【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第1回はアカペラへのこだわりが詰まった「うたミル」企画の立ち上げから“演出を削ぎ落とした”アニメ作りのアプローチを聞く

企画記事
0コメント TOKEN 近藤智

山中拓也氏が企画・シナリオを担当するゲーム作品「UN:Me」の制作発表を受け、「Caligula2」以来のゲーム企画作となる同作の発表に至るまでのコンテンツに触れるインタビュー企画をお届け。第1回は「うたごえはミルフィーユ」を中心に聞いた。

集英社ゲームズとヒストリアが2026年に発売予定のアドベンチャーゲーム「UN:Me(アン・ミー)」は、人間が感じる“不安”をテーマとしたタイトルだ。少女を操作して迷宮を探索するパートと、少女の中にある4つの魂と対話するパートを経て、どの魂を“消去”するのかを選ぶことになるという。

山中氏とヒストリアといえば「Caligula Overdose」「Caligula2」(以下「Caligula」と総称)でタッグを組んだ関係で、この「UN:Me」は「Caligula2」以降、実に約5年ぶりとなる新作タイトルだ。その間、同氏はゲームクリエイターという枠に留まらず、アカペラをテーマとした「うたごえはミルフィーユ(以下、うたミル)」や、考察を楽しむ視聴者参加型の音楽プロジェクト「MILGRAM -ミルグラム-(以下、MILGRAM)」、YouTubeのショートアニメを中心としたアイドルコンテンツ「ネガティヴハッピィ(以下、ネガハピ)」などのプロジェクトに参加している。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第1回はアカペラへのこだわりが詰まった「うたミル」の画像

一見これらはジャンル、ファン層、制作スタイル、規模や展開、どれもが大きく異なる作品のように思えるだろう。しかし、じっくりと背景を掘り下げていくと、全ての作品に“山中拓也”というエッセンスがこれでもかと詰め込まれているのだ。本稿では「UN:Me」をはじめ「うたミル」「MILGRAM」「ネガハピ」の根幹について伺った内容を短期連載でお届けする。第1回では「うたミル」について話を聞いた。

【「UN:Me」制作発表記念】マルチクリエイター・山中拓也のエッセンスを紐解く:第1回はアカペラへのこだわりが詰まった「うたミル」の画像

企画・編集・インタビュー:TOKEN
インタビュー・文・構成:近藤智

「うたごえはミルフィーユ」とは

ポニーキャニオン×山中拓也が手掛ける、「アカペラ」をテーマにキャラクターと声優陣の成長を共に描く音楽プロジェクト。アカペラ初心者の声優陣が「手鞠沢高校アカペラ部」として活動し、オリジナル曲やカバー楽曲をリリース。卓越したパフォーマンスや女子高生たちの青春と日常を描いたストーリーで注目を集め、2025年にテレビアニメ化を果たす。2026年4月26日には作中バンド「テトテ」の全曲ライブ「culmination」&4周年イベントが開催される。

――山中さんの関わった作品は、一見ファン層が重ならない部分も多い印象です。でも、きちんと作品に触れると芯となる部分に“これぞ山中拓也”が感じられる気がしますね。

山中:特に「ネガハピ」はしっかりコメディですもんね。でも、実は「Caligula」の時にあった仲間たちとコミュニケーションが取れるメッセージアプリ「WIRE」とか「Caligula2」のフィールド会話のノリって、「ネガハピ」を書くときの脳とあまり変わらないんです。すごくコアな方は、僕のモノづくりの能力を五角形で表現したら「今回はここを使ったんだな」みたいなところまで感じ取ってくれてますね。

――詳しいことを知らないまま、別々に作品へ触れたけれど「うたミル」と「ネガハピ」に同じものを感じ取った人が身近にいました。

山中:「うたミル」がアニメ化した時にすごく感じました。僕としては普通のことをやってるつもりだったんですけど、どうもアニメのノリとしては変わってるらしいぞと(笑)。そういうのは、分かる人には分かるんでしょうね。

