現在パッチ6.21まで公開中の「ファイナルファンタジーXIV」(以下、「FFXIV」)のアップデート内容について、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏に振り返ってもらうインタビューをお届けする。

2022年8月23日に実施された大型アップデート「パッチ6.2『禁断の記憶(メモリア)』」では第十三世界「ヴォイド」にまつわるメインクエストや古代人にまつわるレイドダンジョン「万魔殿パンデモニウム:煉獄編」、スローライフが楽しめる「無人島開拓」など、多数のコンテンツが追加されている。

「万魔殿パンデモニウム零式:煉獄編」をパッチ6.2公開から1週間後に開放するという新たな試みへの手応えやサービス9周年の振り返り、久しぶりの開催となったオーケストラコンサート「FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-」にまつわる小話まで、幅広い話題を吉田氏に伺った(インタビューは2022年9月12日にオンライン上で実施)。

※本記事はパッチ6.2のネタバレを含みます。

インタビュー:アサミリナ
文・構成:近藤智

2022/10/14 12:23 記事冒頭のパッチおよび大型アップデートの実装日に関する表記が誤っておりました。お詫び申し上げるとともに、ここに訂正いたします。

“無我夢中”で駆け抜けた9年の歳月

――本日はよろしくお願いいたします。まずは9周年、おめでとうございます。この9年を一言で表すとしたら、どのような言葉になりますか?

吉田氏:一言………………「無我夢中」でしょうか。プレイヤーの皆さんに対してという意味であれば、僕の心境としては「感謝」という一言になります。ゲームだけではなく、リアルのイベントや運営などを含めたプロジェクト全体でいえば「無我夢中」という単語がしっくりくるような気がします。

――その感謝という言葉は、2022年の「新生祭」にもすごく現れていたと思います。新規プレイヤーが増え続けている中、ずっと「FFXIV」を遊び続けている人たちと双方を繋ぐようなメッセージ性を感じました。

吉田氏:旧「FFXIV」から続いていたハイデリン・ゾディアーク編が「暁月のフィナーレ」で完結しましたが、同時にグラフィックスアップデートなどこの先の10年を考えたさまざまな計画を立てています。その中で振り返りと、振り返ったうえでこれからをどうするかという節目でもありますね。

旧「FFXIV」ローンチの厳しい状態からここまで来れたのは、やはりプレイヤーの皆さんの応援に突き動かされてきた部分が非常に大きいです。この次の10年を考えるタイミングだったからこそ、感謝という言葉は素直に出たかなという気はしています。

――遊んでいる我々も感謝しかないのですけれど……(笑)。

吉田氏:ありがとうございます。そして、この先の10年もまだまだ発展させていこうと思った時に、この世界は、まだまだベテランだけで固まってしまったものではないよと。今回の新生祭では新米冒険者を通じて、色々な人たちがこの世界をさらに発展させていってくれるし、これからも色々な人たちが混ざり合って冒険に向かう……というようなイメージになっています。

――「次の10年」という言葉を最近よく口にされているように感じますが、次の10年に向けた今後のビジョンとは、どのようなイメージなのでしょうか?

吉田氏:初期から「FFXIV」を運営してくれている室内(グローバルコミュニティプロデューサー:室内俊夫氏)や小野塚(宣伝チーム:小野塚由紀氏)※は繰り返し聞いたと思うのですが、「世界中の、1人でも多くの人にプレイしてもらう」というビジョンは何一つ変わっていません。

※当日インタビューに同席

――9年やってきたことを今後も続けていくし、続けていくためにどうすればいいかというお話ですね。

吉田氏:はい。この先の10年もそのビジョンに従い、次の10年は今までやってきたことの繰り返しではなく、それをさらに達成させるために、どんな新しいことをやるべきなのかを考えています。新しい世代のプレイヤーにしっかりアピールしていくことは、既存プレイヤーの満足度をより高めていくことにも繋がるので、そういう意味でのビジョンは変わっていません。ただ節目なので、ゲーム内のコンテンツのデザインも含めてさらに新しい施策へチャレンジしていこうと考えています。

