ミストウォーカーとアーゼストの共同開発によるRTS「テラウォーズ」について紹介。「テラバトル」の世界観、クレイモデル、ジオラママップ…と多くの話題が詰まった本作の仕上がりはどうだったか。
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7月1日にリリースされたスマートフォンアプリ「テラウォーズ」は、ミストウォーカーとアーゼストが共同開発した新作リアルタイムストラテジー(RTS)。「テラ」と名のつくところからも分かるとおり、「テラバトル」シリーズの世界観を引き継いだ作品だ。「テラバトル」と言えばユニット動かして敵ユニットを挟むように戦うバトルシステムが特徴的なRPGだったが、本作は純粋なRTSとして作られている。
さらには、粘土を用いて作るクレイモデルの手法で作られたキャラクターやジオラマを使ったマップなど、他では見られないユニークな要素が盛りだくさん。その上、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信氏が率いるミストウォーカー作品だけあって、リリース当初から「ファイナルファンタジーXV」とのコラボレーションを実現。多くの話題が詰まった本作がどんな作品に仕上がっているのか、本記事で詳しくお伝えしたい。
本作ならではの戦略性!動くタワーを巡る駆け引き
本作のルールは、敵拠点=タワーを破壊すればクリアという伝統的なRTSのルールに、タワーがスキルを使用できるという要素を加えたものとなっている。3つあるタワーにはそれぞれ別のスキルが割り当てられており、左側のタワーは敵の誘導、右側のタワーは味方HPの回復、中央にあるタワーは移動といったアクションが可能だ。
タワーのスキルが戦略にどう影響するかを紹介する前に、本作の基本的なルールを紹介しておこう。まず、ゲームの目的は先に触れた通り、敵タワーの破壊。敵も自分もタワーを破壊することで星をゲットし、最終的な星の所持数で勝敗が決まる。ただし、中央タワーを破壊したら、そこでゲーム終了。破壊した側が勝利する。
敵タワー破壊を担うのは、もちろんユニット達だ。ユニットは、時間経過とともに貯まっていくコストを消費することで召喚。召喚したユニットは、それぞれオートで行動してくれる。ユニットには「飛行」「遠距離」「近接」…といった形で属性が設定されており、属性毎に相性が存在。「飛行」は「近接」に強く、「近接」は「遠距離」に強く、「遠距離」は「近接」に強い…といった形だ。
このため、ユニットを召喚する際は、敵ユニットと相性のよいものを召喚するのが基本。また、自分のユニットの弱点を補強するように複数のユニットを組み合わせて召喚することもポイント。たとえば、「飛行」ユニットを召喚する際には「近接」ユニットを先に召喚しておき、敵の「遠距離」ユニットを牽制する…といった具合だ。
タワーだけでなくユニットもスキルを持っており、ユニットの頭上に表示された属性マークタップで繰り出すことが可能だ。もちろん、ユニット毎にスキルは異なっている。たとえば近接ユニット「サンダークロウ」の持つ「ジャピングサンダー」は「敵に向かってジャンプして周囲攻撃をする」というもの。遠距離ユニット「ユッカ」の持つ「貫通アロー」は「向いている方向に貫通する弓攻撃を放つ」というものだ。
スキル攻撃を上手に活用すれば、敵の裏をかき、ピンチをチャンス変えることができる。たとえば、「敵の遠距離ユニットに対してこちらが近接のサンダークロウで迎撃した」という局面で、さらに敵が飛行ユニットを出してきたとしよう。本来なら飛行ユニットと遠距離攻撃によって一方的にやられてしまうところだ。しかしここで「ジャンピングサイダー」を出したらどうだろう?遠距離ユニットとの距離を一気に縮めることができるため、敵遠距離ユニットを道連れにできる可能性が生まれる。
ここまでの基本ルールが持つ戦略性をさらに深めているのが、タワーのスキルだ。特に中央タワーの持つ「移動」は戦略に大きな影響を与える。
というのも、ユニットを召喚できる場所が、中央タワーを中心とした一定範囲内となっているからだ。このため、中央タワーを前線へ押し上げることで、ユニットを前線に直接召喚できるようになる。もちろん、そんなことをしたら中央タワーは敵ユニットの攻撃にさらされるので、リスクは高い。ハイリスク・ハイリターンだ。つまり、中央タワーの配置によって戦略のリスクとリターンを調整できるというわけ。
