連載企画「ゲームの壺」第4回は、大宮ソフトが開発したトレーディングカード・ボードゲーム「カルドセプト」シリーズに言及。デジタルゲームの世界でアナログゲームの魅力が体験できる、新機軸といって相応しかった本シリーズの魅力に迫っていこう。

トレーディングカードゲーム(TCG)とボードゲーム。アナログゲームの関係としては親和性の高い両者だが、これをデジタルで融合してしまったテレビゲームが存在する。その名は「カルドセプト」。シリーズを通して根強いファンを生みだし続けている、開発元・大宮ソフトの代表作だ

TCGのコレクター要素とブック(デッキ)構築、最大4人でプレイ可能なボードゲーム、ストーリーを追いかけながらCPU対戦を楽しむ1人用モードの作りこみはもとより、フラットでフェアな対戦条件を主とするボードゲームジャンルに、“自分なりの武器を持ちこんで戦う”という概念をもって殴りこんできたことが、個人的に衝撃的であった本作。

独自の神を要する世界観も、耳馴染みのよいBGMも、外連味を際立たせているシステムボイスもさることながら、目を惹きつけてやまないカードイラストこそ忘れられるものではない。多数のイラストレーターたちにより描かれているそれらのカードは、デザインの豊富さと引き立つ個性により、各々の嗜好をピンポイントでくすぐってくるのだ。

 
昨今のソーシャルゲームでは“有名イラストレーターを多数起用!”の煽り文句など、もはや違和感すらないサービス形態として認知されているし、TCGではそもそも“当たり前”過ぎて考えることもなかったものだ。しかし、「カルドセプト」はそれらが全く整備されていない1990年代~2000年代のテレビゲーム界隈でそれらを成立させ、今日に至るまで、ファンたちに強烈なインパクトを残し続けている。

ということで今回は、「カルドセプト」シリーズの全体を中心にしつつ、筆者が一番ハマっていたドリームキャスト版「カルドセプト セカンド」の思い出を振り返っていくことにした。セプター(カルドセプトにおけるプレイヤーを指す)はもちろん、本シリーズを知らないというTCGプレイヤーやボードゲーマーにも、本シリーズの魅力が伝わればうれしい。

「カルドセプト」シリーズの軌跡

初代「カルドセプト」は1997年10月にセガサターンで発売され、2001年7月12日にはドリームキャストで続編「カルドセプト セカンド」が登場。2002年9月26日には追加要素を盛り込んだPS2「カルドセプト セカンド エキスパンション」でナンバリングの集大成をみせ、2006年11月22日にXbox 360「カルドセプト サーガ」で次世代機へと移る。その後もDS/3DS/モバイルへと次々に展開され、今年2016年7月には最新作の3DS「カルドセプト リボルト」が発売されることとなった。

一つ、「カルドセプト サーガ」については初期の不具合が原因で、発売当初にネガティブな話題が広まってしまっていたが、それらは後に改善され、新システムを筆頭に対戦環境は洗練されていった。冲方丁氏の手掛けたシナリオは外伝小説も含めてプレイヤーたちを壮大な世界へと誘ってくれたし、伊藤賢治氏が手掛けるサウンドもシリーズには欠かせない魅力であるし、名を連ねている参加イラストレータらの威光も伊達ではない。

ただ個人的には、世界名作劇場を彷彿とさせていた「ケットシー(カルドセプト セカンド Ver.)」のあのイラストがとても好きで、それがサーガで変わってしまったのが最も残念なことであった。まあ、些細な問題か。昔のイラストが好き派/新作のイラストが好き派の討論は、お酒の肴にするくらいで丁度いい。

テーブルゲームの魅力をそのままに

TCGやボードゲームなど、アナログタイプのテーブルゲームというのは本来、卓を囲んで友人・知人と楽しむ遊戯であった。TCGはそこにデッキ編集という知的作業が加わり、1人の時間を費やしつつ、対戦相手と戦略を競い合う方向へと進んだ。一方のボードゲームはランダム性を混ぜながらも、おおむね複数人が同等のスタートを切り、プレイ過程を楽しんでいく方向へと進んでいる(種類はさまざまだが、ここでは割愛)。

