ユーザーに最高の感動を与えるために――「グラブルフェス」における様々な工夫とは【CEDEC2020】

発表会・イベント取材
0コメント アサミリナ

オンライン上で9月2日~4日にわたって開催の「CEDEC2020」。ここでは、9月4日に行われたセッション「ゲームの世界を完全再現する -グラブルフェスを支える技術とプランニング-」の内容をお届けする。

新情報の発表やファンとのコミュニケーションの場として、大規模なリアルイベントを開催する事例が年々増えてきている中、これらのリアルイベントにて、どのようなコンテンツを用意すると効果的なのか、どのようにしてクオリティ管理を行えばよいのか、といった多くの知見は、リアルイベントを運営する各ゲーム会社の中で留まっているのが実情だ。

そこで本セッションでは、2019年の総動員数が8万人を超える規模にまで成長した大規模イベント「グラブルフェス」の事例を通じて、リアルイベント開催におけるコンテンツ制作やクオリティ管理を紹介。大規模なリアルイベントを開催および運営するための手法や、大型リアルイベントの開催によって見込める効果について貴重なエピソードが語られたので、そのレポートをお届けする。

登壇者はCygamesより、間宮 小百合氏、堀 亜理紗氏

「グラブルフェス」は現実的に実施可能な最高値を求める

「グラブルフェス」とは、スマートフォン/PC向けゲーム「グランブルーファンタジー」(以下、「グラブル」)が毎年開催している超大規模ファンイベント。まずはどのような催し物が行われているのか、スライドで紹介しよう。

メインステージでの催し物はもちろんのこと、ゲームの世界観を楽しめるような展示、体験アトラクション、カフェなど、訪れた人に楽しんでもらうためのさまざまなコーナーが用意されている。「グラブル」の世界を楽しんでもらうため、特に大切にしていることは、以下の4つ。

現実的に実施可能な最高値を求める

Cygamesのビジョンである「最高のコンテンツを作る会社」に基づき、ゲームの世界をリアルで再現するために、細やかなプランニングや使える限りの技術を用いて、実現できる最高値を求める。

恒常的な施設ではないからこそ細部までこだわる

通常のイベントでは、作りやすく壊しやすいコンパクトなものを作ろうという考え方が一般的だが、グラブルフェスは「いつでも体験できるものではないからこそ、その時点で最高のものを提供する」と、細部までこだわってチェックをしている。

特にキャラクターをモチーフにした制作物は、キャラクターの設定や特色なども反映して、最大限の調整を行なっている。

自己満足で終わらないリアルイベントの作り方をする

プランニングをしていると、「こういうものを作りたい」「こういうことをやってみたい」という運営側主体の考えが先行しがちだが、運営チームが見せたいコンテンツを作るのではなく、ファンの立場に立って「見たい」もの、「やりたい」ものを作っていく。

そのためプランニングの際は、SNSはもちろんのこと、ファンから寄せられた運営チームへの意見・要望も取り入れている。

会場にいない人にもイベントの楽しさを提供する

リアルイベントはどうしても来場できる人数には限りがあるため、動画配信でも行っている。ただ会場の映像を流すだけではなく、配信だからこその楽しみ方ができる工夫もしている。

ステージコンテンツへのこだわり

「グラブルフェス」にてメインとなるステージは、生バンドライブやキャラクターライブなどが行われるライブステージ、撮影パートや殺陣パートなどがあるオフィシャルキャストステージ、そして開発者トークや声優バラエティ、新情報発表などが行われるトークステージがある。

ステージコンテンツは2日間で全12ステージ・約20時間ほど実施したが、その全ステージを配信でも視聴可能にし、期間中の生配信総視聴数は420万を超え、関連ワードがツイッターのトレンド1位~上位を独占したという。

