アクティブゲーミングメディアが、2023年7月18日にSteam/DLsiteで配信開始した恋愛アドベンチャーゲーム「狂気より愛をこめて」のプレイレポートをお届けします。
絶対に会話が噛み合わない男性と織りなす、狂気と愛
本作はヴァンパイアの開発ブランド「jamsanpoid」が手掛けた、絶対に会話が噛み合わない4人の男性たちと恋愛を楽しめるフルボイスのテキストアドベンチャーゲームです。会話が噛み合わないといっても「何を言っているのかまったく分からない」から「会話は成立してるような気はするけど、絶妙にズレている」まで、タイプはさまざま。そして最初こそ、そんな不可思議な状況や独特の世界背景にツッコミまくっていましたが……気がつくと「この人ともっと一緒に過ごしたい!」と自然に恋へ落ちている、ある意味とても恐ろしいゲームです。
そんな本作を、イケメンと可愛い女の子をこよなく愛する筆者が乙女ゲーマーの視点でご紹介していきます。乙女ゲームも何故かろくに会話もしていないのに敵意を向けられたり、自己完結しすぎて何を言っているのか分からないことも少なくありませんから、会話が噛み合わない程度でひるんだりしませんよ!
主人公は一人称を「私」「俺」「某(それがし)」から選べるので、乙女ゲームのような遊び方はあくまでも一例。スチルに外見もほとんど出てきませんし、きちんと会話してくれる数少ない先輩、マキシマム穴子のように人間じゃない存在もごく普通に登場します。プレイヤーが自由に思い描いた主人公像で楽しんでいきましょう。
「実際に言った寝言だけで作詞した歌」というオープニングテーマを経て、いよいよゲームスタート! 主人公はもともと通っていた学校が爆破されたため、家が近かった私立古詩庵歌羅芽琉院学園(しりつこしあんからめるがくいん)へ転校してきた高校2年生。学園生活を送る中で選択肢の結果によって好感度とストーリーが変化し、さまざまなエンディグへたどり着くことができます。乙女ゲームで例えるなら、いわゆる共通ルートのような流れを経て、好感度により個別エンディングを迎えるようなイメージですね。真面目にプレイするのであれば、八方美人ではなく「この人!」と明確な選択肢を選び続けましょう。話が通じない相手の場合、好感度アップの選択肢は乙女ゲームに慣れている人ほど逆を選んだほうが正解する確率が高いです。
新たな母校で部活動に励んだり、うなぎとばし大会へ参加したり、気になる相手と夏祭りやバレンタイン、誕生日を過ごしたりと多彩なイベントをこなしながら一年間を過ごすうちに、攻略対象キャラクターのさまざまな一面が見えてきます。センシティブだったりバイオレンスだったり、刺激の強い出来事も乗り越えていくうちに、言葉が通じなくても不思議と彼のことが気になって仕方がなくなること間違いなし。ちなみに「通常モード」のほか、肌色が多い画像にほんのり修正が入る「配信モード」も用意されているので、センシティブ具合が気になる人はいったん配信モードで遊んでみましょう!
個性の炸裂した4人の男性と迎える結末は……?!
続いて、登場キャラクターについて紹介していきます。個人的なおすすめプレイ順は、比較的軽めの佐伯祐介orアオルタ、比較的重めの田村マシュマロor荒川修司です。
“同級生で金髪イケメンチャラ男”の佐伯祐介は、実は爆破されてしまった主人公の学校でも同級生でした。幼馴染とまではいきませんが主人公との関係値では一歩リードしている存在でもし、本作にパッケージがあったらセンターに描かれていることでしょう。クラスも同じなので何かと接触も多く、謎の単語を並べてくることや、ふと気づいたら頭にカジキが刺さってることなど以外は概ね一般的な高校男児といったところ。最初は陽キャだからと苦手意識のあった主人公でしたが、彼のさりげない優しさに心惹かれていく過程は素直に「分かる!!」と思えます。そしてこの限りなく普通に近い空気感から急転直下していく展開は、だいぶ胸に来るものがありました……。
“保険医を務める糸目セクシー”な荒川修司は、髪に絡まったタツノオトシゴと共生している点と、話が通じているのかいないのか絶妙に悩ましい返答ばかりなのが気になるものの「めちゃくちゃイケボ!!」で何もかもに騙されてしまうタイプです。会話が通じていないわけでもなさそうなので、主人公も「何を言っているのか分からない!!」と匙を投げず、かなり頑張ってツッコミを入れるのもほかのキャラクターにはないポイント。基本的に大人しめでおっとりした雰囲気ですが、糸目キャラクターといえばお約束の開眼イベントもあり、そこで見せる黒い気配も見どころのひとつです。危ないキャラクターほどつい惹かれてしまうのであれば、迷わず選んで間違いありません。
“かわいらしいけど謎が多い恐らく下級生”の田村マシュマロは、とにかく一言目に暴言、二言目に罵倒といった感じで会話が成立しないタイプです。塩対応とかそんなレベルではなく、かなり強めの罵詈雑言が飛んでくるのですが、この可愛らしいお顔と声ですべて許せてしまうんですよね……。主人公がかなり邪な感情を抱きつつの全面降伏っぷりも分かる気がします。また、罵倒は罵倒なんですが色々な意図を感じる部分もあり、その合間にちょっとだけ見せるキュートな表情に「可愛い!!」と思わされるのもズルいところ。個人的に、イベントをこなしていくと何となく彼の抱えている秘密や結末は見えてくるので衝撃はいくらかマシだったものの、じわじわと押し寄せる不安との戦いになりました……。
“生徒会長を務める青白い肌の3年生”であるアオルタは異国の言葉を使うので、もっともストレートに「何を言っているのか全然分からない!!」となるキャラクターです。ボイスも逆再生のような感じで、ここから読み取るのはかなり難しいでしょう。それでも言葉が通じないなりに気を遣ってくれている姿には、素直にキュンとなりますね。実は彼が何を話しているのか知る方法はあるので、それを見つければ一気にコミュニケーションが取りやすくなりますよ。生徒会長という立場から察せるとおり成績優秀な一方、私たちにとってお馴染みの風習などには疎く、仲良くなるとちょっぴり不器用な面も垣間見えます。陥るシチュエーションといい見せる表情といい、思わず「あなたがヒロインか……??」と言いたくなることも多く、かなり正統派のラブコメといった印象でした。ただし、それも終盤まで。そこからは、とても切なくなります……。
絶対音感持ちが聞いたら発狂するんじゃないかと思うチャイム音や、やたら巻き舌になる担任の先生、ズレまくっていて一切その意味をなしていない自主規制音、明らかにフラグをへし折った時の主人公の豪快な反応、セリフを噛んでしまってうっすら笑っている状況もそのまま使っている、全然違うことを言っているのに何故か脳内に聞こえてくるネットスラングなどなど、笑える(?)要素も盛りだくさんの本作。なので「ちょっと変わったところはあるけど、一般的な恋愛ゲームの範疇なんじゃ?」と思えてしまうかもしれませんが、当然そんなことはありません。最後に待ち受けているのは「狂気」とも「愛」とも呼べる何か。これからプレイしようと思っているあなたは、どのような結末でも受け入れる覚悟はできていますか……?