2018年9月20日から4日間にかけて、千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2018。その開催にあわせて、「ジャストコーズ4」でディレクターを務めるFrancesco Antolini氏によるセッション&メディア合同のインタビューが行われた。その模様をレポートしていく。
スクウェア・エニックスより2018年12月6日に発売予定の、PS4 / Xbox One/PC用ソフト「ジャストコーズ4」。
今回のセッションでは「ジャストコーズ4」の開発を担当するAvalanche StudiosのFrancesco Antolini氏によるゲーム内容の解説が行われていた。
あらゆる要素が「3」から大幅にパワーアップ
まずAntolini氏によると、本作の開発では前作のプレイヤーからのフィードバックが最大限に生かされており、前作以上に美麗でバリエーションに富んだロケーション、オブジェクトの破壊もパワーアップされ、やや薄かったストーリー性を強化するなど、不評だった部分を改善、好評だった部分を伸ばすという方向性で進められたという。
本作の舞台となるのは、「ソリス」と呼ばれる南米に存在する架空の国。ソリスの中には砂漠にジャングル、草原、森といった4つのバイオームが存在し、フィールドはただ見た目が異なるだけではなく、ゲームプレイにも大きく影響するという。
Antolini氏が最初に見せてくれたのは、敵軍から奪った戦闘機にのったリコが、ウイングスーツで砂漠へと降下するシーン。本作のフィールドは広いだけではなく、何かを発見する喜びを想定した構造となっているそうで、丘を超えると目の前に街が現れるという、視覚的にインパクトのある作りとなっている場面も確認できた。
フィールドの様々な場所にアイコンが表示されるが、これはその近辺で行えるアクティビティを示している。前作では、アクティビティとして行える行動のほとんどが破壊だったのに対し、本作では仲間やコレクタブルを集めたり、革命の手伝いを行ったりと、バリエーションに富んだ内容になった。
「ジャストコーズ」シリーズの特徴であり、プレイヤーからの人気も高い「グラップリングフック」もパワーアップ。シリーズを重ねるごとに様々な機能が追加されているグラップリングフックだが、オブジェクトとオブジェクトをつないで引っ張れるようになった「3」からさらに進化を遂げており、アタッチメントの装着が可能になった。
アタッチメントには、オブジェクトを飛ばして移動させる「ブースター」と、風船を付けて空中に飛ばせる「エアリフター」があり、この2つは組み合わせて使うことも可能。今回のセッションでは、滑車のような乗り物にエアリフターとブースターを装着して上に乗り、空中の移動手段として活用しているのが確認できた。
アタッチメントは細かいカスタマイズも可能で、ある程度の動きをプレイヤーが制御できる。リコへの追従命令を入力した風船を空中で破壊し、基地に空爆を行う……といった使い方までできてしまう。
本作では「3」に引き続いて、ビークルを飛行機で呼び出せるようになっているが、ビークルと前述のグラップリングフックを組み合わせて、新しい遊びを生み出すこともできる。例えばビークルの一つである戦車に、大量のエアリフターとブースターをつけて、空中を飛行させることすら可能。
空中にいる間も戦車の機能は失われないので、「上空から戦車で敵の基地に砲撃を行う」という、カオス極まりない光景も繰り広げられていた。こうしたグラップリングフックやオブジェクトを生かした様々なクリエイティブなアクションが、「ジャストコーズ4」の大きな魅力となっている。
物理演算の精密さを実感するのことができたのが、武器として新たに登場する「ウインドガン」。この「ウインドガン」には、強烈な風を発生させる効果があるのだが、空中でウインドガンを使うと反動で後ろに流されていく。ごく普通の自然な動きとして見えるが、これにはかなり複雑な処理が行われているのだという。
さらにAntolini氏が強くアピールしていたのが、新要素となる「天候」の存在だ。
Antolini氏は、本作における天候が「エクストリームな天候がゲームプレイに変化を起こす」「プレイヤーにとってのチャレンジとなる」「様々な実験を行い、どう攻略に結びつけるかを考えてもらう」という3つのデザイン論にのっとって作られたものであることを明かす。
今回新たに判明した天候の一つである雷は、避雷針を起動させて落雷を誘導したり、建物に隠れてやりすごすという対処法の他にも、落雷が飛んでいる敵のヘリに直撃したりと、プレイヤーにとってのメリットも発生するなど、様々な現象が起こるようになっているようだった。
セッション終了後には、Antolini氏に直接質問を行えるグループインタビューも行われたので、最後にその内容を掲載する。
Francesco Antolini氏グループインタビュー
――マルチプレイの実装について、以前は現時点での計画はないと仰っていましたが、変更はありませんか?
