スパイク・チュンソフトが2015年7月30日に発売するPS4/PS Vita用ソフト「不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ」。本稿では、強制スクロールとローグライクの合致で生まれた新感覚“強制横スクロールRPG”について迫っていく。

目次
  1. 強制横スクロールRPGは、それほどあんまり怖過ぎない
  2. サクッと遊べる1プレイの流れを紹介!
  3. 番外:「冒険者」で世界に挑んでみた

スパイク・チュンソフトの「不思議のダンジョン」シリーズといえば、1ターンの価値や、机上の戦略の大事さをこれでもかというほど教えてくれつつ、あるかもしれないアイテムの探索や、絶対に手放したくない装備のロスト経験などをプレイヤーたちに叩き込んできた、同社の誇る人気シリーズの一つ。

そんなスパイク・チュンソフトが今回、新たなRPGタイトルを発売する。それがこの「不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ(以下:フリカツ)」だ。フリカツは、SmokingWOLF氏が制作したインディーゲーム作品「片道勇者」を原案とし、そこにさまざまな新規要素・変更点を盛り込んだ完全新作タイトルとして仕上げられている。

ゲームジャンルは“強制横スクロールRPG”と、一見普通そうで全然普通ではない語だが、字面だけで魅力の一端を感じ取れてしまった人は、もはや即買いで問題なし! もちろん「全然分からん!」という人のためにこそ、これからゲーム内容を紹介していくので安心して先に進んでほしい。

強制横スクロールRPGは、それほどあんまり怖過ぎない

フリカツのゲーム概要を簡潔に説明すると、左画面端より迫る光の災厄(シャインレイド)に呑み込まれないように、戦闘やアイテム収拾を適宜こなしながらマップ右側へと進み、さまざまな施設を利用したり、己を強化しつつ、待ち受けるボス(堕天使など)を倒すことが目的となる。

第一印象で「このゲーム、忙しないのでは?」と感じるかもしれないが、基本的にキャラクターの移動速度≠強制スクロールで、移動速度が大幅に勝っているため、「わざと光に入る」「地形・状況的にどうしようもなくて光に捕まる」でもない限り、光に呑み込まれることはそうそうない。

強制スクロールはプレイヤーの行動を急かすためのシステムではなく、上下に拡がる未探索マップを右往左往して、「もしかしてあっちに行ってたら何かあったのかも…?」と思わせてくれるための、取捨選択に重きを置いたデザインだと感じられた。もちろん、追い込まれることもあるが。

サクッと遊べる1プレイの流れを紹介!

ここからはゲームプレイの流れと共に各要素について紹介していこう。ゲームの初回プレイ時はチュートリアルからのスタートとなるが、今回はチュートリアルを済ませた後からの1プレイとなる。主なゲームサイクルは以下の通りで、1プレイごとにしっかりと区切りが用意されている。

1. 使用するキャラクターを選択
2. 挑戦する世界・難易度を選択
3. 選んだ世界にレッツ挑戦
4. クリア or ゲームオーバーでリザルト→タイトル画面へ
5. 持越し要素で新たなクラス・特徴などをゲット
6. そして、さらなる挑戦の高みへ…

「サクッと手軽に1プレイ」「持越し要素の解放を追求」はもちろんだが、「ひたすら延々と未踏の地を目指す」「他プレイヤーとオンライン対戦」など、カジュアルにもやり込みにも対応しているのが魅力だ。

ではまず、キャラクターの選択から見ていこう。ここではキャラクターの「名前」、プレイスタイルを左右する「クラス」、ステータス・追加能力を付加する「特徴」が選択できる。

クラスごとにステータス・スキル・初期装備に特性があるが、いざ冒険に出てみると「ナイトで始めたけど弓で戦う」「気づいたら知力ばっか上がってた」など、どう転ぶかは分からない。それに、多少は指向性をもってステータスを上げるチャンスにも出会えるので、最初の内は能力でもスキルでもビジュアルでも何でもいい。気の向くままに選択し、冒険するのが良いだろう。

ちなみに今回はナイトにしてみた。ナイトはイメージの通り接近戦に優れた能力を有している。しかし、どのクラスも選択できるビジュアルで悩み過ぎる…。理術士のType Bカワイイ…。

各クラスで使用できるキャラクタービジュアルを選択。
黒塗りのシークレットは“そのクラスの1回の冒険で、創世石を50個以上獲得”で解放。解説は後ほどだ。

さて、次は世界と難易度の選択だが、世界はいわばダンジョンみたいなもので、オンライン・オフラインキャンペーンをはじめ、自身で名付けたオリジナル世界に挑戦することも可能。難易度は後付けで、Easyは400㎞先にいるボスを倒すとクリア、Normal以上ならゲーム内の時間が一定時間過ぎるごとにボスが出現する

