スパイク・チュンソフトが2016年4月14日に発売する、PS4用ソフト「ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション(Divinity: Original Sin Enhanced Edition)」のプレイレビュー! 濃厚なシナリオ、膨大なクエスト、多岐に亘るキャラクタービルドと、本格RPGの深さに酔いしれろ。

目次
  1. CERO Z(18歳以上対象)に伴う注意事項
  2. まずはゲーム開始からの流れを追ってみよう
  3. キャラクタービルドの簡単な概要
  4. アサッシンの場合
  5. 最初の山場を越えていざ、冒険の拠点へ
  6. まだなにも始まっていないけど、もうおしまい

2002年発売の初代「ディバイン ディバニティ」から11年――。

2013年に立ち上げられたキックスターターでは100万ドル近くの支援金を達成、そのゲーム性の高さから150以上のメディアアワード&ノミネーションを受賞し、全世界で累計100万本を売り上げるなど、“昔ながらの本格RPG”として一躍その名を馳せたシリーズ最新作「ディヴィニティ:オリジナル・シン」。

そして今月4月14日、そのPC版を大幅にパワーアップさせたPS4版「ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション」が発売され、これからはコンシューマ機で本シリーズを楽しめるようになる。

というわけで今回は、このゲームの奥深さの一端を、そして思わずプレイし続けてしまうといわれるその魔性を知るべく、前作未経験ながらも筆者がこの身をもって体験してみることにした。

CERO Z(18歳以上対象)に伴う注意事項

※本タイトルの年齢区分は、CERO Z(18歳以上対象)指定となります。それに伴い、本稿にもバイオレンスおよびグロテスクな表現が含まれる画像が掲載されておりますので、18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。

まずはゲーム開始からの流れを追ってみよう

本作はコテコテの海外RPGデザイン(※イメージです)と言えるが、戦闘内容に関しては(日本的にいうと)シミュレーションRPG風のシステムが採用されている。ようはマップがあって、ターンがあって、移動・行動を選択してと、そういうターンベース型の駆け引きとなる。

ゲームを起動してみると、メインメニュー欄からはニューゲームやゲームの続きから、シングルプレイやマルチプレイ(※)などが選択可能。難易度はニューゲームおよびゲーム中にいつでも選択できる方式で、簡単なものから難しそうなものまでズラッと完備。今回は一番手軽そうな「エクスプローラ」にしておく。なんとなく、“初見全滅”というワードが頭に浮かんだので。

※マルチプレイはオフライン/オンラインに対応。友達と一緒に冒険することも、全く別々の地域で行動することもできる。最大2人まで対応。

難易度を決めたらキャラクター作成の時間。本作の主人公たちは破壊のエネルギー“ソース”と、悪逆の集団“ソース使い”に立ち向かう、「ソースハンター」と呼ばれる者たち。装備・クラス・スキルの取捨選択が全てプレイヤーの采配に委ねられる、自由なキャラクタービルドがウリだ。

本作では最初に2人のキャラクターを作成していく。2人同時に作成って結構珍しい。性別の組み合わせは【男・男】【男・女】【女・女】と自由。また、AIパーソナリティなる項目では、人格や声をもってキャラクターにフレーバーを持たせることができるので、自身のキャラクターにより親しみが感じられる。TRPG的だ。

なお、キャラクタービルドおよびゲームの進行に関して、一つ紹介しておきたいことがある。それは本作の予約特典「キャラクタービルドガイド」の存在だ。これは30ページ以上にわたってビルドの基本について紹介している書籍で、おそらくゲームを買ってからクリアするまで、クリアしてから色々と味わい尽くすまで、いついかなるときでも有用なものとなる。

ビルドの方針からサンプル、アビリティや才能、スキルや状態効果の項目が充実しており、知りたい情報を一目でキャッチできる優れもの。初心者・上級者問わずの使い勝手で、もしこれが無かったらと考えると、ゲーム内での実践や索引におよそ数倍もの時間を要していたことは明白だ(筆者は今回のレビューのために用意してもらえました)。

もちろん、真っ新な心持ちで「ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション」の世界に挑みたいという人には無粋かもしれないが、このレビューを見る前から購入を考えていたような生粋のユーザーたちには、まず間違いなく、絶対に予約を済ませて、コレを入手しておくことをオススメしたい。

予約店舗の回し者のごとく、いきなりイチオシしていることが「予約しろ!」なのはいかんせんキナ臭いかと思われるが、プレイ以外に割く脳内シミュレーションの時間や、プレイ途中の状態効果の確認など、これが有るか無いかで所要時間に圧倒的な変化が生まれるはずなので、PS4版の経験者としてはぜひぜひ入手してほしいと心から思う。今日一のオススメ情報です!