そんな中、「カルドセプト」はデジタルなテレビゲームでありつつも、そのコンセプトは上述しているように、TCG+ボードゲームの特徴がきっちりと押さえられていた。TCGらしい醍醐味やアプローチはもちろん、全世界のメジャーゲーム「モノポリー」をベースにしたすごろく形式のボードゲームも、一手一手でさまざまな波乱が巻き起こるので飽きがこない。

デジタルなモニターを媒介していても、アナログなコミュニティゲームとしての本質は損なわず、それでいてテレビゲームならではの1人遊びにもしっかりと注力されている。月並みの表現ではあるが、ハイブリッドなゲームという言葉がピッタリだ。

 
しかも勘違いしてはいけないところが、“「カルドセプト」は1人用ゲームとしてだけでも成り立っている”という点だ。アナログゲームであっても同様の楽しみかたを見出せる作品およびプレイヤーは存在するだろうが、「カルドセプト」はそのコンセプトからして、1人プレイを堪能した先に、白熱の多人数プレイが待ち受けている。

1人プレイの基本的なサイクルは、ストーリーを追う→ボードで対戦→新カードをGET→ブックを編集→次のストーリーへ、というもの。対戦後に報酬がもらえる仕組みは、ゲームであれば当たり前のことに聞こえるが、デジタルボードゲームに属する作品でこれに挑んでいた例はそう多くはない。仮にあっても大半が、マップや衣装など特典の階層の話だ。

そもそも、単発プレイで楽しむ“一期一会のパーティゲーム”として練り上げられているボードゲームとは、本作は楽しみかたのスタートラインからして違っている。どちらに優劣を付けるといったものではなく、「カルドセプト」は継続プレイでユーザー資産を積み重ねていくゲームなのだから。

 
ただファンの中には、「カルドセプト」を友達の家で一緒に遊んだ、「カルドセプト セカンド」以降ならオンラインマルチプレイを最初に体験したなど、対戦の熱さから本シリーズにのめりこんだ人もいるかもしれない。

しかし、ルールや戦略を知るために、カードを収集するために、大半のプレイヤーはセプターとなり、1人プレイで研鑽を積んでいくのが常套手段である。CPU戦がお好みじゃない人も当然いるだろうが、本シリーズで用意される対戦環境&ストーリー展開は充実しており、決して人を退屈にさせる作りではない。

「カルドセプト」は、1人プレイの楽しさと、多人数プレイの面白さを、それぞれ別々の要素として併せ持っている。1人プレイだけでもハマる人はとことんハマるし、インターネット環境を含め、気軽にオンラインプレイへと踏み出せない不自由な時代であったからこそ、多人数プレイを体験したときの喜びもひとしおであった。

 
当時も現在も、アナログゲームのプレイ層を鑑みるに、家族や友達と遊ぶパーティゲームの楽しみは知っていても、アナログゲームならではの醍醐味を知っている卓ゲーマーというのは、かなり少ないはず。日本国内ではそれが顕著な事実である。

当時は当時で、TCGなら「俺はギャザっ!」「僕は遊戯王っ!」「ワイはモンコレっ!」などと活気があったが、「イエローサブマリン? 常連だよ?」「好きなゲームデザイナーはウヴェ・ローゼンベルク氏です」と、マニアックな卓ゲーの域にまで食指が伸びていた人は、「今と比べれば多かったかも?」くらいに落ち着くはず。そもそもTCGとボードのユーザーは一致しているわけではないので、温度感からして違っているのだが。

つまるところ、大半のユーザーにとって「カルドセプト」は新体験の塊であったのではないのだろうか? 実際の購入層については憶測でしかいえないが、ほとんどは「TCGもボードも知らない」「片方を体験したことがある」「デジタルボードゲームが好きで」と、このゲームが何なのかは分からないけど、とりあえずやってみた or 買ってみた人が多いのではと筆者は考えている。

