スクウェア・エニックスが配信中のiOS/Android向けアプリ「VALKYRIE ANATOMIA -THE ORIGIN-(ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐)」のプレイレビュー。シリーズの始まりが解き明かされるストーリーや、VPならではのバトルシステムなどを一挙ご紹介!
こういう仕事をしていると、日々の仕事の最中に「ヴァルキリープロファイル(以下、VP)」という文字を目にすることがままある。
しかし、そうなると大変で、頭の中では未確認神闘シンドロームが鳴りはじめ、「我と共に生きるは冷厳なる――」と前口上を置きつつ、いくつか思い浮かんだ連携を繰り広げた後、「てめぇの顔も見飽きたぜ」のキメ台詞からフィニッシュ。思考をシャットダウンさせなくてはならなくなる。慣れというより、もはや呪いだね。ロストミスティックだね。
そんな病状を長く患っていたが、先月2016年4月28日のこと、死の先をゆく者たち(シリーズファン)を久々に目覚めさせる一手として、シリーズ最新作「ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐」がスマートフォン向けにリリースされた。“戦乙女ヴァルキリーの始まりの物語”という鮮やかな角度から斬り込んできた、ホンマモンの刺客である。
というわけで今回は、「VALKYRIE ANATOMIA(略称はアナトミア? ヴァルアナ? VAT? 何?)」の魅力に迫るべく、ゴールデンウィークという甘い期間を使ってプレイに勤しんできたので、その感想を書き連ねることにした。まだプレイしていないという人は、ぜひとも目を通してほしい。もちろん、やってる人もね!
まずはストーリーの前提から
シリーズの原点を謳っている通り、本作は知識ゼロではじめようが誰でも楽しめる。とはいえ、「VPシリーズをプレイしたことがない」「久々すぎて設定を覚えていない」という人もいると思うので、まずは新旧の世界観・用語を混ぜつつ、今回のストーリーをおさらいしていく。
世界観は、強大な神々たちが住まう北欧神話をベースとしている。まあ、いまどきは「オーディン」だの「ロキ」だの「トール」だのと、北欧の神様たちはさまざまスマートフォンゲームで引っ張りだこの大人気キャラなので、VPに登場する神々に関していえば、聞き覚えのない神様を見つけるほうが逆に難しいかもしれない。
ちなみに1999年当時に初代「ヴァルキリープロファイル」が発売されたときは、神々のビジュアル化、深く切り込んだ設定などにより、北欧神話に傾倒してしまったユーザーが多数生まれていた……はず。だって、超面白かったものね。
序章では、最高神オーディンらアース神族が住む神界「アスガルド」に、冥界の女王ヘルがヴァンナヘイムのヴァン神族を率いて攻め込んでくる。アスガルド崩壊の混乱は、人間が住む「ミッドガルド」までをも侵食。世界のバランスが崩れはじめた。
オーディンは再起を図るため、眠れる戦乙女「レナス・ヴァルキュリア」を呼び覚まし、彼女を“魂の選定者”としてミッドガルドに送る。主人公であるレナスの役目は、地上で亡くなった英雄の魂を導き、神界の戦士「エインフェリア」を転送することだ。
要約すると、「アスガルドが大ピンチ!」→「レナス、英雄集めてきて!」→「よしきた!」(※ニュアンスは異なります)という展開。分かりやすいね。
死から始まる出会い
仲間は基本的に、ストーリーやイベントクエストを進めることで加入する。いわゆるキャラクターガチャが用意されておらず、ガチャに依るのは現在「武器ガチャ」のみ。ステータスの大半は武器に依存しているので、「特定のキャラクターだけ強すぎる!」などのストレスも大幅に軽減。好きなキャラクターを好きに使っていける。もちろん、差異はあるけれど。
さて、本作で仲間になるキャラクターたちだが、さきほど説明したとおり、もしくはご存じのとおり、みんな死んでいる(※神々など一部例外はあり)。エインフェリアに見定められる条件が、肉体的に命を引き取った状態(魂)であるため、それ自体は仕方のないことだ。ただ、ミッドガルドで生きる英雄たちの生き様は、何も明るいものばかりというわけではない。
