バンダイナムコゲームスより2011年10月13日発売予定のPS3/Xbox 360「エースコンバット アサルト・ホライゾン」。その開発の中心に携わる6名へのインタビューの後編をお届けする。
目次
後編でお届けするのは、プロデューサー兼ディレクター・河野一聡氏、アートディレクター・菅野昌人氏、ビジュアルディレクター・糸見功輔氏へのインタビューだ。
プロデューサー兼ディレクター・河野一聡氏インタビュー
――本作を製作するにあたり、旧作からの変化を意識されていたと思いますが、その考えに至ったきっかけはあったのでしょうか?
河野氏:きっかけとしては、いくつかの条件が重なっています。
ひとつは、「エースコンバット」は約100万人の方にこれまで支えていただいていて、とても深い世界観が形成されてきました。その流れで今作もナンバリングにすると、新しく手に取る人たちが「『エースコンバット』をやるためには前作までをやっていないと、これ1本では充分に楽しめない」と考えてしまうと思いました。
また、2011年秋に、ワールドワイドで展開していくときに、どういう「エースコンバット」が時代と呼応しているのだろうと考えたときにこの形だろうと。あとは単純にユーザーさんがマンネリを感じているのもありますけど(笑)。
――今作では、新規ユーザーに対するアプローチが多いように見受けられるのですが?
河野氏:確かに今までのシリーズよりは入口の敷居は下げてあります。しかし、新規ユーザーだけに気を使ったわけではなく、両方うまくバランスをとらなければいけないと思っています。
これまで支えてくれたファンの人たちに楽しんでもらうために、オリジナル操作があり、歯ごたえのある作りに仕上げています。そして、新しく入る人たちに対しては、「戦闘機の操作って自分には難しそう」と思って触ってさえもらえない、また、プレイしたのはいいものの、すぐに墜落してわからなくなって「こんなのできない」という状況を取り除かなければいけないと思っていました。
なので、実際に触ってみて、直感的に動かすことができて、「お、なんかできるじゃん!俺」と思ってくれれば成功ですね。
――私も実際に触った際には、「ドッグファイト・モード」など爽快感のあるプレイを楽しめました。
河野氏:今までの「エースコンバット」って、“ドッグファイト”と言っても敵が点みたいだったんですよ。あまり寄らないで、遠くにいる敵にミサイルを撃って当てるだけになっていたんですね。勿論、今作ではその部分も残しますが。
今は、新しいタイトルを作るときには、最初にバン!となんの説明もなく新しいビジュアルだけ見せて「スゲー!」って言ってもらえないと、なかなか注目してもらえないんですよね。そして最初に注目してもらえないと、情報を追ってもらえない。そのポイントがどこかとなったときに、今回は、「肉薄のドッグファイトでこれだけの破壊が見れますよ」「こんな破壊、エースコンバットで見たことありますか?」というビジュアルショックが必要でした。
――破壊の瞬間は本当に迫力がありました。
河野氏:確かに3次元空間を飛ぶというのは面白いんですが、今まではかっこいいけど地味、トレーラーはすごいけど実際にやってみると、「え?こんなゲームなの?」という人が多かったと思います今回は「トレーラーで見たものがそのままできるよ」とゲームプレイとの距離を完全にゼロにしました。
――まさにトレーラーで見たままのプレイを楽しめました。
河野氏:最初は信じてもらえなかったですけどね(笑)。
――本作は、海外でも展開していきますが、国内と海外での「エースコンバット」への反応は違いますか?
河野氏:「エースコンバット」って不思議なゲームで、昔から海外のほうが売れてるんですよ、実は(笑)。日本向けから海外向けへっていう流れはありますけど、「エースコンバット」はもともと海外のほうがよく売れている状態なので、本質はそのままなんですよね。
ただ、少し変えなきゃいけないなと思ったのは、“日本人が作る日本人の美学”みたいな感覚って決して共通ではないなという点です。「女々しい」とか「メロウなストーリー」というところで他の市場では不満を感じているユーザーも少なくはなかったと知りました。
日本人って結構“負けの美学”だったり“犠牲心”とか好きじゃないですか。そこに少しギャップを感じたので、その点において、海外で展開するにあたってバランスを調整しました。
――それは本作のストーリーにも反映されているのでしょうか?