ゆえに、当該ジャンルへの知見が薄かった筆者のようなゲームユーザーたちには、アナログゲームの魅力をこれでもかと満載にしていた「カルドセプト」の特徴が、あまりに鋭くつき刺さった。それこそ、セプターにならずにはいられないくらいに。

知略とブラフがカギを握る対戦

対戦は、すごろくの盤面上にて、進行中にさまざまなコストとして利用していく「魔力(資産に相当)」を、勝利条件のボーダーまで確保すれば勝利となる。ゲームには最大4人まで参加可能で、1vs1vs1vs1はもちろん、同盟システムを使えば2vs2などにも対応できた。

プレイマップは多数あり、形状・長短・分岐・オブジェクトに差異があるものの、基本は【4色の土地】【スタート/ゴール地点の城】【チェックポイントの砦】で成り立っている。そこでダイスを振り、土地を確保し、すべての砦を通過して、城でボーナス獲得、土地をレベルアップして総魔力を底上げと、これらの選択肢をもって勝利条件を目指していく。

中でも「土地にクリーチャーを配置(土地の価値で資産変動)」「マップ周回でボーナス獲得(所有魔力の純粋な増加)」の2点は大きな主軸を占めているので、土地の質や数、護符(株券に相当)を増やして、徐々に周回ボーナスの獲得量を高めていくことが大切。近しいゲームルールに馴染みのある人なら、すんなりと把握できることだろう。

 
そして最たる特徴は、各プレイヤーが【クリーチャー】【スペル】【アイテム】の3種のカードで組んだ、50枚構成の「ブック」を持ちこむことにある。対戦中は手番のたびにブックからカードを1枚引き、それを手札として自由に使用できる。何度目ともなるが、「TCGをやりながら、すごろくのダイスを振っていく」という合わせ技の真骨頂である。

手札の内、クリーチャーカードは土地の確保に必要なカード。ダイスで空いた土地に止まり、手札のクリーチャーを呼び出すと、その土地が得られる。クリーチャーには属性(火/水/地/風/無)、ST(攻撃力)、MHP(耐久力)、使用制限、それぞれの固有能力が備わっており、土地に配置して能力を高めたり、土地に止まった相手から通行料をせしめたりと、土地の主となることが役割だ。

続いてスペルカードは、「nマス進む」「相手の魔力を奪う」「配置クリーチャーにダメージを与える」など、ダイスを振る前に1枚だけ使えるカード。もう一方のアイテムカードは「ST30上昇」「通常攻撃を無効化」「死んだらコガネムシになって生き返る」など、クリーチャー同士の戦闘を有利にするカードで、こちらは戦闘時のみ使用可能となる。

なお、全てのカードには魔力の使用コストが設定されているため、“勝つための貯蓄/負けないための支出”の天秤をうまく配慮しなければ、土地やクリーチャーは強力なのに手持ちの魔力は素寒貧など、ヘマを踏んだら一発サヨナラな状況を引き起こしてしまう。何が起きるか分からない進行に対するマージンは、常に図っておきたい。

 
「カルドセプト」では、相手クリーチャーが配置された土地に止まったとき、通常であれば表示分の通行料を相手に支払わなければならない。が、手札にクリーチャーがいれば話は別で、侵攻を企てることでそれをチャラにしつつ、相手の土地を奪うことができる。この戦闘要素により、一般的なボードゲームであれば「高額マスに止まって俺氏、終了…」なケースが、「そこだ、そこが欲しかった!」な一発逆転の手に昇華されているのだ。

土地を中途半端にレベルアップさせていると、クリーチャーの強化(土地レベル×MHP+10/同属性のみ)に伴い、相手に奪われる危険性がドンドンと高まっていく。だって、相手が丹念に魔力を注ぎ込んだそれを奪えれば、自分が支出したわけじゃないのに、そっくりそのまま土地だけもらえるんだよ? もう、ウヒッ……ウヘヘ……って笑いが止まらなくなってしまうでしょ?