――周年のタイミングで「暁月秘話」の更新が続いていますが、吉田さんの思う見どころをお聞かせください、

吉田氏:「秘話」シリーズは、周年のタイミングで公開という定番になっていますね。プレイヤーの皆さんの中でもとくにロアが好き、メインストーリーが好きと言ってくださる方が抱える疑問の一部に、ある程度の答えを提示するようなもの。そしてゲームのテキストとしてはニュアンスが微妙すぎて小説のような文体でなければ表現できないとか、エピソードを盛り込むには尺が足りなすぎるという部分の補完のような意味合いで作っています。

今回の「暁月秘話」はまだ更新の途中ですが、最後の締めによって全体を通じて繋がっていく1つの感情というか、発展というか……人類の歩み、気づきみたいなものが込められたらいいんじゃないかなと思ったので、ぜひ4本目まで公開になった後、改めて通して読んでいただけたら嬉しいです。

――2022年12月17日~18日に「FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 - Eorzean Symphony -」が行われます。久しぶりのオーケストラコンサート開催となりましたが、第1回の時には「会社に確認する前にオケコンの会場を押さえた」という驚きのエピソードがありました。第3回目となる今回で、現時点で語れるエピソードはありますか?

吉田氏:最初から無謀にも4公演でしたからね(苦笑)。当時、コンサート当日に関係者から「4公演はちょっと普通じゃありませんよ?」とか、「土曜はともかく日曜に2回はやりませんよ」と言われたのがすごく思い出に残っています。「先に言ってくれ!」とは思いましたが、幸い非常に評判が良くホッとしました。これ以来「『FFXIV』の予算内でやっていける」と、ビジネスとしても会社にしっかりと提示できたので、これも盛り上げてくださったプレイヤーの皆さんへの感謝しかありません。

――先程の繰り返しになってしまいますが、あんなに素晴らしいコンサートを開催してくださって、こちらも感謝しかないんですよ(笑)。

吉田氏:いや……増えてはきていましたが、あの頃はまだまだ「ゲームサウンドのコンサート……?」というような雰囲気もあったように思います。でも関係者や演者の方々も、光の戦士たちの熱量を感じて「よし、それならこちらもやってやろう!」みたいな相乗効果で回を重ねることができました。

担当者なりの苦労はあったと思いますが、今回はスムーズというか、やると決めたらそこに向けて真っすぐでした。ですので、エピソードといえば……僕が「それ以上痩せると、またタキシードが作り直しになりますよ!」って何人にも言われたくらいでしょうか(苦笑)。

写真は「FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2019 -交響組曲エオルゼア-」より

――今回は国際フォーラム、パシフィコ横浜よりもさらに広い会場となります。それでも現時点で落選したというファンも多く見られましたが、今後、例えばより大きなドーム公演への野望といったものはありますか?

吉田氏:今は第1回の抽選ということもあり、キャンセルなども発生するでしょうから最後のギリギリまで粘っていただけると……。そしてオーケストラコンサートの会場選びは、ものすごく難しいのです。年末年始はクラシックのコンサートが非常に多くなる時期でもありますし、それ以外を避けようとしても他のイベントと競合してしまいます。

それと同時にオーケストラは通常のロックバンド、例えば「THE PRIMALS」のライブなどとはまったく異なる音の環境が必要になります。実は正直なところ、いわゆるPAを入れず、もっと小さな場所で生音だけでやりたいというのが祖堅(サウンドディレクター:祖堅正慶氏)の意思ではあります。祖堅はPA反対派なので、本当はPAを入れたくないんですよ(笑)。

