2013年7月23日に開催された「Game Tools & Middleware Forum(GTMF)」。本イベントで行われた「ソニー・コンピュータエンタテインメントの最新テクノロジーアップデート」講演の内容をお伝えする。

豊禎治氏
豊禎治氏

本講演は、ソニー・コンピュータエンタテインメント テクノロジープラットフォーム シニア・バイス・プレジデントの豊禎治氏によって、PS4におけるツール&ミドルウェア、「PhyreEngine」、Unityとのパートナーシップ、PS Vitaのテクノロジー、「PlayView」という5つの項目に関しての説明が行われた。

まずは、PS4で使用できるツールやミドルウェアについて。すでに多くのベンダーからPS4をサポートするという話が出ているようで、これはひとえにPS4とPCの親和性が高いことが理由として挙げられる。

PS3ではCellのSPUに最適化する必要があるため、PCからPS3に落とし込む際、どうしてもある程度の時間を要していた。しかしPS4では、基本的にPCで動いているものをそのまま持ってくることができるという。メモリも高速であるため、ほとんど最適化をしなくても問題なく動き、非常にサポートしやすいフォーマットだという意見が寄せられているとのこと。

PS4の話題はここまでとなり、続いてはプレイステーションプラットフォーム上でのゲーム開発をサポートするツール「PhyreEngine」について。このツールは2008年に供給が開始されてから、ワールドワイドで110タイトル以上で採用されており、特にダウンロード専用タイトルで使用されることが多いという。

「PhyreEngine」の目的はゲーム開発を容易にすることに加え、プレイステーションプラットフォーム(PS3/PS3/PS Vita)間でのクロスプラットフォームを実現することにある。ライセンスデベロッパーには無償で提供されており、全てのソースコードも提供されていることも特徴。さまざまな改変を加えることもできるので、ブラックボックス化されていないのは開発者、特にプログラマーにとっては嬉しい要素だろう。

開発を容易にするための仕掛けとして、20以上のサンプルコードが入っているほか、ゲームテンプレートとして典型的なゲームのパターンも用意されている。ゲームのパターンは、一人称、三人称視点の3Dゲームが野外と室内それぞれ用意されていたり、2Dのスプライトベースのゲームもあるという。現在は、2Dと3Dを混在させた2.5Dのものも作っているとのこと。

実際の開発の流れとしては、基本的に開発からプレビューまでPC上で行えるため、PCで作り、そこから各ターゲットに落とし込んでいく形となる。「COLLADA」というフォーマットを介することで、3ds MaxやMayaを使ったアセットを読み込ませることもできる。

PC上での中心となるのは「Phyre Level Editor」というツール。これはPC上でのプレビューやゲームオーサリング、LUAスクリプトでのゲームロジック記述といった環境が備わっているだけでなく、PCで動かすとターゲット上でも同時にプレビューできるため、トライアンドエラーがやりやすいといった特徴がある。ほかのミドルウェアとも相性がよく、統合可能なミドルウェアとして「Havok」「PhysX」などが挙げられていた。

2013年3月に提携を発表した「Unity for PlayStation」について。対象プラットフォームはPS3/PS4/PS Vitaに加え、先日デジタルハリウッド大学で開催されたGameJamでも使用されたPlayStation Mobile、そしてGaikaiも含まれる。Unityとの提携に至った理由については、Unityが多くの支持を得ており、iOS/Androidからプレイステーションフォーマットに移す際、Unityがあると非常に楽に行えるからだという。

Unity導入に関するもうひとつの大きなポイントが、インディー系のデベロッパーにある。プレイステーションプラットフォームは大規模なタイトルが主流だが、ネットワークでのダウンロード配信環境が整ってきていたり、開発も少人数で行える環境が揃ってきているため、もっとインディーズゲームの開発者にも参入してほしいとの考えがあるようだ。

スマートフォンアプリは少人数で開発されていることも多いが、どうしてもタッチインターフェースを使わなければならない。しかしプレイステーションプラットフォームであれば、ここ10年、20年でゲームが培ってきたインターフェースで、インディーのアイディアを試すことができるのだ。PlayStation Mobileであれば個人でも扱え、開発ツールを購入する必要がなく、PS Vitaの実機を使って開発ができることもメリットとして挙げられる。

続いては、PS Vitaのカメラを使ったテクノロジーについて。ソニーが開発した「SmartAR」という技術がPS Vitaでも使用できる、というのはCEDEC 2012の講演でもお伝えした通りだが、今回は顔や指から脈動を検出する機能の紹介が行われた。

「SmartAR」の紹介では、7月21日まで行われていた「HATSUNE MIKU AR STAGE」が例題として扱われた。

人の血流は状況によって微妙に変化するようで、基本的には検知することはできないが、統計的に処理をすることで脈動を捕まえることができるという。会場ではデモ映像も用意されており、心電図のような波形が表示され、脈動を検知している様子が披露された。カメラで人の顔を映して検知するだけでなく、ビデオ映像から人の顔を検知して、脈動を検出することも可能とのこと。

顔だけでなく、PS Vitaのカメラに指を当てることでも脈動を検知できるという。指を使う場合は、指を伝わって入ってくる透過光によって脈動を検知する仕組みとなっており、顔の血流をもとにするよりも変化が大きいため、こちらの方が正確に検知できるようだ。この脈動検出の機能を使うことで、ゲームプレイ中にドキドキしている場合にイベントを起こしたり、緊迫感を煽るシーンを冷静にクリアできたらメリットがあるなど、心理的な要素を活かしたシステムが実装可能になる。

最後は「PlayView」について。これは容量が大きく高画質な画像でもサクサク快適に拡大・縮小して閲覧したり、動画や音楽も同時に入れ込むことができるというもの。PS3/PSP/PS Vitaに対応しているが、ハードのスペック差によるストレスなく楽しめ、リンクが貼れるのでウェブサイトやStoreへの誘導が行えるといった特徴がある。

すでに導入しているメーカーもあり、最近ではバンダイナムコゲームスの「ねらわれた学園」の設定資料集や、ガストの「シェルノサージュ」「アトリエ」シリーズなどで活用されているので、目にしたことがある人もいるだろう。ゲームの特典にイラスト集や設定資料集などの小冊子が付くことも多く、それらをPlayViewとして展開している例もあるが、ゲーム内からこの機能を呼び出すことも可能となっている。

ゲーム組み込み用のPlayViewライブラリ「libTGV」では、ゲームの進行に合わせてページをアンロックするといった仕掛けを入れることができる。例えば攻略本であれば、うっかりページをめくってネタバレが…という可能性もあるが、PlavViewであればネタバレ防止をしつつコンテンツを提供することが可能だ。

開発環境としても、これまではPlayViewを使うためには専用のラインセンスが必要だったものの、7月下旬よりプレイステーションのライセンスデベロッパーであれば、無償で使用することができるようになるという。一度ひな形を作ってしまえば、2回目以降はアセットを差し替えるだけでコンテンツを作ることも可能だというので、これからPlayViewコンテンツが増えていくことも十分に考えられるだろう。

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※画面は開発中のものです。

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