キャラクタービルドの簡単な概要

基本設計

  • 名前
  • 外見
  • 開始時のスキル
  • クラス(計12種から選択可能)

パラメータ

6つの能力値の初期値は5。キャラクター作成時に+5ポイントが振り分けられる。筋力・敏捷・知力は武器の命中率、スキルの効果、命中率に影響し、体格・速力・知覚は生命力や戦闘時の行動力の増減に関わってくる。

なお、本作のクリア前後の想定レベルは20程になるとのことで、ここまでの合計ポイントを目安に、ビルド目標を考えておくのもよさそうだ。この辺の注釈もキャラクタービルドガイドの要約なので、確かな詳細はやはりそちらで確認してもらいたい。

筋力:近接武器の命中率、装備条件、アイテムを動かす能率に影響
敏捷:短剣や弓の命中率、装備条件、盗賊や射手のボーナスに影響
知力:杖や勺杖の命中率、装備条件、魔術師のスキルの効果に影響
体格:生命力と戦闘時のAPに影響
速力:戦闘時のAPや移動量に影響
知覚:戦闘時の行動順やAPに影響

アビリティ

武器/防具の使用効果が上昇(パッシブスキル)、対応スキルを覚えられるようにするための制限解除、クラフトや解錠などの非戦闘系アクションを覚えられる項目。

才能

全50種が用意された、さまざまなパラメータ、アクション、スキルなどに影響する項目。ダメージ増加、状態効果の無効化、動物と会話できるなど、内容は多岐にわたる。

スキル

戦闘を有利に進められる特殊なアクション。戦技・射手・炎術など全8項目をアビリティで解除したうえ、それぞれの項目に存在する周囲攻撃、回復魔法、状態異常付与などを覚えていく仕組み。

作成・育成の方針

  • 仲間メンバーの特徴を把握
  • パーティ内での役割を意識
  • 戦闘で有用なスキルを習得
  • パラメータは装備や性格も考慮
  • 状態効果や属性耐性も重視
  • 戦闘系以外のアビリティは分散
  • 補助的なスキルは複数人に習得
  • 序盤の敵に応じて初期パラメータを設定

そんなこんなで生まれたのが今回の主役、銀髪の女暗殺者「アサッシン」と、清廉な男騎士「ガンキョー」の2人。安直な名前は一瞬で決まったものの、パラメータ/アビリティまわりの取捨選択にはとても迷った。おそらく本作を初プレイだという人は筆者と同じく、「こっち……いやこっち……やっぱこっち……」と悩ましい思いを共有することだろう。

なお、アビリティ、才能、スキルあたりはゲームをプレイする前から最適解を導き出すのはおそらく困難なので、テキストから強スキルの匂いをかぎ分けつつ、こちらもキャラクターのフレーバーとして活用するのもありだ(アサッシンの才能はいじめっこ、不意打ち)。1週目は攻略ではなく、体験として割り切るとスタートも気楽だしね。

物語の導入をムービーで見た後は、いよいよアサッシン&ガンキョーの冒険の幕が開ける。舞台は「リヴェロン」と呼ばれる世界。船から島の浜辺へと降り立った2人は、港町サイシールからの要請により、そこで起きた事件の調査に向かう。

移動はアナログスティック、もしくはマウスカーソル風の操作方式がいつでも切り替え可能。PS4パッドを使っての直観的な操作に問題はないが、元がPC向けであるだけに、ボタン毎に割り当てられている動作はわりとみっちり。最初はオプション画面の操作方法とにらめっこしながら動かしていくのがいいか。

十字キー右を押すと「攻撃モード」に移る。これを使うと非戦闘時でも、さまざまなオブジェクトに自由に攻撃を仕掛けることができるようだ。そして、地面や壁をバシバシ殴っていると、さっそく悪い考えが浮かんでしまった。なので、アサッシンでガンキョーに攻撃を仕掛けてみると……

ガンキョー!!!???

