PS3/PS Vita用ソフト「英雄伝説 閃の軌跡」の発売に向けて、これまでに発売された軌跡シリーズの全タイトルをおさらい! 第4回では、シリーズ第4作「英雄伝説 零の軌跡」を紹介します。
軌跡シリーズは、日本ファルコムが壮大なスケールで贈るRPGの大巨編。シリーズ第1作目となる「英雄伝説 空の軌跡FC(以下、空の軌跡FC)」がWindows用タイトルとして2004年6月24日に発売されて以来、主人公たちが冒険の旅を通してさまざまな人々との出会いと別れを経験し、成長していくストーリーにより、現在に至るまで多くのファンを獲得している人気シリーズです。
軌跡シリーズの最新作となる「英雄伝説 閃の軌跡(以下、閃の軌跡)」が2013年9月26日に発売されるのに併せて、ここでは「閃の軌跡」と同じゼムリア大陸を舞台とした世界観を共有する、これまでの軌跡シリーズのタイトルを5回に渡って振り返ります。
第4回で紹介するのは、さまざまな闇が蠢く街「クロスベル自治州」に舞台を移し、新たな主人公・ロイドを中心とした「特務支援課」の活躍が描かれるシリーズ第4作「英雄伝説 零の軌跡(以下、零の軌跡)」です。ストーリーやキャラクターに関する情報を紹介するとともに、シリーズ全タイトルをプレイしている筆者が、これから本シリーズを遊ぼうと思っている方のために、本作の魅力をお伝えしていきます。
ストーリー
大陸西部、クロスベル自治州──
かつて帝国と共和国の狭間で熾烈な領土争いが繰り広げられたこの地は、現在では大陸有数の貿易・金融都市として発展を遂げ、繁栄を謳歌していた。
一方、帝国と共和国による圧力も目に見えぬ形で高まっており、両大国の意向を受けた議員・役人たちが醜い政争と汚職を繰り広げる中、裏社会ではマフィアや外国の犯罪組織が台頭し、抗争を始めようとしていた。
そんな中、市民の信頼を失ったクロスベル警察に4人の若者が集められた。
新米捜査官、ロイド・バニングス。
クロスベル市長の孫娘、エリィ・マクダエル。
若き《魔導杖》の使い手、ティオ・プラトー。
女たらしな元警備隊員、ランディ・オルランド。
およそ規格外な彼らは「特務支援課」という新部署に配属され、厳しい現実に直面しながらも、力を合わせて立ち向かって行こうとする。
──これは《壁》を乗り越えようとする若者たちと、大都市の光と闇に生きる人々の生き様を描いた物語である。
舞台設定
クロスベル自治州
エレボニア帝国、カルバード共和国の2大国に挟まれた自治州。昔から鮮烈な領土争いの対象となってきたが、約70年前に自治州として成立。現在、中心のクロスベル市は大陸有数の巨大貿易都市に成長。大陸全土から莫大な資金・人・情報が集中し始めており、高層ビルや導力車、導力ネットワークなど新たなインフラが次々と導入されている。
ENIGMA(エニグマ)
エプスタイン財団が発表した「第5世代戦術オーブメント」の名称。より強力になった数十種類の新魔法を発動できる他、通信機能を搭載しているため、小型の携帯通信端末としても使用できる。高価な中継ターミナルを必要とするため、まだ大陸全土には普及しておらず、財団による実地テストも兼ねてクロスベル市の警察や遊撃士協会に導入された。
エプスタイン財団
オーブメントを発明した天才導力学者C・エプスタイン博士の業績を受け継いだ財団。研究機関・メーカーとしての側面も強く、通信・情報処理などの分野に特に優れている。
IBC(International Bank of Crossbell)
「クロスベル国際銀行」の略称。大陸全土から集まってくる莫大な資産を管理・運用する巨大銀行でクロスベルのみならず、国際的な金融・経済市場を長年に渡って支えてきた。投資活動や金融商品の開発のみならず、テーマパークの運営なども手がけており、エプスタイン財団の「導力ネットワーク計画」にも莫大な資金提供を行っている。
クロスベル警察
軍隊の持てないクロスベル自治州において、主に都市を担当する治安維持組織。帝国・共和国派議員の圧力を露骨に受けており、様々な汚職事件のみならず、 議員と繋がりのあるマフィアの暗躍や外国勢力の活動にも対処できていない状態。そのため市民からの信頼を失っており、遊撃士協会に人気を奪われてしまっている。
特務支援課
クロスベル警察内に新設された弱小部署。自治州内の遊撃士の評判に対抗するため、各方面からの細々とした依頼・要請に対応する事が求められており、警察内では「貧乏クジ」「遊撃士の猿マネ」扱いされている。そのため志願者が一人もおらず、訳アリの新人ばかりがメンバーとして迎えられた。
