バトルの緊張感とともに味わえる能動的な物語体験――「トライアングルストラテジー」レビュー

プレイレビュー
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スクウェア・エニックスが2022年3月4日に発売するNintendo Switch用ソフト「トライアングルストラテジー」のレビューをお届けする。

「トライアングルストラテジー」は、スクウェア・エニックスが「オクトパストラベラー」などで取り組んできた、ドット絵に3DCGの画面効果を加えた表現が特徴の「HD-2D」シリーズに連なるタクティクスRPGだ。

現在、製品版にセーブデータを引き継げる体験版が配信されており、そちらでは3話までプレイ可能だが、今回のレビューでは、物語におけるいくつかの核心に触れることのできる13話までをプレイした。

まだまだ物語の行く先は見えないが、筆者が強く感じたのは、本作が“タクティクスRPGの王道”に強い意識を向けているのではないかということ。それはバトルシステム全般を通しての骨太な仕上がりからも感じ取れるし、何より三国間をめぐるストーリーはその重厚さに惹き込まれる。一部の目新しい要素もあるが、その根底には群像劇による多面的なエピソードがもたらす、RPGとしての体験があった。

“信念の天秤”などすべての要素が能動的な物語体験へとつながる

本作はワールドマップ上に表示されたイベントマークを選択することでストーリーが進行する。赤で表示されたイベントマークはメインストーリー、緑で表示されたイベントマークはサブストーリーをそれぞれ示しており、物語の大筋はメインストーリーのみで十分把握できるものの、サブストーリーで物語に関わる登場人物たちのさまざまな感情や思惑を知ることで、より理解が広がるといった構造だ。

仲間は挿話というかたちで、エピソードとともに加入する。

プレイヤーは主人公のセレノア・ウォルホートの視点でさまざまな出来事に触れていくことなるのだが、町でのキャラクターとの会話が後々の選択肢に大きな役割を担うこともあるなど、全てプレイヤー自身の選択がその後の展開につながっていく。そのため、必要な行動を取っていないと解決策が導き出せず、途中でゲームオーバーという展開もあり得るのだ(筆者も実際に体験した)。

選択が物語における分岐になるという点では、“信念の天秤”というシステムが最たるものになってくるだろう。本システムはセレノアが信頼を置く7人(ロラン、フレデリカ、ベネディクト、アンナ、ジーラ、ヒューエット、エラドール)の投票によって重要な決断を決めるものであり、いわゆる多数決の仕組みではあるものの、投票前にキャラクターを説得することで、プレイヤーの望む方向に導くことが可能だ。

ただし、相手を翻意させるためには当然ながら説得材料が必要で、かつその議題によってキャラクターのスタンスはさまざま。簡単な説得で納得してくれることもあれば、取り付く島もないようなシチュエーションも。態度を保留しているケースもあり、上手く説得できないと意図しない決断へと導かれることもある。場面次第では三択を迫られることもあり、よりシビアな立ち回りが求められる。

また、プレイヤーのさまざまな選択や行動は「Benefit」「Moral」「Freedom」と3つの価値観に基づいた「信念」として蓄積されていく。これは明確な数値として示されるものではないのだが、ストーリーの分岐や仲間ユニットの加入に影響を与えていく。今回は1度目のプレイなのでその変化を直に感じることは少ないものの、いろんなキャラクターの顛末を見るに、この展開でなければ仲間になっていたかも……と思わせるような場面もあった。

これらの要素は一見するとプレイヤーが介入しづらく、受動的なものに映るかもしれないが、その本質は能動的なものになっていると筆者は考えている。“何に対して”能動的かを考えた時、それはシステムではなく物語体験であり、プレイヤーは意図して物語に介入していくことで、さまざまな出来事がもたらす結果に向き合い、乗り越えていくのだ。その過程には確かなRPGとしての息吹を感じる。

プレイヤーがどのような足跡を辿ってきたかはチャート形式で見ることができる。
こうして見ても、選択がもたらす結果はほかにもあったのだと感じさせてくれる。

“トライアングル”の関係性がもたらすストーリーの多様性

本作の舞台となるノゼリアは、塩の利権を有する「聖ハイサンド大教国」、雪と氷に覆われた鉄の国「エスフロスト公国」、その狭間にある森の国「グリンブルク王国」の三国が均衡を保っている。しかしながら、過去には塩と鉄の利権をめぐる戦い「塩鉄大戦」が勃発しており、その関係性は決して安定しているとは言えないのが実情だ。

物語は戦争の終結から三十年の時を経て、新たな鉄鉱山の三国共同採掘の稼働を祝う記念式典と、三国の強者による武闘大会から始まる。一見すると平和の礎を築こうとする動きではあったものの、その裏にはさまざまな思惑が蠢くのであった。

この三国間の関係性は塩と鉄という資源の独占が大きな意味を持っていて、特に聖ハイサンド大教国が塩湖と呼ばれる唯一の塩の産出地を有していることで、その利権を我が物にしている状況だ。だからこそ、聖ハイサンド大教国は強硬的な態度を崩そうとはしないのだが、エスフロスト公国はその関係性を崩してまでグリンブルク王国への襲撃を決行する。

