最終章のリリースが待たれるVR向けアドベンチャー「DYSCHRONIA: Chronos Alternate(以下、ディスクロニア:CA)」の「Episode II 終局の銃弾」をおさらいレビュー。物語に追いついて、クライマックスに備えよう。
VR向けアドベンチャーゲームとして、各所で好評を博している「ディスクロニア:CA」。第1章にあたる「Episode I 偽りの目覚め」(以下、EP1)が2022年9月23日に、「Episode II 終局の銃弾」(以下、EP2)が同年12月9日にMeta Quest向けに発売されている。さらに2023年にはPS VR2版もリリースされ、ディスクロニア・ワールドは広がりの一途を辿っている。
昨年の話になるが、本作はEP2の発売直後に発表された「2022 BEST OF QUEST」においてストーリー部門を受賞した。「2022 BEST OF QUEST」は、Meta Quest向けに配信された作品から、カテゴリごとに優れた作品を表彰するというもの。後にPS VR2のローンチタイトルとしても選ばれている本作の実力は折り紙つきだ。
一方で、続きものの作品の常として、EP1をプレイしたものの、EP2をなんとなくプレイせず……という人もいるはず。そんな人にEP2の魅力を伝えたいのが本稿だ。興味を持った人はEP2をプレイし、そのまま最終章に飛び込んでいってほしい。
個々のキャラクターの謎が解き明かされていく物語
この物語の発端となった、アルバート・ラムファード博士の殺害事件。創設者が殺されるというアストラム・クローズ全体を揺るがす大事件の犯人は、彼がつくり上げたヒューマノイド・システリアであった。そのシステリアには、眠ったまま目覚めないはずのマイア・ガネットの意識が入っていた。マイアの命を救うべく、ハルは都市管理局から狙われるシステリアを守ろうとする……。
というのが、EP1までのストーリー。EP2の冒頭では、EP1のおさらいができるパートが用意されているので、EP1プレイ後にしばらく間が空いてしまった人も安心して始められる。
EP2のボリューム自体はそこまで大きくはない。しかし、アストラム・クローズを構築するシステムや世界観、そこに潜む謎を一つ一つ紹介していったEP1に比べて、EP2はキャラクターたち一人ひとりを深掘りしていくシーンが目立つ。
例えばアイリ・クローバー。EP1では、プレイヤーからすればどちらかというと危険人物寄りの存在だった彼女だが、その正体や役割、アストラム・クローズにいる理由が徐々に明らかになっていく。
そして、アイリはEP2のキーパーソンの一人である。2022年末に行われたEP2の発売記念イベントでも(ほぼ)明らかになっている通り、彼女は第2の殺害の被害者となってしまうのだ。誰が殺したのか、その動機は何か、アイリはどうなるのか……。特に、EP2後半で犯人が明らかになった際の驚きはなかなかのもの。ぜひ体験してほしい。
忘れてはならないのが主人公であるハル・サイオンである。3年前、ラムファード博士によって行われた実験中に起こった事故の影響で、実験以前の記憶を失っている彼の過去が、このEP2で少しずつ明らかになっていく。
詳細に関しては伏せておくものの、大きな影響を及ぼしているのは変異体としての生い立ちだ。その出自ゆえ、ハルとその母は迫害を受ける身分であり、過酷な砂漠の街で身を隠しながら生きなければならなかった。そんな二人に降りかかる悲しい出来事が、ハルの過去を巡るストーリーで明らかになっていく。
幼いハルに否応なく訪れる試練、そしてそれを追体験するハル自身のことを思うと、切なさを感じずにはいられない。こちらも、EP2の大きな見どころの一つである。
ステルスパートが大幅にパワーアップ
ゲーム性に目を向けてみると、序盤で楽しめるステルスパートが大幅にパワーアップしていた。
実験室に来たハルは、そこで眠っていたシステリアとともに閉鎖区間の管理室への侵入を試みる。ここではドローンの監視網が張り巡らされており、ハルとシステリアは二手に分かれつつ協力して、監視網の突破を目指す。ここでステルスパートが楽しめる。
ハルの行く手は大きく増殖したクリスタルが阻んでいるが、システリアはその能力によってクリスタルを破壊することができる。プレイヤー(ハル)はドローンの目をかいくぐりながら、要所でシステリアに手を振ると、システリアがクリスタルを破壊してくれる。
キャラクターと協力して苦境を乗り越えていく体験はよくあるものだが、これがVRになると、一般的なゲームとはまた受ける印象が違い、没入感が非常に強く感じられるパートだった。ゲーム性の観点ではこのステルスパートがEP2では最も面白く、もっとプレイさせてほしいくらいだ。
EP1でも見られたパズルパート、審問パート、メンタリングパートも楽しむことができる。
パズルパートは前述したハルの過去を追体験するシーンで楽しめる。エリアに落ちているアイテムを拾っていくと探索可能なエリアが拡大していき、謎解きに必要なヒントも集められるという形式だ。EP1に比べると謎解きはかなりシンプルで、身構える必要はない。
審問パートは、これまた前述したアイリ殺害事件の解明のために行われる。監視がついていたはずのアイリがいかようにして殺されてしまったのか。今回の事件はホテルの1フロアのみが舞台となっているため、プレイヤーとしても状況を整理しやすい。事件解明の鍵となる「ファクトアイテム」も集めやすく、EP1の審問パートより難易度は低めになっているように感じた。個人的には、審問パートは捜査ADVである本作の醍醐味とも思っているので、遊びやすくなっている点は好感が持てた。
メンタリングパートはEP2のクライマックスに訪れる。混乱するアストラム・クローズの住民たちの心を落ち着かせるべく、何度かメンタリングを繰り返すのだが、目の前に表れるオブジェクトを順番に押していけばいいだけなので、正直なところゲーム的な面白さはない。それよりも、EP2のクライマックスを迎えるストーリーとスケールの大きな映像美を楽しむ方がいい。デカいものを見上げる気持ちよさは、VRでコンテンツを楽しむ上での大きな醍醐味だ。
まとめ
ゲーム性の面では、のめり込める点と退屈に感じてしまう点が混ざり合ってはいるのが正直なところ。しかし、ストーリーとしては風雲急を告げる展開が何度も起こり、かなり引き込ませてくれる。
1作目からパワーアップしたパートも味わうことができつつ、最終章のストーリーへの期待感も膨らむという、全3作のうちの2作目として申し分ない出来と言っていい。確かにクリアまでの総プレイ時間は短めだが、正直これで1,500円足らずでいいの? とすら思える。EP1で止まっているプレイヤーは、ぜひEP2もプレイしつつ、来たるEP3に備えてみてはいかがだろう。
(C)Project DYSCHRONIA.
※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。
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