その中でも特にこだわりのトークステージ及びキャラクターライブについて、取り上げる。

トークステージへのこだわり

トークステージで重要な1つ目のポイントは、会場と配信のバランス。例えば、来場者にはコール&レスポンスで会場にいるからこその体験を提供したり、書き下ろし漫画への生アテレコではモブキャラを会場のファンに演じてもらい、作品に参加してもらう。また、バラティでは来場者へのクイズや、アンケートを行ったりもする。

一方で、配信ではそういった企画の際に客席を映すフォローをいれる他、会場内のアトラクションの中継紹介や、SNS上に流れた配信の感想を拾い上げたり、プログラム間の転換を縮小してサブステージを設立し、サブステージでは常に声優のトークを見られるようにしている。

また、会場と配信それぞれの最適な画面表示も考えられている。新情報で新しいジョブを見せながら性能を説明する際には、会場は新規イラストのみをスクリーンに映してじっくりと見てもらうが、配信ではずっと同じ絵だと画面が固まったように見えるため、ある程度画像を見せたらステージ上の様子に切り替えたりしている。

「グラブル」は6年続いているタイトルとあってベテラン層が多そうなイメージがあるが、「グラブルフェス」に訪れるのはコラボイベントや新規層向けのキャンペーンで始めた初心者~中堅層のユーザーから、友人の付き添いや声優ファンという未プレイ層も多いため、未プレイの人に「グラブル」を知ってもらえるチャンスでもある。

そのためバラエティでは「グラブル」を知らなくても楽しめる内容にし、知っていればもっと楽しめる、というような内容にしている。また、声優のプレイ事情を知りたいユーザーもいれば、バラエティを見たいというユーザーもいるため、「グラブル」のゆるいトークを展開する裏番組を配信。こちらはメインに引けを取らない人気となった。

2つ目の重要な点は、全スタッフを当事者とした、理解の徹底。公式コスプレイヤーがキャラを把握するのはもちろんのこと、例えばカメラマンにも「グラブル」への理解だけではなく、声優の好きなキャラや好きな話題などを把握してもらい、発表の瞬間のリアクションにカメラがきちんと声優の反応を逃さないようにしてもらう、というほどの徹底ぶり。

関わるスタッフにゲームをプレイしてもらうのはもちろんのこと、本番と同等の形式で事前リハーサルを数回に渡って行い、ステージも実際のステージと同じ尺にし、バミリ(物を置いたり、人物が立つ位置が分かるようにテープ類で付けた印)も行い、キャストにも最低一回以上は必ず参加してもらっている。

3つ目の重要な点は、ステージ情報発表。新情報の発表は、生放送以外との情報媒体との連携が欠かせない。運営チームは平常業務でブログやツイッターなども連動して担当しているので、各媒体で多面的に情報展開をしたり、テレビで情報を先出しにしてから生放送で詳細を発表したりと、よりドラマチックな情報展開が可能。

3DCGライブへのこだわり

3DCGライブは、モーションキャプチャー技術やAR技術を駆使した、3Dキャラクターによるバーチャルライブ。「グラブル」には19枚ものキャラクターソングがあり、なかにはゴールドディスク賞を受賞したものもあるため、その楽曲をフェスで共有したら盛り上がれるのでは、と考えたところから始まった。

キャラクターを3DCGで完全に再現し、キャラクターが現実世界にいるような体験をしてもらうことが出来る。

その「完全再現」を実現可能にしたのが、Cygamesならではの3DCGの知見、自社で持っているモーションキャプチャースタジオ、そして「グラブル」キャラの3DCG化の土壌だったという。

そしてそれらをステージで「リアル感」として演出すべくこだわった点は、まずディラッドスクリーン。ディラッドスクリーンは半透明のスクリーンなので、ただのスクリーンに映像を映すよりも、キャラクターがその場にいるような感覚にできる。また、ディラッドスクリーンの横では生のバンドで演奏を行い、より臨場感を高めてくれる。

