「深世海 Into the Depths」をレビュー。「Apple Arcade」向けにカプコン完全新作として作られた本作の魅力を、「Apple Arcade」の特徴とともに紹介する。

目次
  1. スマホゲームに新たな風を呼び込むか?「Apple Arcade」
  2. 氷に覆われていく海を舞台に探索の旅を描く
  3. 深海探索に強く没入!「深世海 Into the Depths」のゲームシステム
  4. これまでの日常とは違う「非日常」を体験したい人はプレイすべし

「深世海 Into the Depths」は、カプコンがリリースしたiOS向けアクションゲーム。深海を舞台にした、探索メインのメトロヴァニア系アクションゲームだ。本作は「Apple Arcade」作品としてリリースされており、その内容もまさに「Apple Arcade」というプラットフォームの特徴を端的に示したものになっている。そこでこの記事では、「Apple Arcade」というプラットフォームの特徴とともに、本作「深世海 Into the Depths」の魅力を紹介したい。

スマホゲームに新たな風を呼び込むか?「Apple Arcade」

まずは本作が配信されているプラットフォーム「Apple Arcade」の話から始めよう。「Apple Arcade」というのは、Appleが9月19日からスタートしたゲーム配信サービスで、1か月600円(初月無料)で対象のゲームが遊び放題というサービスだ。iOS13以上をインストールした端末で楽しむことができる。

1月600円で遊び放題というと、一見非常にお得。とはいえ、スマホゲームと言えば今や無料が当たり前。なので、わざわざ登録する必要がないと感じる人もいるだろう。だが、一般的な無料スマホゲームと「Apple Arcade」作品はゲーム性が2つの点で内容が異なっている。それは、「完結すること」と「没入感」だ。

「完結すること」というのは、その名の通りゲームがエンディングを迎え、完結すること。基本料無料のスマホゲームは、アイテム課金や広告を収益源とするため、できるだけ長くプレイしてもらうため、ゲームに明確なエンディングを用意しないことが多い。中にはボスを用意してストーリー的な区切りをつける作品もあるのだが、それは区切りであって「完結」ではない。運営が続く限り、ドラマやアニメの「シーズン」のように、ストーリーを継続するのが一般的だ。

一方、「没入感」というのは、他の物事を忘れ、ゲームの世界に夢中になってしまうような感覚のこと。いつでもどこでもプレイ可能なスマホゲームは、「テレビを見ながらゲームをプレイ」といった形で、他の「ついで」にプレイされることが少なくない。このため、プレイヤーが積極的に操作を行わずともプレイできるような設計になっている。たとえばRPGの自動クエスト実行機能のような形で。

また、「通勤・通学のバス/電車の中でプレイ」といったスタイルも多いので、ストーリーやステージが小さなまとまりに区切られることが標準的。1分~3分程度で1ストーリーや1ステージを終えられるなら、電車の中で次の駅に着くまでの間プレイ…といったスタイルでも十分満足感が得られるというわけだ。

こうしたスマホゲームのスタイルは、現在スマホでゲームをする人の生活スタイルに最適化しているため、もちろんこれはこれで十分おもしろい作品が生まれている。しかし、ゲームの楽しさとはそれだけではないはずだ。一冊の小説や一本の映画を鑑賞するように、「完結したゲームストーリー」を通して感動を得たり、ゲーム以外の物事を忘れ、気づいたら数時間経っていた…というのもまた、ゲームの楽しさ。「Apple Arcade」が提供するゲームというのは、こうした楽しさを持つゲームなのだ。

また、従来のスマホゲームとの比較ではないが、「新しさ」も「Apple Arcade」の特徴だろう。「Apple Arcade」の作品は、家庭用ゲームのAAAタイトルからの移植などではなく、「Apple Arcade」用の完全オリジナルゲームか、インディーズゲームからの移植となっている。

このため、家庭用ゲームのAAAタイトルと比べれば作品のド派手さ、豪華さに欠けるものの、その反面、パッケージゲームでは見かけないような尖った作品が多い。初代「プレイステーション」の時期…良作から残念な作品まで含めて、いろいろ実験的なタイトルがリリースされていたあの時期…を体験した人なら、ワクワクした気持ちを感じるのではないだろうか。

氷に覆われていく海を舞台に探索の旅を描く

さて。そんな「Apple Arcade」で配信された「深世海 Into the Depths」。ここまでに書いた「Apple Arcade」のプラットフォームとしての特徴を体現したような作品に仕上がっている。

本作の主人公は、潜海者。海中で暮らす人物だ。本作の世界では地表が氷に覆われてしまったため、人々は海中で暮らしている。氷は今も範囲を拡大。やがて潜海者の住む家も氷に覆われてしまい、探索の旅へと出ざるを得なくなってしまう…というのがオープニング。

「何が起きているのか?」「氷にどうやって対処すればいいのか?」という疑問を皮切りに、探索の旅を続ける内に海中にある遺物などから、「そもそもこの海に何が存在しているのか」といった疑問が湧き上がってくる。この疑問を解消するためにも、先が見たい。結末を知りたい。…まさに、「完結型」ストーリーの魅力を持った作品といえる。