――そうだったんですか(笑)。

吉田氏:でも箱を大きくしないと収益的にも合わないし、箱を小さくするとステージに乗せられる編成も小さくなってしまう。その中で5~6000人収容となると、PAは入れるしかない。クラシックのコンサートに馴染みのない方もいらっしゃるでしょうから「クラシックのコンサートもすごくいいね!」と思ってもらえるよう、こだわりすぎず、PAを入れた迫力のある音作りも大事だろうと、祖堅もそう言ってくれて今の形式になっています。

オーケストラにこだわりのある方はPAが気になるかもしれませんが、祖堅には「初めてオーケストラコンサートへ触れた方には、ぜひほかのクラシックコンサートにも足を運んでほしい」という想いもありますからね。

――実際、そういう光の戦士も多くいらっしゃいますもんね。

吉田氏:きっかけになってくれるのは、とても良いことだと思うのです。今回の会場もPA周りへのこだわりで、スタッフを困らせているんだろうなという気がしますが(笑)。そして、これがドームのような規模になると音の反響や拡散を考えたら、そもそも音のクオリティの維持が不可能だと思います。

どちらかといえば、今回は東京ですが、例えば大阪などでも公演を行うとか、もっと公演数を増やす方向になるかと思います。オーケストラではなく「THE PRIMALS」のライブであればもっと会場を大きくしてもいいと思うんですが、それはそれで箱の奪い合いが凄まじいんですよね……。

――オーケストラコンサートで全国ツアーというのも素敵ですが……。

吉田氏:とはいえ東京フィルハーモニー交響楽団さんの大編成でツアーするとなったら、当然ですけれど凄まじい拘束費用がかかってしまい……そう簡単にはいかないんです(苦笑)。じゃあツアーにするために編成を下げるかといったら、迫力がミニマムになってしまう。僕や祖堅は「やるんだったらドカンとやろう!」という方針でいるので、なかなかパッケージ化するのは難しいところです。

スタッフには最初に言っておいたんですが……僕がMCを担当しているのも、公演回数を増やすことにたいして、難しくなってしまっている要因のひとつですね。できれば東京と大阪の2会場くらいは……とはいえ現在はコロナ禍もあり、いきなり手を広げた計画もできなかったので、今後の課題とさせてください。

いよいよゴルベーザが登場!“禁断の記憶”に込められた意味は?

――続いて、パッチ6.2について伺っていきたいと思います。今回のパッチはメインクエストや「万魔殿パンデモニウム:煉獄編」などを含めて、まさに「禁断の記憶(メモリア)というタイトルがぴったりだったと思います。これはメインとパンデモニウムのシナリオを合わせたのか、うまくかみ合ったので名付けられたか、どちらなのでしょうか?

吉田氏:後者です。もちろん全体のディレクションはしますが、ストーリーはメインと、脇を固めるストーリーがそれぞれに驚きがあって、ゲーム体験として面白くなるようにというのが第一です。ですので、片方のテーマがこうだから、こっちのテーマに近づけるため、シナリオを変えてくれ、などはオーダーしたことはないですね。

――あまりにどちらにも「禁断の記憶」という言葉がぴったりはまっていたので、寄せているのかとも考えましたが、ある意味で偶然の産物なんですね。

吉田氏:というか逆なのです。出来上がっているものに合わせて、名前を決めていく、ということです。今回は結果的に、メインのストーリーでどのように物語を展開していくか、という時に生まれたキーワード「メモリア戦争」と、ラハブレアの忘れ去りたい、もしくは消し去りたい、でも切り捨てられない記憶や過去みたいなものが綺麗にリンクしたんです。

パッチタイトルを決める時に、今回は思い出したいもの、思い出したくないものも含めて「記憶(メモリア)」となり、その前に付ける単語としては色々な候補が出てきた中で「これが一番分かりやすいよね」というので「禁断の記憶(メモリア)」となりました。

