コードマスターズが2013年10月10日に発売を予定しているPS3/Xbox 360用ソフト「F1 2013」のメディア向け体験会が行われ、ゲストとして中嶋悟氏の合同インタビューの時間が設けられていたので、その模様をお届けしよう。
「F1 2013」は、FIAフォーミュラ1世界選手権の公式データを基にしたオフィシャルF1レースゲーム「F1」シリーズの最新作。2013年シーズンの最新データはもちろん、往年のF1マシンで伝説のドライバーたちとレースができる「F1 CLASSICS(F1クラシック)モード」が収録されており、新旧のF1の魅力を味わうことができる。
今回の体験会では製品版と同等のものをプレイすることができ、以前の記事では概要しかお伝えできなかった「シナリオ」モードにも触れることができた。シナリオモードは前作の「チャンピオン」モードを拡張させたような内容となっており、「このマシンを使って8位から1位になれ」といったように、さまざまな設定のシチュエーションから勝利を目指していくというもの。
新人ドライバーから熟練のレーサーにいたるまで、大きく4段階に難易度が分かれており、腕を磨いていくごとに、より高いハードルを越えていく楽しみがある。ゲームに慣れないうちは最初の難易度でも勝利するのは大変だが、シナリオモードで流れる実況は、負けた際に「○○選手は全く敵いませんでした」とバッサリ切られるようなコメントもあり、これが本当にレースに負けたような気分にさせてくれる。悔しさ倍増ではあるのだが、こうした細かいところの作り込みが非常に面白い。
また、冒頭でも述べたように、会場では中嶋悟氏の合同インタビューも行われた。中嶋氏は元F1ドライバーであり、現役引退後に国内のフォーミュラレースなどに参加する自身のチーム「ナカジマレーシング」を作り、そのオーナー兼監督を務めている。
今年はF1日本グランプリが鈴鹿サーキットでの開催25回目となるため、息子の一貴氏、大祐氏と3人でのデモンストレーション走行をするといった活動が控えている。F1好きな人の中には、このデモ走行を見に行く人も多いのではないだろうか。
ちなみに、日本グランプリの予選や決勝のタイミングに合わせ、本作のテレビCMがBSフジの「F1グランプリ2013」内で放送される。
インタビューではゲームを見た感想からレーサーの魅力、果ては交通安全についての質問まで飛び出し、バリエーションに富んだものとなったので、その内容をチェックしてほしい。
中嶋悟氏へのインタビュー
――「F1 2013」のグラフィックを見た率直な感想をお聞かせください。
中嶋氏:非常にリアルにできているなと思います。私もドライバーとして登場するのですが、細かいところに気を使ってくれていると感じました。マシンも忠実に再現されていて、運転席からの視点があったり、コックピットもリアルに映っていましたね。
――ゲーム内ではクラシックマシンの操作が難しいところまで再現されていますが、やはり今と比べると操作は難しかったのでしょうか?
中嶋氏:今のマシンには乗っていないので分からないというのが正直な感想なのですが(笑)、レーシングカーは日々進化しています。速く走るためだけでなく、労力を減らすためにオートマチックになったり、部品の性能ひとつ取ってもどんどん進歩していますので、恐らく操作性は格段に良くなっているでしょうね。ましてや我々が現役の頃は手動式のギアだったので、今はゲームでもギアを変えるために手を放す必要がないんだろうなと思ったりします。
――当時のF1は時速300kmの世界なので、仮に一瞬でもハンドルから手を放すのは相当な緊張感があったんじゃないかなと思います。
中嶋氏:今のマシンはハンドルも軽くなっていますが、我々の頃は時速200kmぐらいでコーナーを曲がりながら進む時に、横Gのかかった中で重たいハンドルを支えている最中に片手を離すのは辛かったというか、難しかった記憶があります。
――中嶋さんが現役で走られていた当時最も魅力的だったことと、今のF1で魅力的だと思うこと、それぞれお聞かせください。
中嶋氏:私にとっての魅力は、やはりドライバーとして世界一速いレーシングカーに乗れること、なおかつそのマシンで競争できることに尽きますね。いまもマシンは進化していますが、ドライバーはその時のレギュレーションの中で競争するわけですから、心理としては今も昔も一緒かなと思います。ドライバーは規則の中でマシンの能力を最大限引き出そうとするので、その都度、魅力を感じますし、今のマシンに乗っていないので、ちょっと乗ってみたいなと思うことはありますね。
――もし今のF1ドライバーたちと対戦するとしたら誰と一番対戦したいと思いますか?現役当時を振り返ってもう一度対戦したいドライバーも教えてください。
中嶋氏:今であれば、やっぱりベッテル(セバスチャン・ベッテル選手)を80年代の車に乗せて、私が今の車に乗って競ったらどうですかね(笑)。当時を振り返れば、やっぱりセナ(アイルトン・セナ選手)とか、かつて一緒に走っていた選手たちと、改めて走ってみたいなと思います。今もセナが生きていれば50代なので、私だけが当時の年齢に戻ればちょうどいい勝負ができるかなと(笑)。
――今のシーズンで乗ってみたいマシンはありますか?
中嶋氏:それはやっぱり一番速いマシンですよ(笑)。
――中嶋さんは雨のレースを得意とされていましたが、例えば一般公道を走るとき、雨の際に気を付けることはありますか?
中嶋氏:雨が降っていると晴れの時より滑りやすいので、F1ドライバーの場合は晴れた場合は晴れたときのリミットで、雨の場合は雨のときのリミットのスピードで滑らないように走ります。一般公道だと60km、高速道路でも100kmぐらいが制限速度になっていますので、スリップするかどうかの限界点はもう少し上にあり、普通に走っている限りではさほど違いを感じません。
ただ、何か起きて急に止まらなければいけないとき、雨が降っていると止まるまでに必要な距離が晴れの時よりも長くなりますし、ハンドルも曲がりにくくなります。なので普段は違いを感じにくくても、いざというときに差が出ることを認識しておいたほうがいいと思います。あとは単純に、窓やミラーにも雨が付くので視界が悪くなりますし、夜の場合は特に注意する必要がありますね。安全運転のことなら任せてください(笑)。
――鈴鹿サーキットを速く走るためのコツ、みたいなものはありますか?
中嶋氏:どこのサーキットでも一緒ですが、いかにマシンの限界点ギリギリの速度を維持して走るかが大事です。例えばヘアピンでは100kmぐらいに速度を落として走りますが、102kmでは地面からタイヤが離れだしてロスが生まれ、100kmだと少し足りずにロスが生まれる状況だとしたら、101kmであれば平気なのかといったように、綱渡りのようなことをしながら走っていました。
――2015年にホンダがF1に復帰するとの発表がありましたが、ホンダに期待しているのはどこでしょうか?
中嶋氏:期待と言ったらやっぱりいい成績を残してもらうことになりますが、持続的な活動をしてほしいと思いますね。
――ありがとうございました。
※ゲーム画面は開発中のものです。