年末年始ということで、最後ぐらいアニメのことをたっぷり書きたいという本企画。2024年に放送されたTVアニメから、筆者が個人的におすすめしたい10本を紹介します。

目次
  1. 万人に楽しんでもらいたい作品
  2. 個人的に刺さった作品

常々記事のプロフィール欄でも紹介しているのですが、筆者はゲームよりもアニメが好き、というかゲームに関する知識を本格的に得るようになったのがこの仕事を始めてから、というくらいなので、元々はずっとアニメを追っかけている人間だったりします。

もちろん、専門媒体のライターさんなどと比べるのはおこがましいぐらいの知識ではあるのですが、個人的にもいろんな目線でアニメを見ているので、一年の最後ぐらいちゃんと書く場を作らせてもらおうかと思っています。

対象となるのは2024年時点で放送終了した作品です(続編が決定しているものでも一旦放送が終了しているものはカウントします)。一部話題作を見れてはいないものの、現時点で64作品視聴しているので、その中から10本を個人的に選出したいと思います。万人に楽しんでもらいたい作品、個人的に刺さった作品をそれぞれ5本ずつ紹介します。なお、ランキングではないので基本的には放送時期順に並べています。

万人に楽しんでもらいたい作品

「葬送のフリーレン」:原作の魅力をアニメのアプローチでしっかりと表現

「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中、山田鐘人氏(作)とアベツカサ氏(画)による同名漫画作品をアニメ化。放送開始自体は2023年9月末でしたが、そこから全28話放送されたということで、2024年の作品として紹介します。

本作については原作既読ではありましたが、まずアニメとしてのクオリティ自体が高かったです。超絶作画、とかインパクトのあるシーンがある、というのではなく、ただ原作の持つ静と動のバランスがしっかりと表現された、引き算のアニメーションとして良く作られていて、主人公の魔法使い・フリーレンを取り巻く新旧パーティーの微笑ましい掛け合いも、ファンタジー作品の醍醐味である魔法や剣による緊迫の場面も、それぞれの魅せどころとして表現されていました。

すでにTVアニメ第2期の制作も発表されていますが、原作の流れを考えるとかなり長尺のエピソードが展開することは間違いないかと思いますので、そこでの心情や思考、そしてバトルの駆け引きを映像でどう表現するのかは楽しみなところです。

(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

「薬屋のひとりごと」:ミステリーとしての魅力に留まらないドラマ

著者:日向夏氏、イラスト:しのとうこ氏によってヒーロー文庫(イマジカインフォス刊)より刊行されている「薬屋のひとりごと」。こちらも2023年10月からのTVアニメ放送ながら2クールだったということで、ピックアップさせていただきます。

こちらは原作の人気こそ知っていたものの未読だったのですが、実際に見てみると中華系の国家を舞台として後宮でのさまざまな事件を描く作品になっています。同系統の作品ですと近年では「後宮の鳥」を思い出しますが(あの張り詰めたような空気感も個人的には好きです)、本作はシリアスとコミカルのバランスが絶妙で、薬屋の娘・猫猫と美形の宦官・壬氏をメインに描く大枠の流れと、事件ごとの解決の流れが上手く混ざり合っていました。

「薬屋のひとりごと」については2025年1月10日よりTVアニメ第2期が連続2クールで放送開始することが発表されていて、熱が高まっているタイミングでもあるかと思いますので、まだという方はこの機会にいかがでしょうか。

(C)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

「逃げ上手の若君」:躍動感のあるアニメーションが魅力

「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の松井優征氏による、「週刊少年ジャンプ」で連載中の漫画作品をアニメ化。鎌倉幕府滅亡後、北条家の生き残りである北条時行を主人公とした物語が展開します。

いわゆる歴史モノというカテゴリーには入りますが、本作は選んだ題材の独自性、そして本筋として鎌倉奪還を目指す流れはありつつも、コミカルかつダイナミックなストーリー展開にその魅力があると思います。そしてその魅力を実際に感じさせる大きなバックボーンとなっているのが、ケレン味のある作画と表情芝居の豊かさ。分かりやすいところとして、時行の逃げの才能を活かした戦場での立ち回りは、そのダイナミックな作画があるからこその高揚感があるように思います。