――パッチタイトルの決定はどのようなタイミングなのでしょうか。

吉田氏:7~8年くらい前は「いつPLLで出すんだっけ?」と、直前ギリギリで決めるみたいな空気があったのですが、今は宣伝チームがすごく丁寧に「イラストをいつ公開したい」「PR計画をしっかり確立したい」ということで、宣伝計画全体をフロー化してくれたので、リリース3カ月前くらいには締め切りが設定されています。ちょうど先日、6.3のパッチタイトルを決めたところです。

――メインクエストでは、いよいよゴルベーザが登場しました。5.3のウォーリア・オブ・ライトは別として、過去作のオマージュがこれだけメインクエストに絡むのは初かと思いますが、スムーズに決定したのでしょうか?

吉田氏:「FFXIV」で「これをやってはいけない」と決めているものはあまりないのですが、過去作オマージュを使うという場合、「彼らがそのまま登場するとか、ただ過去作を踏襲するような物語は絶対にNG」というルールがあります。

あくまで雰囲気やキャラクター名が同じ、または似ていたとしても、必ず「FFXIV」の世界のゴルベーザならゴルベーザ、スカルミリョーネならスカルミリョーネにしてくれと。そこは絶対に外してほしくありませんし、チェックでも徹底している部分のひとつです。

「希望の園エデン」などでも、セリフがただ引用されているな、と感じたものは多数カットしていましたし。そこは、過去作やキャラクターを扱わせてもらうからこそ、リスペクトとともに、「FFXIV」のオリジナル性にもこだわっています。

――なるほど、ある程度の必然性が必要だと。

吉田氏:シリーズを楽しんでくださっている方は、「FFIVの時はああだったけど、でもFFXIVだし……?」と想像する楽しみ方もありますし、まだ「FFIV」をプレイしていない方には「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター」シリーズなどで遊ぶきっかけになればいいなと思います。

一方、何も知らない方には単純に新キャラクターとして受け止めていただけるでしょうし。FFのテーマパークとして色々な世代のプレイヤーがいるので、ゲーム内のコミュニティでも多彩な話ができたらいいですね。

――ゴルベーザ四天王の再現度がすごく高くて驚きました。とくにスカルミリョーネは、原作で食らうバックアタックのような活かし方も素晴らしかったです。

吉田氏:ありがとうございます。ただ、スカルミリョーネに限らず、これまでに登場しているボスは、どこかにオリジナルボスの「FFXIV」ならではの再現ギミックを仕込んでいます。そこはバトルコンテンツを作っている中川(リードバトルコンテンツデザイナー:中川誠貴氏)のこだわりが強いですね。

バトルコンテンツを作っているメンバーは、全員が必ず「シリーズを遊んできたプレイヤーに、なんとしてもニヤリとさせる場所を作るぞ!!」という気概でやっているので。スカルミリョーネは僕が最初に調整に入ったときは、もうちょっと強かったんです。「いくらなんでも力を入れすぎだから、もう少し下げよう(笑)」となったくらいでした。

――これまでも一部特殊な天候はありましたが、第十三世界の天気が「虚無」なのはゼロの心象などを表しているのでしょうか?

吉田氏:担当者に詳しく聞いたら「それをイメージしました」という回答があるかもしれませんが、僕のチェックに回ってきた段階ではそういった話までは聞いておらず……。

ちなみに最初にマップチェックで空を見た時は、ちょっと綺麗すぎたんです。儚さは確かにあるんですが、闇に飲まれた世界なのに美しさを感じてしまう空だったんです。

――美しすぎた……第一世界みたいな感じでしょうか。

吉田氏:はい。第一世界は光の反乱によって滅びゆく世界で、だからこそ光が差し込んでいて神々しくも見えるけれど、実は世界全体に死が迫っている象徴でもあるという絵作りをしました。しかし、今回もそうした綺麗さ、神々しさ、儚さみたいなものも表現されているように感じてしまったんです。

今回は「クリスタルタワー:闇の世界」でも既に第十三世界に行っているので、そことの掛け違いが出すぎるのもよくないと。闇に飲まれる、黒に塗りつぶされるということは、基本的に光も反射しなくなって……といったことを考えると、難しいけれど、綺麗さに逃げるのはやめようと。

そうした話し合いの中でトーンを落としてもらったので、天候から色々と感じ取ってもらえたのなら、無理をお願いして調整した甲斐はあったのかなと思います。

――新キャラクターとしてゼロが登場しましたが、プレイヤーからの反響はいかがですか?