さらに舞台裏には声優がおり、生アテレコによるアドリブでのMCパートを用意。例えばステージ上のキャラクターから指名されたファンは、普段ならば体験できないインタラクティブな会話が可能。ライブパートではプリレンダリングを使用して、キャラクターが最も美しく見えるようにしている。画像のような魔法のエフェクトも、プリレンダで描くことで一層美しく映える。

一方、MCパートはリアルタイムレンダリングに切り替えている。会話の流れに合わせて、ひとりひとりが自然な演技になるように舞台の裏でアクターが演技をつけており、それによって一層キャラクターを身近に感じられる。ひとつひとつは特に新しい技術ではないものの、様々な組み合わせとこだわりによって、圧倒的なリアル感が実現可能となった。

だが、それだけこだわった3DCGキャラクターも、配信で見ているファンには平面的になってしまい、伝わらない。そこで配信でも最大限に楽しんでもらうのが、ARライブだ。

配信ではステージの様子をクレーンカメラで撮影しながらAR技術を利用し、会場とは別のCG画像を流している。会場だと画角は固定されるが、配信だと様々な角度からキャラキターを見ることが出来、アーティストのようなライブとして楽しめるようになっている。スクリーンへの投影ではないため、奥行きのある演出や派手なライブ演出も可能だ。

こうしてARライブの画像を見てみると現地のほうが寂しく感じられるが、現地はキャラクターを生で感じられるようになっているので、物足りなさを感じることはないという。また、配信はアーカイブで全て残るので、会場に訪れたファンも後で配信を見て二度楽しめる内容となっている。

これだけのものを作るのにはさぞ多くのスタッフが必要なのでは……と思うが、実はグラブルフェスを運営しているチームは4~5人ほどしかいないのだそう。

しかも普段は他のコンテンツと平行しながら進めているためハードな現場ではあるが、少人数だからこそ密度の高い連携が可能で、トークステージの台本なども運営チームで作成・監修を行っているのだという。

体験コンテンツへのこだわり

グラブルフェスでは、「遊べる」「会える」「見られる」「味わえる」の4つの体験も大事にしている。その中でも今回のセッションでは、「見られる」と「会える」の2つに焦点を当てて紹介していった。

グランサイファーライドのこだわり

まずはグランサイファーライドについて解説。グランサイファーライドとは、グランサイファーを再現したセットに立って、20メートルにも及ぶ巨大なスクリーンに映し出される映像と共に、映像とリンクして、水、揺れ、スモーク、風、香りなどの効果で、「グラブル」の空の冒険を体験できるコンテンツ。映像が始まってから終わるまでの間で、どんな気持ちになってほしいか、どういう体験が必要かを考えて作られている。

そういった体験の設計を踏まえて、最も注意をしたのは背景イラストの雰囲気を崩さないことだ。「グラブル」の背景は、写実的でもアニメ的でもない独特のテイストで、3DCG化するのが難しく、かなりの試行錯誤を重ねたという。

修正前と修正後の背景CG。地形をばらつかせたり、
グランサイファーに乗っている設定のため雲の質感も変えている。

細かい修正を10個以上のシーンで行い、時には本番前日まで修正を重ねていることもあるそうだ。

草の匂い、マグマの熱や噴火を感じるような温風やジェットスモーク、潮の匂いや水がかかる効果、クライマックスでは振動装置や照明効果を使って、臨場感を出している。

そんな空の旅を楽しむために必要なのが、舞台装置。シアター内はグランサイファーの甲板という世界観で、しっかりと作り込む。

訪れたファンには操舵室からキャラクターが設定や注意事項などを呼び掛け、整理券はキャラクターからの招待状としてデザイン。スタッフがスタッフジャンパーなどを着ていると冷めてしまうので、スタッフはゲーム内に登場するNPCの衣装を着ている。