河野氏:なんだかんだ言ってみんなコレ好きだよねってところをチョイスしたって感じですね。ストーリーはアメリカ人の小説家、ジム・デフェリス氏と合宿をして両方が「そりゃ面白いね」というところまで擦り合わせました。アメリカ人が面白いと思っても日本人にはウケない、日本の僕らがこれ面白いと言ってもアメリカじゃこれはウケない、と両方とも共感できて面白いというところまで突き詰めていきました。
なのでみんなが想像しているよりいろんなことが起こるストーリーなんですよね。あとはネタバレになるのでとっておかなければいけないですけど(笑)。
たかが、と言ってはダメですけどシューティングにここまで手の込んだストーリーが必要なのかっていうぐらいの出来になっていると思います。
――事前に期待してもらっても?
河野氏:もう全然大丈夫だと思います。
「エースコンバット04」はフランス映画みたいな感じ、「エースコンバット5」はハリウッド映画みたいな感じで、本作は、海外のドラマシリーズみたいなイメージですね。
――いろいろな展開が用意されていると。
一個一個盛り上がりが用意されているので、ここまでにしようとしてもミッション終わったらこんな展開がという感じで(笑)。今までのエースコンバットってブリーフィングがあって、ミッションがあって、またブリーフィングがあってという形だったのですが、今回はそのスタイルではないんですね。つながっているので、どこで止めようか決めるのに困るんじゃないでしょうか?
――ゲームのボリュームも増しているのでしょうか?
河野氏:ボリューム自体は今までの「エースコンバット」が肥大化していたので、少しコンパクトになっていますね。その分、さまざまな航空機で遊べたり新システムが入ったりと、戦闘機だけで同じようなミッションの水増しというよりは、いろんな種類で遊べるようにという形になっています。
――ヘリは操作方法が全くと言っていいほど違っていて思った以上に難しかったのですが、慣れてきてからは楽しくプレイできました。
河野氏:あの操作は簡単という人と難しいという人とハッキリ分かれますね。ヘリという難しい機体を、簡単に遊べるようにするための操作方法ということで、あの形にしています。戦闘機と同じ操作では、ヘリは遊べないということがよくわかったので。
そういう形で1個1個についてどれが一番快適かということを考えて作ったので、正直ゲームをいっぱい作ったという感じですね(笑)。さんざん会社からは「無理だ!」と言われましたが、「やるんです」と言って。
――そして形になったと。
河野氏:よくできたなと思いましたね。「このチームなんでも作れるんじゃないかな」と。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
河野氏:今作は大きな飛躍なんですが、そこに対してシリーズファンが不安を感じたりするというのはよくわかりますし、スタッフも一緒でリスクをとるということに非常に不安があったんですが、そのために「エースコンバット」歴代のコアスタッフを集めて、完全な総力戦で臨んだ結果、安心していただける出来になりました。ご期待ください!
――ありがとうございました。
アートディレクター・菅野昌人氏インタビュー
――本作では、どのセクションを担当されているのでしょうか?
菅野氏:私はアートディレクションが担当となります。ゲーム画面に出てくるキャラクター、戦闘機、背景など3D表示物の監修を一手に引き受けています。それと戦闘機や建物等の破壊表現も担当しています。
――今回の「エースコンバット」について、ゲーム画面を見せる上で注意した点などあればお聞かせください。
菅野氏:今回革新したいと思ったことが3つあります。ひとつは、画面全体が躍動的に動くカメラワーク。次に、敵と接近して戦うということで、敵をより気持ちよく破壊できるような破壊表現。そして、敵と接近するということは背景と接近するということにもなりますので、地形の表現力を向上させること。この3つが合わさって出来上がったのが、「ドッグファイト・モード」です。
――プレイした際には、爆風が本当に迫ってくるかのような臨場感を体感できました。
菅野氏:ありがとうございます。結局のところはその臨場感が全てかなと思います。これ以外にもチャレンジしたところは本当にたくさんありまして、今までとは違って現実世界を題材にしたり、ゲームの流れ自体をパターン化しない、というところ等を意識しました。
今までは、ブリーフィングがあって、ゲームがあって、デブリーフィングがあって、カットシーンが入るという感じで、それを繰り返していく形でした。しかしそれだと今の時代のゲームの流れとしては飽きてしまうだろうということで、そういったセオリーを止めました。ミッションが終わってイベントが入ったらブリーフィングをすっ飛ばしてまたミッションに出かけたり、その出かけた先でカットシーンが始まり、今度は主人公が変わっていくという、演出的にもビジュアル表現的にも非常に大きなチャレンジをしています。
ビジュアルとして語りたいことはたくさんありますが、CEDEC2011(9月6日~8日開催)でもゲームの描画技術や演出手法を発表する機会を設けさせて頂く事となりましたので、そちらもご覧いただければと思います。
――普通にプレイしている裏にはさまざまな技術が使われていると思うのですが、そのあたりも苦労されたのでしょうか?