吉田氏:正直なところ、不安半分ぐらいだったんです。彼女の生い立ちというか、原初世界でゼノスが使役していたアバターそのものである、という設定から作っていったので、ゼノスそのものではありませんが、うまくやらないとプレイヤーに「もうゼノスはいいよ」と思われてしまいます。

ゼロが序盤に「お前は友か?」といった問いかけをしてきますが、選択肢などもかなり気を遣って調整しました。でもプレイヤーの皆さんの反応を見ていると、うまくゼノスとは分離できたかなと。

ゼロ個人として、ルックスも声優さんの演技も「今までの「FFXIV」になかったキャラクターだ!」と新鮮に受け入れていただけているようで。とくに海外からの人気がすごく高くて、そこは予想していませんでした。

――まだ話せない部分も多いかと思いますが、ゼロはどのように作られていったのでしょうか?

吉田氏:当然どんな役割、どんな過去があり……というところに関しては6.Xシリーズのプロットを書く段階ではもう決まってはいたんです。

ただエピソードを作っていく、口調を決めていくところでは結構苦労があったように思います。喋りすぎないようにしたいけど、嫌われすぎないバランスとか、「基本ツンツンに見えるけど、エーテルをくれればデレる」みたいなニュアンスをうまく作らないといけなくて。メインストーリーも何人かのリレーで作っていくので、ライターの書き味によってゼロのキャラがブレるのもよくありませんので、この辺りの統一はシナリオチーム全体で頑張ってくれたと思います。

ルックスに関しては「吸血鬼ハンター“D”(ヴァンパイアハンター・ディー)」のような、トラベラーズハットを被っていて、品のある美形というところは最初の段階で提案していました。

――天野喜孝さん繋がりですね。

吉田氏:新キャラクターとして出すので、天野先生に寄せたいという話もしました。立ち姿がなかなかキマらなくて、モーションは何度かトライして調整してもらいました。久しぶりの新キャラクターということもあって、皆で意識合わせや言葉合わせみたいなものをしたのですが、苦労した分というか、人気が出てくれているのでありがたいです。

――ちなみに、ゼロの拠点のモチーフは「FFIV」の「バロンの町」なのでしょうか?

吉田氏:モチーフというほどではありません。ただ、第十三世界のエピソードを作って行く上で、専用のエリアが必要になります。しかし、フィールドをまるごと新造してパッチでリリースするコストはない。しかし第十三世界で冒険をしているはずなのに、それがIDや討滅戦のみでは第十三世界に行っている感がありませんよね。

それをどうするかという中から、IDを利用して移動できるイベントマップにするとか、ほかのイベントマップのコストをかき集めてはぐれ妖異の里を作るというアイデアが出ました。

モチーフありきではなく、僕らがプレイヤーの皆さんに提供したいゲーム体験を表現するべく必要なものを配置した結果、色々なものを参考にしてこうなったという感じです。激しいコスト争いと苦労が詰まっています。

――そうだったんですね。拠点のBGMが「哀しみのテーマ」なのもこだわりを感じました。

吉田氏:ここ何年は石川(シニアストーリーデザイナー:石川夏子氏)がサウンド発注を担当してくれているので、多分ライターと石川の間で話をして「ぴったりなのはこれだよね」という感じかなと。ここに限らず、あらゆる曲選定はそうしています。

――パンデモニウムでは、ラハブレアの話がレイドの2つ目で区切りを迎えるのが少し意外でした。あまり長引かせないようにするのは最初から想定していたのでしょうか?