手札やその場の状況によっては、相手の勝ち筋となるはずの高額土地が、小銭程度の支出で自分のものにできるので、ゲーム終盤での下剋上も容易い。奪うためのアプローチも「直接踏む」「クリーチャーを移動」「スペルの効果」などさまざまで、リスク/リターンもその時々。同様のシステムを積んでいる他タイトルの「数倍買い」だのと比べると、クリーチャーが勝てばいいだけ。暴力こそパワーのお手軽さ

もちろん、奪うこと自体が簡単なわけではないので過信するのは禁物だ。それでも、下位に甘んじていても逆転の目が見えることにより、プレイヤーのストレスが比較的少なくて済むのは、ボードゲームとしては何よりの魅力といっていいだろう。筆者は大抵ブチギレだけどね。

 
当のクリーチャー同士の戦闘だが、【侵攻側(先行)】【防衛側(後攻)】に分かれ、双方のクリーチャーが1体ずつ出揃ったあと、戦闘前に双方が1枚だけアイテムを使用することができる。その後、侵攻側のアイテム→防衛側のアイテム→侵攻側の能力→防衛側の能力→侵攻側の攻撃→防衛側の攻撃……etcと、TCGらしい手順の処理が順々に解決されていく。

直接的なダメージの取りあいは、双方が1回ずつ攻撃するだけのシンプルな仕組み。手札のアイテムも1枚しか切れないので一見単純だが、ST-MHP=死亡の計算、クリーチャーの能力、アイテムの効果、ボード上の全体効果、さらに因果関係のイニシアチブなどが混じってくると、途端に複雑化してくる。一例を挙げると、「ボージェス」や「マッドクラウン」の存在を忘れていて、泣いたセプターは多いことだろう。

また、なにをもって戦闘の勝利かは各々の戦略次第。ゲーム中は「土地が欲しいわけではないけど、相手の手札を削ったろ」「殴って魔力を奪うアイテムで、ひたすら嫌がらせしよ」などなど、勝敗を度外視した削り合いも存在する。なので、試合に勝って勝負に負けるケースも多々だ。

【侵攻側】:相手を倒して生き残れば勝利/倒せなければ敗北(例外アリ)
【防衛側】:相手を倒して生き残れば勝利/生き残れれば勝利(こちらも例外アリ)

 
さらに、クリーチャーたちの能力もバリエーション豊かなので、「このカードの組み合わせ、もしかして最強じゃない?」とか思っていても、あっさりと穴を突かれて壊滅することもある。普通に強いもの、癖が際立つもの、侵攻/防衛に特化したものなど、多種多様なクリーチャーたちの効果の中から、その一部をピックアップしてみると……

「MHPは30だが、ST40以上の通常攻撃を通さない」
「STは低いが、先制&マヒ攻撃で相手に行動させない」
「ST/HPがランダムに変化する」
「これまでに死亡したクリーチャーの数だけST上昇」

などなど、400枚以上ものカードほぼ全てが特徴的すぎて、語るのも愚かしい。ただし、侵攻側は「何が何でも“相手がお金を取れない状況”」にすること、防衛側は「兎にも角にも“自分のクリーチャーがいる”」ことに尽力すればいいので、各クリーチャーは運用も目的もその都度で行ったり来たり。能力は当然大事だが、それを使いこなす状況こそが戦略のカギとなっている。

というわけで、本シリーズには対戦環境で強いカードはあれど、状況によってその価値が上下することから、最強カードなるものは一概には存在しない。初めて出会った「グレムリン(相手のアイテムを奪って使う)」、卑怯すぎると思った「リトルグレイ(50%の確率で相手を空き地に飛ばす)」、最強を感じた「ケルピー(配置されている土地で相手を強制的に止まらせる)」など、どこに魅力を感じるかは出会い方次第といえよう。

 
そして、ここで最も重要なポイントを一つ。対戦中は一つの画面を最大4人のプレイヤー(NPC含む)が交互に使って進行していくのだが、各プレイヤーは手番の時、その画面が全員に共有される。つまり、手札を含む、全ての情報がリアルタイムで全員に公開されてしまうのだ。TCGであれば禁忌も禁忌のご法度だが、「カルドセプト」に至ってはこれがまた絶妙なバランスで、ゲームをより白熱させる要因となっている。

