本日7月9日より、京都・勧業館みやこめっせにて、イベント「BitSummit 4th」が開催されている。ここでは、1日目のステージの模様をお届けする。
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「BitSummit 4th」では、数々のインディーズタイトルが出展されているほか、ゲームクリエイターが登壇し、さまざまな講演が行われた。その講演の模様をお届けしよう。
ミストウォーカー 坂口博信氏
坂口博信氏の講演では、「テラバトル」での展開を振り返るとともに、坂口氏の今後の取り組みが発表された。
ダウンロードが一定数に達する度にさまざまなクリエイターが参画した「テラバトル」については、イラストや楽曲を提供してきたクリエイター陣によるコメントを収録した映像を披露。このような取り組みについて、新しいクリエイターの作品が投入されることで新鮮味を感じることができると手応えを感じているようだった。
「テラバトル」のコンシューマー版について具体的なことは明かされなかったが、「コンシューマー版の道は険しいながらも行っている」と語っていた。また、本作以外に新たなプロジェクトも進められていることが明かされた。
さらに、坂口氏が新たな会社を設立することが発表。9月頃からの活動を予定しているそうで、どうやら映像関係の会社になるようだ。すでにニコニコ生放送やYouTubeなどで動画配信を行っている坂口氏だが、ゲーム業界に入った時と似たような可能性を感じているという。新会社では放送スタジオを作り、すべてを自前で行えるようにしたうえで、実況や配信を行いたい人が使えるようにしたいとも語っていた。
進行中の新たなプロジェクトでも「テラバトル」のようなダウンロードスターターを行う予定で、新会社で行う企画をゲームに絡めていくような試みも行っていきたいと話していた。
講演の最後では、公開されたばかりの映画「KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV」の感想も披露。すでに試写会で見ていた坂口氏は、とてもよい作品に仕上がっていると評価し、映画を見て「FINAL FANTASY XV」をより遊びたくなったとコメントしていた。
プラチナゲームズ 稲葉敦志氏
設立から10年目を迎えたプラチナゲームズから稲葉敦志氏が登壇し、これから目指すものを語った。インパクトのあるタイトルを作りたいと思い、自由を求めて独立した稲葉氏だったが、徐々にその考えが変化し、より大きなことを考えるようになったのだという。
「ベヨネッタ」や「The Wonderful 101」などのデベロッパーである同社は自社でIPを保有しておらず、自分たちの作品を作ることが夢であると語り、さらに、ユーザーとの距離をもっと縮めていきたいのだという。
稲葉氏は、このIPの形について形の有るものと無いものの2種類が存在すると説明。アクションゲームが得意な同社には、アニメーションライブラリーやアクションゲームを作る上で必要な技術といったノウハウが蓄積されており、そのようなものが形の無いIPなのだという。
このような形の無いIPを自社で独占するのではなく、各社が共有することがユーザーの喜びにつながり、重要な役割をはたすのがインディーであると述べ、そのような人たちと関係を築いていきたいと話した。
また、ユーザーから得られるデータにも注目しているという。ユーザーがゲームを遊んだときのデータがその後どのように行かされたのかが重要で、そのような巨大なデータを各デベロッパーが共有し、ゲームに自動的に組み込むものだという。
すでに、ひとつのデベロッパーで開発できる規模以上のゲームが求められており、それを超えないとユーザーには楽しんでもらうことが難しくなっている。デベロッパー間でノウハウやデータの共有ができれば、それらが可能になるのではないかと語っていた。
最後に、本イベントの感想を聞かれると、会場の熱気がインディーシーンの盛り上がりを表していると答え、自身の意見に賛同してくれるインディーデベロッパーがいれば一緒に未来を築いていきたいとメッセージを送っていた。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント 吉田修平氏&七音社 松浦雅也氏