見事にダメージが通り、仁王立ちで血を吹きだすガンキョー。一般的なコンシューマタイトルでは滅多にお目にかかれないフレンドリーファイアに興奮しつつも、少し反省。まあ、でも、アサッシンは見かけも性格もならず者だしね。ガンキョーとはひょんなことからパーティを組んだばかりで、まだまだバディとしては心を開いていないんだよね。

そういう設定にしました。

操作キャラクターは自由に切り替え可能。

貝を拾ったり、どなたかの亡骸を漁りながら、あてもなく進んでいく2人。すると道中で、謎めいた赤い装束の女と鉢合わせた。だが、あちらさんにとっては何かまずいタイミングであったようで……アンデッド風のクリーチャー「呪われた従者」を呼び出し、2人にけしかけてきたのだ!

まあ、RPGの世界ではよくある光景だよね。エンカウントから戦闘開始までもシームレスで移行するので非常にスムーズ。心の準備をする間もない。

戦闘は上述したとおり、シミュレーションRPGのようなスタイル。画面上部に表示されたアイコン順に各キャラクターが行動していく。行動順が回ってきたキャラクターには、パラメータに応じた行動力「AP(アクションポイント)」が与えられ、それを移動・攻撃・スキルなどで消費していく仕組みらしい。

とりあえず一例を切り出しておくと……

アサッシンの場合

1. 行動順が回ってくる:6APをチャージ
2. 1メートル先に敵まで移動:1APを消費
3. スキル「ヴァンパイアタッチ」で攻撃:4APを消費
4. ×ボタンでターンを終了:残り1APを持越し
5. 次のターンの行動開始時:6AP+1AP持越しで7APで行動開始

※APの持ち越し最大値は対応するパラメータに依存するため、最初のうちは10~20くらいが限界。30~40だのを蓄えても同じ行動を際限なく繰り返す(通常攻撃×∞など)ことは出来ない。

戦闘では歩いて近づいて攻撃するだけでなく、移動距離とAP消費量の天秤、AP持ち越しからの一斉突撃、公式サイトいわく「敵が倒れた血だまりに電撃を流すと、感電ダメージが発生(環境連鎖)」など、天候や環境を踏まえての戦術も存在する。なんとなく1戦やっただけでも、このゲームのうたう戦略性がフツフツと感じられた。非常に面白い。

とりあえずは最初の敵ということで、倒すことよりも試すことに注力。攻撃スキルを片っ端から使っていくと、アサッシンが毒を撒くスキルを発動する。この攻撃範囲が予想以上に広かったために、敵もガンキョーも毒まみれ。相手からの攻撃よりもアサッシンの自爆で大ダメージを受けてしまう。生粋のならず者だわ、彼女。

初戦を軽々とこなし、そこで負った痛手はガンキョーの戦技「キュア」で回復。非戦闘時は使用後のクールタイム以外、ノーコストで扱えるようなのでとても便利。さて、これからの進行だが、「女が来た方」「女が去った方」のどちらに行ったものか……などと迷うこともなく、とりあえず女が来た方に足を運ぶ。うわ、暗い洞窟の中だわ。

ここがチュートリアルダンジョンであることは後々分かったのだが、ほとんどの人は足を踏み入れた瞬間「あ、こっちじゃない……」と思うのではなかろうか? そんなデススポットの雰囲気が蔓延しているこの洞窟。RPGでいうところの、“宝箱じゃない方の分岐路”を選んだときの気分に近しい。

対応する才能を持っていれば、ネズミとも話せるらしい。

洞窟の内部は薄暗く、そこらじゅうをネズミが徘徊している。また進行方向では、燃え盛る火の海の対処法、敵に察知されずに歩く方法、特殊な構造で閉じられた大きな門など、謎解きチックなギミックが次々と襲い掛かってくる。あくまでチュートリアル相当でしたが。

ちなみに本作には手軽なクイックセーブ、一定区間ごとのオートセーブ、任意のセーブが用意されている。味方死亡時はスキルで復活させることができるが、全滅時はいずれかのセーブからのやり直しとなってしまうので、危険な戦闘やギミックの直前では小まめなセーブを心掛けたい。

隠密モード(※)で岩に成りすましたり、アイテムが入っている木箱を「アイテムが入っている木箱」として鞄に入れたり、そのへんの壺をところ構わず叩いたり投げたり、立ちふさがる悪そうな奴らを蹂躙したりと、やりたい放題に進む2人。パーティは最大4人までは入れるらしいけど、2人でも全然余裕じゃん!