あらかじめ言っておくとこのゲーム、悲惨な物語ばかりを目にすることになる。
プレイヤーとキャラクターに悲しみをもたらす要因は、戦争であったり、悪行であったり、生きるためであったりと千差万別。登場人物たちのエピソードを通して目にする、耳にするその世界に、問題をスパッと解決してくれる爽快なヒーローの姿はない。また、戦乙女が選定するのは人格や能力で、その所業は問われない。つまり、仲間になるのは“誰もが夢見る英雄”だけとは限らない。
序盤でいうと、最初のエインフェリア「ジャンヌ」は謎すぎる存在なのでひとまず置いといて……、復讐を果たすために強者に弟子入りをする「セナ」、母親を助けるために己が力を悪用させる「ルチア」、この2人のエピソードは実にVPらしく、生者に優しい結末ばかりが訪れるわけではないことを早々に教えてくれる。どのような場所にも、心の痛みを知らぬ者はいるわけだ。
殺すために生きる。死にたいのに生きる。彼女たちの妄執的な考えや、刹那的な生き方からは、疲弊して痩せ細ってしまったのであろう、この地上世界の死生観が映し出されている気がする。一言で「鬱ゲー」「泣きゲー」だのと簡単にカテゴライズできれば楽なのだが、世界観の作り込みがそれを許さない。形容するならば“重い”が最適か。
もちろん、鬱だの重いだのと好き勝手いっているが、これは紛れもなく本作、ひいては本シリーズの魅力といえる。神々の思惑で進んでいくメインストーリー、オムニバス形式で描かれる人間たちの一生、神と人との2つの都合が織りなす物語の温度差こそが、VPシリーズの真骨頂である。
ちなみに、本作ではサイドストーリーとして、仲間になったエインフェリアのその後の物語も描かれていく。レナスは作品毎に記憶や人格が異なる存在だが、今回はシリーズの原点ということでか、どことなく若い。というか、これまで振るっていたベテラン人事のような手腕を磨いていない頃なのか、個性派ぞろいのエインフェリアたちに振り回される姿すら散見される。
CVも冬馬由美さんから沢城みゆきさんへと変わっていることもあり、意図的に“未熟な戦乙女”を描いているのかもしれない。
ゲーム中は街(マップ)が存在しないのでミッドガルドの全体的なビジュアルは捉えづらいが、これまでの同じ世界観を共有するシリーズ作品で見られた地上の風景では、古今東西が混ざりつつも、全体的に中世ファンタジー風の発達度合に収まっていた。
大まかな時系列は「ヴァルキリーアナトミア」→「ヴァルキリープロファイル2 シルメリア」→「ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者」→「ヴァルキリープロファイル」となるだろうが、作品間での荒廃はあれども、文明として前進した印象はみられず。停滞した空気感もまた、神話に連なる物語らしさということか。
アナトミアのゲームの流れを紹介
続いては「ヴァルキリーアナトミア」のゲーム部分を、流れを追って説明していこう。ゲームのトップ画面では主なコンテンツとして、ストーリーを進める「物語を進める」、イベントクエストなどの「期間限定の冒険に挑む」、非同期型PvPのランキングを争う「神界転送する」、オプションを変更できる「設定」の4つが用意されている。
パーティは、レナスらヴァルキリー枠1名+エインフェリア枠3名の計4名で編成。見るべき部分は経験値制でレベルアップする「キャラクター」、大幅なステータス変化をもたらす「武器」、防御力とスキルに関わる「オーブ」の3点。バトルによる成長、武器・オーブ強化、進化合成、限界突破などで能力向上を目指していく仕組みだ。
画面上では文字情報を含め、情報量が濃密に詰め込まれているのではじめのうちは面食らうかもしれないが、システム自体は単純なもの。なので、スマートフォンゲームに対するリテラシーがある程度あれば、プレイで悩むこともそうないだろう。
準備を整えて「物語を進める」を選ぶと、画面にメインストーリーとサイドストーリーが表示される。意味合いについては文字通りだが、サイドストーリーでは関連人物に応じた特化型オーブや限界突破用アイテムなどを入手できるので、パーティの成長に応じて消化していくのがよい。