ゲームのお客さんは、基本的にまずパッケージされた商品を購入しますよね。一方アニメは基本的に全部無料で見れるメディアなので、全てのアニメを見比べるようなスタイルのお客さんも多い。そのため「うたミル」が他のアニメと比較されながら見るというところを経験しましたし、違うことにすごく意味があるなと思いました。

「Caligula」のTVアニメの時は手掛けた作品の初めてのアニメ化でしたし、自分も直接脚本を書いていたわけではありませんでした。数年後の「うたミル」のアニメ化で、他のアニメと違う部分がリアルかつ冷静に見えた気がします。

――それでは「うたミル」という作品の、そもそもの入り口からお話を聞かせてください。山中さんはアカペラのご経験があるそうですが、アカペラ自体は作品の題材としてはなかなか選ばれにくい、本当に難しいものだと思うんです。

山中:僕は大学時代にアカペラをやっていたんですが、プレイヤーとしては箸にも棒にも掛からないくらいでした。でも、その程度だったとしても人生を振り返ったら重要だと思える不思議な存在で。なので、これは何らかの形で昇華したいと思ってましたし、僕の場合は作品にすることがアカペラに対する恩返しかなと思ったんです。

「うたミル」でパートナーとなってくださったポニーキャニオンさんは「Caligula」のアニメ化の際にもお世話になりました。プロデューサーの松岡貴徳さんとはずっと仲良くしてもらっていて「何か山中さんが面白いと思うものはありませんか?」と声を掛けてもらった時に、アカペラをテーマにした作品の企画書をお渡ししたんです。

出した時は色々な事情があって、1~2年くらい動きはなかったんです。アカペラってとても閉じた特殊な世界ですから、企画書を見て「これは面白そう!」と思ってもらえても、実際にチームで走り切れるかどうかはなかなか見えてこなかったでしょうね。

そんな中で本当に偶然、大学アカペラでしっかり活動していたという方が2人もポニーキャニオンさんに現れて、チームに入ってくださるという奇跡のような巡り合わせがありました。「アカペラを作品にしたい!」という、非常に局地的な思いが集まって実現したという形です。

――アニメの製作会社は多数ありますが、音楽が紐づいているという点で、ポニーキャニオンさんは非常に力を入れていると思います。古くは「けいおん!」シリーズもありますし、何らかの音楽に携わった方が入って来るのも不思議ではないというか。とても綺麗に噛み合ったんですね。

山中:本当に。もし“アカペラっぽいもの”でいいなら、別々で録音したものを重ねてミックスして、多重録音すればアカペラ音源にはなるんです。ただアカペラは歌が上手い人が集まればできるものではなく、アカペラの練習を積み重ねないとできない。僕がどうしてもこだわりたかったのは、きちんと生のアカペラをやることでした。役者が実際にそれを体験することが、物語の説得力にも繋がります。

その上で、アカペラという音楽をアカペラ界隈の外にも聴かせることが物語的にも重要でした。そうした無理を聞いてもらえたのが一番の幸運でしたね。そんなやり方を取るなら、助走期間がより長くなるじゃないですか。ゴールがなかなか想像できない状況を我慢するというのは、とても難しいですし。

それから「うたミル」のプロジェクトが始まったわけですが、本当にアニメ化するとは決まっていなかったんですよ。1年くらい経った頃にアニメ化のお話が出て、オーディオドラマで進んでいた本編を大慌てで止めることになりました。

例えばオーディオドラマを最後まで描いてからアニメ化するとか、色々なやり方があったと思うんです。ただ、一番に「うたミル」を見つけてくれた方々にこそ、初見の楽しみをアニメで味わってほしくて。

――バランスは難しいと思いますが、そうした展開を不安に思うファンもいらっしゃったでしょうね。提供する側もコンテンツの勢いを止めないように……と考えるのが普通だと思うんです。チームでそうした判断ができたのは、すごいことですね。

山中:声優陣が本物のアカペラができる、というのが「うたミル」最大の武器なんです。展開が止まっていても、アカペラを聴きたいと思ってもらえる。これは手前味噌ですけれども、お話とキャラクターも愛してもらっていたので、そうなったらまるで呪いのように簡単には離れられないですよね。