これにより、「カルドセプト」の対戦中は「アイツは2位だけど、『~~』のカードを持ってるから潰さなきゃ!」といったメタな駆け引きも頻発し、ゲーム内順位とは違う盤外での読み合いにも対応せねばならない。対人戦であれば、相手に手札を覚えさせないようクイックな操作を心掛けたり、あえて囮のカードをチラつかせる示威行為も効果てきめんだ。

果ては、皆のアイテムカードすらも把握できてしまうため、戦闘時になれば「ST+20を使えば勝ち or 使わないと負け」どころか、「ST+20を使えば勝つけど、MHP+20を使われたら負けるし、ST+30/MHP+10を使えばそれに勝つけど、それを盗むアイテムがきたら負けるし……」と疑心だけが盛り上がっていくケースも。手札の状況によっては思考が泥沼入りする。

 
ゲームデザインというのは色々あるだろうが、ゲームをやる上では「相手が何をできるのか知らない」よりも、「相手が何をできるのかを知っている」ほうが、誰でも分け隔てなく心理戦に参加しやすいと、筆者は考えている。その点でいえば、本シリーズのプレイヤー情報の明示というのは実に思い切りがいい。そのうえでバランスも保っているのだから、言うことなしだ。

それに手札のカードについては、絵柄は見えてもテキストまでは記載されないので、カードの絵柄と効果を暗記するやり込みも問われる。絵柄を知っていても、その効果を憶えていないのならご愁傷様だ。そして、ブックの構築力をいくら高めようとも、場所も、魔力も、手札も、すべて一欠片の運が作用するので、結果的にどこまでいってもユラユラするバランスの上での自力勝負になってくる。

この“オープンな手札”という大胆なシステムは、体験しないことには良し悪しが分からないはずだ。しかし、これは間違いなく、本シリーズならではの大きな大きな魅力なのである。分かってしまうからこそ悩んでしまうジレンマは、それこそアナログゲームで追求されてきた命題にして、プレイヤーが求めてきた醍醐味に等しい。

マジックボルトしたらバジリスクするから、覚悟しろよ?

さて、今回は「カルドセプト」シリーズを語るということで、夢のような名機から生まれる悪夢のような電話代など、逸話と体験談には事欠かないドリームキャストより「カルドセプト セカンド」を取り上げ、当時の環境について振り返ってみよう。

本作はネットワーク対戦に対応していたことで、当時のネット知識不足なゲーマーたちの大半が感じていたであろう、「自分の家に居て……? 知らない人とゲームができる……? ふえぇー……?」な意識に対しての情報リテラシーを育む一因も担っていた。

当時のインターネットの敷居の高さはかなりのものであったし、ドリームキャストのタイトルも隆盛を逃すと、マッチング相手がほとんどいなくなってしまう状況。だがそれでも、人気タイトルについては例外で、協力/対戦プレイに必要なユーザーがしっかりと残っていた。「カルドセプト セカンド」はその例にもれず、4人プレイでも長期にわたってマッチングすることができた作品だ。

 
まず、シリーズを通して重要な戦略といえば「周回」が挙げられる。これはマップの広さも密に関係するのだが、対戦中に魔力を確実かつ一定量確保していくにはやはり、マップを一周して得られるボーナスが最も手っ取り早く、それでいて安定する。

そこで、ダイスを一度に2つ回せるスペル「ヘイスト」、強制的に8マス進めるスペル「ホーリーワード8」などを使い、ほかの参加者よりも早く先へと進み、リソースをより多く確保しようとする戦術“走り”が環境に躍り出た。これは全シリーズを通して根強い対戦方針でいて、また走りに特化せずとも、戦略の基礎として捨て置ける要素ではない。

もちろん、盤面でプレイヤーが身を任せるのは所詮ダイスである。ダイスを2つ回して期待値が2~4な日だってある。とても悲しい。

 
ブックは基本、属性色が統一されているほど親和性が高まるので、1~2色+αのカードで構成することが鉄板。また、クリーチャーの打点は全体平均でみれば20~40ほどで、ST50~70のクリーチャーともなると、手札の消費や該当土地の確保(火の土地×2など)などの追加コストが設定されていることも多く、気軽に使うには少々重い。

