バンダイナムコエンターテインメントが2025年1月16日にPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Steam)向けに発売を予定している「テイルズ オブ グレイセス エフ リマスター」(Steam版は2025年1月17日)の先行プレイレポートをお届けする。
2010年に発売された「テイルズ オブ グレイセス エフ(以下、グレイセス エフ)」のリマスター作品となる本作では、グラフィックや遊びやすさの向上が図られていたほか、リマスター前から好評だったバトルについても変わらぬ魅力を放っていた。今回はその点を中心に紹介する。
記事の後半ではプロデューサーの石川結貴氏へのインタビューの模様をお届け。リマスター版の新たな要素や今後の展開について語っていただいたので、ご一読いただければ幸いだ。
ストーリーやバトルの楽しさはそのままに、さらに遊びやすく
今回の先行プレイではPS5を使用して、青年期序盤のバロニア城攻略からラント奪還時のリチャードとのボス戦までを遊ぶことができた。筆者はWii版・PS3版共に既プレイだったのだが、最初に触って感じたのはいい意味で当時と変わらない感覚が蘇ったことだ。もちろんリマスター作なのでその部分が変わってしまうのは困るのだが、現行のハードで「グレイセス エフ」を違和感なく遊べるという点に感動を覚えた。
「テイルズ オブ」シリーズは現在、一部のリマスター済みタイトルやPS4など現行ハードでの展開が既になされたタイトル以外は遊ぶのが難しくなっている。筆者も10年以上前に購入したPS3が動かなくなってしまってから久しく、また本作を遊びたいとは思っても難しい状況だった。そんな作品にまた触れられた喜びは本当に大きかった。
遊んでいる感覚が変わらなかったと前述しはしたが、それは様々な遊びやすいシステムを搭載したRPGが出てきた現代でも遜色がなかったからという面もあるだろう。リマスター化に際して様々な調整が加えられており、だからこそ当時と同じ感覚でアスベルたちの物語を楽しむことができた部分はある。
第一にピックアップしたいのが目的地表示機能。RPGなのでマップを隅々まで探索したくなるのはもちろんなのだが、時には迷うこともあるのがご愛敬。
筆者も流石にPS3時代の記憶を頼りにしている部分があったので少し迷ったところがあったのだが、この機能で目的地の大まかな方向や現在の地点からかかる歩数がわかるので、スムーズに物語を進められた。久しぶりにプレイする方はもちろん、リマスター版から遊ぶ方にも大変ありがたい機能だろう。
もうひとつがボタンを押している間にダッシュができるという機能。こちらはグレードショップの「スピードマキシマム」や一部料理を使用している場合は除くようだが、グレードを消費したり一部料理の効果を得ずとも移動がスムーズになったことで、初めて遊ぶ場合でもストレスフリーになったことは間違いない。
ボタン長押しでのイベントスキップ機能も追加されているので、何度も周回する場合に活用するのもいいだろう。「グレイセス エフ」はストーリーを楽しむのはもちろん、強敵とのバトルを楽しむプレイヤーも多かったので、上手に活かしてバトルを楽しみたい方も多いはず。
そしてバトルに関しては、通常戦闘の敗北時にリトライ機能が追加されていた点が非常にありがたかった。流石にプレイしたことがあるから大丈夫だろうと、操作や技性能などのプレイ感を思い出す前から戦闘の難易度をハードにするという無謀なことをやってしまい、バロニア城を歩いている騎士たちにタコ殴りにされて「マモレナカッタ…」を連発していたのだが、本作では敗北したところからすぐさまやり直すことができる。
その際にメニュー画面へ入るので、筆者のように調子にのって上げ過ぎた難易度を落としたり、セットしている技や装備を変更したりすることが可能。通常戦闘で事故ってしまった時にセーブポイントに戻る必要がなかったり、この地点に来るまでに稼いだ経験値が無駄にならない点は非常に助かるポイントだった。
