ディー・エヌ・エーとスパイク・チュンソフトがタッグを組んでリリースした「世紀末デイズ」は、あの「不思議のダンジョン」スタッフが開発したローグライクRPG。注目作である本作のプレイレビューをお届けしたい。
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「世紀末デイズ」は、「不思議のダンジョン」という名作シリーズを生み出したスパイク・チュンソフトが、DeNAとタッグを組んで送り出したスマートフォン向けローグライクRPG。中毒的なおもしろさを持つ「不思議のダンジョン」のスタッフが手がけた新作ローグライクRPGということで、リリース後すぐにプレイしたという人も多いことだろう。しかも、本作はこれまで「不思議のダンジョン」シリーズではリリースされてこなかった現代モノ! この夏を代表するスマホゲームのひとつであることは間違いない。もちろん、筆者もプレイしてみた。その内容をお送りしたい!
ローグライクRPGの基本に忠実なシステム!これぞ「不思議のダンジョン」
そもそもローグライクRPGとは、ローグ“ライク”という言葉が示す通り、「ローグ」というゲームに似た要素を持つRPGのこと。具体的な要素としては、自動生成されたダンジョンを探索するタイプの見下ろし型RPGで、ターン制。探索シーンと戦闘シーンとの区別を持たず、移動もアイテム使用も攻撃も同じ画面内で処理する。なので、こちらが移動や攻撃などのアクションを行ったら、敵も移動や攻撃など何らかのアクションを行うわけだ。
また、ダンジョン内に装備を含めた様々なアイテムを獲得していく…というトレジャーハンティング要素を持つこともローグライクRPGの特徴。ダンジョン内で力尽きた場合、それまでに獲得したアイテムが失われるため、スリリングな冒険が楽しめる。
そもそもの「不思議のダンジョン」シリーズは、シリーズ内の描く作品ごとに味付けの違いこそあれ、こうしたローグライクRPGの基本に忠実だった。それでは、本作はどうだろうか?
もちろん、本作もローグライクRPGの基本に忠実。ダンジョンは自動生成だし、もちろん行動はターン制。こちらが移動やアイテム使用、攻撃などの1アクションを行えば、敵も1アクション行う。この、移動もアイテム使用も攻撃も1ターン消費するターン制というシステム、「不思議のダンジョン」シリーズの持つ魅力の中核といえる。このシステムのおかげで、「凡ミス」というスリルと表裏一体のプレイが楽しめるからだ。
「凡ミス」というのは読んで字のごとく、わかっていたのについついやっちゃう平凡なミスのこと。たとえば、「不思議のダンジョン」シリーズでは、上下左右以外にナナメ方向にも攻撃を行うことが可能だ。しかし、ついついナナメ方向の攻撃を忘れ、上に動いてから横に動いて攻撃…のように2ターン消費してしまうことがある。これが「凡ミス」のひとつ。1ターンで行動できることに2ターン使ってしまう。本当にとるにたらない平凡なミスなのだが、この1ターンが原因でダンジョン内で力尽きてしまうこともあるのだ!
ローグライクRPGのダンジョン内で力尽きるということ…それは、それまで集めたアイテムを失うということ…。とるにたらない「凡ミス」でそれまでのアイテムを失う…。この辛さ…悔しさ…。しかしそれはゲームのシステムが悪いんじゃない! “わかっていたのについついやっちゃった”自分が悪いのだ! 決して他人のせいにはできない…。だからこそローグライクRPGはスリリング! だからこそ、無事ダンジョンを攻略してアイテム入手を確定できた時の喜びがたまらないのだ!
…ついついアツくなってしまったが、「凡ミス」がそれだけの魅力を持っていることは「不思議のダンジョン」シリーズのファンならわかってくれるだろう。そして、本作はしっかりこの「凡ミス」の魅力を持っているように感じた。
本作でついやってしまいがちな凡ミスはパーティの配置だ。本作は自分のキャラ3体+サポートキャラ1体という4人パーティーでダンジョンに挑む。4体のキャラを個別にマニュアル操作することも可能だが、さすがに毎ターン4体マニュアル操作するのは手間だ。なので、基本は1体のみ操作し、残る3体はAIによる自動操作に任せることになる。
この時考えなきゃいけないのは敵と戦闘する時の配置。複数の味方が1体の敵を囲めるように戦えれば非常に有利! 逆に、複数の敵に対して味方が分散してしまうと不利だ。なので、なるべく有利な戦闘配置に持っていかなければならない。もちろん、被ダメージを抑えるため最小ターン数で!