世界毎の個性を残しつつ、難易度を別枠で設定できるため、組み合わせによっては遊びやすく、または地獄のような難しさを追求できそうだ。今回は折角なのでオリジナルで名付けた「ニッポリ」の世界を救うことにした。

ゲームが始まると、空前の危機に見舞われた「ニッポリ」の王様に、「息子(娘)にして勇者よ、堕天使を倒してくれ」と実にらしい使命が授けられる。

スタート地点となる城内では、冒険のパートナー「妖精メモリア」と会話したり、アイテム引継ぎシステム「夢幻倉庫」で冒険の準備が整えられる。また、冒険に関してのちょっとした助言を聞いたり、後述するお城カスタマイズを利用することで、お城の有用性も多岐に広がっていく。

城門を抜けると、そこから先は未踏の地。「不思議のダンジョン」もしくは「片道勇者」をプレイしたことのある人にはイメージが付き易いだろう、お馴染みのローグライク。何があって、何が起きて、何に出会うかは進んでみるまではサッパリ分からない。

広大なマップを舞台に、8方向の攻撃/移動、ストレスフリーな高速移動、自動回復などに使う足踏み、さまざまなスキル、特殊効果をもたらす書札・巻物と、冒険中はプレイングの選択次第で幸と不幸が分かれる。ちょっと進んだ先に強力な武器が落ちているかもしれないし、どこまでいっても粗末な防具にすら出会えないかもしれない。アイテム運も含めて人それぞれだ。

冒険では、無くなったらゲームオーバーの「HP」、スキル・特殊移動時に消費する「ST」、歩くと減っていく満腹ゲージ「EN」、装備・持ち物の重量制限「WT」、武具の「耐久値」、通貨の「ラピス」など、リソース管理も重要。特に武具の耐久値はそのまま攻撃回数/防御回数の残数となり、無くなるとアイテムが消滅してしまうので、常に目に入れておきたい。

当然、1アクション=1ターンでスクロールしてくる光に飲み込まれたらゲームオーバーなので、状況を加味しつつ、立ち位置に気を配っていこう。

斜め移動、自動で敵の方を向くなど、操作補助システムもバッチリ。なお、夜になるとこのように視界が狭くなる。

マップには色々なモノが存在する。料理人や仲間NPCがいる街、凶悪な魔物がギッシリのモンスターハウス、レベルを消費して能力値・アイテムを獲得する女神像、さらには旨味たっぷりの野生動物、よく分からない因縁で襲い掛かってくる仇敵、踏んでしまったら致命傷な罠など、そのバリエーションもたっぷり。

マップは上下に広く、横断しなければアイテムや建物の視認も一苦労だ。しかし、大がかりな移動ばかりを続けていたら、お腹はガンガン減るし、光も迫ってくる。ただ、本作では“早く何か食べないと死んでしまう!状態”に陥っても、ゲームオーバーに逼迫するような深刻なロスはないので、場所や戦闘を見極めてから食べるのもいいだろう。

まあ、枯れた草しか見つからなかっただけですけどね。

調子乗って突入したら強敵とランデブー。とにかく逃げ続ければそのうち追ってこなくなる。助かる。
×ボタンでダッシュすれば、光すらも一気に引き離せる。
光のラインは右画面でギリギリの位置。最低ラインを見誤らないよう気を付けよう。

冒険中の原則は、敵味方共に1アクション=1ターン。戦闘では敵に囲まれないよう各個撃破したり、攻撃の空振りで相手の接近を待ったり、斜め移動を駆使して位置を確保することが肝要。しかし、時には思わぬ強敵に迫られ、「あ、これは終わったわ」という瞬間に出会うはずだ。

何も学習せず、手当たり次第に強敵に攻撃を吹っ掛けて、逃げた先のマップ端が山岳地帯(10ターン+ST消費で踏破可能)でいよいよ追い込まれてしまう、筆者のような人もいるはずだ。いるよね?