菅野氏:そうですね、アサルト・ホライゾンを作り上げてきた中で様々な技術を開拓したり導入したりしてきました。フライトゲームでは取り入れられることの無かったFPS的な表現ですとか、戦闘機を精緻に作り上げていったり、ドバイやマイアミなど現実の空間を再現していく上での苦労というのは当然あります。メモリの割り振りやデータ管理方法についても全く新しくなりました。
また今回、人間そのものを撃つという行為もありますのでレーティングに対する取り組みを強めたりもしました。それに戦闘機を破壊するということも実は非常にデリケートな部分であり、ボーイングやロッキード社といった航空機メーカーとの交渉にこれまで以上に時間をかけています。
しかし今回は、そういった舞台裏を気にすることなく、新しく生まれ変わった「エースコンバット アサルト・ホライゾン」という画面そのものから、その臨場感を楽しんでいただければと思っています。
――まさにモニターに映った画面が全てということですね。
菅野氏:今までの「エースコンバット」のトレーラーですと、ほとんどリプレイ画面だったり、ゲームプレイではないところのカットシーンですとか、実際のゲーム以外のところが殆どでした。今回のポイントとしてはゲームのトレーラーの様にかっこいいカメラワークをぜひゲームの中に取り入れたいと思い、制作してきました。
ゲーム画面が全てというのはまさしくそこで、決してトレーラーの演出やカットシーンだけで出てくるものに注力するのではなくて、実際のゲームプレイ画面自体を革新したいというのが一番の根っこにあります。アクティブなカメラワークで敵との駆け引き、ビルの立ち並ぶ市街地を高速で飛行するスリル、爆炎にまみれながらバラバラに破壊されていく敵機の様を、実際のゲーム画面で達成したかったのです。
――実際に公式サイトで公開されているプレイムービーを拝見した際には、すごく遊んでみたくなりました。
菅野氏:そういっていただけると嬉しいです。映画の様なドラマの場面の羅列ではなく、実際のゲームプレイそのものの面白さをトレーラーでは表現しています。
トレーラーは、ゲームの魅力を集約し、面白いところを抽出してお客さんに届けるという役割です。映像を見て「面白そうだな、やってみたいな」と思っていただけたら、その気持ちのまま楽しめるゲームになっていると思います。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
菅野氏:「アサルト・ホライゾン」は「エースコンバット6」から大きく様変わりしています。変わることを目指した開発陣の意識が反映されています。それは「エースコンバット」シリーズというくくりだけでなく、日本のゲームメーカーが今生まれ変わるべきだと思ったメッセージの集大成です。
従来と同じことをやればいい、従来の延長線上のことをやればいいとは全く考えませんでした。自分達が本当にやりたかったこと、ゲームを遊んでくださるお客さんや、お客さんが期待しているところに正面から向き合って、実際のゲームプレイに反映してきました。その為、開発陣は今までのシリーズ作の延長とはまるっきり考えていないです。
ビジュアル、サウンド、ゲームシステム全てにおいて、「エースコンバットってこうだろう」と思ってプレイされたら良い意味で裏切られると思います。是非期待してください。
――ありがとうございました。
ビジュアルディレクター・糸見功輔氏インタビュー
――本作ではどのセクションを担当されているのでしょうか?
糸見氏:映像ディレクションを担当しています。主にビジュアルアートセクションの担当ですが、全体の映像演出、ストーリーや音楽などの構成、ドラマパートの演出、あとシリーズ全体を通してトレーラーの制作も担当しています。
――今回のトレーラーはプレイを体感できるものとなっていたと思うのですが、制作の際に意識された点はありますか?
糸見氏:今までのエースコンバットのトレーラーは、リプレイ画面やドラマ部分が多く、実際にゲームでやってみると、「あんな風に飛べない」「スピード感が違う」という印象があったかと思うのですが、今回は今までトレーラーで見てきたシーンを実際にゲームでできるようにしようというところからはじめました。
今回のトレーラーに関しては、普通にスタッフがプレイしている映像を素材として使用してますので、見た映像そのままを実際にプレイしていただけると思います。
――今作では、「ドッグファイト・モード」をはじめとしてかなりスムーズに遊びやすくなっている印象を受けました。
糸見氏:そこが今作の重要なポイントでしたね。今までのエースコンバットですと、遠い敵を狙って撃つ、また、敵が遠くで登場して、狙って撃つという展開が多かったのですが、今作ではそうではなく、現在公開しているトレーラーのような展開の早いゲームプレイで、さらに攻撃中も、演出されたカメラでカッコよく見えるように制作しています。
――ゲーム内の演出も担当されているとのことで、ドラマパートとゲームパートの流れについて意識された点はありますか?