吉田氏:さて、あれで終わっているのかどうかは分かりませんから……(笑)。何といっても衝撃のラストで終わっていますからね。あの中身がどこにどう繋がって、どうなっていくのかは今後にご期待ください。

僕らは天邪鬼なところがあって、もう長年プレイしている方は、「ラハブレアが最後なんだろうね」みたいに想像していたと思うんです。そこで第2弾でこうしたら、予想がつかなくなりますよね。

――ウッ、確かにそうです。ちなみにエルピスで収束せず、現代を絡めていくのも意外性を狙っていたのでしょうか?

吉田氏:意外性を狙ったというよりは、驚きや予想のつかないワクワク感ですね。連作やシリーズもの、テレビドラマシリーズのように進んでいく「FFXIV」のテーマでもあるので、奇をてらってというよりは、そこに驚きとワクワク感があるというとことですね。

あとエルピスは、どうしてもメインストーリーでの時系列の扱いが難しい場所なんです。光の戦士は自分の時の流れに帰ったはずなのに、戻ってきていたりするし……。ですので、あまり広げるとやりにくくなるという考えもあります。

――テミス=エリディブスは、6.0の段階で意図的に匂わせていたようにも感じましたが、プレイヤーの間でも「どうなんだ?」と少々割れていたようにも感じます。意図としてはどちらだったのでしょう?

吉田氏:僕はあまり注視していませんでしたが、最初から隠すつもりはありませんでした(笑)。そもそも6.0のエピローグというか、次につながるセリフの中で月を見上げながら石田彰さんのボイスで喋っていますので、どう考えても「来た!!」と思ってもらえるだろうと作っていました。

――あ、やっぱりそうだったんですね(笑)。

吉田氏:ただ、6.0では本人がエリディブスであるとは言わない。アゼムから予言めいたことを聞いて、あなたとの出会いは分かっていたと。あえて言わずにいたじれったさは狙ったところです。プレイヤーの皆さんは「自分は彼が誰なのかを知っているぞ!」と思いながら遊んでくれるだろうなと。

結果的にですが、テミスのシーンは「新世紀エヴァンゲリオン」の渚カヲルと被ってしまいましたね。でもこのカットシーンを作った担当者は、作品を見たことがないという若いスタッフだったんで面白いなと。

――そうなんですか?! 正直狙ったんだと思った「エヴァ」リアタイ世代ですよ……(笑)。

吉田氏:「完全に狙ってやったよね?」って聞いたら、「何を言ってるんですか?」みたいに返されて、びっくりしました(笑)。すごいシンクロですよね。

――「暁月秘話」では仮面についての話題もありましたが、アテナの素顔が現れなかったのは彼女の心情とも関係があるのでしょうか?

吉田氏:そうですね……今後の展開もあるのでまだ何とも言えませんが、意外とコストが取れなかった可能性もあるので明言しないでおきます(笑)。

無人島ではスローライフ漫喫が多数! 零式の1週間ずらしは好評

――無人島は、どのように遊ばれているプレイヤーが多いのでしょうか? 個人的にはスローライフを体現するかのように、まったりと遊んでいるのですが、スローライフというよりヘビーライフを送っている方の方が多いようにも思います。

吉田氏:グローバル全体を通じて、適度に遊んでいる方が圧倒的に多いです。多分、ものすごくやり込む方が目立つだけのような気も……。自分のペースで放置して、思い出した頃にまた遊んでというプレイをしている人が圧倒的に大多数です。

――私は今ランク7で、これはまったり遊んでいるペースなのか、そうではないのかがよく分からないのですが……。

吉田氏:今ランク7なのは「毎日こまめに遊んでくださってますね」ぐらいの感じですよね。「今日はもういいや」とかにならずコツコツ遊んで、今日はここまで頑張ろうみたいな。

――そうですね。

吉田氏:だとすると、もう数日は遊ばずに飛ばしているような方のほうが多いです。「今日は忘れていたけど、まあいいや」みたいな。

――無人島を遊んでいるのは、全プレイヤーの何%くらいなのでしょうか?