ルバーチェ商会
クロスベル自治州の裏社会を支配する大規模なマフィア組織。古くから帝国-共和国間の密貿易で財を成し、現在ではより大規模な武器密輸、盗品売買、ミラ・ロンダリングなどの非合法ビジネスを手がける。有力議員と密接な関係を持っているため、犯罪行為の多くは摘発を免れており、仮に構成員が逮捕されたとしてもすぐに保釈されてしまうことが多い。
黒月貿易公司
クロスベル市・港湾区のビジネス街に出来た東方風の貿易会社。一見まともな会社を装っているが、その実態は共和国の東方人街に本拠を置く巨大犯罪組織《黒月(ヘイユエ)》の出先機関で、所属社員は武術の達人揃い。
登場キャラクター
ロイド・バニングス CV:柿原徹也
「──行こう、みんな! 俺たちならきっと《壁》を乗り越えられるはずだ!」
本編の主人公で、クロスベル警察の新米捜査官。3年前に捜査官だった兄を亡くした後、しばらく外国で暮らしていたが、警察学校で優秀な成績を収め、捜査官の資格を得てクロスベル市に戻ってきた。真面目な常識人だが、不正や暴力に対しては敢然と立ち向かう熱血さも併せ持つ。使用する武器は、敵の無力化と制圧に力点を置いた特殊警棒「トンファー」。
エリィ・マクダエル CV:遠藤綾
「ふふっ、この街は大好きよ。でも──たまに呪わしく思うこともあるわ」
クロスベル自治州の代表の一人であるマクダエル市長の孫娘。帝国派と共和国派が醜い政争を続けるクロスベルの政治状況に疑問を持ち、勉学のため周辺諸国に留学していたが、とある理由で警察入りを志願した。人当たりがよく優等生的な性格だが、競技射撃が趣味という凛々しさも備える。
ティオ・プラトー CV:水橋かおり
「正確に言うと、わたしは警察官ではありません。エプスタイン財団から出向したテスト要員ですので」
大陸有数の技術力を持つ「エプスタイン財団」に所属している少女。新装備「魔導杖」の実戦テストのため、クロスベル警察に出向してきた。クールな言葉と素っ気ない態度が印象的だが、別に人嫌いというわけではない。強力な魔法攻撃を繰り出せる魔導杖は、モードに応じてさまざまな形状に変形する。
ランディ・オルランド CV:三木眞一郎
「ハハ、まあそんなに気負うなよ。いざとなったらお兄さんがフォローしてやるぜ」
クロスベル警備隊に所属していた元警備隊員。女グセが悪く素行不良でクビになりかけたところを警察に引き取られた。軟派で軽い性格だが、年上ならではの面倒見の良さや頼もしさも垣間見せる。タフで戦闘力も高く、強烈な打撃力を持つ「スタンハルバード」を自在に振るう。
ダドリー捜査官 CV:中井和哉
「この先は我々、捜査一課が引き取る。お前たち新人どもは引っ込んでいるがいい」
警察のエリート集団である「捜査一課」に所属する捜査官。有能かつ冷徹で、様々な事情を抱えた自治州の危機管理を慎重に行っている。そのため、ロイドたち特務支援課の活動については非常に懐疑的。頭脳派のエリートだが相当鍛えており、軍用の大型導力拳銃を使いこなす。
ノエル・シーカー CV:浅野真澄
「だったら、あたしも助太刀させてください! 全力で皆さんをサポートさせてもらいます!」
自治州の防衛を担当するクロスベル警備隊に所属する女性隊員。類稀なる行動力と戦闘能力を持つ事から、若くして曹長の階級にあり、とある事件でロイドたちと知り合ってからは良き協力者となってくれる。得物はダブルサブマシンガンで、警備隊車両の運転にも長けている。
セルゲイ・ロウ
「──ようこそ、特務支援課へ。山ほど仕事を回してやるから楽しみにしていろ」
ロイドたちが所属する特務支援課の課長。有能だがクセが強すぎるため、警察上層部から煙たがられており、さまざまな思惑としがらみで設立された支援課の管理を受け持つことになった。放任主義で、ロイドたちにも最低限の助力とアドバイスしかしてくれない。
アリオス・マクレイン
「──やれやれ。自己犠牲も結構だが、少々短絡的すぎるな」
遊撃士協会、クロスベル支部に所属する最強のA級遊撃士。凄まじい剣技と卓越した問題解決能力を持つことから《風の剣聖》と呼ばれ、不甲斐ない警察に代わって、クロスベル市民から英雄視されている存在。「八葉一刀流」の免許皆伝で、S級への昇格すら本部から要請されている。
キーア CV:釘宮理恵
「ロイドたちもいっしょなのー? えへへ、だったらキーア、どこでもいいよ!」
とある場所でロイドたちが保護する天真爛漫な少女。記憶を失ってしまっているが、それを感じさせない明るさを持つ。人懐っこく好奇心旺盛で、ロイドたち全員にもあっという間に懐くが、誰も知らない知識を持っているなど、不思議なところを垣間見せることも。