例えば可愛い、カッコイイなどは他のコンテンツでも代用できる感情です。でも「人間が好き」みたいなレベルになってしまうと、他にどれほどリッチなコンテンツがあっても代えられるものではなくなる。そうしたコミュニケーションを初期から図れたからこそ、お客さんに「じゃあ待ってるよ」と思ってもらえるような関係性が作れたのかなと。

――アカペラを扱った作品自体は、全体的に見ればニッチな分野ですからね。アカペラに惚れ込んでしまったら「もう、ここにしか生きる場所がないんだ!」みたいな感じになってしまいそうです。その分、作品に関わるキャストの選定はとてもハードルが高かったんじゃないでしょうか。

山中:各事務所さんに企画をお話して来ていただくという点では、通常のオーディションと一緒です。継続的にアカペラのレッスンができる人という条件はありましたが。

ただそれ以上に、僕がここ数年とくに興味を持って進めていたのが、お芝居の部分だったんです。他のアニメ作品などと比べればよく分かりますけど「うたミル」のお芝居って、いわゆる王道を外れたところに理想があって。僕がやりたいお芝居を実現できそうな人である、というのもありましたね。

あと、アカペラって本当にいい人というか、調和が取れるタイプじゃないと続かないんですよ。例えば我の強い方とか、こだわりやエゴのようなものを原動力にして動く方も素晴らしいプレイヤーだと思いますが、アカペラとして見ると難しい。本当に、空気の読み合いの音楽なんですよ。

なので僕とポニーキャニオンのプロデューサーで、お喋りしながらそうした雰囲気を感じ取りつつ、人柄も含めて選ばせていただきました。後付けではあるんですけど、結果的に集まってくれた6人が本当に空気読み集団だったので、そういう部分も含めてチーム作りが非常にうまくいったのかなと思います。

――一般的な、いわゆるキャラクターソング的なものであれば自分の中の熱意などがプラスに働くことも多いと思いますが、アカペラに関しては“調和”が一番重要だったんですね。

山中:そうですね。アカペラにも流派というか、流行り廃りはあるんですけど、自分を主張せずにその一部になるとか、それぞれのパートが粒立って聴こえないことが正解とか、もはや何人いるのか認識できないみたいなところまで行くのが一つの理想となります。作品が描きたい繊細さを表現できる方、そうした思想に共感してくれる方という意味では、人柄がとても大切だったと思いますね。

僕は個人的に、アカペラは聴くよりもやる方が楽しい音楽だと思っているんです。あのお忙しい方々に時間をかけて毎週練習してもらっていましたが、それでもアカペラをやりたいと思ってもらえた。やっぱり、楽しいからこそ続いたのが大きいんじゃないかなと。

――アニメを見ていて、アカペラのクオリティには衝撃を受けました。

山中:本当は、彼女たちは作中の設定より上手すぎるくらいになってしまったんですよ。アニメの6話にあたる部分では、ライブで普通の人たちには何がおかしいのか分からない。でも、アカペラをやる人にはおかしさが分かる……というレベルの演奏をしなくてはいけませんでした。なので皆さんに実際のレベルよりも落とした、ちょっと下手に歌ってもらったのは、すごくこだわった部分です。

経験者は本能的にハーモニーを作ってしまうので、わざと外すのは非常に気持ちが悪い。ダウングレードさせるのって、本当に難しいことなんですよね。企画側としては、嬉しい誤算であり悲鳴なんですが。

ただ時には、お話をリアルに作る、人間をリアルに描くということに挑戦すると、こうした事態に挑戦しなくてはいけない。本来うまければうまいほどいいはずなのに、それがリアリティや説得力を欠いてしまうことになる。そんなこだわりを一丸となって取り組めたのは、本当にチームに恵まれました。

――「うたミル」の収録は、皆さんで一緒に行っているのでしょうか?

