「DEEMO II」をレビュー。Rayarkの人気リズムゲーム「DEEMO」シリーズ最新作。本作では探索要素や物語要素が強化され、より作品世界に没入できるようになった。その魅力を紹介する。
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「DEEMO II」は、RayarkからリリースされたiOS/Android向けのリズムゲーム×アドベンチャーゲーム。タイトルが示す通り、人気リズムゲーム「DEEMO」シリーズの最新作だ。「DEEMO」シリーズの特徴は、なんといっても幻想的な世界観だろう。アドベンチャー要素を持たないリズムゲームとして作られていた第一作「DEEMO」から、美しく、はかなく、切ない…幻想的な世界観が魅力となっていた。その魅力は、最新作「DEEMO II」にどう引き継がれ、発展を遂げたのだろうか。
探索要素&物語性を強化!滅びゆく世界に太陽の光を取り戻そう
本作では、探索要素と物語性が大きく強化されている。3DCGで表現された駅の中を探索、楽譜を手に入れるというアドベンチャー要素が存在。楽譜を手に入れることでリズムアクションパートの楽曲が追加されていく…という流れだ。
シリーズの持っている幻想的な世界観は本作でももちろん健在。舞台となる駅のビジュアルを見てもらえれば一目瞭然だろう。一見2Dイラストのように見えるが、本作のビジュアルは3D。「DEEMO」の持つ美しくはかない世界観が、3DCGによって臨場感たっぷりに描き出されている。
舞台となる駅が存在するのは、偉大なる魔法使いによって創り出された世界。この世界は降り続く大雨によって、滅びゆこうとしている。雨を浴びたものは白い花に覆われ、消えてしまうのだ。主人公の少女・エコーも、雨を浴び、一度はこの世界から消えてしまう。しかし、エコー曰く「魔法使いによって」復活。駅に姿を現す。ただ、駅に集う人々の目には、エコーがいきなり姿を現した謎の存在と見えている模様。このため、中にはエコーのことを怪しんで、信頼していない者もいるようだ。
大雨を消すための方法はひとつだけ。それは、音楽の力。そこでエコーは、魔法使いが残した守護霊「Deemo」と協力し、演奏を始める。演奏をすることで空が一部晴れ、雨は止む。すると、探索可能な場所が拡大し、探索によって新たな楽譜を獲得できるようになる。ゲームはこの繰り返しで進んでいく。
「DEEMO」シリーズのファンは、おそらく大多数が、世界観、物語性も含めて惹かれていたはず。なので、今回の探索要素&物語性強化によって、本シリーズの魅力がより深まったと感じられるだろう。探索要素&物語性の強化によって確実に世界への没入感はアップしている。いや、没入感がアップしているのはアドベンチャーパートだけではない。リズムアクションパートもそうだ。
感情を揺さぶるピアノの旋律!これぞDEEMO!なリズムアクションパート
没入感アップがなぜリズムアクションパートの魅力につながるのか。それは「DEEMO」シリーズにおいて、幻想的な世界観が活かされているのは、舞台や物語だけではないから。何よりリズムアクションパートの楽曲が幻想的なのだ。様々なアーティストの様々な楽曲が収録されているが、ピアノの旋律の美しさを活かした楽曲が多く、どこかはかなく、切ない印象を与えてくれる。楽曲もまた、DEEMO」の世界観を構成する重要なピースなのだ。
こうした楽曲の「DEEMO」らしさは本作にもしっかり継承されている。とりわけ、ゲームをプレイして最初に接することになる楽曲「Echo over you」がまさに、美しさと切なさを感じさせる旋律。筆者はこの曲をプレイした瞬間に、「これがDEEMOだよ!」と胸が熱くなってしまった。一方でこの楽曲は、ただ「DEEMO」の楽曲の型を踏襲しただけでなく、「新しさ」を感じさせる部分も持っている。曲名に本作の主人公・エコーの名前が込められているのは、偶然ではないだろう。
リズムアクションパートのシステムは、流れてくるノーツに合わせて画面をタップするというもの。ノーツの種類は3種類。短くタップするもの、長押しタップするもの、長押しタッチ後、左右にスワイプが発生するもの。いずれも、タイミングのズレが少ないほど、評価が高くなる。システム的には、他の一般的なリズムゲームと大きく変わらない。ただ、ノーツが画面奥から手前に流れてくるという形式なので、ピアノを弾くようなプレイスタイルになるという点は、「DEEMO」の魅力といっていいだろう。ピアノの旋律を活かした楽曲が多いため臨場感も強く味わえるし、何より作中で演奏に使われる楽器はピアノ。主人公への感情移入も強化される。
筆者が本作でとりわけ感情を揺さぶられるのが、ノーツの配置。楽曲が最も盛り上がる、いわゆるサビの部分のノーツの使い方が上手い。長押しタップのノーツを押すと同時に鳴る、ストリングスの長音。そこに、大きく動くピアノの旋律が重なってくる。美しく切ない旋律が指を通じて自分の心に流れ込んでくるようで、思わず涙が出てしまった。筆者は第一作「DEEMO」でも収録楽曲に心を打たれ、iTunesストアで個別に探して購入している。本作もこのままプレイを続けていけば、購入することになりそうだ。
ところで本作は、タイミングの評価がゆるい。過去作と比べてもゆるいと感じた。かなりズレていてもコンボを継続してくれる。この点も、本作の特徴だと思う。本作は純粋なリズムゲームのようにプレイヤースキルのみを楽しむものではなく、ストーリーや世界観も楽しむ作品だ。リズムゲームは苦手だが、世界観が好きだから本作をプレイしてみたい…そういう人でもプレイできる難易度に調整されていると感じた。
では、純粋なリズムゲームとして、プレイヤースキルを楽しむことはできないのか?…というと、そんなことはない。本作にはメインストーリーは別にイベントというモードが用意されている。イベントとは、「All Charmingを達成」などのミッション達成を目指して楽プレイするモード。「Charming」というのは、本作において、ジャストタイミングでノーツをタップした時の評価…つまり、最高評価ということ。つまりこのミッションは、一回でも最高評価を逃すと即座にプレイ終了になってしまう。非常にシビアだ。純粋なリズムゲームとして本気でプレイしたいと思いは、イベントで果たすことができるだろう。
この世界観に惹かれるかどうかがギ!惹かれるならオススメできる一作
イベントのような形で、純粋にリズムゲームファンでも楽しめるコンテンツを提供している本作。ただ、純粋にリズムアクションだけを楽しもうとした場合、マップ内の移動などが冗長に感じられるかもしれない。一応、ファストトラベル機能が用意されていたり、メニュー画面からダイレクトにリズムアクションパートへ移行できたりといった便利機能が用意されているものの、大前提として本作はアドベンチャーゲーム的な作りになっている。その上での利便性を高める機能なのだ。
なので、純粋なリズムゲームを求めている人に対しては、本作は手放しでオススメできる作品ではない。しかし、本作の世界観に惹かれ、この世界観を味わいたいと思う人なら、その期待が裏切られることはないだろう。美しくはかなく、切ないビジュアルと音楽によって心が揺さぶられる…そんな体験ができるはずだ。