そんな状況で一際輝いていたのは、「無属性クリーチャー」たちだ。無属性は土地とのシナジーが皆無なかわりに、低コスト+高ステータスなクリーチャーたちである。MHP30以下になった相手を60%の確率で即死させる「サムライ」、通行料1/2のデメリットをものともしない高パフォーマンス筆頭「スチームギア」、相手の通常攻撃をそっくりそのまま反射する「デコイ」などは、ブック色を問わず人気が高かった。

これら無属性は高額拠点の候補として扱うわけではなく、「適当に配置」「適当に侵攻」など、インスタントに使用できるのが魅力の一つ。パフォーマンスの高さからアイテムへの依存性が低く、要衝に置かないので戦うだけ損とばかりに侵攻もされづらい。さまざまな小技を利かせやすいことから、ブックコンセプトとは別枠で差していける頼もしい味方なのだ。敵にいると面倒くさいが。

 
そして、“走り”がすごろく面の加速とすれば、スペル「リンカネーション」は手札面の加速。その効果は、「手札を全て捨て、新たに6枚のカードを引く」だ。利点はまず、手札にリンカネーション1枚しかなくても、カードを6枚引けること。毎ターン1枚しかドローできないルールなので、手札を満タンまでプールできるアドバンテージは、それ自体が逸脱して強力。TCGとは勝手が違うものの、TCGに長けている人ほど「はいはい禁止、禁止」と口ずさみたくなるだろう。

もう一つの利点は、目当てのカードを引くための機能。サーチとはいかないまでも、最大4枚差しでドローエンジンとして活用すれば、ブックを規格外のスピードで回せる。ブックは全50枚のカードを引いても、再度ブックが構築され、イチからカードが引き直せるのでブック切れという概念がない。これにより、ほかのドロー系と組み合わせれば、お目当てのカードを引くための圧縮すら超え、「4枚制限のカードを、1ゲームで8回使う」など、ブック1週前提の荒業にすら到達できる。

なお、このリンカネーションというカードは、シリーズを通してその効果が変遷している。それは弱体化と言っても差し支えない。今回紹介している「カルドセプト セカンド」では上記の効果だが、以降の続編では「捨てた枚数だけカードを引く」「捨てた枚数+1のカードを引く」などに変わっており、猛威という点ではこの頃のテキストが最盛期であった。

 
最後はこちらもスペルの「ハウント」。効果は「対象セプターの操作を2ラウンドの間、CPUが操作する」というもの。予め言っておくが、本作のCPUはキャラクター毎の個性付けはあれど、いわゆるバカではない。適切なタイミングでしっかりと嫌な行動を取ってくるし、思わず忘れていたような要素ですらキッチリと回収してくる。CPUのルーチンを自作して仮想AIを作成する機能も備わっていたゲームなのだから、ザルではない。

しかし、対人戦特有の駆け引きには、やはり熟知していない。そのため、この2ターンの使い所が的確であればあるほど、使われたプレイヤーに悲劇が舞い降りる。「あのカードを使わせたくないから、2ターンの間に資産を処理しよ」と駆け引きをすっ飛ばされることや、「あの効果を、あのアイテムで引き出させなきゃ絶対勝てる!」と複雑な問題を更地にされることもある。盤面の憂いを吹き飛ばし、交友のわだかまりを生み落す、セプターをセプターとして扱わぬこの所業、正攻法で止める術はメタカード(※)しかない。

1人用では相手にCPUしかいないことから、ゲームをはじめたばかりの頃はこのハウントというカードの存在自体、ロス以外の何物でもなかった。だが、対人戦で初めて使われたときの衝撃といったら、目からうろこであった。多分、涙だけどね。以降のシリーズではやっぱり大幅な修正が施された、良い意味でも悪い意味でも「カルドセプト セカンド」を象徴するカードの一つである。