山中:可能な限り、そうですね。原作では自分が音響監督をしているんですが、掛け合いをとても大事にしています。例えばゲームはどうしても1人だけの、抜きの収録になりますよね。とくにゲームは仕様上分かりやすさというか、音の波形としての美しさとか、カッコいい声や可愛い声という部分がとても重要視されているように感じます。でも僕は別に汚くてもいいと思いますし、一見感情がわかりにくくてもいい。とにかく「人間でいようね」というやり方を取っています。キャストによっては、他の作品でしている芝居とは異なる発声を求めることになるので最初のうちは戸惑ったことだと思います。それでも徐々にアジャストしていくところに、座組を続ける喜びがありますよね。

ヒットしている「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ」という作品は、監督が脚本も音響監督も、キャラクターデザインも手掛けていらっしゃいますよね。最終的に行きつく形のひとつだなと思っていて。1人で完結していることで理想の映像、理想のシナリオ、理想の芝居がある。そこには独自の貫通力みたいなのが生まれると思っています。自分としてもそういった貫通力を武器にしたいところですね。

TVアニメの「うたミル」は別の音響監督の方がいらっしゃるんですけど、原作のお芝居をすごく尊重していただいて、すごく恵まれた形になりました。

――今の時代に「こんなに演出を削ぎ落とすアニメが出てくるんだ!」というのに驚きました。こうした方向性は、例えば脚本が上がってきたタイミングで決めたとか、それともアニメの企画として最初からそうするつもりだった……みたいな流れなのでしょうか。

山中:これに関しては、本当に佐藤(卓哉)総監督と僕の趣味が合いすぎたんですよね。アカペラという声の作品だから、音楽を別につけるのは最低限にしようとか。手綱を勝手に離してもらったというか、あえてコントロールしてくれなかったというか……全部通ってしまいました。

それと僕が大事にしているものがあって……作品はあくまで二次元のコンテンツなんですけど、二次元だからこそ物語の気持ちよさのために無視されることがたくさんあるんですよ。そうした二次元特有の欺瞞みたいなものは許さないという気持ちで書いているんですが、それも佐藤さんの感覚とも近かった。「仮に気持ちよくなかったとしても、それはちゃんとやろうよ」と。ここに面白みを感じてくださる監督だったからこそ、こういうのをやりたい、こういう感じにしたいと盛り上がって。

――空気の間の使い方も含めて、やはり意図してなっているものと、そうではないものはありますよね。色々なアニメを見ていると、ちょっと不自然な感覚を覚えることもありますし。結果的ということかもしれませんが「うたミル」はベーシックなアニメの形として見たときに、すごく意識の抜け方が真っ当な作りになっているなと感じていて、そういった部分を評価している方々もいると思います。もちろんキャラクターにフォーカスしている部分もあるので、アニメーションの一つの表現として成立している。このバランス感がすごいなと。

山中:すごくアニメを見る方々にも、言った言葉そのものよりも妙な間とか、違う空気感などに対して「これは他とは違う、何らかの意図を持って作られている」と感じ取ってもらえました。1話の段階では特殊な振り方をしているので「どっちだ?!」って思われたんじゃないでしょうか。おそらく1~4話くらいで、見てくださった方の中で「これは、明確な意図を持って作られている」と確定したような気がしていて。

振り返ってみると主人公の性格なども含めて、1話を見るのが一番厳しいと思います。これは、それこそ「1話からこれやってもいいんですか?」と思いつつも通ってしまった部分なんですよ。作中で人間関係がうまくいっていない主人公が、1話から視聴者に愛されたらダメじゃないですか。

皆から可愛いねとか、面白いねって思われるキャラクターだったら、とくに人生で困ることはないわけで。だから視聴者からすると不愉快とか、しんどいと思われる人物でないといけない。だって、それが現実だから。同時にそれは10話に至るまでの助走距離をどれだけ後ろから取るか、というところなんです。

今のアニメは3話くらいまでに引きを作らないといけないというか、話題にならないといけないというか、ある種の競技のようになっていると思うんです。一方「うたミル」は、そうした“勝つ”ためのアニメであれば選ばない手法を取れました。そこが許されたのも、自分の脚本の味を好んでくれた総監督や「最終的には面白くなるよね」とプロデューサーに信頼していただけたからかなと。

――「うたミル」ではシリーズ構成・脚本として関わられていましたが、振り返ってみていかがですか?