物語的には仲間を増やしていく導入部分が描かれましたが、この先の対立構造や足利尊氏の思惑など気になるところも盛りだくさんですので、ぜひ続きを見たい一作です。

(C)松井優征/集英社・逃げ上手の若君製作委員会

「ダンダダン」:7話だけでも見てほしいと思わせるぐらい衝撃的

龍幸伸氏(集英社「少年ジャンプ+」連載)の漫画作品を原作とした本作。サイエンスSARUがアニメーション制作を手がけていることなどでも放送前から注目を集めていたように思います。

筆者は原作未読で、オカルトを題材としている作品という作品であるという認識だけは持って視聴を開始しましたが、オカルトとバトル双方の勢いが1話から思っていた以上に吹っ飛んでいて、その魅力だけでも惹き込まれるものがありました。同時に、霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモと同級生でオカルトマニアのオカルンを中心としたストーリーにも注目ですが、その中でも7話「優しい世界へ」は表現の凄みもあって、少なくとも2024年に見たアニメの中でもトップクラスに衝撃を受けました。過激なシーンではあるものの、耐性のある方であればぜひ一度目を通してほしいエピソードです。

第1期は先が気になるところで終わっていますが、2024年7月からはTVアニメ第2期が放送予定ということで、こちらも注目していきたいです。

(C)龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会

「らんま1/2」:“完全新作的アニメ”としての作りの素晴らしさ

言わずとしれた人気漫画家・高橋留美子氏による漫画「らんま1/2」。まさかの完全新作的アニメ化ということで、大きな話題を集めました。

筆者は原作、以前のアニメともにちゃんとチェックしたことはなかったのですが、今回のアニメを実際に見ると非常に面白い作りで感動しました。その上で、“完全新作的アニメ”という意味合いについて自分なりに考えてみたのですが、今の時代でも変に作品設定をいじらずに放送していることと、その上で現代風のルックに調整しているということの2点が特に大きく機能しているように感じました。新旧のキャストの融合も含めて、原作および旧アニメへのリスペクトを持ちつつ、変えるべき点をちゃんと変えていることが素晴らしいなと思いました。

放送終了とともに、早くもアニメ第2期の制作が発表されているとともに、1月1日からは各動画配信サービスでも順次配信開始となるそうですので、今からでもぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

(C)高橋留美子・小学館/「らんま1/2」製作委員会

個人的に刺さった作品

「ゆびさきと恋々」:音では届かない、気持ちのふれあいを丁寧に描く

講談社「月刊デザート」にて連載中の森下suu氏が描く「ゆびさきと恋々」をアニメ化。聴覚障がいのある女の子・雪と、世界を旅する大学の先輩・逸臣のピュアラブストーリーが描かれます。

本作の素晴らしい点は、声を出してのコミュニケーションが取れないからこそのマイナスな部分を、周囲の人たちの優しい行動で包みこんでいる点です。これまでも何らかの障がいを持つキャラクターが登場する作品はありましたが、ここまでポジティブに描いている作品はそう感じられません。その上で、音が聴こえない中での生活上の問題もしっかり描いていますし、恋愛を軸とした三者三様のドラマもあり、しかもそれをアニメーションとしてすごく視覚的に見やすく構成している点も評価しています。