※一例:「自分のキャラクターは“スペルの対象に取られない”」といった防護用のスペルや、相手のカードを捨てさせるスペルなどで対処することは可能。とはいっても、全般的に相手のスペルに対処するのはほぼ無理といっても差し支えないので、大体は諦めよう。ちなみにハウントはカルド界隈のスラング“口ハウント”の語源でもある。

 
そのほか、マップ上のクリーチャーをダメージスペルで倒していく“焼き”や、リソース獲得手段の主流であった“ラントラ”など、カードや戦法については広く深く存在しているので、一口では到底語りきれない。ブックはTCGの環境のように、流行やメタが飛び交いつつ変化していく生ものなのだ。

ちなみに筆者が主に扱っていたのは、風単ブック「ガルーダ&パウダーイーター」。土地から移動させると個体が増えるパウダーイーターをばら撒き、要衝をナイキーやミルメコレオなどで堅守しつつ、「ガッ(↓)ルーダァァ(↑)」という呼ばれかたが大好きだった彼を千載一遇のフィニッシャーとして送り出す、その瞬間だけを狙ったロマン寄りのファンブック。

全体的な勝率は明らかに下向きであったが、ガルーダの数値が跳ね上がったときの高揚に比べれば安いものだ(配置されている風属性のモンスター×ST/MHP+10の効果により能力倍ドン! 条件次第でゲーム最強クリーチャーに変貌してくれるのだ)。

これからのセプターに告ぐ

「カルドセプト」シリーズは作品毎にシステム/カードのバランスが調整され、好例・悪例が混じりつつ、さまざまな環境が形成されてきた。筆者は当時、「カルドセプト セカンド」を友人から教えてもらったことをきっかけに、そこから前作に遡ったり、新作発売と同時にハードも買ったりと、「カルドセプト」のある生活を満喫してきた。

昨今では、据え置きのボードゲームジャンルはパーティゲーム寄りで、その勢いも寂しいもの。ソーシャルゲーム界隈でも近しいコンセプトのアプリがリリースされてはいるが、手軽さにおいて軍配を上げても、やはりプレイ体験の密度においては、「カルドセプト」ほどの濃密感が得られるわけもない。時勢がどうであれ、人生の節目節目に出会ってきた「カルドセプト」。次のリボルトにも早く出会いたいものだ。

そんな逸る気持ちからできた本記事だが、「結局、全然分からんかったわ!」という人はなにも憤ることはありません。たまたま貴方の人生に、女神カルドラのお導きが届いていなかっただけなのです。ぜひ一度、最新作がリリースされる前にプレイしてみてください。ほら、騙されたと思って。いや、騙されたフリでもいいから。むしろもう騙されろ! ゲーマーがセプターになってしまうのは、とても容易いことなのだから。

Gamer連載企画「ゲームの壺」とは?

古い? 知らない子だ…
名作? 聞いたことがない…
面白い? それなんですよ!

面白いという感動を与えてくれたゲームタイトルを、ざっくばらんに紹介していく不定期連載企画「ゲームの壺」。ここでは新旧問わず、編集部スタッフがさまざまなタイトルを、さまざまな角度で斬り込んでいきます。“ちょっとした箸休めのつもりがガッツリしたものに出会ってしまった”。そんな読了の経験を味わいたいという人は、どうぞ一度目を通してみてください。

第1回:SS「シルエットミラージュ」を紹介!
第2回:AC「アイドルマスター(前編)」を紹介!
第3回:AC「アイドルマスター(後編)」を紹介!
第4回:DC「カルドセプト セカンド」を紹介!
「ゲームの壺」はこちらからチェック!

Copyright 2001 Omiya Soft (Supported by Marigul)

※画面は開発中のものです。

関連ワード

この記事のゲーム情報

カルドセプト セカンド

トレーディングカードボードゲーム
機種
DC
プラットフォーム
パッケージ
会社
大宮ソフト
シリーズ
カルドセプト
ジャンル
テーブルカード
  • セガゲームス特集ページ
  • Figgy
  • BUSTAFELLOWS特設サイト

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