ここに絡んでくるのが、左タワーと右タワーのスキル。左タワーのスキルは敵の攻撃を自分に引きつけるというもの。なので、中央タワーを前線に押し上げると同時に左タワーのスキルを使用することで、中央タワーの被ダメージをなくすことが可能だ。これによって、ローリスクで前線へユニットを送り込むことができる。さらに、右タワーの回復を併用すれば、前線のユニットの活動時間を増やし、さらなる戦力アップが可能。
ユニットの召喚にユニットのスキル使用、さらに中央タワーの移動と左右のタワーのスキル使用…と、やるべきこと・管理すべきものが多いため、本作のバトルはとても忙しい印象だ。しかし、自由度が高く奥深い戦略がとれるので、純粋にRTSとして楽しい。
同じキャラが複数召喚されるのは何故?に答えたストーリー
本作のバトルは、基本的には対人戦がメイン。アリーナで他プレイヤーと対戦を行い、勝利することでポイントを獲得してランクを上げていくというのが大きな目的となっている。ただ、対戦がすべてじゃない。一人でプレイするためのストーリーも用意されている。そして、このストーリーが非常にユニークだ。
ところで、RTSでは戦況に応じて同じユニットを複数体召喚することがあるけど、どうして同じユニットを召喚することができるのだろうか? 自分以外に自分が何人もいて、協力して戦っているという状況。現実的に考えれば、ちょっとおかしい。
もちろん、作品によってはまったくおかしくない。たとえばミリタリーのものであれば、同じタイプの兵士が複数人召喚されたとしても、それはタイプが一緒なだけで、個体として別ということになる。しかし本作の場合、「テラバトル」のキャラをユニットとして召喚するので、同じ個体が複数人いることになってしまう。
この問題に真正面から向かい合い、ストーリーとして回答を出しているのが本作のストーリーだ。「テラバトル」の1000年後の世界を舞台に、何故「テラバトル」のキャラ達が存在するのか?さらに、敵味方に分かれて戦うのか?あまつさえ、敵味方に同じキャラが登場するのは何なのか?本作のストーリー第1章「月光の虚像」では、これらの問いにたいしてストーリー的にきちんと答えていく。しかも、ストーリーのテイストは非常にシリアス。クレイモデルのあたたかみのあるビジュアルとシリアスのストーリーとのギャップが、心を揺さぶってくれる。
協力してともにキャラを獲得する喜び!チャンスバトル
ストーリー以外にも、「対人戦」以外のモードが存在している。他プレイヤーと協力でAIに挑む「チャンスバトル」だ。「アリーナバトル」ボタンが光っている時に確率で発生するというモードで、それぞれにユニットを召喚し、強大な敵ユニットを倒すという内容。プレイ感はMMORPGでの「レイドバトル」に近い。
「チャンスバトル」をプレイしていると、自然と相棒プレイヤーをフォローするように召喚したり、相棒プレイヤーが自分のミスを補うような召喚をしたりといった状況が発生し、「協力している!」という感覚が味わえる。それだけでも十分楽しいが、クリアすることでキャラまで獲得可能。楽しさいっぱいで、まさに「チャンス」なバトルだ。
バトル外にもじっくり戦略を練る楽しさが存在!
最後に、本作の育成について触れておこう。本作の育成要素は、キャラのレベルを上げれば全体的に性能がアップするという形ではなく、かなり細やかなものになっている。育成要素には「クラス」「レベル」「スキル」の3つがあり、「クラス」を上げることキャラの基本性能が、「レベル」を上げることでキャラのHPと攻撃力が、「スキル」を上げることでスキル性能がそれぞれアップするという仕組み。
各要素を育成するための素材アイテムがキャラの属性ごとに共通しているので、全キャラを満遍なく育成していくということは難しい。このため、バトル中にどのキャラをどういう風に使いたいかを考えながら育成する必要がある。バトルをしていない時でも、じっくり戦略を楽しめるというわけだ。
いろいろとユニークな試みが盛り込まれているように見える本作。しかし、プレイしてみると、いずれもRTSの楽しさを拡張させることに正面から取り組んだ結果だと感じた。「テラバトル」シリーズのファンのみならず、RTSファンもプレイする価値のある作品だ。