※隠密モード:十字キー下で隠密モードに移行。敵対象とのエンカウントを避けたい時などに使っていく。また、場所によって外装も「草」「岩」などに変化。隠密しながら歩いている姿にツボをつかれる人は多いかも。

だが、洞窟の最奥に到着すると、そこにはいかにもな棺が……。それは、生者を見つけた悦びの鳴動なのか、はたまた小汚い盗掘者への憤怒なのか、アサッシンとガンキョーが立ちすくむ中、棺はひとりでに動きはじめる。中から現れたのは、尊大な叡智を感じさせる高潔な死者「レージクイン」。

明らかにこのエリアのボスと呼ばれるのであろう不浄なる強者が、ひよっこソースハンターたちの前に立ちはだかったのだ。

彼は「質問は許すけど、お前らは許さないよ」という古めかしいお人柄のようで、どうにも血戦は回避できなさそうな雰囲気。遠まわしな選択肢の会話で問答を繰り広げていくものの、パーティの全滅、ひいてはゲームオーバーの戦慄を予感し、ガタガタと震えざるをえなかった。

そして、和平への尽力はその甲斐も空しく破局。しかも、戦闘開始と同時に遠距離型の手下を2体召喚してきやがった! アサッシンとガンキョーの命運はここで尽きたか……。

と思っていたけれど、彼は実は着痩せするタイプなのか、見かけによらず結構弱い。いや、かなり弱い。登場演出だけはゲーム中盤に現れる四天王の一人のごとき恐怖感を煽っていたのに、弱い。やはり、ゲームの難易度&チュートリアルダンジョン相当の強さだったのだ。

その弱さを体感した筆者は、恐怖心と手のひらを一転。散々煽ってくれたレージクインを、アサッシンの二刀流であっさりと料理し、手下どもはガンキョーの戦技スキル「バトリングラム(突進技)」で一網打尽。床に散らばる戦利品の数々をあさる2人の姿はまるで、盗掘団のそれであった。

最初の山場を越えていざ、冒険の拠点へ

初のダンジョン攻略を終え、アサッシンとガンキョーとプレイしている筆者が一息つくためにも、街を探してさまよい歩く。そして、短い苦難の末にようやく街への順路を見つけられた! だが、見張りの人間たちに「お前ら、オークの軍団の一員だろ!」となぜか嫌疑をかけられてしまうはめに。用心深いのはいいことだけど……。

するとここで、パーティ内でのキャラクター同士の会話が発生。これは各キャラクターが、それぞれのAIパーソナリティや性格に応じて意見・発言するというシステムらしい。でも、今のところ水と油の2人なんだけど、大丈夫?

ダメでした。操作キャラクターをガンキョーにしていたために、アサッシンらしい提案「血祭りにしてあげる!(意訳)」に答えなくてはならなくなった。清廉な騎士のガンキョーは「頼むからやめてくれ」と提案するものの、アナーキーでフリーキーな彼女の歯止めにはならず。そしてここで、まさかの“じゃんけん勝負”の口火が切られた。

これはパーティ内で意見が割れたときに、どちらの提案で物事を進めていくかを決める勝負。対応アビリティによっては有利に事が進められるらしいが、じゃんけん名人になるためのビルドなんてはなから想定していない。まだ1レベルだし。

そして奇しくも、暗殺者と騎士の(他人の)命を賭けたじゃんけん勝負が、路上で執り行われることになってしまう。

ルールはいたって簡単。相手よりも先に一定数の勝利を収めるだけ。昔懐かしのじゃんけん遊技機のような小技も通じぬ真っ向勝負。じゃんけんといえども、勝敗の行方によっては「私にケチをつけてきたから始末ね」を実行に移さなくてはならない。

そんな非人道的行為がかかっているのだ。ガンキョーとしては負けられない。負けた。

アサッシン、勝利の余韻に浸る間もなく狂乱へ。体力は万全ではなし、相手も手練れな雰囲気であったが、アサッシンは持ち前のダガーで見知らぬ人たちをズタズタにしていく。ガンキョーも成り行きで仕方なく、己が正義を執行していく。ガンキョーはなんでこんな女とパーティ組んだの?

