード」などが選べる戦闘の選択肢として入っているかたちですので、今まで評価いただいたところがそのまま残って、プラスαで満足できる、「エースコンバット」の魂を受け継いでいて、もっと面白いと言ってもらえると思います。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
井崎氏:「エースコンバット アサルト・ホライゾン」は、戦闘機などの航空兵器が持っているゲームの素材としての魅力をすべて取り出し、最高のゲームとして結実させています。
誰もがあこがれたようなかっこいい空中戦や大量破壊が、ファンの方から、今作で始めてエースをプレイする方まで、必ず堪能していただけるので、ぜひ期待して発売をお待ちいただければと思います。
――ありがとうございました。
リードプログラマー・大田黒鉄也氏インタビュー
――本作では、どのセクションを担当されているのでしょうか?
大田黒氏:リードプログラマーということで、全てのプログラムの統括をしていまして、プログラムの方針を決めたりしています。また、兼任で描画リーダーもやっています。
――描画に関して、今までと比べて意識した点はありますか?
大田黒氏:元々ベースとして、自分たちが関わった「エースコンバット6」がありまして、それをさらにブラッシュアップするとの、新規に作りあげていく部分が混在している状態でした。そのなかで、ひとつは破壊表現、もうひとつはヘリのような緻密な表現を意識しました。
今までのエースコンバットでは上空で通りすぎてしまえばわからないような表現はうまく端折っていたんですが、それを見せるようにしたり、ゲーム中に生身の人間が動き回っているところを表現するには、ゲームエンジンにいろいろと手を入れないといけなくて、かなり新規に作り直している部分があります。また、破壊に関しては物理を入れながら作っています。
――機体の破壊表現は、実際に見るとすごい迫力で、まさに真に迫る勢いで、撃破の瞬間にも爽快感を覚えました。製作された際は、相当苦労されたのでしょうか?
大田黒氏:今までの「エースコンバット」でももちろん破壊表現はあったのですが、エフェクトに隠れていてひとつひとつ散っていったパーツなどはあまり重視していなかったのですが、今作ではあれだけの近距離で見るので、どこが折れたかとか、場合によっては断面もわかるぐらい、さらに言えば人も見えるかもしれないくらいに描かれています。
やっぱりどこまで描きこむべきなのか、どこまで表現するべきなのかというところでやりすぎても処理速度などの問題がありますし、プログラムだけでなくオイルが散ったりといったエフェクトを組み合わせて初めてひとつに見えるということで、モデルを作っているパートと、エフェクトを作っているパート、そしてプログラムや描画のパート、物理エンジンをいじっている人間が連携してやらないと、なにかひとつ欠けても「違うよね」という形になって、試行錯誤は繰り返してましたね。
――その他にも細かいところでこだわっている要素がありましたらお聞かせください。
大田黒氏:今までお話ししたのは見た目の部分で、一番わかりやすいところではあったのですが、それ以上にこだわりを持ってやっているのがやはり柱となるゲーム部分ですね。
ゲームの処理などについては、例えばDFM(ドッグファイト・モード)も相手を追っていく、もしくは追われるというのは従来の「エースコンバット」ではなかったもので、ここの調整はプログラマーの中でもゲーム班と呼ばれる人間たちがみんな相当苦労してやっていたところでした。
結果的に違和感なくプレイいただけていればそれが一番いいと思うのですが、その裏には相当な苦労があったので、作っている側としては感慨深いものがあります。
――また、ゲーム内で特性の異なる機体が複数登場しますが、システムの違いなどプログラムも大変だったかと思うのですが。
大田黒氏:あれは非常にまずかったなと(笑)。本当に別のゲームが入っているのと同じくらい労力がかかっている部分もありますし、一部でしか使われていないところも中にはあります。
それでも、例えばヘリに関しては「これは面白くなるんじゃないか?」という意見と「ん?ちょっと合わないんじゃないの?」という意見とがせめぎ合っていたのですが、最終的には合わないと言ってた人間も「面白いじゃん」と(笑)。そうやって作ってきたので、労力をかけただけはあったかなと思います。
他にもヘリガンナーやガンシップ、爆撃機など、それぞれのシステムは全て違いますね。ただ、一個一個作っていくと遊びが違う分、こっちも面白いと思う部分がありまして、作るからにはおまけではない、やれるところまでやろうという点では手は抜いていないと思います。
――初めて搭載されるスタンダードモードは、いちから作り上げたものになっているのでしょうか?
