Koch MediaとPrime Matterより、2023年に発売予定のPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「異夢迷都 果てなき螺旋」の、先行プレイレビューをお届けする。
オールド上海の雰囲気を再現した未来都市「新都」で起こる事件を追う
「異夢迷都(イム メイト) 果てなき螺旋」は、中国のデベロッパーであるArrowisが開発中のポストアポカリプス世界を舞台としたミステリーRPG。プレイヤーは探偵志望の主人公「何某」となり、オールド上海風の大都市である「新都」に隠された謎を解き明かしていくことになる。
本作のストーリーは、主に2Dのテキストアドベンチャーで進行していくが、3Dで作られた「新都」の中を自由に歩き回ることもできる。
秀逸なのはこの「新都」のビジュアル表現で、未来的でありながらどこか退廃的な独自の雰囲気が演出されている。「新都」は複数のエリアに区切られており、エリア間の移動はシームレスではないのだが、地下鉄の路線図を模したような画面で行き先を選ぶようにしているのも面白く、作品の世界観を壊さないように工夫されている。
今回散策することができたのはごく一部だったのが、「新都」にはかなり数のエリアが存在しており、一つ一つのエリアにもしっかりと高低差が存在している。都市の中を歩き回るだけでも、結構な時間が掛かりそうだ。
今回プレイできたのは、物語の最序盤と思われるエピソード。鉛鶴なる人物からの依頼を受けた何某は、新都で極秘裏に取引されている「嗟来の食」という貨物について調査を進めていく。そこで不審な取引現場を発見するも、不注意によって謎の空間へと吸い込まれ、「凶渦」と呼ばれる怪物に襲われてしまう。
窮地に陥った何某を救ったのは、凶渦に似た力を振るう男「鍾馗」だった。「嗟来の食」と「凶渦」に、何らかの繋がりがあることを知った何某は、「鍾馗」と協力して捜査を進めていくことになる……という、ミステリーと伝奇、SFが入り混じったストーリーが展開されていた。
アドベンチャーパートの中では選択肢が出現し、適切な選択肢を選ばないとストーリーが進展しないこともある。また会話の中にはテキストの色が異なる重要なキーワードが出現することもあり、その後の選択肢を選ぶためのヒントになってくる。
またストーリーの中には、3Dのカットシーンが挿入されることもある。カットシーンは複数のコマ割りと吹き出しによるコミック風の画面構成で演出され、作品の物語がもつドライな雰囲気ともマッチしており、臨場感を増してくれる。
なお今回の先行デモ版では、テキスト部分はまだ日本語未対応となっていたが、カットシーンで再生されるボイスについてはすでに日本語音声となっていた。製品版ではテキスト部分も正式に日本語対応しているとのことだ。
コマンド方式のバトルと、カードゲーム的なギミックも存在
本作はアドベンチャー要素が強めだが、凶渦と呼ばれる存在とのバトルが発生することもある。敵が出現するのはダンジョンにあたるエリアで、敵にエンカウントする形式ではなく、フィールド上にある「ルーム」に入った時のみ発生する。
バトルシステムとしては、敵と味方で交互に行動を行っていくオーソドックスなターン制のコマンドバトルが採用されている。ただし主人公である何某は直接戦闘には参加せず、仲間である「鍾馗」に指示を出すという形式となっていた。
通常攻撃の他に、スキルを使って敵を攻撃することも可能。敵1人に大ダメージを与えるものの他に、複数の敵を同時に攻撃できるスキルも存在する。MPのようなリソースは存在しないのでスキルは積極的に使用していけるが、一度使用するとリキャストが終わるまで再使用はできなくなる。
今回は「鍾馗」しか戦闘に参加できなかったが、メニュー画面などを見る限り複数人のキャラクターでチームを編成して戦えるようになりそうだった。
近年のRPGでは、戦闘が終了するとリソースが全快するものも多いが、本作では受けたダメージがそのままバトル終了後にも引き継がれる。その分、ダンジョンには体力を回復できるエリアが存在している。長いダンジョンなら、残りHPにも気を使いながら進む必要が出てくるだろう。
またストーリーの合間には、相手の心の中に侵入して情報を得る「マインドハック」を行う場面もあり、その際にはカードバトルのようなモードが発生していた。
マインドハックでは、プレイヤーは4枚のカードを手札に所持した状態で開始される。1ターンあたり3回までカードを使用でき、互いのライフにあたる「マインドパワー」を0にすることが目的となる。相手はモンスターカードに相当するデモンという存在を出現させ、攻撃を仕掛けてくることもある。デモンを倒して相手の攻撃を防ぎつつ、相手のマインドパワーを削っていく必要がある。
カードには、主に攻撃用と防御用で2つのカテゴリが存在する。攻撃用のカードは相手のマインドパワーを攻撃するカードとなり、防御用のカードは相手の攻撃に対する防御力を高める効果がある。互いのマインドパワーに与えるダメージは、ターン終了時に互いの攻撃用と防御用のポイントを差し引く形で算出される。防御用のカードを複数使えば相手からのダメージをほぼ無効化できるが、3回という制限の中で防御側にカードを使いすぎると攻撃の機会が少なくなってしまう。
カードにはそれぞれ特殊な効果が設定されており、中でもユニークなのが3回の行動回数内で特定タイミングのみ効果が発揮されるというもの。例えば、2回目と3回目の行動タイミング時に攻撃力が上がるという2枚のカードを手札に所持している状態なら、1回目に防御用カードを使ったあとにそれぞれのカードを使用していくと効率がいい。使用しなかったカードは次のターンに持ち越されるので、どのカードを残してターンを終わらせるかの手札管理も重要になりそうだ。
今回の先行プレイでは、ストーリーにバトル、マインドハックといった様々な要素を体験できたが、とくに印象的だったのが秀逸なビジュアル表現だ。主な舞台となる「新都」の雰囲気の良さは冒頭でも述べたが、スキル発動時のバトルアニメーションにも力が入っており、テンポと格好良さを両立した爽快感を感じられる演出が作られていた。ミステリー的なストーリー展開の中に、「マインドハック」のようなSF要素が混ざってくるのも面白く、本作独自の世界観が形成されていると感じられた。