しかし、本作のストーリーは「港町で起こった単なる殺人事件のはずが……」というミステリーな導入から本格的に展開していくらしいけど、物語がはじまる前から殺人事件を起こしちゃったよ。アサッシンがストーリーの導入部もまとめて殺しちゃったよ。もしかして“殺人事件”ってコレのこと? そんな叙述トリックな展開なの?

それはないだろうと祈りつつ、2人組みの死体から落とし物を拾い、進んでみることにした。

これが今回の主人公、アサッシンの姿だ。

そこからは道なりで、強襲揚陸を仕掛けてきた若いオークの軍団とかち合ったり、猫に変身できる奇妙な魔法使いに出会ったりしつつ、ようやくゲームのメインステージたる港町サイシールにたどり着くことができた。序盤どころか導入に入るまでにこの右往左往、先が思いやられる。

そうだ、さっきの戦闘でレベルアップしていたので、これまでろくに開いていなかったキャラクター、インベントリ、装備などを確認してみよう。レベルアップで獲得したのはパラメータとアビリティのポイントで、才能のポイントは無し。どのレベルでどのポイントが得られるのかはキャラクタービルドガイドに収録されているので、参考にしよう。

とりあえず、ガンキョーは体格を鍛えてHPをアップしつつ、アビリティ「意志力」で状態異常への抵抗力を身につける。意志力という項目はなんというか、色々なゲームで筆者のツボをついてくるので無条件で選択してしまった。

そしてアサッシンはというと……アビリティ「スリ」。もう、これしかないよね。

手管を覚えるや否やアサッシン、さっそく「スリ」で人様に迷惑をかけていく。スリは隠密状態のうえ、視認されていない状態でないと実行できないようだったので、怪しい草木の茂みに扮して、道端に置かれている誰かのアイテムや、NPCのふところを背後から狙う。お宝ざっくざく。

そこから数件の犯行に及んでみたのだが、住民たちの態度がいきなり変わったり、街中が大騒ぎになることや、軍団兵に独房へとぶち込まれることもなかった。目先の恩恵としては抜群の効果だが、ゲームを進めていくうちになんらかの弊害には出会うのだろうか? それでも、いつでも前向きに後ろ暗い彼女の歩みは止まらないのだろうけれど。

そうこうしていると、次のスリ相手であった軍団兵に見つかってしまった。彼は深くため息をつき、剣を抜きながら、「いくらソースハンターとはいっても……」と、悲しみの心境を吐露する。僕ら、街の事件を解決してくれることを期待されていた英雄だものね。胸が痛い。

しかし、同じパーティメンバーのアサッシンの身を案じてしまうがために、ガンキョーの戦技「バトリングラム」はここでも炸裂。強烈な突進で相手を転倒させる。そしてアサッシンは「ここだ!」といわんばかりに、倒れた相手の前に陣取り、ダガー×手斧の物騒な二刀流でマウントポジションを敢行。罪なき軍団兵を滅多刺し。

その屍から零れ落ちた遺物は、親愛なる人たちに届けられることは決してない。

その後も、ユニークNPCだろうがお構いなしにやりたい放題。ストーリー進行のためのおつかいも強引にカギを盗ってショートカット。本作では“どうやって物事を進めていくか”を全てプレイヤーに委ねているので、手段は多彩だ。

が、殺人事件の現場にたどり着いた途端、2人の直上に稲光が瞬く。「えっ、(悪いこと)やりすぎた?」と思ったが、どうやらストーリーの進行であった模様。そしてソースハンターたちは奇妙な空間へと誘われ、そこで複雑に絡み合う世界の坩堝を知り、自らその身を投じることになる――

