スクウェア・エニックスがNintendo Switch/PC(Steam)/iOS/Android向けに2026年2月19日に配信を予定している「パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語」のレビューをお届けする。
「Nintendo Direct ソフトメーカーラインナップ 2026.2.5」にてサプライズ発表された「パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語」。ストーリーを楽しみにしているファンも多いと思うため、なるべくネタバレを控えつつ筆者が感じた魅力を紹介していこう。

テーマが変わったことで作品の雰囲気も大きく異なるものに
まず、今回の「パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語」は、三重県の伊勢志摩地方を舞台に、不老不死をもたらすという人魚の謎をめぐる物語を描くストーリーとなる。前作の「FILE23 本所七不思議」は、墨田区を舞台に本所七不思議の伝承に紐づけられた呪いを持つ“呪詛珠”を手に入れた登場人物たちの物語であり、ホラー要素が強い内容であった。
今回はホラー要素はかなり薄くなり、ジュブナイルミステリー要素が強い。また、前作は登場人物たちがライバルを呪い、命を奪い合うバトルロイヤル展開が特徴で、ジェットコースターのような驚きのある作品だったが、本作は人魚にまつわる謎を丁寧にひも解いていく作品になっている。

こう書くと前作のほうが派手で本作は地味な印象を与えてしまうかもしれないが、単純に取り扱っているテーマが変わり、そのテーマに適した表現で物語を描いているだけでクオリティに差があるわけではない。じっくりと伏線を回収する内容になっているからこそ、謎が明かされたときのタイミングはとても気持ちいい。
前作よりもボリュームが増えている本作ではあるが、物語の大きな謎を明かすポイントは要所に用意されており、飽きさせない作りになっている。なお、前作はホラーということでジャンプスケアが存在したが、本作には無い。突然、キャラクターがこちらを向いている……ぐらいの演出はあるものの、身構えなくても問題ないはずだ。ショッキングな展開はあるがビックリ要素に身構えなくてもいい。

ジュブナイルミステリーに近くなり、前作とは雰囲気が変わったものの、「パラノマサイト」らしさは健在である。まず、「昭和の日本」×「伝奇・オカルト」という部分は変わっておらず、作品全体のレトロな雰囲気は健在だ。サウンドは前作から引き続き岩﨑英則氏が担当しており、世界観も踏襲している。BGMのなかにはコーラス付きのものなどもあり、プレイの高揚感を高めてくれる。

キャラクターたちも個性的な人物が揃っており、「FILE23 本所七不思議」と同様にふたりのキャラクターがペアを組んでいる仕組み。各キャラクターの素性はゲームをプレイしてからの楽しみにしていて欲しいが、ロマンを求めて来日しているファンタジー作家兼オカルトライターのアルナーヴ・バーナムは前作の櫂利飛太のように、本作のディレクター・シナリオライターの石山貴也氏が得意とするアクロバティックなキャラクターで楽しい。また、そんな彼とペアを組むのが悪魔祓い師の小さい女の子、キルケ・ルナーライトというのもおもしろい組み合わせだ。

素性に関しては隠しておくが、自称・東京の主婦である志貴結命子と彼女の助手である霧生双奴のペアも素晴らしい。前作には志岐間春恵というインパクトのある主婦が登場したが、結命子も負けず劣らず個性的だ。

最初に登場する海女の水口勇佐と彼の親友である雲居アザミのふたりもすごくいい関係だった。勇佐はとある理由により島のものたちから疎まれている状況だが、そんな彼に対しても親友というスタンスを崩さずにフランクに接してくれる彼に救われるはずだ。

残りのペアである謎の少女・白浪 里と沫緒つかさに関しては、ほかのキャラクター以上に詳細を書きづらいが、青春モノとしての側面も強い。前作は題材が題材だけにひりついた空気の漂う内容だったが、本作は青春群像劇としての魅力も持っている。通常の恋愛ではなく、“人魚”という題材を絡ませた切ないものへと発展していくので必見だ。

主人公たち以外のキャラクターもおもしろい。本作は情報の出し方がとても上手で嫌なキャラクターかと思ったら、本音を知ることになって好きになるキャラクターもいるし、その逆も当然存在する。ひとつの視点では分からなかったことが多角的な情報になることで見えてくるものがあり、物語を先に進めていく楽しさがある。

ゲームであることを大事にしている作品
本作のゲームシステムは前作を踏襲しており、多数のキャラクターたちの視点で描かれ、それぞれの行動が交錯するザッピング形式になっている。また360度カメラで撮影された「全天球背景デザイン」によるリアルな背景も健在。特定のシーンでは視点を動かすことも可能。視点を動かした先に物語を先に進めるギミックが用意されていることも多い。


ザッピングや視点変更などはゲームならではでおもしろいし、物語の冒頭に登場する「案内人」との会話のようなメタ的な演出も取り入れられている。物語に没頭しているときに画面が引いていき、案内人が登場してプレイヤーに問いかける展開などはとてもいいサプライズになる。また、案内人が登場したときにはこれまでの状況をまとめてくれるため、物語が把握しやすくてありがたいし、今後の展開に対して期待するようなことをしゃべるのでプレイのモチベーションも上がる。

謎解きに関しては視点を操作して答えを見つけるものや、テキストを入力して正解を答えるものが存在。ゲーム発売後であればインターネットの攻略も溢れると思うので、詰まる心配はないと思うが、しっかり頭を捻って閃かないと難しいものも存在していると感じた。テキストを入力するタイプで詰まった場合はゲーム内にある資料を読み込んでみることをオススメする。
前作にも存在していた、神出鬼没のシールを集める「なめどり」が本作にも登場するほか、「素潜り漁」が楽しめる要素も存在する。海中の獲物を獲得することでスコアを稼いでいくもので、レベルアップ要素も存在。より長く水中で行動できるようになる潜水力、より速く泳げるようになる泳力、獲物を獲りやすくなる捕獲力などがあり、レベルアップ時に自由に上げたい能力を選べる仕組みだ。


プレイしたときは「おもしろいけど、こんなに凝った要素は必要だろうか?」と思わず笑ってしまったが、そこは「パラノマサイト」の制作陣。しっかり「素潜り漁」がゲームのシステムとして存在する理由が用意されている。こういったインタラクティブな部分がゲームのストーリー部分にしっかり意味を持たせてくれているのはとてもいい作品である証拠だ。
本作は読むことが中心になるノベルゲームというジャンルでありながら、その“ゲームならではの体験”というところを本当に大事にしていると感じる。それは小ネタの部分もそうであるし、大ネタとして使われている部分でもそうだ。
あまり語ってしまうと野暮になってしまうので控えるが、本作は前作同様に実況動画を見ているだけではそのおもしろさの真髄は分からない。もちろん実況者とともにゲームで盛り上がるのは楽しいし、筆者もよく見ているのでその文化を否定するつもりはまったくない。ただし、没入感こそがこの「パラノマサイト」シリーズであると考える。
今回のレビューでほとんどストーリー部分の内容を書いていないのも、ぜひユーザー自身が本作をプレイして新鮮な驚きを感じてもらいたいと筆者が思ったからだ。おもしろいことは確実なので、ぜひ遊んでみて欲しい。

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