そんな時も大丈夫! プレイヤーは全クラス共通のスキル「覚醒」を使用できる。覚醒は「3ターンの間、自分だけが動ける+攻撃力上昇+理術を集中なしで使用」といった、さまざまな状況に対する切り札だ。一度の冒険で5回まで使用できるので、甘えず、驕らず、使い所を見極めよう。

ちなみに理術は理術士でなくても、しかるべき場所でお金+知力を消費することで習得できる。

ショートカットにはスキル/アイテムなどを自由に登録できる。そして、セットされている「覚醒」を使えば…。
絶体絶命の窮地を切り抜ける! さらに背後攻撃でダメージ倍ドン!
野生動物を倒すと経験値やアイテムが旨い! しかし、動物狩りの罪が被せられるので注意。

マップでは敵を倒す、宝箱を開錠する、新マップに突入するなどで経験値が得られる。レベルアップ時はステータスがランダムで上昇する仕組みだが、クラスによって上がりやすい/上がりにくいパラメータがあるようだ。

また、世界のどこかに存在する女神像にレベルを支払うことで、能力値の低下なく、選択可能な値を上昇させることができる。これは単に“レベルの数値だけが下がる”もので、レベルが下がることによるデメリットは殆ど存在しない。あげたいパラメータがあった際にはどんどん活用していこう。

ちなみに本作は、マップ上での途中セーブに対応している。ある程度ラピスを払うか、セーブ用アイテムを使うか、ボス近辺の途中セーブイベントが主なものだ。逆に言うと本作は自動セーブではないので、20分~30分で終わるEasyならまだしも、どこまでも進みたい時のNormalなどでは、セーブ事情に注意しておきたい。

能力値以外に武具やステータス最大値が引き換えられる時も。また、武具は追加効果にも期待できる。
脳筋で始めたけれども、結局見事な脳筋に成長した。 見えない数値に期待して、未鑑定品を装備するのも一興。
メモリアがセーブしてくれる。3つ目の選択肢を嬉々として選べない人のために、心を鬼にして選択してみた。カワイイ。

そして、EN減少大の効果を持つ雪原の地にて、「ニッポリの堕天使アルマ」に遭遇。攻撃を無効化するバリア、恐ろしいダメージを与えてくる打撃、当たってしまったらもうダメな気分になる理術など、強力な力を有するボスとの決戦だ。しかし、相手がいくら強力であろうと、ボス戦時はこちらにも王国からの助っ人が参戦してくれるので心強い。

だが、変にテンパって意味もなく巻物で橋を作ってみたり、なんかよく分からないけど巻物で壁を設置してみたりと、効果を知らない所持品を片っ端から使うといった暴挙に出るのはご法度。力と知恵と道具を引き出しつつ、最適解を導き出そう。

こういった接戦の時にこそ、光がジワジワ迫ってくることを実感してしまう。
右下のオブジェクトは地形に構わず進めるようになる橋、左上は障害物にできる壁。使いどころは考えよう。

そして、勇者が堕天使を倒し、ニッポリの世界に平和をもたらしたことで、勇者の偉業は伝説となる。ゲームはここでクリア、冒険のリザルト画面に移行する。冒険後は所持している未鑑定品が自動で全て鑑定してもらえるほか、世界毎のクリア報酬、そして冒険の評価が下される。

冒険の内容についても、謎(?)のキャラクターたちから今回の冒険に関するコメントをもらえたり、同じ世界を冒険したほかの勇者たちの制覇記録を見て競い合ったり、また同じ世界で息絶えた勇者の霊魂たちからスペシャルアイテムがもらえるTwitter連動も用意されている。

ここで重要なのが報酬の「創世石」「夢幻石」。創世石は、所持品を次の冒険へと引き継げる「夢幻倉庫」の拡張、新たなクラス・特徴を獲得する際に使用していく。以降、プレイの幅を大きく広げられる通貨となるので、大量入手を目的とした縛りプレイをこなし、石をたくさん手に入れつつ、Twitterで自慢してみるのも一つの手だ。

もう一方の夢幻石は、冒険の出発時の拠点となるお城のカスタマイズに使用していく。お城は上下左右に増築することで新たな部屋が作られ、その中に新たな住人を設置できる。住人にはマンドラゴラや料理人などがおり、ほかにもプレイ条件を満たすことで随時アンロックされていく。

プレイの積み重ねにより、徐々に下準備たっぷりの冒険ができるようになるので、最初の内は創世石と夢幻石の確保に勤しむのがベストだろう。ちなみに、両通貨の消費・カスタマイズは冒頭の冒険の準備画面でも行えるので、ここで悩みすぎることもない。

最初は倉庫の枠が少なく、残す品が悩ましい。 色々な特徴を組み合わせて、新たな冒険に臨もう。
増築コストは徐々に上昇していく。また、解体して夢幻石を改修することも可能。
また、全て増築しようとも初動でモタモタしていたら光の中なので、広くなるほど頭を悩ませてしまう。