もちろんバトルは元から最高だった部分がそのままなので、久しぶりでもついついプレイしてしまう面白さは健在。後のシリーズ作品でも似たシステムが搭載されることはあったが、A技とB技、チェインキャパといった要素はその基礎ともいえるものと言えるだろう。きっと現時点でのシリーズ最新作「テイルズ オブ アライズ(以下、アライズ)」からシリーズを知った方も馴染みやすいものとなっているはずだ。
また、オリジナル版ではクリア後の周回要素だったグレードショップがゲーム開始時から解禁されているので、術・技が少ない状態でも経験値5倍やスキルポイント3倍などを活かせば、キャラクターたちの術・技をすぐに揃えてバトルを楽しむことができるだろう。
もちろん、サクッと本作をプレイし直したい方やバトルが苦手な方が活用するというのも当然アリだ。使ってみて強すぎると感じたときはコンフィグから効果をカットすることもできるので、もし使ってみて難易度が低くなりすぎてしまったと感じた時はチェックしてみてほしい。
「グレイセス エフ リマスター」以降や最新作など今後のシリーズの展開についても
以下より体験プレイ後に実施させていただいた、本作のプロデューサー・石川結貴氏へのインタビューの模様をお届けする。まだタイトルを明言することはできないそうだが、「グレイセス エフ」以外の作品のリマスターの可能性についてなどもお話いただいたのでシリーズファンの方はぜひご一読を。
――「テイルズ オブ」シリーズの総合プロデューサー・富澤祐介氏から、シリーズ30周年にあたり世界中の方々に過去作を現行機でプレイする機会を改めて推進するとの発言がありました。まずはその皮切りとして「グレイセス エフ」が選ばれた理由をお教えください。
石川氏:「グレイセス」が選ばれた理由は1つではありませんが、ひとえに「テイルズ オブ」シリーズを長く応援してくださった方々のおかげで実現することができました。また、本リマスターにおいてはオリジナル版の4言語に加え、さらに多言語に対応を行っております。
この機会に最新作「アライズ」に近い言語数に対応することで、改めてワールドワイドに「グレイセス」を展開することで世界中のお客様の要望に応えたいとなったのがリマスター化を決めた経緯となります。
――2019年の「テイルズ オブ グレイセス アニバーサリーパーティー」でリマスター版の発表が無かったことで、ファンのみなさんの要望がさらに大きくなった印象があります。心待ちにしていたファンの方へ一言お願いします。
石川氏:2015年に入社して「テイルズ オブ」シリーズが好きだ好きだと言い続け、ちょうど2019年から「テイルズ オブ」シリーズの担当になったばかりでしたので、私自身がお客様と同じ気持ちで心待ちにしていたところはありました。そして今プロジェクトの担当者側になり、期待していただいたお客様とこの作品とを繋ぐ、お手伝いみたいなことができて非常に嬉しく思っています。
月並みではありますが、やはりリマスター版はみなさんの応援なくしては成り立ちません。なので、改めて15年間応援してくださった方々にお礼を申し上げたいです。
――「アライズ」の時はアシスタントプロデューサーという役職だったかと思いますが、今回はプロデューサーという立ち位置になっています。お仕事で変わった部分はありますか?
石川氏:「アライズ」の最初の頃はライセンスプロダクションに所属していて、グッズなど「アライズ」の周辺展開を担当していました。途中から開発の方に入って富澤と玉置(「テイルズ オブ アライズ」で制作&マーケ担当のメインプロデューサーを務めた玉置絢氏)に次ぐアシスタントという形でしたが、最初から最後まで自分で企画させていただいたのは「グレイセス エフ リマスター」が初めてになりますね。とはいえ、ずっと「テイルズ オブ」シリーズの担当者としてやってきたので仕事内容が変わった訳ではないかなと。
――Tales of YouTube Channelの管理人として、シリーズの名シーンアンケート動画などに出演されたりしていましたよね?