はずだったがここでもアサッシン、マスコットキャラクターのような案内人にスリを実行。あれ? 力量差が随分とあるのか、いとも容易く見破られたうえに敵対されてしまった。しかも先手を取られた。なんか変な瓶を投げてきた。爆発した。死んだ。2人の初のゲームオーバーは、これまで犯してきた罪状に見合う順当なものであったとさ。

このように、ゲーム中は各キャラクターがAIパーソナリティに従い、性格や相性に応じたコミュニケーションを魅せてくれる。それは時に戦いの狼煙になり、また和平へのきっかけになることもある。この有機的に動いてくれるキャラクターたちの存在は、なかなかに魅力的だ。

まあ、今回は筆者のプレイングによるところが大きいので、アサッシンもガンキョーも根っからの悪人であったわけではない。ただ、実際にプレイするときはそれぞれの人格を考慮し、「自分ならこうする」と「このキャラクターならこう答える」を自分なりに擦り合わせていくと、より一段と楽しめるのかも。誰とどんな関係を築くかは、すべてプレイヤー次第である。

ちなみに、マルチプレイでもプレイヤーキャラクター同士で会話が発生するらしい。ボイスチャットでワイワイやってみたり、心のロールプレイに従って冒険を進めていくのもまた一興か。場合によっては協力だけでなく、いきなり裏切る敵対プレイも楽しめたり? あくまでフレンドとのお遊びに留めておきたいものだが。

なお、アイテムの売買は全てのNPCと可能。もちろんスリも。

まだなにも始まっていないけど、もうおしまい

ビルド面の情報は「書いたら書いただけwikiになる」といわんばかりだったので、本稿では初心者の冒険の模様にフォーカスしてお送りした。本音でいえば、「キャラクタービルドガイドをそのまま紹介したい!」と思うくらい、再三にわたって引き合いに出しているこの予約特典の内容が素晴らしく、かつ今後のお供に最適なので、予約購入者はぜひ重宝してほしい。もちろん予約していない人も、今からしてもいいのよ?

あと、本作は“細かいことを一切気にせず、大らかにプレイ”するのも悪くない。結果的に筆者はキャラクター性以外を何一つ考慮せずに遊んでみたわけだが、細かな数字に目を向けずとも、アサッシンとガンキョーのようになんとかなるはずだ。多分。それにRPGというものは元来、詰まってしまってもレベル上げで帳尻を合わせればいいのだ。ビルドはあくまで“俺の最強の最適解”を追求するための奥行きであるだけで、無理なら無理に考え込む必要はない。

まあ、本作を楽しみに待っているプレイヤーのほとんどは、それらの“細かいこと”に期待している人たちだろうし、筆者と同様、膨大なデータの前でニンマリしながら試行錯誤、寝る前も頭の中で「あっ、アレとコレを組み合わせて、後からアッチを取って……」とビルドを組み立ててしまうような、根っからのゲーマーが多いと思うので、多くを語るのは野暮だろう。一緒に面倒くさいほどに苦心しながら、ビルドが思い通りに完成したときの快感を味わおう。

最後に、ローカライズを担当したスパイク・チュンソフトの妙か、ゲーム中で所々で目にすることができたユニークな文言にも注目。例えば、メインメニューの項目の説明文が……

  • 「冒険を続けるのだ、ソースハンターよ!(コンティニュー)」
  • 「この素晴らしいサウンドを更に良いものにする(サウンド)」
  • 「このボタンの用途は何だったか…(操作方法)」
  • 「ゲームのオプションを弄ぶ(オプション)」

などなど、斬新な説明文になっている。なお、これらのローカライズをはじめ、ゲームの魅力や開発秘話などを紹介する、スパイク・チュンソフトへの本作のインタビュー記事も追って掲載していくので、気になる人はそちらも合わせて目を通していただければ幸いだ。

洋ゲー×RPGというだけでいろいろと壁を感じる人はいるかもしれない。だが、「ディヴィニティ:オリジナル・シン エンハンスド・エディション」の遊び心地は、いたってシンプルに練り上げられている。“昔ながらの本格RPG”を言わしめる本作の魅力は、ゲームユーザーたちの懐古の中にはあらず。真っ当に現代のゲームデザインで再構築されたこの“昔ながらの本格RPG”は、実際にプレイしてこそ実感できるキャッチコピーであった。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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