スパイク・チュンソフトが新ジャンルのスマートサウンドノベルシリーズ第1弾として配信したiOS用アプリ「かまいたちの夜 Smart Sound Novel」。本シリーズやタイトルはどのような経緯で開発されたのか、中村光一氏と中嶋康二郎氏へインタビューを行った。

「かまいたちの夜 Smart Sound Novel」は、映像とサウンドを背景に物語を読み進め、プレイヤーの選択によってストーリーが大きく変化する“マルチストーリー・マルチエンディング”というスタイルが特徴のサウンドノベル「かまいたちの夜」を、スマートフォンやタブレットなどの端末向けに最適化したアプリだ。

以前に掲載した記事では、本作をプレイしてみてのインプレッションをお届けしたが、今回、スマートサウンドノベルというジャンルを作った経緯や、その第1弾として配信された本作について、スパイク・チュンソフト代表取締役会長の中村光一氏と、開発ディレクターの中嶋康二郎氏に話を伺った。

中村光一氏と中嶋康二郎氏へのインタビュー

――まず新ジャンルとして“スマートサウンドノベル”シリーズを立ち上げたきっかけを教えてください。

中村光一氏
中村光一氏

中村氏:スマートフォンやタブレット端末が普及してきており、電子書籍や電子コミックといったデジタル書籍の流れも大きくなってきていると感じています。ただ、それらは紙としてあったものをダウンロードして読むだけという形です。我々は何十年も前から、“テキストをディスプレイ上で読む”ことに対して、サウンドノベルという形でいくつか作品を作ってきました。

その中で、デジタル書籍を進化させたひとつの形として、タッチデバイス上で気持ちよくサクサクページを読み進めながら、なおかつインタラクティブ性があったりと、デジタルやコンピュータであることの面白さを表現したかったというのがあります。その第1弾として「かまいたちの夜 Smart Sound Novel」を配信させていただきました。

――新しいジャンルを作ろうと思ったのが先だったのでしょうか、それともiOS向けに新しい形の「かまいたちの夜」を提供しようと考えたのが先なのでしょうか?

中村氏:「かまいたちの夜」を、というのは後ですね。これまでに「428~封鎖された渋谷で~」をはじめ、サウンドノベルのタイトルをスマートフォン向けにいくつか移植していますが、それらはテレビの前でコントローラを握ってプレイすることを前提に作られたものがベースになっています。そのため、基本的には画面をタップして読み進める形になっています。

タップという入力を使ってはいますが、せっかくのデバイスですので、スワイプ操作で気持ちよく読めて、しかも通勤途中の電車などでも読めるよう、片手で楽しめるものにしたいと考えました。「かまいたちの夜」に限らず、読み物やコミックが片手で楽しめつつ、デジタルならではの面白さもあるものを目指したい、という考えが企画の始まりです。

――このジャンルを作り上げる上で苦労された点はどこでしょうか?

中村氏:片手で操作が完結し、なおかつ気持ちよくプレイできるものを目指していましたので、従来のサウンドノベルが持っている場面の転換であったり、そこに挟まる効果音、シーンチェンジのスムーズさに気を使いました。特に片手で読んでいき、ページをめくる切り替わりのところは、開発の最後の最後まで苦労しました。一見するとなんでもなさそうに見えますが(笑)、実はそこが開発側としては非常に苦労点でした。

――ページ送りは開発当初と比べると仕様が変わっているんですか?

中村氏:最初は、ページの最後まで読み進めたら横にスワイプしてページをめくるシステムでした。ただ、その仕様だと横へのスワイプが斜めになってしまったりと、かなり個人差が大きかったんです。前のページに戻ったり次に進む操作も、ページの途中でできないのは不便ですので、結果として画面上部の端をタップすることでページ移動ができるようにしています。

――システムと言えば、シルエットのキャラクターがいなくなっています。シリーズの特徴だったと思いますが、どのような経緯でシルエットを登場させないことになったのでしょうか?

中村氏:iPhoneにしてもiPadにしても、当時に比べて細密になっていますので、開発の最初から背景の写真をもう一度撮り直そうと話し合っていました。当時のペンションにお伺いして撮影したところ、キレイな写真がたくさん取れたので、原作の「かまいたちの夜」で使われていなかったカットやアングルを入れ、新鮮味を増やしたいと考えました。

実際に画面を見ていただくと、アダルトな雰囲気と言いますか、ムードのあるものになっていると感じていただけると思います。そうした綺麗な写真を見ていただくことに重きを置くようにしました。

――なるほど、背景の方に力を入れているんですね。原作と同じ舞台で再撮影を行ったとのことですが、ペンションは当時と比べて変わっているところはありましたか?