その背景にあるものは実際のゲームで確かめてほしいが、それぞれの展開には三国間の政治的な策謀が張り巡らされており、その裏に潜む真実も含めて、緊張感のあるやり取りが繰り広げられる。そこには慈悲は無く、人間の生死ですら物事を進めるためのピースでしかない。しかしながら、それこそが戦記としてのリアルであり、本作の物語を重厚なものにしている。

一方、タイトルの“トライアングル”が指し示す要素はもう一つ存在する(ある意味で前段で紹介した信念や信念の天秤も該当するが)。それはセレノアとともに戦乱に立ち向かう、ロラン、フレデリカ、ベネディクトの3人の立ち位置だ。

グリンブルク王国の第二王子で、セレノアとは親友の間柄のロランは、父王や兄との関係性に悩まされつつ、王子としての自身の有り様を常に考えている。自国が戦乱に巻き込まれてからは、その流れに翻弄されながらもセレノアたちと行動を共にしていくことになる。

フレデリカは、ゲームの冒頭でウォルホート家に嫁ぐことになる。エスフロスト公国公女の立場だが、ローゼル族の血を引くことで不遇の時間を過ごしており、この婚約もいわゆる政略結婚。普段は物腰の柔らかい可憐な女性だが、ローゼル族が虐げられている姿に感情を露わにするなどの一面も見せる。

先代のシモンから長くウォルホート家に仕え続けているベネディクト。セレノアの補佐役として忠義を尽くし、戦乱においては優れた軍師としての活躍も見せるが、ウォルホート家を守るために時に非情な意見を述べることも。

この三者三様のあり方は、物語においても多くの局面で意識することになる。セレノアは彼らの声に耳を傾けながら、自分なりの“正義”に向き合っていくのだ。

キャラクターやギミックの多様性が魅力の正統派タクティクスRPG

ここまでで触れた通り、本作は物語の占める要素が大きいゲームだが、その要所ではマス目上に配置したユニットを動かしながら戦う、戦略的なバトルが発生する。高低差のあるフィールドを生かした位置取りに加えて、キャラクターごとの異なる特性が戦局を大きく左右することになる。

本作では同じ特性を持ったキャラクターはおらず、例えば魔法一つをとってもフレデリカは火属性、ジーラは回復や補助といったように得意分野でのコマンドのみ習得することになる。つまり、敵に弱点属性があったとして、その属性攻撃を畳み掛けて攻略、というわけにはいかないのである(属性攻撃が可能なアイテムは存在するが)。

そしてキャラクターの特性は単純な攻撃手段だけに留まらず、トラップを設置したり、高低差のある場所にハシゴをかけたりすることのできるイェンスや、デコイを設置できるピコレッタといった、さまざまなアプローチが用意されている。

マップとの相性はあるものの、どのキャラクターにも活躍する局面があるため、出撃ユニットへの編成には悩むところだが、バトルにおいて活躍が期待されるユニットに「おすすめ」と表示される機能もあるので、まずは試してみることをオススメする。

加えて、毒などの一般的な状態異常だけではなく、例えば草の上に火属性の攻撃を繰り出すとその場が燃焼中の状態となり、その場所を通過したり、留まったりするとダメージを受けるという地形効果の概念もある。当然ながら敵も仕掛けてくる部分のため、マップの状態が刻一刻と変わっていく、緊張感のあるバトルが味わえるのだ。

そのほか、バトルを補助する要素として、ターンを消費せずに、回復やステータスアップなどさまざまな効果を持つ行動を取ることのできる「切札」も用意されている。予めセットする必要はあるが、こちらも不利な局面などで役立ってくれる。

このジャンルでは基本的にトライ&エラーが必要となり、実際に難易度Normalでプレイしてみてのゲームバランスも、時折苦戦する場面もある程よい感覚だった。Very Easy~Hardまでの4段階の難易度はゲーム開始後も変更可能なので、実際にプレイしながら調整していくのも良いだろう。

ちなみに、ゲームオーバーになると入手したアイテムこそ失ってしまうものの、ユニットが得た経験値はそのまま引き継がれるほか、アイテムの購入やキャラクターのクラスアップ、武器の強化などを行う詰所には基本的にはいつでもアクセスできるので、改めて態勢を整えて挑むこともできる。特にクラスアップで習得するスキルは、バトルの戦局を大きく変えるものばかりなので、勲章と呼ばれるアイテムを入手した際には積極的に使っていこう。

実直な青年セレノアが導き出す“正義”とは

冒頭でも紹介した通り、すでに体験版が配信されていることから本作がどのようなゲームであるか、その触りの部分は理解できている人も少なくないかとは思うが、本作の醍醐味は物語に連なるかたちでゲームを進めた時にこそ見えてくるという点は、声を大にして言っておきたい。

また、本作は架空のファンタジー世界を舞台としている一方で、その土台に資源の利権など我々の歴史を下敷きとした現実的な背景が盛り込まれているのも、物語を引き締める要素として機能している。システム的もしっかりとしたフォローアップがなされており、基本的にはストレス無くプレイできた。

ストーリーの合間でもすぐにキャラクターの情報を閲覧できるようになっている。
群像劇である本作において、キャラクターを把握しやすいのは嬉しいところ。

タクティクスRPGとしての王道をいく、歯ごたえのあるバトルはもちろんのこと、戦記として見た時にもその作り込みからゲームに没入できる魅力が「トライアングルストラテジー」には確かにある。若き青年セレノアの歩み道の先を見届けたいと思える一作だ。

※画面は開発中のものです。

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