糸見氏:スピードの速いゲーム展開を崩さないよう、なるべくシームレスにドラマパートからゲームパートへ繋がる構成を最初から決めていました。今作の主人公ビショップ中佐に没入して、なりきってもらえるように、カットシーン中の3人称カメラから、カット切替え無しに、ぐるっと回りこんで1人称になって、そのままシームレスにゲームが始まるという部分を各所に盛り込んでいます。今作のストーリーを書いていただいているジムさん(ジム・デフェリス氏)とアメリカで全体構成を決定する合宿をしたときに出てきたアイデアの一つです。
この合宿では、チーム内からのインゲームのアイデアと、ジムさんのストーリープロットをすり合わせる作業を行って、ストーリーラインの大枠と全ミッションの概要を決定させました。その際、カットシーンをどこに挿入させるか、そのカットシーン中のカメラの動きはこういう風に入れましょうという話も同時に進めていました。本当に初期の段階からカメラやシームレスな部分については構想に入っていましたね。
――決まってからはその流れでスムーズにいけましたか?
糸見氏:それが結構大変でしたね(笑)。帰国して、いざミッションの詳細を詰めるとなるとストーリーラインとのズレが起き始めるんですね。ただ、ストーリーに比重を置きすぎて、ゲームの体験を崩すわけにはいかないので、そのズレに対してジムさんにアイデアを出してくれるように、インゲーム中の流れで重要なシーンのコンテを描いて、ジムさんとのスカイプを使用しての会議上で、再度すり合わせをしつつ詰めていきました。
ストーリーを無理に成り立たせようとすると、ゲームでは表現できない箇所があったり、構成が崩れてしまうことが想定されました。チームとしては、ストーリーも重視してますが、ゲーム体験を減らすことは避けたいので「ゲームとしてはここまでできる。ストーリーの展開として補足する手段か、他の展開はないか」とジムさんに質問する形で進めていきました。
――できあがりとしては体験を主軸に置きながらも、ストーリーも楽しめるものになったのでしょうか?
糸見氏:常に先が気になるようなストーリー展開になっています。ミッションを進めるごとに、リアルな軍事設定を盛り込んだシリアスなストーリーがスピーディーに展開していきます。
また、カットシーンにおいては、ロサンゼルスでパフォーマンスキャプチャー収録を行ってきました。役者の方もアメリカ在住の方で、演出監督もアメリカで演出をやっている方に依頼しています。また、現実世界を扱っていますので軍事アドバイザーさんも常駐してもらい、軍人の所作等の監修もお願いしました。そこで行ってきました全シーンの収録には2週間ほどかかっています。
さらに、国内ではバーチャルカメラ撮影を採用しています。プロの映像カメラマンさんに、映画等で使用するステディカムでの撮影実演をお願いし、そのカメラアニメーションデータをカットシーンに使用しています。
――ゲームで見られるクセのある動きではなく、なめらかな動きという感じでしょうか?
糸見氏:ドラマとして見ても自然な映像になっていると思います。また、ゲームと同じような視点操作がカットシーンでも用意されています。ビショップの一人称のときには周りを見渡したり、一部のところを注視して見たりと、ゲーム中と同じ操作にあわせて、より没入感があるようしています。カットシーンもしっかり作っているので、ぜひ楽しんでいただきたいと思います。
――最後に、発売を楽しみにしているユーザーの方にメッセージをお願いします。
糸見氏:今までエースコンバットシリーズを遊んでいただいた方にも楽しめる作りになっていると思います。また、今回初めての方にとっても全く新しいエキサイティングな遊びができるシチュエーションや展開が詰め込まれているので、ぜひ楽しみにしてもらいたいと思います。
あとトレーラーとゲームの温度差が今までのシリーズではあったと思うのですが、今回はトレーラーで公開している映像そのものが、そのままゲームとして遊べるものになっていますので、ご期待下さい。
――ありがとうございました。
なお、インタビュー中でも話題に上ったCEDEC 2011での菅野氏、糸見氏らが登壇するビジュアルワークに関する講演の模様も取材予定となっている。こちらも楽しみにしてほしい。
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