日本一ソフトウェアより発売中のPS Vita用ソフト「htoL#NiQ -ホタルノニッキ-」。シンプルなゲームデザインながらも多くの魅力が詰まった本作のプレイレポートをお届けする。
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「htoL#NiQ -ホタルノニッキ-」は、タッチスクリーンおよび背面タッチパッドを使用した、シンプルなゲームシステムとは裏腹にやり応えのあるアクションと、廃墟に閉じ込められた少女を軸に展開する独特の世界観が特徴的なタイトル。
これまで「魔界戦記ディスガイア」シリーズのようなやり込み系のダンジョンRPG、「流行り神」シリーズのようなホラーアドベンチャーゲームの印象が強かった日本一ソフトウェアだが、本作はそのどれにも当てはまらない同社の新たな試みが感じられたタイトルとなっていた。
ここではネタバレにならない程度に本作のゲーム内容に触れつつ、筆者が感じた本作の魅力を紹介していこう。
ステージごとのギミックは攻略法を見つけ出す楽しさに溢れている
本作はミオンが目覚めたところからスタートし、プレイヤーはその周囲に漂う“ホタル”、もしくは“カゲホタル”となり、ミオンを導きながら廃墟を進んでいく。
前面のタッチスクリーンを使って操作を行うホタルは、移動した方向にミオンを誘導する。道中のハシゴを登ったり、レバーを引いてベルトコンベアの方向を変えたりと、ミオンの直接的な行動を促していく存在だ。
一方、背面タッチパッドをタップすることで切り替わるカゲホタルは、鉄骨を崩して道を作ったりと、影伝いに移動して離れた場所にあるギミックに干渉することができる。この間はカゲホタルを除く全ての時間が止まるため、窮地に陥りそうなミオンをまさに陰ながら助ける存在と言えるだろう。
それぞれの特徴を活かしながら進んでいくのが基本的な流れとなるが、本作のやり応えを高めているのが単純に仕組みを理解しただけではクリアできない難解なギミックと、ホタルとカゲホタルの切り替えによって生まれる動的な操作感だ。
ところどころで登場するギミックは、ひとつの動作でミオンを先に進めることができるものも多いが、中には廃墟をうごめく影やところどころで立ち塞がる歯車など、ミオンにとっての脅威となりうる存在もいる。
例えば、チャプター1では巨大な影からひたすらに逃げ続けるステージが登場するのだが、ここではホタル、カゲホタルを切り替えることだけでなく、いかにして迫りくる巨大な影の脅威を脱するかという駆け引きも存在する。生身ではとても敵わない相手をどのようなアクション、アイデアを活かして撃退するかを考える、まさに本作ならではの楽しみ方といえるだろう。
そして今挙げた通り、ホタルとカゲホタルの切り替えのタイミングは、さまざまな局面でプレイヤーに選択を迫ることとなる。一瞬の判断が命取りになったり、振り出しに戻ったりとゲームを大きく左右することになるので、双方の特性を理解してゲームを進めてもらえると幸いだ。
ストレスと達成感のバランスがとれた、クセのある操作性
タッチスクリーンと背面タッチパッドでの操作は、プレイヤー自身の感覚に委ねられる部分も多く、時に思い通りにいかず、ストレスを感じてしまう場面もあるだろう。
ただ、先に述べたギミックの攻略法と同様、クリアするために必要なアクションをプレイヤー自身の操作によって導き出した時の達成感は格別のものがある。それこそ失敗してしまっても何度も何度もトライし、その先に攻略法を見出すというゲーム本来の楽しさが詰まっている。
そして、より効率的な攻略法を追求する人にとっては、ステージごとに一定条件をクリアすると獲得できるトロフィーがその欲求を満たしてくれる。条件はステージごとにさまざまなので、ぜひチャレンジしてほしい要素の1つだ。
先に進めば進むほど見えてくるさまざまな謎
そうしてゲームを進めていくと、ところどころに“記憶のカケラ”と呼ばれる存在を確認することができる。そこにミオンが触れることで見ることのできる映像は、どうやら何者かの記憶の断片であり、過去の出来事ということだが…? ミオンを廃墟の外へ連れて行くという目的とともに、映像から廃墟の真実を探し出すという楽しみ方ができるのも本作ならではだ。
ホタルとカゲホタル、そしてミオンの関係は自身の目で解き明かそう
本作を語る上で無視できないのが、プレイヤーの分身として動くホタルとカゲホタル、そしてプレイヤーが導くミオンがどういった存在なのか、どういう関係なのかという点だろう。
テキストでの表現がほぼ存在しない本作では、それらの要素が直接的に語られることはない。しかしながら、ゲームを進めることでミオンが目の当たりにすることになる廃墟のさまざまな状況、そして先述の“記憶のカケラ”が見せるものが何らかのかたちでプレイヤーに気付きを与えてくれるはずだ。
筆者自身もまだクリアには至っておらず、日々頭を悩ませ、思い通りにミオンを誘導することができずに地団駄を踏みつつゲームを進めている。難題を乗り越えていくというやり応えと、独特の雰囲気が訴えかける世界観の魅力が合わさり、難しくも目的を達するため、ひいては悔しいからプレイをするというゲームの根源的な楽しさを提供していれていると思う。ゲームそのものは順調にプレイできれば10時間もかからないとは思うが、その分濃密な時間を過ごせることに違いない。