山中:「Caligula」のアニメでは原作として関わらせていただきつつ、脚本は別の方だったので、原作者がそのままアニメも担当させてもらえるのはすごく贅沢な形だと思います。アニメの脚本で、がっつり1本シリーズ構成というのも初でしたし。佐藤さんには「もう全然なんでもダメ出しください!直しますから!」というつもりで挑んだんですが、佐藤さんに僕の書き味のようなものを面白がっていただけて、全く直しが入らず。

さすがに、僕の方から「これ独特な間になりますけど、アニメでやっていいんですか?!」と聞いたくらいで。でも、それがいいところだからと。別のアニメの脚本にも呼ばることもあるんですが、そこで「『うたミル』ってめちゃくちゃ特殊じゃん!」と理解しました。

アニメのお約束というか「普通はこうするよね」というところを、全く気にせずに書かせていただいて、それが何故か通っていく。思い返してみると、すごいことなんですよね。佐藤さんは僕よりも一世代年上なんですが気が合うというか、好きなものが近いというか、そういう方だったのも嬉しいことでした。

――「うたミル」が全10話というのは物語を逆算して10話になったのか、最初から10話になったのかは気になっていました。

山中:最初から10話と決まっていました。どうやら珍しいみたいですね。

――相当珍しいです。ちょっと偉そうな言い方になって申し訳ありませんが、過不足なく終わりましたよね。

山中:9話がすごく綺麗に終わったので放送中も「あと1話、何をするんだ?!」とか「あと1話でどう終わらせるんだ!?」みたいな感想しか見かけませんでしたね。作品自体の感想よりも、そういう疑問の方が多かったぐらいで。「まあまあ、ここまで来たんだから信じて見てくださいよ」って過ごしてました(笑)。

――今後プロジェクトが続いていくことを考えても、すごく収まりとしてよかったと思います。

山中:まとめようとしてまとめたわけではないですけど「10話で綺麗にまとまっている」と評価を得ているのは、すごく嬉しいことですね。人に勧めやすいかどうかは分かりませんが、10話まで一気に走ってみたら何かしら感じるものがあるのかなと。

――見る手段は人それぞれですが、個人的には放送当時のように、一気に見るよりも少しずつ見るほうがいいと思います。

山中:そうですね。「うたミル」と同クールのアニメに、高校のボウリング部をテーマとした「Turkey!」という作品があったんです。その脚本を担当した蛭田直美さんと当時DMでやりとりさせていただいていたんですが、ゲームとアニメでは感想を受け取るタイミングが違うんですよね。

ゲームはプレイヤーが完走してから感想が届くんですけど、アニメは1話ずつ、全てが終わって気持ちのいい状態ではなく、ある種モヤッとした状態で都度立ち止まるしかない。特に「うたミル」のような遅効の作品は特に。その間に、波のように感想が押し寄せるんですよ。そこに対するモチベーションの持ち方は、毎週更新のコンテンツだからこそというのは、すごく感じました。

蛭田さんは僕がすごく好きなドラマの脚本も手掛けてて、すごく憧れていた方なんです。そんな方が「うたミル」の展開や内容をすごく暖かな言葉で褒めてくださって。間違っていなかったんだと、すごく安心させてもらいました。

――お芝居の部分でも、あまりパキッとしないというか。例えばプレスコのような手法を使った時にそうした雰囲気が出てくると思うんですけど、キャストの方にとっても珍しいことだったのかなと。

山中:ここ5年くらいで、僕が一番興味を持っているのはお芝居なんですよ。「うたミル」も「MILGRAM」も「ネガハピ」も、自分で音響監督をやることにしてるんですが、書いたお話の最終的なアウトプットって芝居として出力された時じゃないですか。僕の場合はそこまで理想の形を作らないと、本当に理想のアウトプットにならないというのをここまでのモノづくり人生で感じました。

音響監督を挟むのではなく、自分にとって理想のお芝居というか、お話にとって一番響くお芝居を、自分の言葉で責任を持って伝えて作り上げないと……というのが、ここ5年ほどの動き方なんです。芝居としてどう出力するかに理想と責任を持つことで、脚本で考えることも増えましたし、相互に良い影響を与えているなと感じています。