大田黒氏:スタンダードモードは、もともとゲームに集中しやすいということで入っていたノービスモードをベースにはしました。
オリジナルモードは、360度好きに飛び回れるということで、戦闘機好きの方はそちらを好まれると思うのですが、ぜひともスタンダードモードをやっていただきたいと思うのは、理屈抜きでやりやすいという点です。私も元々はオリジナル派だったのですが、今はスタンダードでしか飛んでいないのでオリジナルをちょっと忘れています(笑)。
今回見せたい、楽しんでいただきたいところに集中できる形で、従来だと初心者モードに位置づけられていたところを通常のモードにブラッシュアップしたと思っていただきたいですね。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
大田黒氏:今回の「エースコンバット」は、今までフライトものだからと敬遠されていた方、逆にフライトものだから「エースコンバット」を選んでいただいていた方、両方の方を満足させられるように、それでいてどっちつかずにはならないように自分たちも意識して作ってきました。フライトも含めた様々なモードを通じて戦場の空気感を味わってもらえるように仕上げていますので、ぜひ一度手にとってプレイしていただきたいと思います。
――ありがとうございました。
サウンドディレクター・小林啓樹氏インタビュー
――サウンドを担当されているということですが、映像として表れている破壊表現に負けない音作りを意識されたのでしょうか?
小林氏:今までの「エースコンバット」は遠距離で破壊されることが多かったんですが、今回、敵機との距離が近くなったことで、実際には録れないような音を用意しなければならなくなりました。今までの「エースコンバット」で使っていた音をそのまま使うわけにはいかなくなってしまったのです。
リアルにこだわる「ASSAULT HORIZON」としては、新たに必要になった音はぜひ現実の音を録音したい。そこで、効果音収録の計画を立て始めたのですが、よくよく考えてみると、戦闘機が近距離で爆発する音って、例え録れる環境があったとして、超高速で飛んでいる状態で録音することになりますから、マイクがゴォゴォいっちゃって使いものにもならないですよね。それじゃぁ飛行状態の爆発音はあきらめるとして、静止状態のものが破壊される音を自分で録ろうとしたら、マイクが壊れるか、はたまた自分が死んじゃうかの2択だろうし、これも録れない(笑)
「どうしたもんかな~」というときに、まずはあらゆる爆発音の素材を集めることにしまして、陸上自衛隊さんがやってらっしゃる富士総合火力演習に取材として行かせていただき、たくさん音を録ってきました。
ここでは、戦車砲をはじめ、航空機から発射される発砲音など、実にリアルな音素材を、前例のない規模の録音機材を用意し録り尽くしてきました。
しかし、「ASSAULT HORIZON」には、これでもまだ足りない…。
中でも至近距離から録音したM134ガトリング砲の発射音は、是が非でも欲しい!
そこで我々は、バンダイナムコグループの海外ネットワークを駆使し、数ヶ月間にわたり調査・交渉を行いました。その結果、ついにアメリカ軍とM134ガトリング砲の製造会社へコンタクトをとることに成功したのです。我々は日本から録音機材を持ってアメリカのアリゾナに行ってきました。そこでは、実際にガトリング砲をはじめ様々な銃火器を撃っていただいて、あり得ないほどの至近距離から発砲音を収録しました。さらに、実際に飛んできた「銃の弾」の飛行音、着弾する際の着弾音、ターゲットが破壊される破壊音も録音してきました。これらの収録によってゲーム中にプレイヤーが発砲できるM134ガトリング砲そのもの=全く同じ音をお客さんに味わっていただくことを可能にしました。
残る問題は、破片が飛んでいくというのと、超至近距離での音は録れないなとなったときに、これはどうするかと試行錯誤していった結果、廃材ショップの裏に置いてあった「とある廃材」をちょっと拝借いたしまして、いろんな演技をさせて、羽根がもげたり機首がぶっ飛んだりといった音を録りました。
こういうSEの制作には独特の技術が必要です。単純に誰が壊してもいい音が録れるというわけではなく、本当に演技が必要になってくるんです。破壊される映像がゲームの中で出来てきたときに、このように折れるならこのような音にならなければいけない、しかもこれがスローになったときにこうなるはずだ、とゲームでの出来事が実際に起きた際を想像しながら、実際にそれらを一部破壊し、録音していくというようなことをするんです。どうやってやるか、どうやって演技するか、そもそもリアル指向なだけではなく、プレイヤーとしてはどのような音が鳴っていたら気持ちいいか、という点も踏まえながら制作しています。
――ひとつの場面のために、何度も試行錯誤されたということでしょうか?