吉田氏:割合数は、まだ僕のところに来てないです。もう1週間ぐらいで継続も含めたデータが出てくると思うんですが。

海外の方のほうが「スケジュール立ててやらなきゃダメだ!!」となっている人は少ないと思います。「ミニオンをバラまいてまったりする」とか「名付けた羊を一生撫でてる」とか「オポオポをひたすら捕まえてる」みたいな方々が圧倒的です。

――こういうところで現れる国民性というやつですね(笑)。

吉田氏:SNSに「吉田たちにスローライフの定義をちゃんと教えたほうがいいんじゃないか」「ブラックすぎる、これをスローライフだと思ってるの?!」みたいなコメントがあったんですが、やれと言われていないのにやってしまうのは農耕民族である日本人の特徴なのかもしれません(苦笑)。

キッチリしているから「スケジュールをテキパキ組み立てればこうなるじゃん!」となったら、やらずにはいられない人たちが多いような印象もありますね。

――(身に覚えがある)

吉田氏:むしろ、こういう仕組みがないと、おそらく「何をしていいのか分からない」とか「やることがない」「放置でいいじゃん」という声がすごく多く上がったと思うんです。今回が初期リリースということもあって、「何をすればいいかを明示する」というのは、意図的にそちら寄りのバランスにしました。効率よくやろうとすると「スローライフじゃない!」となってしまうのは、ある程度は仕方ない、と考えたのです。

繰り返しになりますが、やってもやらなくてもいいのがポイントなんです。「報酬を目的とすると辛い」というお声も見ましたけど、急ぐと確かに大変だろうなあ、と思います。

――私は急いでいない部類のようですが、それでも気持ち的にはとてもよくわかります(笑)。

吉田氏:こちらもそういう声が出るのを分かった上で、そうしておいたほうが遊ぶ人は増えるだろうなと思っていました。ただ、今後はいただいたフィードバックを元に足していくものや拡張していくものを、もっと緩くしていくのか、今と同じペースにするのか協議していきます。この辺りはしっかりいただいたフィードバックを意識して、拡張/発展させていきたいと思っています。

――現在はフレンドの島へ遊びに行っても見た目の変化が乏しく、似たような雰囲気になってしまいがちです。今後、遊びの幅についてアップデートは考えていますか?

吉田氏:建造物の種類は増やしていきますし、建てられるエリアの拡張もしますが、サンドボックス型のゲームを提供しているわけではないので、建物が建てられる場所は変わりません。これはもう「FFXIV」の構造上、どうしても無理なのです。バリエーションの差でぱっと見の違いがだせる、というのはやりたいと思っていますが、そもそも見比べて楽しむというコンセプトのものではないところはご理解ください。

実は、どうしても比較が出てしまうため、最初はフレンドの島にも行けないようにしていたんです。でも、行きたいという声が上がってから対応することになるならやっておこうかと。

今後は庭具を配置できるようにするなど、差別化はできるようにしていこうと努力していますが、人との差でいえば、どうしてもハウジングには勝てません。自分がどう過ごしやすいか、というところをある程度目標にしてほしいです。

――今回、零式の実装が1週間ずれました。プレイヤーからのフィードバックはいかがですか?

