8月30日から9月1日の期間、パシフィコ横浜にて開催された「CEDEC 2017」。本稿では、9月1日に実施されたセッション「一周年で爆発した「逆転オセロニア」における、ゲーム分析の貢献事例」をレポートする。

「逆転オセロニア」は「オセロ」と「トレーディング・カード・ゲーム」のふたつの要素を持ったスマートフォン向けのゲームだ。「オセロ」がベースのためルールがわかりやすく、カードゲームの要素があることからゲーム後半に逆転が起こりやすいといった特徴を持っている。昨年2月にサービスイン。今年の8月には、1300万ダウンロードを突破した人気作である。

今回のセッションでは、まず始めに本作のリードアナリストを務めたディー・エヌ・エーの奥村純氏が登壇。「逆転オセロニア」における分析の貢献事例ついて講義が行われた。

ディー・エヌ・エーAIシステム部 AI研究開発グループエンジニアの奥村純氏。
ユーザーがそのゲームを支持しているかどうかは「継続率」に現れる

この「逆転オセロニア」だが、昨年の年末年始にTVCMを放送したということもあり、前後と比較して、DAU(1日あたりのアクティブユーザー数)が5倍ほどに拡大している。また、それだけではなく、その後も継続的に同じ水準を維持している。

このDAUは、集客の規模とそこで流入したユーザーがどの程度継続しているかのかけ算で表すことができる。基本的に楽しいゲームは翌日も遊びたくなり、日常的にも遊びたくなるものだ。そのため、ユーザーの支持は「継続率」に表れるのである。

チームとしても「ユーザーファースト」を前提に掲げており、継続を妨げるような苦痛は早く取り除きたいと考えている。継続率が低いと、どんどんユーザーが離脱してしまう。その結果、ゲームの規模が縮小していきアナリストが数字を改善したとしても、非常に限定的なものとなってしまうのだ。

「逆転オセロニア」では、先ほどの「年末年始イベント」前後と比較して、30日継続率が2倍になったという。多くのアプリに携わってきた奥村氏だが、このように継続率が2倍になるということはこれまでほとんどなかったそうだ。そういう意味でも、特殊な事例といえる。

当然のことながら、一方で集客も重要だ。しかしそれは、継続率が改善しているという状況があってこそのものだ。

ユーザー調査で課題の優先度を決定

それでは、「年末年始イベント」を境にDAUと継続率が大きく伸びた「逆転オセロニア」では、どのような施策を行ったのだろうか?

まずTVCMで新規のユーザーが多く増えるということから、UXの改善を行っている。初期に集めにくいゴールドの獲得契機を増やしたり、ネガティブに働きがちな初期の対戦で負けても勝ち星が減らないようにしている。

また、早くゲームの面白い部分に到着してもらうために、序盤から強いキャラクターが獲得できる契機を増やしたり、成長させやすい環境を実装している。そのほか、既存のユーザーに対しても累計ミッションの導入やイベントの大量実施などの施策を行っている。

ゲーム内の課題をシューティングする場合、様々な困難がある。ユーザーも様々な人がおり、その課題も多様だ。問題のひとつに、運営チームは日々同じゲームを遊んでいるため、どうしても高アクティブなユーザーの感覚になってしまいがちだ。そのため、初期で離脱するユーザーの課題を拾いきれないことがある。

「バトルのテンポが悪い」や「マッチングの時間が長い」など、人によって感じ方が異なるものについては、課題の優先度を付けるのが難しい。

さらに課題の数が多いと、仮説検証も多く行う必要があり、施策に落ちるまでのスピードが遅くなってしまうという問題もある。

それらに対して、同チームではユーザー調査とチームを巻き込んだ仮説検証と意思決定の効率化で課題を解決している。ユーザー調査は、実際に社内に呼んで直接ヒアリングを行ったものと、ゲーム内アンケートによって実施している。