ただ本作、言葉によって状況が説明されることはない。もちろん、操作の説明については言葉で説明されるのだが、ストーリー描写については、主人公の演技や背景の動きといったものによってのみ。いわゆるナラティブ的な手法がとられている。なので、ストーリーを理解するには、ただ漫然とプレイするのではなく、描写にどんな意味があるのか、考えながらプレイすることが重要だ。このあたりの感覚は「LINBO」や「INSIDE」に近い。

深海探索に強く没入!「深世海 Into the Depths」のゲームシステム

ゲームシステム面で見ると、本作はサイドビューのメトロヴァニア系アクション。どっぷりと没入してプレイすることを想定しているのだろう、本作の操作はかなり複雑だ。

画面左側の仮想パッドで移動。画面右側の仮想パッドでジャンプというのが基本。浮遊時に左側パッド長押しでブースト移動ができ、ジャンプとブーストを組み合わせて障害物を越えていく。ブーストを使えば障害物を越えるどころか、浮力を活かして海中を自由に動き回ることだって可能だ。ただし、ブーストは酸素を消費して行う。海中が舞台の本作において酸素は生命ゲージに等しいため、何も考えずにブーストを使いまくるのはNG。また、高い所から落下した場合、酸素ボンベが壊れてしまう。なので、障害物を超える際には慎重さが重要だ。

画面右側のパッドはジャンプ以外に、攻撃アクションと探索アクションも担っている。右側パッドをタッチすることで近距離攻撃。押しっぱなしにすると遠距離武器を構え、指を離すことで弾を発射できる。また、右パッドを下方向にフリックすると、周囲に存在するオブジェクトを探索可能。探索によって発見した採掘ポイントは、ライトで照らすことで鉱石を採掘できるようになる。

このほかに、アイテムバッグをタップすることで使用アイテムを表示したり、操作可能なオブジェクトをタップすることでそのオブジェクトを操作したり…といったアクションが加わってくる。操作が多岐に渡るため、説明を見ず直観的にプレイするのは難しい。ただ、操作性そのものは良好なので、一度操作を覚えてしまえば快適に海底探索が行える。

ただ、より「没入」したいなら、物理的なゲームパッドの仕様がオススメだ。「Apple Arcade」作品の多くは物理的なゲームパッドに対応しており、本作ももちろん対応している。さらに、iOS13以降、MFI認証を受けたゲームパッドに加えて、PS4のゲームパッドや、XBoxのゲームパッドが使えるようになった。先に書いた通り、本作のタッチ操作は非常に快適なのだが、物理的なゲームパッドと比べれば、やはりゲームパッドに軍配が上がる。さらに、ゲームパッドを使えば画面を指で覆わずに済む。画面が広く見えた方が、当然、没入感は高い。

ジャンプやブースト、攻撃や探索といったアクションを使って、プレイヤーは極めて主体的に海中探索を行う。ジャンプやブーストを駆使してマップの未知の部分へ進行。新たな設備を発見したり、アイテムを発見する。アイテムの中には、クラフト要素に関わるものも存在。先に触れた鉱石もそのひとつ。鉱石を使ってクラフトすることで、潜水服の性能を上げることができる。潜水服の性能のひとつに潜水性能があり、潜水性能を上げることでより深い海へ潜ることが可能だ。探索と発見、行動範囲を拡大していくという、メトロヴァニアの醍醐味をたっぷり味わえる。

なお、本作をプレイする際は是非ともヘッドフォンを着用しよう。本作は効果音のクオリティが高い。海中での呼吸音、氷のきしむ音といった音がヘッドフォンによって間近で聞こえると、本当に海の中にいるかのよう。さらにそこへ、美しい旋律をメインにしたBGMが重なってくる様子には感動を覚えた。

これまでの日常とは違う「非日常」を体験したい人はプレイすべし

最後に本作の持つ「新しさ」について触れたい。改めていうまでもないが、本作はカプコンによる完全新作タイトルだ。「バイオハザード」「ドラゴンズドグマ」「ストリートファイター」「デビル・メイ・クライ」…カプコンの人気タイトルは多いが、本作はそのいずれとも関係がない。本当の意味で完全新規タイトル。そういう意味でまず、新しい。

また、手触りの面でも新しさを持っている。本作を構成する「メトロヴァニア系の探索」「酸素というリソースを管理しながらのアクション」「海中ゆえのゆったりとしたモーション」といったそれぞれの要素は、決して画期的なものではない。しかしそれが組み合わさることで、本作ならではの新しい魅力を作り出している。

新しいからこそ、キャラクターや世界観などになじみがなく手を出しづらいと感じるかもしれない。しかし、本作のゲームとしての出来はよく、有料ゲームとして600円なら安いと感じるレベルだ。しかも、600円という金額は「Apple Arcade」の価格であって、本作はそのうちの一本に過ぎない。

さらにいえば、「Apple Arcade」は月額制ではあるものの、初月無料。なので、臆さず手を出してみて欲しい。従来の一般的な無料スマホゲームを中心にプレイしてきた人なら、これまでにない楽しさが味わえるだろう。一方、今のスマホゲームに飽きを感じ始めた人、もしくは、初代「プレイステーション」のころの楽しさを知る人なら即加入・即プレイをオススメする。休日の朝からコントローラー&ヘッドフォンを用意して「非日常」に浸かる楽しさを味わって欲しい。

公式サイト
https://www.shinsekai-itd.com/ja/

ストアリンク
https://apps.apple.com/jp/app/shinsekai-into-the-depths/id1465048285

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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