メディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催によるトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会」の第11回、「黒川塾 十壱」が6月27日に開催された。
「全人類プログラマー化計画のすべて」と題し、ユビキタスエンターテインメントの清水亮氏を迎えて行われた本セッション。ゲームとは直接は関係のない内容となっていたが、プログラミングの定義からビジネスへの活用法など、ためになる話が多数語られたので紹介しよう。
まずは、プログラミングとはどういったものかについて説明。それによると、現在プログラミングの一般的な意味合いとして使われている“コンピュータプログラミング”はあくまでも意味の一面を捉えたものでしかなく、あらゆる事象に対して共通認識として定義化されたものがプログラミングになるという。
清水氏は、現代社会では欠かせない紙幣の仕組みをその実例として紹介。そもそも紙幣は、実態価値を持つ金をより扱いやすくするために用意されているもので、それ自体は紙でしかない。しかしながら、私たちの共通認識として紙幣を金と同等の価値を持つものとして認識していることで、現在の紙幣流通は成り立っているということだ。
つまりこの場合は紙幣そのものがプログラムとなっており、そのほかにも聖書やハンムラビ法典などの戒律や、モラルもこれまでにプログラミングされてきたものだと説明した。
話は変わり、レイ・カーツワイル氏が提唱した「収穫加速の法則」について、コンピュータの出現がその法則を裏付けていると説明。ムーアの法則から派生したという「収穫加速の法則」について簡単に説明しておくと、ひとつの重要な発明はほかの発明と結びつき、次の重要な発明までの期間を短縮するというかたちで、科学技術は指数関数的に進歩する(新たな発明までの間隔が徐々に狭まっていく)のだという。
それらをさまざまな事例とともに紹介しつつ(ここでは触れられない内容がほとんどだったので割愛させていただく)、近年ではコンテンツやビジネスの流れが早いという話にもつながっていく。
ゲーム業界においては「艦これ」(角川ゲームスとDMMが共同制作)のヒットが記憶に新しいところだが、これも「パズル&ドラゴンズ」がプレイクした時期を考えるとその間隔は短く、ユーザーの消費量に引きずられるかたちでコンテンツの投下が早くなっていることを紹介、これには黒川氏も同意していた。
また、コンピュータプログラミングに限って言うと、コンピュータと人間の処理速度は1890年のコンピュータ誕生時の約8.6倍に対して、およそ100年の月日を経た今では約48億倍に高速化しているという。この中でこれからはプログラミングができることがコンピュータを効率的に扱えるようになるのだそう。
先述の通り、プログラミングはコンピュータに限ったことではなく、清水氏によると例えば黒川塾のようなイベントの成功などにも活用できるとのこと。その方法論としては、登壇者や時期、過去の実施事例などの状況を整理すること、そして隠れたニーズにマッチする企画を考えることが重要になってくるという。
このように、プログラミングスキルは、「組織の編成」「組織の運用」「戦略の立案」「企画の立案」「シミュレーション予測」などに応用が利き、ところどころで効率化が可能だと話した。
そうした話を経て、清水氏は将来、コンピュータのAIが発達することでコンピュータが人間をコントロールするようなことが起こりうると説明。「Augmented Human(機械による人間性の拡張)」が現実を帯びていく将来、人間がコンピュータと渡り合える能力を持つために必要なのが、まさにプログラミングスキルなのだとまとめた。