「クローズ×WORST - XROSS OVER -」をレビュー。人気コミック「クローズ」と「WORST」を原作としたスマートフォン向けパズルRPG。その内容について詳しく紹介する。
「クローズ×WORST - XROSS OVER -」ソニックパワードからリリースされたスマートフォン向けパズルRPG。髙橋ヒロシ氏の人気コミック「クローズ」と「WORST」を原作としており、2つの作品をクロスオーバーさせた世界観が特徴だ。両作とも不良マンガの金字塔といえる作品なだけに、その仕上がりが気になるという人も多いだろう。そこで、内容について詳しく紹介したい。
パネルをなぞって攻撃!奥深く爽快なマッチングパズルバトル
本作はいわゆるパズルRPGとして作られている。ここでいうパズルRPGとは、同じ色のパネルをタテ・ヨコ・ナナメになぞって揃えることで敵を攻撃する…というバトルシステムを持つRPGのこと。正直なところ筆者はプレイする前、「不良マンガのバイオレンスな喧嘩バトルが、パズルと合うの…?」と疑問だった。しかしプレイしてみると、そんな疑問は吹き飛んだ。本作のバトルは、「クローズ」「WORST」の世界観と、パズルRPGのシステムを違和感なく融合させている。
まずよかったのが、パネル。本作でプレイヤーが揃えるパネルは、大きく分けてパンチ(赤)、キック(青)、回復(緑)という3種類。このためプレイ中の頭の中は「次はパンチを繋げるか、いや、キックの方がダメージを大きくできるな…」といった考えが駆け巡る。この感覚、個人的には格闘ゲームなどで「どう攻めようか…」と攻め方を考えている時に近いと感じた。
また、単純にパネルの表現がパンチやキックといった攻撃になっているというだけでなく、3Dキャラクターがパネルと対応した技を繰り出すという点も「喧嘩感」に繋がっている。パンチを繋げばパンチ、キックを繋げばキック。パネルを繋ぐほどコンボ数が増えるため、システムそのものはマッチングパズルであっても「戦っている」臨場感はしっかり味わえる。
もちろん、バトルの爽快感も高い。3Dキャラクターによる攻撃表現もさることながら、敵パネルを繋げて消したときに発生する爆発エフェクトが爽快だ。パンチパネルとキックパネルには、自分用のパネル以外に敵のパネルが存在。そのまま画面上に残しておくと、敵からの攻撃を受けてしまう。このため自分のパンチパネルやキックパネルに繋げて消していくのだが、この時に発生する爆発エフェクトが非常に気持ちイイ。パネルが消える→爆発→こちらの攻撃…と、流れるように爽快感が繋がっていくのがとても魅力的だ。
と、ここまでは原作である「クローズ」や「WORST」が持つ「喧嘩バトルもの」という観点からバトルシステムを紹介してきた。一方、本作のバトルはパズルゲームとしても奥深いものに仕上がっている。その魅力の中心になっているのが、先ほど触れた敵のパネルだ。
敵パネルは自分のパネルに繋げることで消すことができるが、ただ繋げればいいというものではない。敵パネルには攻撃力兼耐久力が設定されているのだ。敵パネルに書かれた数字が大きければ大きいほど、敵の攻撃時に受けるダメージが大きくなる。と同時に、数字が大きければ大きいほど、マッチング回数が必要だ。
たとえば数字が5であれば、その敵パネルを消すためには自分のパネル5個とマッチングさせなければならない。マッチングさせた自分のパネルの分、耐久力を削っていくというシステムなので一度にマッチングさせる必要はないが、一緒に消す自分のパネル数が耐久力未満の場合敵パネルは画面に残ってしまう。このため、盤面の状況によっては敵パネルが消せずに数ターン残ってしまうことも多い。
そこで、盤面整理の出番だ。1ターン…場合によっては数ターン費やし、邪魔なパネルを消してコンボしやすい盤面を作り上げる。こうした展開はマッチングパズルの醍醐味といっていいだろう。ただ本作の場合ここに、攻撃と防御のどちらを優先するかという問題が出てくる。攻撃力を重視するのであれば、敵パネルを入れずに純粋に自分のパネルだけを大量につないだ方がいい。一方、敵パネルを入れるのであればその分、自分のパネルが少なくなり火力は低下する。さて、どうしたものか?こうした判断が発生するところが、本作のパズルを奥深いものにしている。
原作再体験ではなく自分の物語を体験!アバターとして世界を味わうストーリー
本作のように原作が存在するゲームは、原作エピソードの再現を目指すものと、ゲームならではのオリジナル展開を描くものに分かれる。本作は後者。プレイヤーは坊屋春道でも月島花でもなく、プレイヤー自身として本作の物語に参加する。
プレイヤーの外見はアバターとしてカスタマイズでき、ファッションを着替えることも可能。ストーリーはオリジナルの展開を見せるが、もちろん舞台は戸亜留(とある)市。プレイヤーは信頼できる仲間を見つけ、その上で最強を目指すため、梅星一家のお世話になりながら喧嘩の日々を過ごすことになる。
人によってはオリジナルストーリーよりも原作を再現したストーリーを期待するかもしれない。ただ、筆者としては楽しむことができた。そもそも原作である「クローズ」や「WORST」は、それぞれメイン主人公は存在するものの、群像劇のようなテイストを持っていると思う。また「クローズZERO」などのスピンアウト作も数多く作られているので、戸亜留市で最強を目指す男が新たに登場する…という展開も大きな違和感がない。そういう意味で、「もし自分が戸亜留市でテッペンを目指すなら…」というなりきりストーリーとして楽しむことができた。
自分の物語として体験する上で、「クローズ」「WORST」世界としての説得力を作り出しているのが本作の3Dキャラクターだろう。輪郭線やペンのタッチを表現したビジュアルは、コミックのカラー原稿がそのまま動いているかのよう。たとえゲームに興味がなくとも「クローズ」「WORST」ファンなら一見の価値アリと思えるビジュアルだ。このビジュアルによって筆者は、このゲームの世界は確かに「クローズ」や「WORST」の世界なんだと感じることができたのだと思う。もちろん、バトル時も同じ3Dキャラクターが喧嘩バトルを繰り広げてくれる。
ファンならプレイする価値アリ!ただし難易度高めな点に注意
バイオレンスな爽快感とパズルの奥深さを持ったバトルシステム、そして原作であるコミックの世界観を再現した3Dキャラクターといった魅力によって本作は、原作ファンがプレイする価値を持った作品となっている。ただ一点だけ注意が必要なのは、難易度が早い段階で上昇していくことだろう。
一般的なスマートフォン向けゲームの序盤ステージでは、戦い方や育成に気を遣わずともスムーズに展開していくことが多い。しかし本作は比較的早い段階で、自然に育成した主人公より強力な敵が登場する。このため、育成用アイテムの出現するステージを周回プレイするなど、意識的して育成を行わなければならない。ただそのためのスタミナ消費もバカにならないので、やや全体的なテンポは遅く感じられる。
ただアイテム消費なしにスキップ可能になっているなど、周回プレイそのものは快適に行える。なので、じっくり腰を据えて遊ぶという前提でプレイするのがオススメだ。ちなみに、シナリオに深く関わるプキャラクターについては、登場時に原作でどんなキャラクターだったのか紹介される。なので、コミック読了からブランクがあって「どんなキャラクターだったか忘れてしまった…」という人でもバッチリ楽しめるぞ。