石川氏:見ていただいてありがとうございます! シリーズのランキングの話でいうと「グレイセス エフ」は戦闘が面白かった作品部門で1位でしたね。難易度を高くして遊んでも良いし、レベルを上げてキャラクターたちを強くしてから気持ちよく遊んでも良い。
――先ほどの海外展開の話題の時にもありましたが、確かに「グレイセス エフ」のバトルは当時から話題で今なお一番好きだと言っている方が多い印象があります。
石川氏:私もあの頃は高校生でしたが、当時は「こうきたか!」とかなり感動したことを覚えています。全パーティキャラクターを使いこなせるようになろうと頑張ったこともありました。
――「グレイセス エフ」やそれ以前のPS2版「デスティニー」のバトルシステムが後々の作品、たとえば「アライズ」や「ベルセリア」などにも繋がっている活かされているところがあるようにも感じます。
石川氏:システム的な手触りでは「ベルセリア」もやや近いですし、最新作の「アライズ」ではさらにブラッシュアップされたものになりました。
――バトルに関してはシリーズの新しい方のタイトルからさかのぼって遊んで下さる方や、これからシリーズを知るアクションゲームファンも違和感なくプレイできるのかなと思いました。ぜひそういった方にも本作の魅力を語っていただきたいです。
石川氏:「グレイセス エフ」のバトルは、それまでのシリーズお馴染みの通常攻撃から術技、特技、秘技、奥義に連携していくという形ではなく、PS2版のデスティニーでも使われていたCC(チェインキャパ)を消費して連撃をおこなうスタイルになりました。歴代「テイルズ オブ」シリーズのどの作品のバトルシステムも素晴らしく、等しくおススメしたいのですが、「グレイセス エフ」のアクションゲームとしての一連の爽快感はシリーズを遊んだことがない方にもぜひ触ってみてほしいです。
後は昨今の作品では回避に関するシステムが導入されるのが主流ですが、アラウンドステップというシステムで、あの時代のRPGでありながらバトルに回避の面白さが存分に組み込まれているところも魅力です。「テイルズ オブ」シリーズのファンだけでなく、アクションゲーム文脈の方にもぜひ楽しんでいただきたい作品だと担当して改めて感じています。
――リマスターに際して注目してもらいたい部分、公式サイトで掲載されているグラフィックの鮮明化や現行機への最適化の部分で苦労しているところをお教えください。
石川氏:キャラクターモデルの輪郭やテクスチャがかなり鮮明になっていて、そこがビジュアル面の一番の特徴になります。細かい部分まで注目してみてください。
――新たな機能に関して、グレードショップが最初から解放されている点は驚きでした。経験値5倍などはかなりゲームバランスに影響がある要素ですが、この実装意図も伺いたいです。
石川氏:「グレイセス エフ リマスター」には既に遊んだことがある方とそうではない方、大きく分けて2パターンのプレイヤーの方がおられると思っています。初期からグレードショップを解放した意図としては、既プレイの方にこの物語をもう一度楽しんでいただきたいという意図が大きいのが正直なところです。
一方、これから初めて遊ぶ方はこの機能を使わないこともできますし、いったんオンにして簡単すぎると感じたら後から効果をオフにできるようにしています。なので、後からオンオフできることを含めて初めてプレイされる方も遊びやすくなり、新たな遊び方の選択肢を提示できたのではないかと思っています。
――先ほどプレイさせていただいた際に目的地アイコンは非常に助かりました。
石川氏:イベントのフラグを全てチェックしていじらないといけないですし、今回は時限イベントの砂時計アイコンも出るようになったので、開発メンバーが入れるために苦労した機能だと思います。私が自分で遊んでいても助かる機能でした。時限イベントに関しては、マップを見ることでも出ている場所がわかるようになっています。
「グレイセス エフ」はバトルに注目が集まりがちですが、キャラクターたちのドラマも見られます。それを見逃すことがなくなったのは、手前味噌ですが喜んでいただけるポイントかなと。終盤の迷いやすいダンジョンでは、本当に助けになるはずです。
また、この目的地アイコンや敵とのエンカウントもお客様の判断で任意にオンオフが可能です。迷子になってこそという楽しみ方をする方もおられるはずなので、そういった方はオフにしていただくことで今まで通りの遊び方で楽しんでみてください。
――ここから少し「グレイセス エフ リマスター」以外のことも伺わせていただければと思います。先日公開された富澤氏のコメント映像からは、「グレイセス エフ」のリマスターを発表しただけではないという感覚を受けました。他のシリーズ作品のリマスター化も期待できるのでしょうか?