吉田修平氏と松浦雅也氏によるトークショーの形で行われた本ステージ。来場した感想を聞かれると、2度目となる吉田氏はクオリティの高いゲームや海外デベロッパーの出展が多いと指摘し、京都から日本のインディーを世界に発信できると楽しそうに語っていた。3度目の松浦氏は、インディーの人たちの発表や交流の場としてとてもよい雰囲気であると評価していた。
5月にスマートフォン向けゲームアプリ「古杣」をリリースしたことに触れられた松浦氏は、思っていたよりも大変だったと振り返った。3人で3ヶ月をかけて開発する計画だったという本作は、実際の開発に1年もの期間が必要になったそうだ。その間、インディーにありがちなさまざまな出来事も経験したことも明かしていた。
昨今増えている音楽を題材としたゲームだが、音自体をインタラクティブに触れることのできるゲームは少なく、本作ではそこに苦労したのだという。
吉田氏は、インディーおじさんやVRおじさんと呼ばれていることを嬉しそうに話し、毎日がとても楽しいのだという。初代PlayStationでソフトの製造コストが下がり、さまざまなクリエイターやジャンルが入ってきたときと、現在のVRの状況が似ていると感じており、インディーにとって大きなチャンスだと強調していた。
松浦氏は、いつの間にかゲーム会社が安定を求めるようになってしまったと語り、インディーゲームを作っている人には組織の駒にならずに、やりたいことをやる気持ちを大事にして欲しいとアドバイスを送った。また、自分の作ったものを愛してくれるユーザーがいるからこそ、自身を律することができるので、ユーザーから愛される作品を作ることが重要であるとも話していた。
インディーデベロッパーによるPS VRタイトルの開発に関して聞かれた吉田氏は、レスポンスの速さや技術サポートは大事であると認識しているが、VRに関しては人間の感覚に関わるシステムのため、通常のゲーム以上のチェックが必要だと説明。そのため、マスターアップのだいぶ前の段階からチェックし、酔い対策などのノウハウを共有するようにしており、1、2年は厚めのプロセスで行っていくと話していた。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント トークセッション
本セッションでは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント 秋山賢成氏、吉田修平氏、Cygames 芦原栄登士氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン 大前広樹氏が登壇。
先日行われたUnite 2016 Tokyoにて明らかとなったPS VRゲームコンテストの応募概要が公開された。登壇した4名は本コンテストの審査員であることから、応募者にメッセージを送った。
芦原氏は、VRは新しい体験をもたらすもので、アイデアがあればいくらでもつ作れるので、どんどん作って欲しいとコメント。“最高のコンテンツを作る会社”をビジョンに掲げる同社にちなみ、最高のVRコンテンツが生まれることを期待していると語った。
大前氏は、VR特有の難しい問題を乗り越えた良いアイデアを期待しているとし、企画書だけでなく、とにかく動くものを送って欲しいと述べた。
吉田氏は、面白いゲームを少人数で作っているケースが多いことに触れ、こんなチャンスは今しかない、夢を持って作って欲しいと話した。大前氏の発言に絡め、短いサイクルでどんどんプロトタイプを作るやり方が一番で、とにかく動かして、遊んでもらい、意見を聞くということを繰り返すことが重要だと語った。
トークセッションでは、Q-Gamesがプレイアブル出展しているVRタイトル「Dead Hungry」の話に。プレイヤーが食材を組み合わせてハンバーガーを作り、迫るゾンビに食べさせ、人間にしていくというシンプルな内容だが、それがVRになることで非常に楽しい物になるのだという。
また、VRでマルチプレイゲームを遊ぶことが楽しいという話では、没入を超える実在感について語られた。VRでは他のプレイヤーの実在感が非常に強く、ネットを介したプレイであっても、ゲーム内で隣りにいると本当に一緒に遊んでいる感覚に陥るのだという。机の上のブロックを積み上げるといった簡単な操作だけでも楽しいというエピソードも披露され、終始VRの楽しさをアピールするトークが披露されていた。