スマートフォン向けRPG「BLACK STELLA Iи:FernØ」をレビュー。3名のプレイヤーが同時にプレイするリアルタイムバトルが特徴の作品。その試みはどうだったか。詳しく紹介したい。
「BLACK STELLA Iи:FernØ(ブラックステラ・インフェルノ)」は、サイバーステップからリリースされたスマートフォン向けRPG。その特徴は、シナリオとバトルシステム。シナリオについては世界観設定に鈴木貴昭氏、シナリオ制作に丸戸史明氏、長月達平氏、稲葉義明氏などの豪華な作家陣を迎えており、重厚なシナリオが実現されている。また、バトルについては3名のプレイヤーがリアルタイムに協力するというオンライン前提の作りが特徴だ。
メインはギルドによるリアルタイム協力バトル!ユニークだが課題も…
本作はスマートフォン向けRPGではあるのだが、一覧画面から挑戦するクエストを選んでストーリーやバトルを楽しむ…というスタイルではない。メインはオンライン協力バトル。つまり、一般的なスマートフォン向けRPGより、FPS/TPSやトレーディングカードゲームといったオンライン対戦型ゲームの作りに近い作品だ。
オンライン対戦型ゲームの多くがそうであるように、本作もバトルパート前にマッチングが発生。プレイヤーが見つかるか、手動でマッチングを打ち切ることでバトルスタート。勝利するか敗北するとバトル終了。会話シーンなどはなく、純粋にバトルのみで構成されている。
バトルの内容は、基本的にタワーディフェンスゲームの形式を踏襲している。時間経過によって貯まるコストを消費し、召喚ポイントへユニットを配置。配置されたユニットは自動的に攻撃範囲内の敵を攻撃してくれる。すべての敵を倒せばプレイヤーの勝利だ。敵はこちらの拠点を目指してルートに沿って進行。敵が到達すると拠点はダメージを受け、ダメージによってすべての拠点が破壊されるとプレイヤーの敗北となる。
本作ならではのポイントとなるのが、リアルタイムマルチプレイという点。1回のバトルに参加できるプレイヤーは最大3名。それぞれが召喚ポイントへユニットを配置し、協力して敵と戦う。
本作のバトルはこの協力プレイが大前提となっている。たとえばマップ上のルートは分岐が多い。1人でプレイする場合、敵の進行ルートを事前に把握した上で、的確な順番で的確な場所へユニットを配置しなければならない。
とりわけボス戦はマップが広く、ボスが強力なため、よほどキャラクターのレベルが高くない限り1人では勝てない。ボス戦ではなくとも、難易度ごとの想定レベルギリギリの状態だと、1人プレイで勝つのは難しいだろう。
このマルチプレイ大前提の調整というのは、本作の魅力の中核として設計されたものだと思う。実際、ボス戦において他プレイヤーとの分担が上手くハマり、強力なボスを倒すことができたなら仲間との連携感と達成感を強く味わえるだろう。
だが、現在のところは魅力よりも課題を大きく抱えていると感じた。それは、リアルタイムマルチプレイとギルド制という要素の相性の部分。本作のリアルタイムマルチプレイは、MMO戦略ゲームのようにプレイ時間の制約がゆるやかなものではなく、他プレイヤーと一緒にゲームをスタートし、一緒にプレイして同じタイミングで終わるというものだ。だからこそ、マッチングという工程が必要になる。
このマッチングという工程で課題になるのが、待ち時間。ゲームのプレイヤー全体の中から、実力やレベルなどの諸条件まで踏まえた上で今このタイミングで遊ぶプレイヤーを揃えるには、それなりの時間が必要となる。でも、プレイヤー側としては待ち時間はなるべく少ない方がいい。だからこそ、ゲームによっては一定時間内に人間プレイヤーが揃わない場合、AI操作によるBotプレイヤーを使用する場合もあるくらいだ。