小林氏:そうですね。何回も試行錯誤しました。それこそ先ほどの「とある素材」だけでも相当な回数やっていますし、それ以外のものを含めれば本当に多種多様なものを組み合わせ、飛行機の破壊音を表現しています。
飛行機自体についてもかなり詳しく調べていますよ。今回も航空自衛隊さんに全面的にご協力いただくことができた結果、我々は愛知県の小牧基地、埼玉県の入間基地、茨城県の百里基地という、3つの基地それぞれにジェットエンジン音の取材に行かせていただきました。収録現場では航空機を触れる距離でエンジンを回してもらいました。C-130HとC-1には、地上におけるエンジン始動から停止までの一連を、我々が実際に乗り込んだ状態で録音したりもしました。その際、実際の機内のパーツやエンジンの質感など、我々の耳や五感で確認することができたのは大きな収穫です。航空機がどのような素材であるかも取材することができました。
実際の飛行機って、みなさんが思っているような素材ではなかったりすることがあるんですよ。なので、実はリアルに表現しすぎると違う音がするはずなんですよね。ただ、そのままやってしまうとみなさんのイメージとずれてしまい期待に応えられないと思ったので、まずリアルとは何かを求め取材した結果から、お客さんが破壊表現を見たときに最も気持ちの良い音にすべく全員でアイディアを出しながら制作しました。その結果、他の製品では聞いたことのない、非常にクオリティの高い音になったと自負しています。
――他のフライト系とは比べものにならないぐらいの仕上がりになっていると。
小林氏:はい、断言できます。取材の量、質、製品のクオリティ。テマヒマなどのさまざまなコスト含め、色々な意味でNo.1タイトルですよ(笑)
フライトシューティングではNo,1タイトルであるエースコンバットには、それだけお客さんに期待されていると思いますし、我々はその機体に応えなければなりません。絶対に先頭を走っていないといけないという自負もあります。なので本当にあらゆることを詰め込みました。
アメリカに行ったときは、ヘリコプターの「AH-64D(アパッチ)」のエンジン音を録ってきました。どのように録ったかというと、まずアパッチの触れる位置まで近づいてからマイクを展開。そのままエンジンをかけてもらって、飛び立ってもらいました。マイクブームにしがみつくスタッフの姿はいずれ皆さんに公開したいですね。彼いわく、もう死にそうな状況だそうで(笑)。
ヘリコプターの音が収録されている市販ライブラリには、ある程度距離をとった状態で録音した素材しか入っていません。音割れ等が発生してしまうからと、安全距離を確保する意味合いからですね。しかし、「ASSAULT HORIZON」のゲーム中の距離感は、もっと近い。「そこにヘリコプターがホバリングしている」という音を作るためには、既存のライブラリでは作ることができないのです。だからこそ至近距離で、なおかつ我々が用意した取材計画に則った、安全とは言えない距離で(笑)、録音する必要があったのです。アメリカに機材を持って乗り込み、途中空港で引っかかるなどトラブルを抱えつつもしっかり持ち帰ってきたアパッチの音はぜひ聞いていただきたいですね。
そうそう、空港で引っかかった理由ですが、収録現場が射爆場でしたので、火薬がそこらに散乱する中でマイクを展開していました。なので帰りの空港で硝煙反応が出てしまいまして。「なんでこれは爆発物反応がでるのか?」という説明をしなければいけなくて大変な思いをしましたよ。
――そうやって作り上げてきたものがやっと形になり、報われたという思いも強いのでしょうか?
小林氏:そうですね。感慨深いものがあります。ただ、硝煙反応について空港で説明する際、ハッとさせられるやり取りがありました。空港職員を説得する過程で、我々はゲーム開発者で日本で「エースコンバット」を作っているチームだと説明したのですが、それでOKとなってしまったのです。職員さんがエースコンバットを知っていたのですね。それは嬉しく思うと同時に、これはまずいと思いました。
基地のすぐ側にある空港の人たちが「エースコンバット」を知っている。ということは、変な「エースコンバット」を作ってしまえば「なんだ全部ウソじゃないか、こんなの」と言われてしまうことになる。絶対にそうなってはならない。お客さんが本当に楽しめる状態にまで引き上げてリリースしなければならないんだ。 ということを直に感じた我々は、みんな真っ青になって帰ったというのが本音ですね。
――リアルの音と、ゲームとしての音、どちらも意識していくということですね。
小林氏:テレビから出たときに、リアルを知っている人たちも知らない人たちも、どちらも納得される音であること。「これはすごいね」と言われるものにしなければいけないということで、アリゾナにも2回行きましたし、陸上自衛隊や航空自衛隊の方々にもたくさん協力していただきました。
――実際にプレイしたときも、音を意識するというよりは、自然に映像と音が一体となって楽しめました。
小林氏:ありがとうございます。我々が目指したものが伝わったならば本当に光栄です。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
小林氏:今回は効果音について大きく触れました。しかし、音楽についても相当のこだわりを持って制作しています。今までの「エースコンバット」とは少々違うパンチのある音で攻めますよ(笑) もちろんオーケストラも収録済みで、今回はアメリカ録ってきたりしていますよ。今回はひときわ粒ぞろいではないのかな、と思っていますので、ぜひ楽しみにしていて下さいね!
――ありがとうございました。
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詳しくは、下記応募ページよりご確認ください。
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