中村氏:いえ、それが全然変わっていないんですよ(笑)。純粋にスキーで利用される方もいらっしゃいますが、「かまいたちの夜」ファンの方が毎年のようにいらっしゃるようで、布団のシーツの柄でさえ当時と同じものを使われています。そういったところを見ると、オーナーさんにファンの方のことを考えていただけていると感じますね。

中嶋氏:外に別館ができていたり、手前にお店ができていたりと、見えないところでは変わっていますが、ペンションの外観や部屋の中はほぼ一緒ですね。

中嶋康二郎氏
中嶋康二郎氏

――撮影ではどれくらいの枚数を撮られたのでしょうか?

中嶋氏:2000~3000枚ぐらいだと思いますが、もっと多いかもしれません。そのうち、実際に使っているものは十分の一もないと思いますが(笑)。

中村氏:ロケに行ったのは4月だったのですが、我々を歓迎してくれたかのように、すごい吹雪でした(笑)。

――ゲームに使えなかったけど面白い写真が撮れたりとか、撮影時のエピソードを教えてください。

中村氏:苦労したけど使えなかったのは…屋根から雪が落ちるシーンとかがありました。

中嶋氏:そうですね、除雪機で屋根の上に雪をドバーっと乗せてもらって、窓のところに落としていったりして、動画で撮影もしてあるのですが、シーンの都合上、使わなかったんです。

――サウンドも新しく収録していますが、再収録の経緯を教えてください。

中嶋氏:当時の音を使うかどうかの話が出たときに、背景がキレイになったのに昔の音をそのまま使うのはダメだろうとなりました。初代「かまいたちの夜」の頃は、容量やハードウェアの制限で切り詰めなければいけないところもありましたが、そういった制約もなくなったので、オーケストラを入れたり、ギターやベースも生演奏したものを使ったりしています。かなり絵とマッチした音になっているので、上手く臨場感が出ていると思っています。

――オーケストラにはたくさんの方が関わられていますが、クレジットを見ると、開発人数が意外と少ないような気がしました。少ない人数で済んだ秘訣みたいなものはあるのでしょうか。

中村氏:そうですね…元々あまり大がかりにならないように作るという目的もあったのですが、スマートフォンに搭載されている文字表示や音楽再生の機能をうまく使えたのが大きかったかもしれません。初代「かまいたちの夜」の開発では、最初にフォントを作ったり、サウンドのプログラムを作るところから始めなければならなかったので、ずいぶん楽になりました。また、容量や色数の限界などで、「ここの置物を削除したり、この壁掛けの絵を削除したり」と、ひとつひとつクリアしていったので大変でした。今回はデジカメを使っているので、写真を撮ったらその場で確認して「これいいね!」といった感じで、かなりスムーズに進められました。

――開発環境の変化が影響していたんですね。

中村氏:そうですね、当時とは全然違っています。「街」の開発時もデジカメが出始めだったので、カメラマンさんはフィルムカメラを使っていて、撮ったフィルムを現像して、実際に確認してダメだったら撮り直し…といったことをしていました。

――しかも実際の街を撮っているわけですから、撮影のタイミングも考える必要がありそうですね。

中村氏:そうなんです。撮り直すなら出演していただく方のスケジュールも合わせなくてはいけませんし、デジカメを使うようになってからそういった苦労は減りました。

中嶋氏:しかもそれをiPadに送って、製品版でも同じに映ることを確認できますからね。

――開発期間はどれくらいでしょうか?

中村氏:プログラムで苦労したりと、当初予定していたよりも長くなってしまい、8カ月ぐらいかかっています。

――実際にアプリを配信してからの反響はいかがでしょうか?

中村氏:やっぱりシルエットのキャラクターがいなくなったのは寂しいとか、昔のように一文ずつ表示されていく形式で読みたいという意見は、「かまいたちの夜」シリーズをプレイしていただいている方から多くいただいています。その一方で、電子書籍として見た場合、電子書籍の将来性みたいなものを感じるといった感想もいただけています。

――PS Vitaの「真かまいたちの夜 11人目の訪問者(サスペクト)」ではボイス導入、今回はシルエットキャラクターを廃止するという、毎回新しいチャレンジをしています。次のスマートサウンドノベルとして「9時間9人9の扉」(以下、999)が配信されていますが、こちらでも何か挑戦していることはありますか?

中村氏:「999」も、片手でスマートフォンを持ってお話を楽しんでいただきたいという、根幹の部分は「かまいたちの夜」と同じです。ただ、「999」はデジタルコミックとしての形を追求していると言いますか、単に紙で出ている単行本をデジタルで配信するのではなく、動く画像とマルチシナリオを楽しんでもらいたいという意図で開発しました。

――「999」開発の経緯としてはアプリ化の要望が多かったのでしょうか?