筆者はまだパーティーのメンバー配置をミスって全滅…という憂き目にあったことはないが、ダメージを食らいすぎてかなり危ない状況に陥ったことは何度か発生した。なので、後半に進めば恐らく全滅するケースも出てくるだろう。「凡ミス」のスリルをちゃ~んと味わわせてくれるこのシステム設計は、しっかり「不思議のダンジョン」しているなと感じた。
賛否両論?スマホナイズされた快適操作
一方、スマホゲームとして操作が最適化されたため、軽減された「凡ミス」もある。たとえば「ナナメ攻撃」がそのひとつ。本作では移動は目的地タップ、攻撃はターゲットにしたい敵タップで行える。このため、敵を攻撃する際にその方向を意識する必要がないのだ。なので「ナナメに攻撃しておけば1ターン節約できたのに、失敗した~!」というシチュエーションはない。
ただ、アイテムを使って攻撃する場合は、アイテムの使用方向を向いている必要がある。アイテムを使用する場合は、画面右下のカメラボタンをタップして拡大した方がいいだろう。筆者は、つい確認せずアイテムを使用するという「凡ミス」をしでかしてしまい、本来アイテムを使いたい敵とは別の敵にアイテムを使ってしまった…。ちなみにキャラの向きは、キャラクターを長押しタッチ後スワイプすることで変更可能だ。
スマホナイズされた操作の内、プレイヤー中で賛否両論を読んでいるのがオートプレイだろう。画面右下に大きく描かれた「自動」ボタンをタッチすることでAIが自動的にキャラクターを動かしてくれる。基本的にはタッチしている間、操作を代行してくれる形だが、「自動」ボタンを長押しして上にフリックすることで、完全にお任せすることも可能だ。代行可能な操作はもちろん、戦闘のみではない。移動も代行してくれる。まあ、そもそもパーティー内の自分以外のキャラクターをAIが動かしているわけなので、完全自動プレイが可能なこと事態については驚くことでもない。
賛否両論となっているのは、「不思議のダンジョン」シリーズというゲームシステムにおける、AIによる自動プレイの是非だ。「不思議のダンジョン」シリーズは、「凡ミス」を犯さぬよう慎重にプレイしたり、どのアイテムを捨てどのアイテムを残すか考えたり…といったプレイヤーの判断がゲームの中核。なので、完全自動プレイは、ゲームの中核を否定するもの…という見方もできる。
とはいえ、本作にとって完全自動プレイは必ずしも使わなければならないというものじゃない。便利機能のひとつと考えられるだろう。特に、ダンジョンの数が既存の「不思議のダンジョン」シリーズよりも圧倒的に多い。スマホ向けの一般的なRPGが用意している「ステージ」と同じ形式でダンジョンを用意しているため、1ダンジョンは短く、その分数が多いという作りなのだ。
こうした作りなので、素材を求めて既にクリア済みのダンジョンで周回プレイをすることも多い。そんな時までマニュアル操作ではさすがに億劫だろう。なので、筆者としては、自動プレイは楽しさの幅を広げるためのオプションとして、十分許容できるものだと感じた。
詰将棋感覚で知恵が試される?ボス戦とモンスターハウス
完全自動プレイがあるとはいえ、完全自動プレイ前提のゆるゆるゲームバランスになっているわけじゃない。それを強く感じさせてくれるのが、「ボス戦」と「モンスターハウス」だ。
また、本作には自分の頭で考えなければならないシビアさを持ったシチュエーションが用意されている。様々な攻撃パターンで攻めてくる強大なボスと戦う「ボス戦」や、モンスターに囲まれてしまう「モンスターハウス」などだ。「モンスターハウス」はこれまでの「不思議のダンジョン」シリーズでも脅威だったが、本作でももちろん脅威。「絶対凡ミスできない…!」という緊張感を与えてくれる。本作がちゃんと、一手一手考える楽しさを目指して作ってくれていることの証左たりうるシチュエーションだと感じだ。
丁寧で引き付けられるストーリー!スマホ時代の「不思議のダンジョン」
本作のダンジョン以外の部分、ストーリーや育成要素、ガチャによるキャラクター集めといった部分については、スマホRPGの標準的な仕様に従っている。攻略するエリアを選び、エリアの中からダンジョンを選んでプレイ。ダンジョンをクリアすることでストーリーが進んでいく。ダンジョンでゲットした経験値を使ってキャラの育成ができ、素材アイテムを使えば装備の強化もできる。操作キャラクターはガチャによって増やしてくことが可能だ。
特筆すべきはストーリー。ある日突然放たれた兵器「サバキの槍」により、世界が崩壊。兵器に使われていた特殊な“イシ”により人々がモンスター化してしまう。一方で、人々の中には“イシ”の力を使いこなす者もいた…というのが背景ストーリー。もちろん、この“イシ”の力を使いこなせる者というのが主人公たちだ。
このストーリー、演出が丁寧に作られている上、情報の出し方、謎の回収タイミング、新たな伏線の提示などが上手い。「お、お、この先どうなるんだ?」と、海外ドラマのように先への興味をかき立ててくれる。個人的には「不思議のダンジョン」にストーリー性はもとめていないタイプだが、それでも引き込まれてしまった。
まだ序盤ではあるものの、筆者が 本作をプレイした感触はこれまでの「不思議のダンジョン」と比較して悪くない。スマホに合わせて変更された点はあるものの、いずれもスマホというデバイスで遊ぶために必要不可欠な変更だったと思えるもの。いわば、スマホに最適化した「不思議のダンジョン」、スマホ時代の「不思議のダンジョン」と言えるだろう。スマホRPGファンはプレイして損のない作品だ。