X-LEGEND ENTERTAINMENTからリリースされた「スプライトファンタジア -精霊物語-」をレビュー。キュートなキャラクターやコミカルなシナリオなど、本作の魅力を紹介する。
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「スプライトファンタジア -精霊物語-」は、ファンタジー世界・アラクティカ大陸を舞台にしたスマートフォン向けMMORPG。アラクティカ大陸はミグルと呼ばれる精霊が人間がともに暮らす大陸だが、かつては宇宙人からの侵略を受けたことがある。この時、勇敢な人間は精霊使者として、ミグルたちとともに宇宙人を撃退した。本作でプレイヤーは新たな精霊使者となり、アラクティカ大陸に襲い掛かる新たな敵と戦うことになる。
絵本のようなキュートさが特徴のMMORPG
本作のゲームシステムは一般的なスマートフォン向けMMORPGを踏襲しており、受注したクエストを達成することで進行していく。ある程度ゲームを進める必要があるものの、スマートフォン向けMMORPGではおなじみのオートクエスト機能も存在。クエスト欄をタップすれば、戦闘も含めてクエストをオート進行可能だ。
バトルは通常攻撃やスキル攻撃をリアルタイムに繰り出す、アクション性の高いもの。一部のボス的については攻撃範囲予測が表示され、回避も重要となっている。ただ難易度はそれほど高くないので、オート機能任せでも十分プレイ可能だ。
ゲームシステム的にはオーソドックスな本作で、独自の魅力となっているのはビジュアルとシナリオ。ビジュアルについては、スクリーンショットをご覧いただければ一目瞭然だろう。まるで絵本のようなキュートさ。
特に、おともとなる精霊、ミグルがかわいらしい。ミグルという種族的としてのデザインがキュートな上、ゲームスタート時にカスタマイズできるのがニクい。自分の思い入れが反映されるので、ことさらかわいらしく思えてしまう。
また、ゲーム序盤で手に入る乗り物・ウサプーも魅力的。ウサプーもキュートなキャラクターだが、それだけでなくデカい。ゲーム序盤からキュートでデカい乗り物で移動するという体験は、他のMMORPGでは得られないものだ。
冒険のワクワク感をアップさせる様々なミニゲームたち
本作についてゲームシステム的にはオーソドックスと書いたが、細かな部分では独自の要素が存在している。その代表的なものがミニゲームだ。
本作ではクエストによって、様々なミニゲームが登場する。それぞれのミニゲームは非常にシンプルだが、ゲームの基本システムの延長線上のものではなく、独自のシステムを持っている。たとえば冒頭では、ボタン連打で豆の木を登るというミニゲームが登場。
ゲームが進むと、画面をタップして怪しいところを調べるという脱出ゲーム的なミニゲームが登場したり、焼き肉を食べようとするミグルをタップで止めるというもぐら叩き的なミニゲームが登場したりする。
ひとつひとつのミニゲームは、内容がシンプルなこともあってゲームとして強烈な魅力を持っているわけではない。しかし、ザコ敵と戦うクエスト、強力なボスと戦うクエスト…といった通常のクエストの中にこれらのミニゲーム的なクエストが加わることで、ワクワク感が生み出されているように思う。「次はどんなクエストが出てくるんだろう!?」と、思わず楽しみになってしまうのだ。
当たり外れが大きい!?ギャグの嵐が吹き荒れるコミカルシナリオ
ビジュアルとならんで本作の魅力と書いたシナリオは、非常にコミカルなものになっている。ストーリー展開がコミカルというのではなく、次から次へとギャグが飛び出すという笑いを前面に押し出したシナリオ。ただ、このシナリオは確かに本作の魅力なのだが、同時に多くの課題も抱えているように感じた。
課題だと感じた点は「笑いの質」。現実のお笑いでは、「国や文化によって笑いの質が違う」ということが言われている。日本のコメディアンが海外でなかなか活躍できなかったり、逆に海外のコメディアンのネタを我々が見てもあまり笑いのポイントが分からなかったりする…といった話だ。もちろんこれは現実のお笑いの話だが、本作も同様の課題を抱えていると感じた。というのも、シナリオ上でのギャグの量が多いからだ。
たとえば筆者が気になったのは、主人公のおとものミグルと、シナリオで登場するミグル・ムーが会話するシーン。食いしん坊な主人公のミグルは、ムーがメイン武器としているフランスパンを食べてしまう。おとものミグルが大事なメイン武器を食べてしまって申し訳ない…というシーンだ。ただ、実際にはこうしたことはこれまで999回あったという。つまり「一大事と思いきや日常茶飯事かい!」というギャップを笑うシーンなのだが、この「すわ一大事!?」→「日常茶飯事かい!」という流れをほぼ1画面で表示してしまう。個人的には前フリとボケの間のタメがないように見えて、笑えなかったシーンだ。
こんな風にシナリオの間が原因で、笑いのポイントが掴みづらいというケースが本作には多いように感じた。恐らく海外のライターによるシナリオを翻訳する際、一画面の情報量だったり、イベント内のメッセージ表示回数の制限だったりといった制限によって、テキストを最適化できなかったのだと推察する。もちろん、笑えるか笑えないかは国や文化の問題に加えて、個人の感性も関わってくるだろう。なので、こうしたことが気になるのは筆者個人の問題かもしれない。ただ、シナリオにおけるギャグ比率が高い作品なので、気になってしまった。
ちなみに、じゃあ本作のギャグが笑えないのか?というと、そんなことはない。たとえば、ゲームの早い時点で挿入されるテレビ番組のスポンサー紹介パロディ、胡散臭いおみくじのクエストといったネタには笑わせてもらった。なので、ギャグが多すぎるために、当たり外れの幅があるというのが正確だろう。
シナリオの好みは分かれるものの全体的には楽しめるMMORPG
ギャグに関する当たり外れはあるので好みは分かれるかもしれないが、シナリオは総合的にはコミカルで楽しい。キュートなビジュアルともマッチしていて、魅力的な世界観を作り出していると感じた。なので、このキュートな世界観に興味を持った人なら、プレイする価値のある一作だと思う。個人的なお気に入りは、クエスト中挿入されるミニゲーム。本来のゲーム性と異なるシステムを用意するのは手間のかかるものなので、そこまでしてでもプレイヤーを楽しませようとする開発陣の思いのようなものを感じた。