コーエーテクモゲームスより2019年3月20日に発売されたPS4/Nintendo Switch「ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~」のプレイインプレッションをお届けする。
「ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~」から始まった「アーランド」シリーズ。ガストブランドの代表作である「アトリエ」シリーズの中でも、岸田メル氏による魅力的なキャラクターデザイン、シリーズの原点に立ち返った調合を主軸においたゲームシステム、そして以降のシリーズにも受け継がれていく3Dモデルの採用により、多くのファンを獲得したシリーズだ。
「トトリのアトリエ~アーランドの錬金術士2~」、「メルルのアトリエ~アーランドの錬金術士3~」と続く3部作として一度はその物語に幕を下ろしたが、その後もさまざまな展開を見せており、最近では2018年9月にPS4/Nintendo Switch向けに発売された「アトリエ ~アーランドの錬金術士1・2・3~ DX」が記憶に新しいところだろう。
そして今作「ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~」は、「アーランド」シリーズ3部作のその先を描く、シリーズファンにとって待望となる新作タイトルだ。主人公は、錬金術士の少女・ルルア。彼女を取り巻く新たな物語がどんなものになるのかが気になるところ。いよいよ発売を迎えるタイミングに合わせて、ゲームの最序盤をプレイ。ストーリーの流れとともに、その魅力をお届けしよう。
1冊の“古文書”から始まる、ルルアの物語
今作の舞台はアーランド共和国の辺境にある町・アーキュリス。そこに暮らすルルアは、偉大な錬金術士として知られている母親のロロナのような錬金術士になることを目指し、ピアニャという錬金術士の弟子として錬金術に邁進する日々を過ごしている。ただ、物語の開始時点ではルルアの腕前はまだまだ半人前だ。
そんなある日、ひょんなことからルルアは1冊の古文書を拾うことになるが、その内容はルルアにしか認識できず、かつ難解な内容となっている。その後、アーキュリスにやってきたオーレルからの依頼をきっかけとして、古文書にはとある変化が…。無事に依頼の達成に必要な道具の調合を果たしたルルアは、その古文書「アルケミリドル」の内容を解読しながら、立派な錬金術士になることを目指すのだった。
ゲームは、このアルケミリドルを解読していくことで進行していき、メインストーリーを進めるだけでなく、新しいアイテムのレシピやスキルの習得、新たな採取地の発見などにも及ぶ。ページ内に赤字で書かれた謎のキーワードを解明するために必要な行動は、採取やバトルなどさまざま。とはいえ、行動のヒントはアルケミリドルに書かれているため、実際に進める際には悩まずに行動できることだろう。
ルルアは活発な主人公で、テンポよくストーリーが進行していくのが印象的。また、章の合間などに挟み込まれるルルアの語りも、物語への没入感を深めてくれる。「アーランド」シリーズという括りの中でも、明確にルルアの物語として表現しようとする意図が見えてくる。
それは大事な幼なじみであるエーファをはじめ、育児院の院長であるベノン、酒場で働くお姉さん的な存在のリーザ、幼くも宝石店の店主を務めるレフレといった、アーキュリスに暮らす人々とルルアの交流からも感じ取ることができる。
その一方で、主人公の師匠であるピアニャの存在や、アーランドやアールズといった過去作で舞台になった場所など、「アーランド」シリーズのファンに向けた要素も随所に盛り込まれている。シリーズを知っていても知らなくても楽しめる、分かりやすくもしっかりと流れのあるストーリーが楽しめることだろう。
シンプルに、かつ遊びごたえのある調合・バトルシステム
「アーランド」シリーズという括りの中でも、本作が新たな流れを作ろうとしていることはゲームシステムの数々からも感じることができる。細かく挙げればキリがないが、ここでは主となる調合・バトルシステムを紹介しておこう。
まず調合システムについては、品質や特性を意識して材料を吟味していく、従来の「アーランド」シリーズを踏襲したものではあるが、材料ごとに「錬金成分」という要素が追加されている。これがアイテムの威力や効果に影響を及ぼすことになる。
錬金成分は4種用意されているが、アイテムを調合する際には2つの成分が相殺し合う関係になっている。例えば火と氷が相殺関係にあった場合、先に氷の成分を足した場合の効果が発現していたとしても、その後、火の成分を含む材料を加えると、相殺されてその効果が消えてしまうということも。このような点からも材料選びは重要になってくるというわけだ。
また、まとめて調合できる仕組みも用意されている。こちらで作ったアイテムに特性を付与することはできないものの、数を必要とするアイテムの調合には役立つことだろう。こういった細かなフォローは、今作における魅力の一つとなっている。
