4399インターネットが配信を開始した「魔剣伝説」をレビュー。気軽にプレイできるMMORPGを目指したという本作は、実際MMORPGとしては、カジュアルRPG方向へとかなり振り切った作りの作品だ。
「魔剣伝説」は、4399インターネットが配信開始したiOS/Android向けMMORPG。韓国、東南アジアのセールスランキングでTOP10入り。日本でも事前登録者数が20万突破するなど、注目を集めていた作品だ。気軽にプレイできるMMORPGを目指したという本作。実際MMORPGとしては、カジュアルRPG方向へとかなり振り切った作りになっており、かなりライトにプレイ可能だ。その内容について本記事で詳しくお伝えしたい。
放置系カジュアルRPGの手触りを持ったMMORPG
本作は画面の向きこそポートレイト(縦持ち)だが、ルックスはMMORPGに相応しい美麗3DCG。この見た目を裏切らず、ゲームシステム的にも、MMORPGとしてとてもスタンダードなものになっている。
メインは、「規定数のモンスターを倒す」といったクエストを受注して達成するというもの。この繰り返しでレベルを上げ、装備を獲得し、キャラを育成していく。
ある程度クエストをこなすと、巨大なボスも出現。また、レベルが上がることでペットや騎乗、ダンジョンといったお馴染みのコンテンツが解放されていく。MMORPGが持つ標準的なコンテンツは、本作もほとんど備えているといっていいだろう。
では本作の特徴は何かというと、「圧倒的な手軽さ」だ。たとえば、クエストについては、デフォルトでオート進行。キャラは自動的にクエストの目的地へと向かい、自動的に敵と戦ってくれる。
クエストのオート進行そのものは、スマホ向けのMMORPGの多くが備えている機能だ。スマホゲームは数分程度のスキマ時間に遊ばれることが多い。このため、短時間でもプレイできるよう、オート進行機能が用意されている。しかし、そうしたゲームであってもデフォルトは手動に設定されていることが多く、本作のようにデフォルトがオートに設定されているということは稀だ。
さらに、本作の特徴的なところは、育成までオートが用意されているところ。装備の強化やペット、騎乗の育成といったところまでオートボタンが用意されており、極力手間をかけずにプレイすることができる。
こうした徹底的な自動化によって、本作のプレイ感は非常にカジュアル。MMORPGというより、「タップ タイタン 2 (Tap Titans 2)」のような放置系RPGを遊んでいるかのようなカジュアルさだ。あまりにもカジュアルなので、MMORPGのプレイ感を期待してプレイすると、ビックリするだろう。
だが、こうしたカジュアルに振り切った仕様は、「気軽にプレイできる」という本作のコンセプトを考えると合点がいく。スマホで「気軽にプレイできる」ことを目指せば必然的に放置系RPGへと行きつくだろう。
放置系RPGの多くはポートレイト(縦持ち)スタイルで、スマホを持ち替えることなく気軽に片手プレイできる。また、ゲーム序盤こそタップを繰り返す必要があるが、ゲームが進んで仲間や装備を獲得することで、放置していても勝手にゲームが進行。プレイヤーはスキマ時間にちょっと確認するだけでOK。それが放置系RPGの楽しみ方だ。
実際本作は、各機能の自動化のみならず、ゲームバランスも放置系RPGを意識しているかのような調整がなされている。放置系RPGの多くは主人公側にHPのパラメーターを持たないため、ゲームオーバーという仕組みも存在しない。当然、基本的にプレイヤーが苦戦することもない。これに対し本作はHPこそ持っているが、ゲームバランス的にレベル100付近までプレイヤーが苦戦しないバランスになっている。
いや、苦戦しないどころか、楽勝。レベル100までの展開は、主人公が無双して超ハイスピードに敵を倒しまくり、次々ゲーム内コンテンツが開放されていくという形で、圧倒的にテンポがいい。爽快感すら感じるテンポだ。筆者はレベル100まで一気にプレイしたが、スキマ時間に少しずつプレイしたなら、毎回毎回なんらかのコンテンツが解放されるテンポとボリュームに驚いただろう。
育成結果を実感しにくいことUIに課題
ここまで書いた通り、本作はMMORPGとしてよりも、放置系RPGとしてプレイすべき作品だ。ただ、個人的には放置系RPGとしてプレイする場合でも、2点ほど課題を抱えているように感じた。それは、育成結果を実感しにくいことと、UI部分だ。
育成については、確かにテンポよくレベルが上がり、パラメーターもアップしていく。しかしその実感が得づらい。本作には、通常のボスの他、ワールドボスやダンジョン内のボスと、複数の強敵が用意されている。しかし、序盤はどのボスも弱く、まったく苦戦しない。序盤のテンポのよさを重視した結果だと思うが、強敵といえるような敵が存在しないため、常に主人公が最強で、強さを実感しづらいのだ。
レベル120で闘技場が開放され、PvPが可能になるまでこの傾向は続く。せっかくボスをコンテンツ毎に用意しているのだから、ひとつくらい「クエスト受注時点では敵わないけど、育成したら勝てた」、あるいは、「苦戦したがなんとか勝てた」くらいの難易度に調整されたボスが欲しかった。
次にUI。本作は本質的には放置系RPGだが、コンテンツや機能はMMORPGのもの。なので、他プレイヤーやシステムからのメッセージがひっきりなしに画面に表示される。この結果、画面が非常に見づらい。この記事のスクリーンショットを見てもらえれば一目瞭然だろう。
フィールド画面だろうとステータス画面だろうとお構いなしにメッセージウィンドウが表示され、巨大なボスも、かわいいペットも満足に見ることができない。本作を放置系RPGとして見た場合、MMORPGゆずりの迫力あるビジュアルは他のゲームにない長所だと思うのだが、UIによって隠されてしまうのでとても残念だ。メッセージをオフにするか、表示位置を変えられるようなオプションがあると嬉しい。
お手軽な放置系RPGとしてカジュアルな楽しさを提供してくれる作品
最後に改めてまとめると、本作は「気軽にプレイできる」というコンセプト通り、ゲーム内の要素を放置系RPG方向へと振り切ったMMORPGだ。このため、MMORPGとしてガッツリ楽しむことを期待していると、満足感を得ることは難しいだろう。
一方、スキマ時間でカジュアルに楽しむなら、オート化されたシステムと超ハイスピードなテンポによって、快適にプレイすることができる。「タップ タイタン 2 (Tap Titans 2)」や「君の目的はボクを殺すこと3」といった放置系RPGの延長線上の作品としてプレイするのがオススメだ。