石川氏:この場でタイトルの明言はできないのですが、プロジェクトとして発表した以上は「グレイセス エフ」だけで終わりではないことは明言して大丈夫かなと思っています。
――タイトルを明言できないことを理解した上での質問なのですが、PS2で発売されたリメイク版の「デスティニー」や、再構築と共にニンテンドーDSからPS Vitaに移植された「イノセンス」「ハーツ」など、過去に移植やリメイクされた作品も期待できたりするのでしょうか?
石川氏:常にフラットに検討を行います。何か特定の条件があるからこのタイトルを外してしまうということはありません。PSPに移植された作品で考えても「ファンタジア」のフルボイスエディションや「リバース」「エターニア」「デスティニー2」がありますし、シリーズの歴史が長いため、言いだしたらキリがないくらいの選択肢があります。
――過去作のリメイクやリマスターは、昨今他社のタイトルでも見られるようになっています。
石川氏:私にとって「テイルズ オブ」はバイブルですが、他社のタイトルも数々プレイしてきました。開発チームとも相談しながら「テイルズ オブ」シリーズだったらこの機能が欲しいよねっていうものは新たに考えています。
――そしてリマスターやリメイク作だけでなく、「アライズ」の次の作品も期待できるのでしょうか?
石川氏:詳細についてはまだお答えできません。しかし、シリーズが「アライズ」で終わることはないということだけはお伝えできるかなと。
――ありがとうございます。最後に「グレイセス エフ リマスター」、並びに今後の「テイルズ オブ」シリーズに期待しているファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
石川氏:まずは「グレイセス エフ リマスター」の方ですが、15年の時を経てみなさんの前にアスベルたちが現れ、そしてまた多くのみなさんに触っていただける。15年ないしそれより短い期間の方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にみなさんの応援があってこそだと思っています。改めて長きにわたる応援に感謝を申し上げたいです。
あの時みなさんが感じたアスベルたちの冒険の旅はきっとこの先何年たっても色褪せるものではありません。またこれを皮切りに彼らとの冒険を楽しんでいただけたら、1ファンとしても担当者としても嬉しく思います。
――今回久しぶりにプレイさせていただき、「抜刀!研ぎ澄ませ!」という曲を聞きたくて戦闘を避けずに何度もバトルをするなど、当時と同じ遊び方をしてしまいました。本当に色褪せないなと思います。
石川氏:未来への系譜編で聴ける「全てを賭して」という曲も本当に良いですよね。「グレイセス エフ リマスター」でも早くみなさんに聴いていただきたいです。
私自身が10周年の「ジ アビス」からシリーズを好きになりましたが、きたる40周年、50周年に更なる期待を寄せていただけるように、そして我々も期待に応えられるように頑張っていきたく思っています。今後ともご声援をよろしくお願いいたします。
25周年の時に「あの出会いが、世界を変えたんだ。」というシリーズ全体のキャッチコピーを付けたのですが、みなさんの世界や人生観を変えてくれた作品、キャラクターとの出会いがこれまでもあったかと思います。その出会いが改めて「グレイセス エフ リマスター」を遊ぶきっかけになってくれたら嬉しいです。
Tales of Graces(TM) f Remastered & (C)Bandai Namco Entertainment Inc.
(C)いのまたむつみ
※画面はPlayStation5版の開発中のものです。
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