ちなみに、ゲームを進めると錬金成分などを大きく変化させる「ブーストアイテム」が使えたり、材料の隠された効果を引き出す新たな要素「覚醒効果」が発現したりすることも。今作の調合システムはとてもシンプルでわかりやすいが、その上で段階的なやり込みにつながる要素も盛り込まれている。ストーリー進行に沿うかたちでまずは気軽に楽しみつつ、理解を深めていくといいだろう。
バトルは、前作「リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~」で採用されたターン制のバトルを踏襲しつつも、さらにゲームのテンポ感を損なわないシステムに昇華されている。
今作におけるバトルメンバーは前衛3人と後衛2人の最大5人。戦闘に直接参加するのは前衛のみとなるが、後衛は前衛の行動に伴って、アシストスキルで応戦してくれる。「リディー&スールのアトリエ」では前衛1人につき後衛1人だったため連携のタイミングは自ずと限られていたが、今作では後衛のキャラは前衛の2人に挟まれるかたちで配置されていて、より連携を狙いやすくなった。
キャラクターごとの特徴に合わせた多様なスキルに加え、調合したアイテムを用いた立ち回りも「アトリエ」シリーズならではの魅力の一つだが、さらに今作では「インタラプト」と呼ばれる錬金術士専用のコマンドが用意されている。これはあらかじめ装備しておいたアイテムを、右下のゲージが溜まったタイミングであれば、自分のターンに関係なくどのタイミングでも使えるというものだ。
通常のアイテム使用時とは異なり、インタラプトは使用してもアイテムがなくなることはないため、装備しておけばずっと使える優れもの。ただし、1人の錬金術士につき装備できるアイテムは1個のみとなっているため、どのアイテムを装備しておくかもバトルを大きく左右する要素になってきそう。
実際にインタラプトを用いることでテンポが着実にスピードアップし、同時にアイテムとスキルの活用が上手く分断されたことで、よりバトルの仕組みが分かりやすくなっている。ここにキャラクターが成長することで加わる必殺技や、前衛の組み合わせで特殊な効果が発動する「プライマルアーツ」の要素がどう絡んでくるのか、プレイがより楽しみになった。
作中の描画はシリーズ最高峰、システムのフォローも含めて集大成に
最後に、今作でのグラフィックについて触れておこう。正直なところ、筆者は実際にプレイして少しばかり感動を覚えた。そのぐらい、今作のグラフィックは「アトリエ」シリーズ随一とも言える表現の密度を伴っているのだ。
まずキャラクターの3Dモデルだが、今作では岸田メル氏の描くビジュアルのテイストがふんだんに盛り込まれている。それは瞳の透明感であったり、肌や眉などの顔を構成する要素、細かく描き込まれた髪の毛の質感、そして衣装の細部にまでこだわった意匠の数々は、眺めているだけでも楽しくなるほど。特に背景から浮かび上がるような透明感のあるキャラクターモデルの描写は、同じく岸田メル氏がキャラクターデザインを担当した「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」を思い出させるものだった。
また、「アトリエ」シリーズならではのどこか懐かしさを感じさせる風景についても今作では細かなこだわりが見て取れる。草木の一つ一つの揺れ動き、天候変化の描写、そして影の入り方など、前作「リディー&スールのアトリエ」以上の質感を伴うものとなっていた。
そうした作り込みの細やかさはシステムにも表れている。今回の記事では探索については触れていないものの、こちらも前作の「リディー&スールのアトリエ」を踏襲しつつも、例えばワールドマップが広がっていく方法は「トトリのアトリエ」に近いものになっていたりと、プレイする上でより遊びやすい仕組みを随所に採用。同時に、移動時のショートカットを用意していたり、時間制限は設けていないなどのストレスを感じさせない配慮が感じられる。
これら全ての要素に一通り触れてみて筆者が感じたのは、本作が「ロロナのアトリエ」以降に展開してきたシリーズタイトルの蓄積を得て作られた、ある意味で集大成ともいえるタイトルになっているということだ。そうした作り込みの中で、ルルアの冒険に待ち受けるものは一体何なのか、プレイヤーの1人として楽しみにしたいと思う。
ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~ スペシャルコレクションボックス
コーエーテクモゲームス- 発売日:2019年3月20日
- 価格:19,800円(税抜)
- 12歳以上対象
- ガストショップ、GAMECITY、 Amazon.co.jp、ソフマップ限定販売
ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~ スペシャルコレクションボックス
コーエーテクモゲームス- 発売日:2019年3月20日
- 価格:19,800円(税抜)
- 12歳以上対象
- ガストショップ、GAMECITY、 Amazon.co.jp、ソフマップ限定販売