この案内映像でも3DCGを使うかは迷ったそうだが、あえて馴染み深いゲーム内の映像を使用したそうだ。

スペシャルショー「蒼の軌跡」へのこだわり

スペシャルショーとは、全長50メートルにおよぶメインステージと、天吊りの紗幕へのプロジェクションマッピングで、「グラブル」のシナリオを再現したショー。

舞台上のオフィシャルキャストの動きに合わせて、紗幕にエフェクトを投影し、
オフィシャルキャストによる魔法の詠唱や惨劇の表現も行っている。

このスペシャルショーは「思い出の共有」がテーマ。そもそもは3年目のグラブルフェスに向けて作成されたもので、当時からVR四騎士などの体験コンテンツがあったものの体験人数が限られてしまうため、メインステージで会場にいるファンや配信を見ているファン全員でシナリオの思い出を振り返ることのできるコンテンツを作成したかったという。

そこでグランサイファーライドと同様に、どんな気持ちになってほしいか、どういう映像が必要かを考えて作られている。

そのためにもまず、これから行われるのは「グラブル」のストーリーなのだということを強調するために空や青い光を多く取り入れて、メインシナリオを追っていく。

ファンの心を掴んだところで、コメディ系のイベントシナリオ。次は、かっこよくてドキドキする、バトル系のイベントシナリオを持ってきて、オフィシャルキャストによる騎士同士の戦いなどで、臨場感あふれるバトルを見せる。

そして次にシリアスやハートフルな泣けるシナリオを入れる。ここで悲しいという感情が伝わることで、クライマックスに向けてファンの心を高めてゆく。最後に大型イベントシナリオの「どうして空は蒼いのか」のシーンを使い、羽根を降らせたり、描き下ろしのイラストなども盛り込み、感動を感じてもらうようにした。

だが、ここで重要な問題が発生してしまう。オフィシャルキャストの手前に紗幕があり、オフィシャルキャストからはエフェクトが見えないため、ディティールにこだわるほど連携が困難になってしまったのだ。

そこで、エフェクトのSEに合図音をこっそり入れて、その音のタイミングでオフィシャルキャストが動くように調整した。

世界観を壊さないよう、剣が鳴る音など不自然ではない音を合図音として使用しているそうだ。

また、ここでも配信向けの工夫がある。配信では、おいしいところをピンポイントにクローズアップ。配信は最終日だけ行い、一日目は会場のみで見られるようにしている。来場者の感想をSNS上などに投稿してもらい、メディアにもレポートを掲載してもらう。そして配信の人たちの期待値が高まった二日目で、ショーを配信するという。

期待を高めて、その期待を裏切らないコンテンツを提供することは、かなりの困難だ。
それだけ自信をもって提供しているという表れだろう。

新しい体験コンテンツは、キャラクターと会話できるトークスポット

最後に紹介するのは、まだグラブルフェスには登場していない新体験コンテンツのキャラクタートークスポット。

キャラクターとリアルな会話が楽しめる体験コンテンツで、キャラクタースポットは会場内に複数設置し、気軽に楽しめるようになる。本来は今年の「グラブルEXTRAフェス2020」(※グラブルフェスの地方開催版)でお披露目予定だったが、開催中止を受けて今年12月開催の「グラブルフェス2020」で初お披露目になるという。

このトークスポットではキャラクター(ここではルリア)が登場し、ルリアからファンへ質問、それに回答することでルリアが反応をし、今度はルリアからファンへ要望を聞いてくるので、回答するとルリアが要望に応えてくれる。

最後に、間宮氏と堀氏は、リアルイベントを開催する意義について「ファンにもっとグラブルを好きになってもらうため」と語った。また、「グラブル」は6年間続いている長期運営のため、定期的に話題性や盛り上がりを作ることが重要で、そのためにもリアルイベントは最も効果的だという。リアルイベントの盛り上がりはゲームの盛り上がりにもつながり、実際に数字としての効果も出せているそうだ。

昨今の事情でリアルイベントには厳しい風が吹いているが、「これからも最高の非日常を創り続ける」とセッションの最後を締めくくった。

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