吉田氏:コミュニティチームの調査では、今のところ「今後も1週間ずらしてほしい」という声が9割近いです。ただ、いわゆる新式、クラフター装備の売れ行きに関しては結構割れていて、売れないんじゃないかと予想して作らなかった人たちがいるからなのか、すごく儲かったという人と、値崩れが早いという人がワールドによって違っているんです。

そのためもう1度、各ワールドのマーケットに出品された数、取引された回数、平均ギル数を出してくれとサーバーチームに話しているところです。経済状況に関してはそのデータを見つつ、次のタイミングでまた1週間ずらすのであれば、当初準備していた施策を適用していこうかなと思っています。

それとレイドをプレイする方の一部から、アラガントームストーンを450貯めてから行くことになるから、排出は零式と同時がいいという声もありました。一方で零式をやらない人にしてみれば「何故、零式の都合で合わせなければいけないのか」となりますし、難しい部分ですね。こうした点以外は日本も海外も含めて「今後も1週間ずらしてほしい」という意見が強いですね。

――個人的にも新式の話題を耳にしていたのでもう少し割れるかと思いましたが、9割が高評価というのは意外でした。

吉田氏:PLLで何度かお話ししたように、これは条件付きです。今回よくなかった点をどう改修していくかのフィードバックをくださいとお願いしているので、例えば「経済状況や新式の値崩れのタイミングを調整してもらえるなら」といったものを含めた9割で、全員が諸手を挙げて賛成という9割ではありません。

――「ヒドゥンゴージ(機工戦)」が復活しましたが、「クリスタルコンフリクト」の実装でPVPへのハードルもだいぶ下がったと思います。参加率などは以前と比べていかがでしょうか?

吉田氏:PVPに関しては、すべてのコンテンツで過去最高のプレイヤー人口になっています。倍どころではないレベルでたくさんの人が遊んでくれているので、この勢いは大事にしたいと思っています。

これからもしっかり丁寧にアップデートしていくのと、ゲーム全体に占める報酬の割合ももう少し強化して、絶えずPVPが動いている状態にしていきたいですね。

「ヒドゥンゴージ(機工戦)」に関しては、今まで遊んでいなかった人たちが「クリスタルコンフリクト」から興味を持って流れていてくれています。

ただ以前はすごくいいバランスだったのに、全ジョブのPVPの調整で遊び心地が変わってしまった部分もあります。ここはピンポイントに非常に有難いフィードバックをいただいているので、それらを少しずつ適用していって、今のジョブバランスでもエキサイトできるように調整していきます。

また「ヒドゥンゴージ(機工戦)」はDCトラベルを使って、特定のDCに集まって遊ぼうという動きもあります。ランキングがない分できることなので、DCトラベルを入れた効果もあるのかなと思います。

――それでは最後に、6.25について見どころをお願いします。大きなところでは、ヴァリアントダンジョン「シラディハ水道」や、武器強化コンテンツ「マンダヴィルウェポン」などが追加されますね。

吉田氏:何といっても、これからも続けていこうと思っている新コンテンツ「ヴァリアントダンジョン」と「アナザーダンジョン」という、まったく新しいタイプのバトルコンテンツはぜひプレイして、フィードバックをいただきたいと思っています。

とくに「ヴァリアントダンジョン」は1人でも2人で3人でも4人でも、自分の所属するスモールコミュニティの中で自由きままに遊べます。

効率よく6本のルートをクリアしたら隠しルートに行けるような直接的なフラグ制御のようなものではなく、謎解きによって導き出されるものも入れてあります。そのあたりのチャレンジが皆さんにどう受け入れられるのかは楽しみにしていますし、バトル自体も面白く仕上がっているので、ロア好きの方も含めてご自身のペースで1日1ルートくらいでまったりと遊んでもらえれば。

「アナザーダンジョン」は、とくに海外勢を中心に6年くらい言われていた「少人数での高難易度レイドダンジョンがほしい!」という声に応えたものです。その分、我々が「よし、分かったぞ!」と腕まくりをして作った4人用の高難易度コンテンツになっています。零式が終わった方々には、こちらにもぜひ挑んでいただけるとありがたいです。

――ありがとうございました。

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