ストーリーは基本的に、表題に沿った物語がいくつかのクエストで構成されている。(※「冷厳なる氷剣の儀式」というストーリークエストであれば、冷厳なる氷剣の儀式・1~5の全5クエストに分けられている)。
一方、本作ではスタミナ制(ゲーム内表記:AP)が採用されているが、一般的なスマートフォンゲームとは違い、クエスト入場時にAPを消費することはない。APが0でも入場できる。むしろ、APがマイナスにすらなる。とても新機軸。
APの謎は、クエストをはじめるとすぐに解ける。クエストはすごろくのようなマップになっており、各クエストごと設定されている「移動AP」に従ってレナスを進めていく。つまり、マップ上をどのように進んでいくかでAP消費量が変わるわけだ。
マップ内には敵や宝箱が点在しており、敵であれば戦闘、宝箱であればゲットと、その地点まで進むとイベントが発生する。また、クエスト中のHP回復手段「休息(AP消費あり)」のほか、なにもない地点で「探索(AP消費あり)」を行うことで宝箱、もしくは敵、さらには謎の通路の発見と、?マーク的なイベントを発生させることもできる。
クリアする方法は「一番奥にいるボスを倒す」ことのみなので、最短5APでクリアするも、じっくり探索して15APでクリアするもよし。レベルアップでAPが回復するため、ライフスタイルの中で帳尻をあわせていくのも合理的だ。APがマイナスになるデメリットも【休息・探索ができない】ことだけなので、寝る前に大放出するのが得策である。
お次はVPシリーズの顔ともいえる、バトルについて。本作はスマートフォン向けながら、戦闘に関しては従来のシリーズの魅力を存分に受け継いでいる。
バトル画面では、パーティキャラクターの顔アイコンをタッチすることで、そのキャラクターが攻撃を行う。攻撃モーションはキャラ毎に固有で、攻撃回数(武器依存)の分だけタッチするごとに攻撃してくれるシステム。
VPでは4人を同時に操作することができるので「キャラのモーションに合わせて連携」「浮かしてしまって弓矢が素通りっ!?」「吹っ飛んでしまって魔法が当たらない!?」などなど、自由度の高い操作性を楽しむことができる。
各キャラクターの攻撃モーション×各キャラクターの残り攻撃回数×敵陣の状況、このマネジメントが本シリーズのバトルシステムの醍醐味といえる。
バトルはターン制だが、バトル突入時の先行/後攻はランダム。各キャラクターには防御力が存在するものの、体力は全キャラクターを合わせた「総体力」制が採用されているのも見逃せない。
また、キャラクターアイコンの横に表示されているマーク(∧←これ)の数だけ、武器に備わる特殊なスキル技が発動できる。属性などを考慮して織り交ぜていくと効果的だ。
そして、戦闘中に攻撃を当てると画面左下の「ピュリファイゲージ」が上昇し、ゲージが満タンになるまでコンボを続けると、数字が「1」とストックされる。これはパーティ人数分までストックでき、戦闘中にゲージをタッチすると、必殺技の「ピュリファイアタック」が発動。
ストック分だけエインフェリアたちが一斉攻撃に加勢し、最後にレナスの神技「ニーベルン・ヴァレスティ」が敵に叩き込まれる。大ダメージで相手は死ぬ。従来の“各キャラクター固有の必殺技演出”でないことはちょっぴり寂しいが、演出自体がスッキリまとまっているので気軽に扱いやすい。
そんなこんなで最奥のボスを倒せればクエストクリア。リザルトではプレイヤーランクの経験値や、クエスト中に獲得した宝箱からアイテムを入手することができる。
なお、戦闘中はAUTOボタンを押すことで、バトル中に一切操作せずとも自動で戦ってくれる。複雑なモーションが絡むと攻撃をすかすこともあるが、コンボはそれなりに的確。手動ならではの細かな工夫はしてくれないものの、“片手間のながらプレイ”には恐ろしく最適だ。合間にメッセージ飛ばしのタッチ操作が求められるが、電車とかでやるには十分オススメ。
「これが俺の最強の攻略法だ」
ここでは、これからアナトミアをはじめる人に向けたオススメの攻略情報を紹介していく。