僕のやりたいお芝居を、一番簡単に見れるのは「ネガハピ」ですね。完全に自由なので。どちらかというと、実写に近いお芝居の方向性なんです。一緒に作品を作り上げている方々は、本当にキャラクターを音で演じていないんですよ。音として分かりやすくとか、音からキャラクターを作るのではなくて、あくまで内側から、自分の体から作ろうねという話をしています。僕もキャラクターを外側から作ることをしないようにしているので、お芝居も同じですね。

それは、考え方的に実写の映像に近いんです。そういう形で発話されるつもりでセリフを書いているので、特殊な点として認識していただけるとすごく嬉しいなと思います。これは今までの作品も「UN:Me」もそうなんですが「山中の作るものって、こういうお芝居をするよね」と、一種の象徴のように感じてもらえるように何度もやっていければいいなと。

「うたミル」に関して、原作者として尊重いただいたという部分もあると思いますし、こんなに恵まれた仕事ばかりではないとは理解しつつも、自分の思うままにやらせてもらえて、数字としてよりも心に残るアニメとして名前を挙げていただくこともあるのは、今後の人生においても大事な気がします。アニメというメディアでも、自分のやりたいことが伝わる人には伝わるんだなと思えたので。

――山中さんの手掛けられた作品は、全体的にそういう雰囲気がありますね。これから10年、20年経っても思い返すような作品の一つになっているというか。

山中:そうですね。知る人ぞ知るを一生やり続けるような感じです。実際に体験したことがないのではっきりとは分かりませんが、例えば100万本ヒットのように数字的な記録が残るよりも、少し前にSNSで流行した「私を構成する作品」のような場所に入っているほうがきっと嬉しいんだと思います。

重要なのは「やりたくないことをやらない」だと思っていて。プロデューサー視点としては「クリエイター・山中拓也」を使うなら、どういう存在でいれば使いやすいかというのも考えています。ただ「これをやったら、自分についてきてくれているコアなファンががっかりするな」と感じる手法は取りませんし、そうなる可能性があるものはお断りするようにしています。

――それでは「うたミル」について、今後の展望やファンへのメッセージをお願いします。

山中:本当に自分がアカペラという存在が大好きで、こうした形でアカペラに恩返しをすることになるとは思ってもみなかったんですよ。まだまだ「うたミル」が自分の感性にパチッとハマるはずの人がいる作品だと思っていて。歌でも、声優さんでも、僕の別の作品でも、きっかけは何でもいいので「うたミル」が心の深い部分に刺さる人と出会ってほしいですね。たぶんアニメは、4話くらいまで見れば自分に合うか合わないかが分かると思います。

また4月26日には、作品の集大成ともいえるテトテ全曲ライブ「culmination」&4周年イベントを実施します。生でアカペラを聴くという体験は何物にも代えがたいので、是非とも足を運んでいただきたいです。

テトテ全曲ライブ「culmination」&4周年イベント

◆日程:2026年4月26日(日)
◆会場:なかのZERO 大ホール(東京都中野区中野2-9-7)
◆出演:綾瀬未来(小牧嬉歌役)、夏吉ゆうこ(繭森結役)、須藤叶希(古城愛莉役)、松岡美里(近衛玲音役)、花井美春(宮崎閏役)、相川遥花(熊井弥子役)

【第1部】テトテ全曲ライブ「culmination」
・時刻:開場16:00/開演16:45
・内容:アカペラライブ
【第2部】うたミル4周年記念イベント
・時刻:開場19:00/開演19:30
・内容:トークイベント
※全席指定席
※開場・開演時間・内容は変更となる場合がございます。

「うたごえはミルフィーユ」
公式サイト:https://utamille.com/
公式X:https://x.com/utamille
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@utamille

2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。

趣味のゲーム系をはじめ、IT/ビジネス系などWeb媒体を中心に活動。AAAタイトルから乙女ゲーム、インディーズまで何でも遊ぶ雑食ゲーマー。あらゆる次元のアイドルと映画も愛してます。 https://contacos.hatenadiary.jp/

本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

関連タグ

注目ゲーム記事

ニュースをもっと見る

ゲームニュースランキング