Francesco Antolini氏(以下、Antolini):先に言っておくと、私はマルチプレイが嫌いではありませんし、むしろ大好きです。ただ、今の段階ではゲームの基礎となる部分を仕上げることに注力しています。
というのも、これだけいろいろなことを物理演算で処理するゲームなので、基礎の部分を固めておかないと、もしマルチプレイを実装してもうまくいかないと考えているからです。マルチプレイ機能を含んだアップデートを今後リリースする可能性はありますが、まだまだ先のことになるかなと。
――おそらく、マルチプレイ機能を追加するMODを開発するプレイヤーも出てくるのではないかと思うのですが。
Antolini:もしそういうプレイヤーが出てきてくれたら、純粋に嬉しいと思います。ただ、PCにおいてはスペックの上限がゆるいので、そうしたMODを作ることも可能かと思いますが、コンソール版にはファーストパーティの協力が必要不可欠になるので難しいかと思います。ただ、僕個人としてはすごく欲しいと思っています(笑)。
――説明の中に、本作ではリコに協力する革命軍が存在しますが、それによってゲーム的にはどんなメリットがあるのでしょうか?
Antolini:これについては、まず私が本作で実現しようとしていることをお話しなければなりません。
普段私自身がゲームをプレイしていて、例えば橋の先に行きたい場合に「この先にはまだ行けないよ」ということを言われると、すごく冷めてしまうんですね。これは「向こう側に行けない」ということに腹を立てているのではなく、あたかもゲームデザイナーがそれを言っているように感じられるのが嫌なんです。だから本作においては、デザイナーではなく、ゲーム中の世界が直接プレイヤーに訴えかけるような構造を目指しました。
例えば、「ジャストコーズ3」では、マップを開くと自分の侵攻している場所と、これから攻撃しなければいけない場所が青と赤で表示されていましたが、これもデザイナーから見せられているような形になってしまっていたと考えています。
一方で本作においては、敵軍であるブラックハンドに対して、リコの軍隊が侵攻する前線が形成されます。この前線の位置というのは自分の軍隊がどれだけ侵攻しているか、つまりは自分がどれだけゲームを進めたかということを示しているんです。
とはいえ今までの通りのマップの機能も残しているので、従来通りマップで確認することもできるのですが、ゲームの世界を見て回るだけでも、進行度を実感できるような作りとなっています。
――友軍の仲間と一緒に基地に攻撃を仕掛けたりといったことはできるのでしょうか?
Antolini:直接具体的な指示を与えたりすることはできません。ただ、リコが侵攻することになる場所には、友軍が同時に攻撃を加えていることが多いです。その場合は友軍が所持しているビークルを利用できたり、戦闘を行っている味方を助けたりもできます。
――「ジャストコーズ」シリーズにおいて、南米が舞台となるのは意味のあることだと思うのですが。
Antolini:その通りです。これまで、プレイヤーから「ストーリーに深みがほしい」という意見が多く寄せられていたので、本作ではその要素を強化しています。ストーリーラインは従来のシリーズから大きくは変えていませんが、リコ自身の事情が物語へと関わってくるようになっており、今回のリコは自分の父に被せられた濡れ衣を晴らすために戦うことになります。これまでは、友人や人々といった「他人のために」戦ってきたリコが、本作では「自分のために」戦うんです。
――最後に、発売を楽しみに待つ日本ファンに向けたメッセージをお願いします。
Antolini:本作に似たゲームというのはすごく少ないと思います。というのも、1時間、2時間とプレイをしても、何も達成していないということがよく起こるのも「ジャストコーズ」なんです(笑)。ただそうして探求、実験を繰り返して、結果何も得られなかったとしても、同時にものすごい満足感を得ることができる、とてもユニークなゲームでもあります。まずはド派手な爆発や破壊を楽しんでいただきつつ、最終的には、物理演算によって成り立つ世界の中で、一体どんなことができるのかということを探求していただければと思います。
――ありがとうございました。