本作のメインストーリーは急激に難易度が上昇する場面があり、フローチャートでいうと、「ゲームスタート!」→「チュートリアルガチャで武器ゲット!強い!」→「序盤は敵も雑魚ばっか!余裕!」→「ん?敵が硬くなってきた」→「うわ……てき……つよすぎ……」、こんな感じになる。プレイ済みの人たちは、大体こんな感じ。
だが、最初の壁に合わせてすこしだけマネジメントしておくと、わりかしスムーズにプレイを進めることができる。その方法が「配布石で10連ガチャを引くこと」だ。まあ、ガチャ次第で運が絡むので、参考程度に覚えておくくらいがよいよい。
課金通貨「秘石」について説明しておくと、これはスタミナ回復、武器ガチャのほか、武器&オーブ所持数の増枠に使用可能。武器を揃えるときに頼りたくなるが、普通にプレイを進めるうえでの依存性は低く、いわゆる無課金プレイでも十分楽しめる程度のもの。
秘石を貯める方法は「実績クリアの報酬」「クエストクリアの報酬」が主となるが、なかでも気にしておくべきはクエストクリアの仕方にある。クエストでは、普通にクリアするとクリア報酬として秘石+50がもらえるが、“マップのマス目を全部回ってからクリアすると「踏破報酬:秘石+50」”がさらにもらえるのだ。
実績の報酬はゲームを進めているだけでもバシバシ溜まるので問題なし。なので、最初のうちはマップを踏破して踏破報酬を稼ぎ、秘石を溜めていくのがベスト。無駄にAPを消費したとしても、最初のうちはランクアップですぐに回復するし、武器によってはAP0で突入→全部瞬殺! という芸当も可能だ。
個人的な目安だと、ゲームをはじめてから約2~3時間で10連ガチャ分の秘石が溜まる。それも、ちょうど人数分の武器が確保しづらく、敵の強さを実感するあたりで引けるようになる。ちょくちょくガチャを回すのもそれはそれで問題なしだが、ゲームの見極めや、課金への踏ん切りがつかないようであれば、この話しを思い出すといいだろう。
そのほか、話し忘れていた「神界転送」についてだが、これはリアルの1時間をかけて、エインフェリア(最大3人)を神界に送るというコンテンツ。送られたエインフェリアたちは、同じくほかのプレイヤーが送ったエインフェリアたちと非同期型の自動戦闘を行い、その勝敗に応じてランキングポイントを持ち帰ってくる。
シリーズ経験者であれば「えっ、送っちゃうの……?」と戦々恐々だろうが、なんのことはない、1時間後にみんなちゃんと帰ってくる。ただし、転送中は「経験値5%UP」などのボーナスが得られるものの、転送中のキャラクターをパーティに入れ、クエストに出ることができない。そのため、ストーリーを進めたいときには注意しなければいけない。
しかし、なぜエインフェリア同士で戦っているのだろう? みんな救国のための仲間ではないの? 神界を救うために送られた彼らが、己がレナスの階級のために争い、勝ち負けでポイントを持って帰ってくる。営業成績を競いあっているかのようなその姿には、「ああ、神界もサラリーなんやな」という感想を禁じ得ない。ゲーム的にはPvP要素として楽しいけどね。
僕の将来の夢はファンネリアブレードです
このご時世、VPシリーズの特徴をそのまま述べると、いってみればある種の対戦格闘ゲームのようなバトルシステムであり、昨今のスマートフォンゲーム業界でもチラホラ見受けられるゲームコンセプトとも受け取られる。
だが、むしろ、知っている人であれば大抵は「これ、ヴァルキリープロファイル(ゼノギアス、クロノ・クロスも可)みたいだね」とコメントしてしまう。そんな弊害を引きずり続けてしまうほどに、いまだに衝撃であり、頂点であるのだ、「ヴァルキリープロファイル」という作品は。
「ヴァルキリーアナトミア ‐ジ・オリジン‐」ではスマートフォンゲームらしく、さまざまな拡張が予想される。長女・アーリィ、三女・シルメリアは登場するのか? 大人気で大不評な“あの男”は? 物語の行く末はどうなるのか? 細かな設定にも興味は尽きない。
戦闘がはじまると聞こえる耳馴染みのよい“あのテーマ”、開戦を告げる戦乙女の前口上、戦闘終了後の締め台詞とファンファーレ。アナトミアではシリーズ作品をフィーチャーした数々のBGMが採用(リメイク)されていることで、どれをとっても郷愁と興奮を突いてくる。まだまだ当分、筆者の呪いは解けそうにないみたい。