中村氏:アプリ化というよりも、DSで「999」をプレイしていただいた方からは、脱出パートがスキップできないため、シナリオを読むのが大変だったというご意見をいただいています。そのため、シナリオにフォーカスして、物語を楽しんでもらおうというのがiOS版「999」の意図としてあります。

iOS版「999」には、物語を集中して読めるよう、新たなシステムが搭載されている。

――今作の「かまいたちの夜」は、どういった層にプレイしてほしいかといった考えはありますか?

中村氏:やっぱり新しいユーザーさんにプレイしていただきたいというのはありますね。今まではゲーム機でしたので、ゲームをプレイしない方はなかなか接する機会がなかったと思いますが、今作はスマートフォンという電話でできますから。後は、「このゲーム怖いんでしょ?」といって避けられてしまうのも残念ですので、残酷表現を調整できるようにしたりと、細かいところも気を使っています。

――変更点でこだわったところはどこでしょうか?

中嶋氏:新しいシナリオの追加はしていませんが、作中に登場する携帯電話をスマートフォンにしていたりと、ちょっと古いと感じる部分的なネタは現代風に変えています。シナリオだけに限らず、シルエットキャラクターがいなくなったことで、SFC版と同じようなカットの背景だと上手く合わないという問題がありました。例えば椅子だけを映したカットだと、従来であればシルエットキャラが演技をしているので問題ないのですが、今回それがなくなっているので間が持たなくなってしまうんです。そういったところを変えていくのは多少手間がかかりました。

後は、やっぱり我孫子さん(脚本の我孫子武丸氏)のシナリオは非常に面白く、最上級のものだと思います。従来であれば、ここにいろいろな演出を入れたくなるんですが、今回は読み物としてどれだけ快適に読んでいただけるか、も重要なポイントです。なので、演出を入れる入れないのせめぎ合いが一番時間をかけたところかもしれません。

スマホやネットなど、一部の言葉が現代風に書き換えられている。

――とあるシナリオの謎解きでは、プレイ環境が変わることで調整が必要になってきますよね。今回はそれに影響が出そうな設定項目があって大変だったと思いますが。

中嶋氏:あれは毎度毎度ホントにもう…(笑)。確かに仕掛けが一番難しいところではありますが、そこが一番の調整ポイントだったりするので、設定をいじっても問題ないように、しっかりと押さえています。

――お二人が好きなシナリオはどれでしょうか?もしくは当時と比べて、今改めて読んでみると違った感想を持ったものなどがあれば教えてください。

中嶋氏:私も初代から関わっていて、今回改めて読んでみましたが、我孫子さん文章は非常に読みやすくて面白いです。雪山で迷ってしまうシナリオは、結末がこちらの期待していた内容と違っていて、ある意味ひどいのですが(笑)、あの落とし方は秀逸だなと思いました。ミステリー編が解決していく流れもうまく仕組みが作られていて、改めてすごいシナリオだと感じました。

中村氏:私もどれが好きか選べないぐらい全部お気に入りで、当時はいろんなサイドストーリーのアイディアを出し合っていました。あるシナリオではオカマのネタが入っていますが、初代の頃は会社が新宿だったので、我孫子さんたちと一緒に二丁目のお店を何件か回ったりしました(笑)。改めてプレイすると、そういったことを思い出しますね。まだあまりゲームを進めていない方が聞くとネタに思えてしまうかもしれませんが、地下のダンジョンも入っています(笑)。

さまざまな色を持った再度シナリオも「かまいたちの夜」シリーズの見どころのひとつ。

――ちなみに来年で「かまいたちの夜」が20周年ですが、何か展開を考えていたりするのでしょうか?

中嶋氏:考えるだけならいつも考えていますよ(笑)。

――分かりました、何かあることに期待しています(笑)。それでは最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。

中村氏:電子書籍の一歩進んだ形としての「かまいたちの夜」になっていますので、過去にプレイしたことがある方にも遊んでいただきたいですが、まだシリーズを未経験だという方にぜひ新しい体験をしてほしいと思います。

中嶋氏:サウンドノベルは絵があり、音があり、文章があり、それらをいろんな風に見せていく表現ができますが、今回は書籍というところを意識したので、文章に重きを置いています。読みやすさとのせめぎ合いはありましたが、演出を入れなければいけないところは当然しっかりとやっています。スマートフォンで読むことを一番にやっていますので、「『かまいたちの夜』って聞いたことあるけどプレイに時間がかかるんでしょ?」と思っている方にも、ぜひ楽しんでいただきたいなと思います。

――ありがとうございました。

(C)Spike Chunsoft Co., Ltd. All Rights Reserved.

※画面は開発中のものです。

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