それらを元に、ゲーム内の項目を指標化。さらにそれらを4つの項目に分解することで、課題の優先度を決定しているのだ。

グラフの右上の「重点維持エリア」は継続率への影響が高く相対的に満足してもらっている項目のため、重点的に維持していく。その下にある「改修優先エリア」は、継続率への影響が高いにもかかわらず、相対的に満足してもらっていない項目になる。そのため、早急に対処しなければならない課題となるのだ。

課題の数が多い場合、仮説検証と意思決定を効率化する必要がある。そのため「逆転オセロニア」のアナリストは、小さなアウトプットでも高頻度で出し続けるようにしている。
仮に途中の分析結果であっても、チームを巻き込んで議論することで、仮説や検証の精度が上げられるというメリットがあるのだ。また、情報を高頻度で更新することで、自分のゲームがどういう状態なのか共通認識が持てるようになる。

その結果、仮説検証が効率化され非常に多くの課題に対処でき、チーム内で共通認識を作りやすくなるので、施策に落とす段階ですぐにメンバーが動き出すことができるようになるのである。これらは、継続率改善のような多くの課題に対処するときに、非常に有効だ。

意思決定者とアナリストの席を近くにするのも、意思決定スピードを上げるには有効なのだそうだ。

次に集客を効率したいと思った場合、どんなユーザーがいてどんな起点で遊んでいるかを把握し、その上で施策を効率化させていくことが重要となる。「逆転オセロニア」の場合、YouTuberを起点にしたインストールが非常に多い。そのため、YouTuberの投稿者や内容、再生数ごとの集客効果を分析することで、目的に合ったYouTuberの設定や内容の提案に活用している。

アンケートを分析した結果、YouTuberを起点にした流入は若年層の集客効果が非常に高いことがわかった。とはいえ中高生の話を聞く機会はあまりない。そこで、実際に高校に出向いて出張インタビューを行ったり、高校生のグループインタビューをして、生の声を拾っている。

その結果、有名YouTuberの影響が最も大きく、「勝ったら○○、負けたら○○」といった罰ゲームのような企画が人気であることがわかったという。

4つの領域から各分野のスペシャリストがゲームを分析

続いてアナリストチームのマネジメントを担当している、ディー・エヌ・エーの藤江清隆氏が登壇。藤江氏からは、「事業に貢献するための分析アウトプット・考え方」について講演が行われた。

ディー・エヌ・エーJapanリージョンゲーム事業部 分析部マネージャーの藤江清隆氏。

まずはゲーム分析のためのアウトプットメニューだ。「逆転オセロニア」では、開発から運用まで、それぞれのフェーズにあわせた様々なアウトプットを出している。ゲームの分析に取り組む際、「行動ログ分析」「ユーザー調査」「マーケティング分析」「パラメータ・メタゲーム設計」の4領域にわけて取り組んでいる。

それぞれ各領域にスペシャリストがいるが、今後は各領域にまたがった分析ができるハイブリッド型のスペシャリスト増やしていきたいという。

「行動ログ分析」では、ゲーム内のユーザー行動ログを元に集計・分析を行っている。「ユーザー調査」では、ゲーム内以外にオンラインアンケートやインタビューなどを実施している。ここでは、行動ログでは把握できないユーザーの感情をきくことができる。

「マーケティング分析」では、ゲーム外におけるユーザー行動を分析している。例えばTVCMを打ったときにどのぐらいのユーザーが来たかなどを分析しているが、ログではそれらの情報を取ることはできない。そのため、ロジックや推定で数字を組み立てている。今後どれぐらいの集客効果が見込めるのか、あるいはTVCMなどの集客施策を実施したときに投資対効果が見合うのかといったシミュレーションを行っている。

「パラメータ設計」では、ユニットやスキル、スタミナや報酬などのパラメーターが、ゲームサイクルが適切に回るような設計と実装を行っている。通常他社では、これらはゲームの企画の担当者が行う場合が多い。なぜそれをアナリストが担当しているのかというと、行動分析とからめてパラメータを設計を実施することで、設計の精度が上がるという知見があるからだ。