一通り処理できたらここでゲーム終了。タイトル画面に戻り、また冒険の準備画面に進むわけだ。この1サイクルが何ともサックリしていて、かつ妙な中毒性を醸しだしている。手軽なプレイ感覚で、止められない止まらないなゲームを楽しみたいという人には打ってつけだろう。もちろん、「不思議のダンジョン」「片道勇者」を遊んでいる人でも、今までとは少し違うシステムの中で、同等の醍醐味が味わえるはずだ。

ちなみに、今回は発売前とあってオンラインキャンペーンおよびオンライン対戦の仕組みについては大きく取り上げられなかったので、こちらは発売後の楽しみにしておいてほしい。では最後に、ナイトとは一味違うクラス「冒険者」でのプレイの様子を紹介して終わりにしよう。

番外:「冒険者」で世界に挑んでみた

クラス「冒険者」は、マップ上1マスを飛び越える「ジャンプ」、宝箱を開けられる「開錠」など、戦闘系クラスとは違う側面から攻略に臨める。当然、初期状態は戦闘力が低めなので、装備を整えるまでは無理をせず、細心の注意を払って進んでいくべきだ。

まずは、先程配置したばかりの「養殖マンドラゴラ(高性能回復アイテム)」を収穫しつつ、前回余った高額アイテムを夢幻倉庫で引き出しておく。これを換金すれば、当面の資金はウハウハになるだろう(売却時、NPCの所持金を超える額はもらえないと知るまでの野望であった)。

お城を出ると、目と鼻の先に兵士がいた。どうやら箱の中のアイテムをくれるらしい。出てきたアイテムはすごく強そうな「アーバレスト」なる弓。識別率が低くて未鑑定のままなことと、持ち物制限を余裕で越えてくれるWTがネックだが、「不思議のダンジョン」の伝統らしく、その場で物を食べたり投げたりでどうにか枠を確保する。

ちなみに本作、弓やスキルなどを利用することで、こういった仲間・中立なNPCに攻撃を仕掛けることもできる。そのメリット/デメリットは自身で体験してほしい。うぷぷ。

大陸を進んでいくと、街は一切見つからないのに、こういう怪しいモンスターの住み家ばかりが見つかる。こういう冒険がしたいわけではないのに。ジャンプを使えばローリスクで乗り込めそうだが、レベル2では乗り込むこと自体がハイリスクなので中止です、中止。

こういう場所は勝手に罠で自爆してくれると助かるが、遠距離攻撃を駆使する敵が、味方を倒してレベルアップすることもあるので、色々注意を払っておこう。

そこから少し先に進むと、何やらユニークなNPCを発見。「おっ、仲間NPCの勧誘か」と思って近づいたら南無三。国同士の台所事情か何かで復讐を果たしにきた“エッチな騎士エアドー”であった。このエアドー、レベル2ではとてもじゃないが勝てそうにない。しかも、逃げた先が川と山で完全包囲。有り体にいえば詰んだ。

残る最後の手段は…直前に拾った「斧(?)」に隠されているかもしれない、聖剣的な能力があることに期待することだけ。覚醒を使い、件の斧を装備し、果敢に攻撃を仕掛けてみる。しかし、ビックリするほどヒットしない。そしてマゴマゴしている内にトドメの一撃をお見舞いされてしまった。エッチな騎士も勝てば官軍か。

そしてゲームオーバーを迎えると、申し訳ながらの創世石が手に入った。死んでしまったらタイトル画面直行と考えていたがために、リザルトに突入してくれてちょっと嬉しい。しかし、命運を託した斧の正体が、命中率-20%を誇る「伐採斧」だったなんて…。戦うための武器じゃないってさ。

こんな風に、未鑑定アイテムでギャンブルするのはとても危険な行為だ。ローグライクでは、見える物、考えられる要素をじっくりと考慮し、そこから打開の一手を導き出すプレイヤーの姿勢がとても重要視される。見えない何かにすがるのは、余裕が溢れすぎている時か、本当の極限状態の時だけにしておくべし。じゃないと、こうなる。

プレイする度に新たな冒険が生まれていく「不思議のクロニクル 振リ返リマセン勝ツマデハ」。本作にはまだまだ多彩な条件を課した世界、強力なクラス、未知なるアイテムがわんさかと盛り込まれている。なお、現在PS Storeでは体験版も配信されているので、製品版の発売日に向けて一足早くプレイしてみるのもいいだろう。レッツフリカツ。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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