諸星すみれさん、宮崎遊さんをはじめとしたキャストの好演も素晴らしく、より多くの人に知ってもらいたい作品です。

(C)森下suu・講談社/ゆびさきと恋々製作委員会

「ガールズバンドクライ」:日本のCGアニメの新たな境地を垣間見た

東映アニメーションによる完全新作アニメーション「ガールズバンドクライ」。劇中に登場するガールズバンド「トゲナシトゲアリ」の結成を描く作品となっています。

アニメーションとしての素晴らしさでいうと、セルルックが主流だった日本の3DCGアニメの流れからまた一味違う、イラストのルックをアニメーションに落とし込んでいる点が挙げられます。コマの使い方のような、空間を活用した表現のバリエーションも豊富で、見ても飽きさせない作りとなっています。その一方で、現代劇らしい鬱屈とした感情の発露を描く部分も、バンドを題材とした作品との相性が良く、ドラマ上の起伏にもなっていたように思います。特に筆者は仁菜が自身のしがらみと向き合う、第10話「ワンダーフォーゲル」のエピソードが印象的でした。

アニメとしての展開は一段落し、今はリアルバンドとしてのライブを重ねているところですが、2025年はさらなる展開にも期待できそうな作品です。

(C)東映アニメーション

「烏は主を選ばない」:善悪の概念を越えた策謀の行方

阿部智里氏の人気ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」(文藝春秋)を原作としたアニメ作品です。八咫烏(やたがらす)の一族が住まう異世界・山内(やまうち)を舞台に、さまざまな策謀とその世界そのものの謎に迫っていくことになります。

本作が面白いところは各キャラクターの純性と悪性をあえて分かりづらく描いているという点です。視聴者は雪哉という少年の目線を中心に山内で起こる出来事に触れていきますが、情報が断片的かつ本心を隠しているキャラクターも多く、良い意味でたくさん騙されるシーンがあります。そのあたりの描き方が丁寧で、かつ独自の社会という点でも謎解きとのバランスが面白いです。1話と13話を対比的に見ると、いろいろと感じる部分もあるかなと思います。

TVアニメは全20話が終わってしまいましたが、むしろ世界の大きな謎に触れたここからが面白くなる可能性を秘めている作品なので、ぜひ続きを待ち望みたいです。

(C) 阿部智里/文藝春秋/NHK・NEP・ぴえろ

「負けヒロインが多すぎる!」:ラノベとしてのフォーマットに乗せたメタ設定の掛け合わせ

小学館「ガガガ文庫」にて刊行されている同名原作をアニメ化した「負けヒロインが多すぎる!」。作品としてはいわゆるボーイ・ミーツ・ガール的な構造で、キャラクターの配置も含めてライトノベルのフォーマットですが、作中での不遇なヒロイン、いわゆる「負けヒロイン(マケイン)」をメタ的に扱うという点が面白さにつながっています。

制作はA-1 Picturesが制作していますが、そのクオリティの高さがあらゆるところで表れています。1人のヒロインに対して1つのエピソードがあるというのは流れから想像できましたが、その中でアニメーション周りの作画の仕上がりや美術・撮影などのアプローチによって、しっかりと作中の流れとマッチしていたと思います。1話の終わりなど、絵的にも映えるシーンが多いのも魅力的です。

アニメの放送を機に原作の評価もさらに上がり、「このライトノベルがすごい!」でも1位になるなど人気作の仲間入りも果たしていると思いますので、今後の展開にも期待したいところです。

(C)雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会

「〈小市民〉シリーズ」:空気を演出するアニメーションの妙

米澤穂信氏によるミステリ作品「〈小市民〉シリーズ」。過去にアニメ化された「〈古典部〉シリーズ」の評価も高い同氏による人気シリーズがアニメ化されたのが本作となります。

ミステリとしながらも描く事件はどれも大きなものでは無いですが、その事件を実際に描く過程が非常に秀逸で、時折見せるその静謐さがある意味で不気味さを感じさせます。そして、その流れが10話につながっていくという意味で、一連のエピソードの構成が見事でした。これは原作そのものの魅力もあると思いますし、アニメーション制作を手掛けるラパントラックの構成の妙だとも思っています。特に9~10話の流れは空間を使った引き算の演出が素晴らしいです。

2025年4月からは第2期の放送も決定しており、第1期では描かれなかった残りの原作エピソードが描かれることも発表されました。放送開始前にぜひチェックしてみてください。

(C)米澤穂信・東京創元社/小市民シリーズ製作委員会

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

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