しかし本作の場合、ゲームのプレイヤー全体の中からマッチングするのではなく、「サークル」と呼ばれるギルドメンバーを対象にマッチングを行う。つまり、そもそもマッチング対象となるプレイヤーの母数が少ないのだ。なので、マルチプレイで遊ぼうと思ってもなかなかマッチングできない。一応、他のギルドメンバーの募集に参加したり、参加を呼びかけたり…といった機能も用意はされている。だが、本作はステージの進行情報がギルドに結び付けられている。なので、本作を本来のかたちで楽しむためには、ギルドメンバーとのプレイ時間帯・プレイ回数の相性が絶対条件になってしまうのだ。
ギルドがここまで必須だからだろう。本作では「サークル」への加入が必須となっている。しかし、単に「サークル」へ加入すればいいというものではない。遊ぶ時間帯とプレイの積極度が一致しているかが重要だ。できればこのことをチュートリアルや「サークル」選択時に伝えてほしいと感じた。くわえて、システム側でギルドごとのプレイ時間帯情報などを表示してほしい。「サークル」前提の作りとなっている以上、これらは「サークル」加入を検討するために必須の情報だろう。あるいは、「サークル」加入を必須ではなくし、全体マッチングで時間帯やプレイ頻度の合うプレイヤー同士が「サークル」を作れるようなかたちにしてほしいと感じた。そうでないと、ゲームの持つ楽しさをフルに味わうことができない。
重厚なシナリオと魅力的なキャラクター
本作のもうひとつの特徴であるシナリオは、バトルパートとは完全に切り離され、単独で楽しむというスタイル。FPSやMOBAなど、マルチプレイがメインとなるゲームではしばしばストーリーをノベルやコミックなどの別媒体で提供するが、本作のシナリオもそれに近いといえるだろう。
舞台は2049年の東京。人類は「マモノ」という脅威との戦いにさらされていた。これに立ち向かうのが「オーバーライダー」という異能力者たち。一度死んだ人間が「黄泉還り」という現象によって蘇生し、さらに死の瞬間に失った記憶を取り戻すことで「オーバーライダー」となる。「黄泉還り」の段階で強力な異能を獲得するが、記憶を取り戻すことでさらに異能が強化されるのだという。
「オーバーライダー」の記憶は人工的にバックアップされている。それはつまり、蘇生後に取り戻せるのはバックアップされた記憶までということ。このため、バックアップから死の瞬間までの記憶は取り戻せない。ともに戦い、死を前に誓いをかわし、脳裏に焼き付くほどの強烈な経験をしたとしても、その記憶は取り戻せないのだ。シナリオでは、このドラマを感じさせる設定を活かした重厚な物語が展開していく。満足感は高い。
シナリオとともに魅力となっているのが、本作の2Dキャラクター。いずれもコレクションしたいと感じられる、魅力的なイラストレーションだ。ただこの一方、3Dキャラクターの方は若干残念に思うところがあった。それは、レア度の低い3Dキャラクターは服装が白いシャツ&黒いジーンズで固定という点。
ちなみに、本作の3Dキャラクターは着替えができる。なので、白いシャツ&黒いジーンズという服装が好みに合わないのであれば、着替えをすればいい。このため、着替えを促すためにあえてデフォルトの服装は地味にしているのだろう。ただ、全員白いシャツ&黒いジーンズという服装ではせっかくの魅力的なキャラクターの個性が活かされていないため、そもそも愛着がわきにくい。せめて、地味であってもキャラクターの個性を踏まえた衣装にしてほしかった…。
本作には、マッチングや3Dキャラクターの初期衣装など、課題が少なくない。ただその一方で、ユニークなバトルや重厚なシナリオ、魅力的な2Dキャラクターなど輝きを感じさせる要素を備えていることも事実だ。だからこそ、今後のアップデートに期待したい。マッチングの問題が改善するだけでも、プレイの楽しさが大きく変わってくるのではないかと思う。