分析が失敗パターンに陥らないためのキーワードは「コミット」

続いてゲーム分析が大事にしている考え方や、体制作りについて紹介が行われた。まず分析が陥りやすい失敗パターンとして、新しい手法やデータを元に、これまで分からなかったことがわかるようになると、それ自体が目的化してしまうことがある。

また、ゲームを作っている人が目指しているものと分析が目指すもので視点や意識がズレてしまうことがある。さらに、分析は意思決定する人をサポートするために仕事をすることが多いため、いわれたことしかやらなくなってしまう。

これらの結果、意思決定に役立たないアウトプットとなり、ゲームを改善するために本当に必要な分析は何かということを、自分で考えなくなってしまう。こうした失敗を防ぐためのキーワードが「コミット」だ。

この「コミット」とは、担当するゲームを「自分ごと」化して取り組み、ゲームを作るチームと一体になるということをさしている。「逆転オセロニア」の場合も、最初からうまく機能していたわけではなかった。

たとえば先ほど登壇した奥村氏は、ゲームのプレイ時間が足りずユーザーの肌感を理解しきれなうちにパラメータを設計。その結果、ユーザーが感じている感覚と大きくズレた設計となり、失敗してしまったという。

では、コミットを実現するとどんなメリットがあるのだろうか?

まずひとつは、アウトプットの質的向上だ。コミットすることで、作っている人たちと課題や目的を共有でき、無意味なアウトプットはなくすことができる。

もうひとつは、意思決定する人の信頼感の向上である。分析をする人のイメージに、「数字だけ見ている人でしょう?」や「評論家なんじゃないの?」と言われることがある。こういうイメージで捉えられてしまうと、分析のメンバーが信頼されなくなってしまう。その結果、意思決定する人は聞く気になりづらくなってしまうのだ。

そのため、良い分析アウトプットを出すのは大前提で、意思決定をする人がそのアウトプットを活用したいと思う状態を作るのが重要となってくる。これらのふたつが掛け合わされることで、初めて事業への貢献ができるというわけだ。

コミットを実現するために大事なことは、各アナリストがコミットの重要性を理解して実行しようという意識を持つことが重要だ。それを頭で理解しても、行動に結びつけるのは難しい。

そこで同社では、考え方のガイドラインや体制づくりでコミットの強化をサポートしている。

「コミット」の強化には体制作りが大事

このコミットを強化するための方法論としてあげられたのが、座組だ。アナリストはそれぞれのタイトルの専属にアサインされている。その結果、自分が担当するタイトルを最優先に考え、分析できるような座組になっている。自分の担当外のタスクをする場合でも、自分のタイトルを優先して時間が使えるようになっている。

また、タイトルを深く理解しているアナリストが分析に責任を持つようにしている。これはタスク管理やクオリティコントロールを任せることで、よりコミットを強めて責任を持ってもらうという意味合いがある。

アウトプットで意識することは、「示唆を出す・提案する」といった分析によくある働き方だけではなく、実現に関与するというところだ。具体的には企画書を書いたり、ときにはパラメータを実装することもある。そうしてダイレクトにもの作りに関わって、ユーザーの反応を自ら受けることでより「自分ごと」化することができるのだ。

担当するタイトルを、作っているメンバー以上によく遊んで理解することも重要だ。これにより、データで得られるものだけではなく、個人としてミクロなユーザー感覚を理解できるのが強みとなる。

アナリストチームの働き方としては、開発・運営チームと目指すものを一致させるといった精神論だけではなく、目標に紐付くそれぞれの評価も開発・運営チームと同じものを目指して行われる。チームの定例ミーティングや飲み会にいたるまで、開発・運営チームの一員として動くのが大事だ。そうすることで、チームの一員として自然と意識づけができるのである。

たとえば公式wikiに「星博士レオ」というキャラクターがいるが、実はこちらは先ほど登壇した奥村氏をイメージしたキャラクターだ。元々天文学を専攻していた奥村氏だが、そうした部分もキャラクターのイメージに反映されているという。

逆転オセロニア

ディー・エヌ・エー

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  • 配信日:2016年2月4日
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