ダウンロードで遊べる、気になるゲームの魅力を実際にプレイした上でご紹介する「DLゲームインプレッション」。第8回は、Nintendo SwitchとPC(Steam/Epic Games Store)にて配信中の横スクロールアクションアドベンチャーゲーム「添丁の伝説」(てんていのでんせつ)をピックアップ!
「添丁の伝説」は日本の統治下にあった20世紀初頭の台北を舞台に、伝説の英雄とされている義賊・廖添丁(りょう てんてい)を主人公とした作品だ。と言っても、当時の時代背景などの予備知識はとくに必要なく、悪しき権力者たちを懲らしめ、圧政に苦しむ人々を救う、分かりやすい勧善懲悪のストーリーとなっている。
当時の文化をデフォルメしたコミック風のビジュアルが魅力的。アクションゲームとしてのゲームデザイン・操作性も実に良好。題材に魅力を感じたなら、必ず夢中になれる良作といえるだろう。
コミック風に描かれる明るい台北のビジュアルが新鮮
本作をプレイして最初に関心したのは、タイトル画面のビジュアルだった。表紙に添丁が描かれたコミックに、登場人物たちが描かれたメンコ。ゲームスタートを選択するとコミックのページがめくられ、まさにこの作品の世界へといざなわれるような心持ちにさせられる。
ゲームプレイ中のビジュアルも、キャラクターからステージ背景に至るまで統一された、コミック風の明るいタッチで描かれる台北の風土がなかなか新鮮。イベントでは漫画のコマ割りのような表現が用いられ、シンプルかつ熱いストーリーを盛り上げてくれる。
主人公の添丁は盗っ人ではあるが、正義感を持った好青年として描かれる。彼が金品を盗むのは、弱者を虐げているような、裁くことのできない悪人からのみ。手に入れたお金は、道端で食べるものすらなくて苦しんでいる物乞いに分け与えられるなど、その「弱きを助け強きを挫く」行動理念がゲーム内容でも強調されている格好だ。とあるお守りを手に入れたのを切っ掛けに、添丁はさらに強大な陰謀の渦へと巻き込まれていくことになる。
そんな添丁に敵対するのは金持ちや権力者、そして日本人の警官たち。警官の中には台湾の人々を差別的に扱う者も多いが、とはいえ日本人全員が悪人というような一面的な描かれ方はされていない。とくに松本警部という人物は「ルパン三世」における銭形警部のように、添丁とは腐れ縁っぽい関係で描かれており、警察組織の中で出世を目指す彼の側のストーリーも、先が気になるものとなっている。
一部の台詞にはボイスが付いており、その多くには台湾の言語が用いられている。一方で日本人同士が会話をするときのボイスには日本語が用いられてる辺りからは、当時の雰囲気を再現するためのこだわりが感じられるところだ。なお「、」「。」の位置に違和感がある以外は日本語テキストの質は高く、ゲームをはじめたらすぐ物語にのめり込むことができるだろう。
カンフーを駆使し、敵の武器を奪う、痛快アクション
ゲームの進行としては章仕立てとなっている本作。各章は、台北の街でいくつかのイベントをこなしてストーリーを進行させるいわゆるアドベンチャーパートと、敵の拠点などに侵入するアクションパートに分かれている。アクションパートでさまざまな敵との戦闘やステージギミックを潜り抜け、ボスを倒せば次の章に続く物語が展開されるーーという流れで進んでいくことになる。
添丁は義賊であると同時にカンフーの使い手。アクションパートではいくつもの攻撃や一定時間無敵になれる回避を駆使して、次々に現れる敵を倒していく。敵はある程度攻撃を加えると頭上にボタンのアイコンが表示される。表示されたボタンを押すと腰に巻いた布を使った投げ技を放ち、敵が持っている武器を奪うことが可能だ。
この「武装解除」は敵の攻撃を弱体化させるだけでなく、奪った武器は添丁が一定回数に限って使用できる。リーチの長い槍を振り回したり、拳銃で遠くの敵を撃ったりと、状況に応じた多彩な戦略で敵を倒していけるのが、実に楽しい。
ダメージを受けたときは、グアバオ(台湾のハンバーガーのような食べ物)を食べれば回復できる。ところどころに設けられたセーブポイントでは、HPの回復とグアバオの補給も可能だ。
アクションパートで潜入する敵の拠点は、入り組んだ構造となっている場所が多い。加えてステージギミックも待ち受けており、これらに対しても回避などのアクションは大いに活躍する。「蜘蛛縄」というアクションを使えば、引っ掛けられる対象がある場所でなら、遠くにある足場まで飛び移ることも可能だ。
攻略の途中で「秘伝の書」を見つければ、添丁が新たなアクションを会得。戦闘での選択肢が豊富になる上、アクションによってはそれまで届かなかった場所までたどり着く手段になり、先に進めるようになる場合も。
こういったアクションを駆使することで隠し部屋が見つかることもあり、ここで手に入るアイテム「お守り」は、「お守り袋」に入れるとさまざまな効果を発揮する。ほかにも、入手するだけで添丁の基礎能力を高める効果を持つアイテムもあったりと、添丁はゲームを続けるほど強くなっていく。
ここまでに書いてきたアクションがバリエーション豊富なため、アクションゲームが苦手な人は難しそうと感じるかもしれない。だが、序盤のチュートリアルが丁寧な上、その後覚えるアクションは少しずつ増えていき、ステージデザインもこれらを自然に覚えていけるような構成が徹底されている。多くの人が添丁を自在に操れるようになるのではないかと思う。
なお、難易度は「心優しき泥棒」と「指名手配犯」の2種類から選べる。「指名手配犯」だと敵から受けるダメージが多くなり、かなり歯ごたえのあるゲームになる。「心優しき泥棒」は適度な負荷でストーリーを楽しめるので、高難易度のアクションゲームに強いこだわりがなければ、こちらがおすすめだ。とはいえ、難易度はゲームをはじめてからいつでも変えられるので、あまり迷う必要はない。
あらゆる要素がバランス良くまとまった、題材に関心があればイチオシの一作
ここまで本作の特徴を書いてきたが、このゲームはとにかくあらゆる要素のバランスが良く、どの部分も実に優秀な作りとなっている。
アクション部分の操作性は良好。複数の操作を組み合わせたときの動作もスムーズで気持ちがよく、思い思いのコンボを叩き込みながら、自由自在に大立ち回りを演じることができるだろう。ストーリーも興味深いものでありながら、コミック風の演出は非常にテンポがよく、プレイアブルな場面の邪魔に感じることなく、個性的なキャラクターたちのドラマを楽しめる。
アドベンチャーパートは街を行ったり来たりして、お使いの連続のように感じられるかもしれない。しかし、ブロックごとに馬車で瞬時に移動できたり、サブクエストが配置されていたりと、飽きさせないための工夫が見受けられるあたりは好感が持てる。お金を欲しがる物乞いが画面を切り替えるたびに復活し、何度でもお金を要求してくる点は唯一気になったが、毎回お金と引き換えに添丁が強くなるアイテムをくれるし、途中で解禁されるミニゲームの「四色牌(スーソーパイ)」で勝てばお金は増やせるので、些細な部分ではあるだろう。
総合的に、題材や舞台設定に関心があるならば「添丁の伝説」はぜひプレイしてほしいゲームに仕上がっている。そうでなくとも、非常に出来が良いアクションアドベンチャーとして万人におすすめだ。
誰もが好感を持つであろう英雄・廖添丁の活躍を、ぜひその目で確かめてほしい。