リーシャ・マオ CV:佐藤利奈
「デビューなんて早すぎると思うんですけど精いっぱい、頑張ります……!」
劇団「アルカンシェル」に入ったばかりの新米アーティスト。元々ただの旅行者だったが、トップスターのイリアに偶然才能を見出され、強引に劇団に引きずり込まれた挙句、新作の準主役に大抜擢されてしまった。気立てが良く頑張り屋で、イリアの猛特訓にも文句を言わずに付いて行っている。
ワジ・ヘミスフィア CV:皆川純子
「──で、なに? 警察の犬はお呼びじゃないんだけど」
クールで中性的な美貌と、皮肉で謎めいた言動が印象的な少年。知性派を気取る不良チーム「テスタメンツ」のヘッドを務めており、手下の少年たちからは神秘的なカリスマとして崇められている。格闘術の使い手で、素早いフットワークを活かした空中戦を得意とする。
ヴァルド・ヴァレス CV:滝下毅
「この俺様にタイマンを売るとはな……上等だ、このままブチ殺してやるよ!」
武闘派の不良チーム「サーベルバイパー」の巨漢のヘッド。その圧倒的な腕力と凶暴さで、大勢の不良少年たちを従えている。血の気が多く残忍だが、意外と面倒見がいいため慕っている手下も多い。鎖を巻いた強化木刀の一撃は強烈で、鉄の扉をひしゃげてぶち破るほど。
ガルシア・ロッシ CV:江川英生
「調子に乗るなよ、小僧ども? これ以上歯向かえば──容赦なく潰す」
マフィア組織「ルバーチェ商会」を取り仕切る巨漢の若頭。元々は歴戦の猟兵(傭兵)だったらしく、軍用格闘術の達人であり、圧倒的な戦闘力で敵兵を葬った事から「キリングベア」と呼ばれていた。敵対勢力《黒月》のクロスベル侵攻に対抗すべく、組織の戦力強化に余念がない。
ツァオ・リー
「東方人街を支配する我らの力、存分に見せ付けてやりましょう」
クロスベル市の港湾区にある「黒月貿易公司」の若き支社長。共和国の東方人街に本拠を置く巨大犯罪組織《黒月(ヘイユエ)》の幹部で、ルバーチェ商会が支配するクロスベルの裏社会を攻略すべく派遣された。頭脳派のキレ者で、警察であるロイドたちにも協力するなどの柔軟さを見せる。
マリアベル・クロイス
「答えなさい──わたくしのエリィにどんな破廉恥なことをしたのか!」
ディーター総裁の一人娘で、グループ運営も手伝う有能な令嬢。最近ではIBCの導力ネットワーク化の陣頭指揮を取っている他、湖の対岸にある大規模なリゾート&テーマパークの運営も任されている。エリィの幼なじみで、なぜかロイドのことを目の仇にしてくる。
ツァイト
「グルルルルル……(やれやれ、頼りない連中だ。)」
クロスベルに昔から棲息する「神狼」と呼ばれる狼型魔獣たちのボス。なぜか自治州各地を襲っており、ロイドたちが被害調査に向かうことに。──紆余曲折を経て、警察犬として支援課に居座ることになった彼は、普段は日向ぼっこをしつつ、気まぐれに現れてロイドたちを助けるようになる。
「英雄伝説 零の軌跡」の魅力を紹介!
今作では、主人公であるロイド・バニングスが新米警察官として所属することになった特務支援課で、エリィ・マクダエル、ティオ・プラトー、ランディ・オルランドの3人のパートナーと出会い、新たな物語が描かれます。
「空の軌跡」3部作から舞台をクロスベル自治州に移して展開する本作では、主人公たちはもちろんのこと、さまざまな新キャラクターが登場します。主人公たちの立ち位置も警察官ということで、エステルたち遊撃士とはところどころで違った雰囲気が楽しめるのも本作ならではと言えると思います。
また、リベール王国を舞台としていた「空の軌跡」シリーズでは、国内の各地方を冒険していくというスタイルでしたが、「零の軌跡」では、特務支援課が存在するクロスベル自治州を彼らの拠点として、さまざまな場所に赴くというスタイルとなっています。
もともとエレボニア帝国、カルバード共和国という大国に挟まれ、領土争いを経て自治州として成立した経緯があるということで、ロイドたち特務支援課の前途は多難。さらに、特務支援課のメンバーそれぞれに隠された秘密もゲームを進めることで徐々に明らかになるなど、ボリュームたっぷりなストーリーが展開します。
もちろん本作からでも十分に楽しめるのですが、「空の軌跡」シリーズからプレイしているユーザーにとっては、エステル、ヨシュア、レンが登場し、彼らの新たな物語に触れることができるのも嬉しい要素です。
戦闘システムは、過去のシリーズと同様の「ATバトル」をベースに、仲間と同時に攻撃できる「一斉攻撃」がATボーナスに新たに追加されています。最大4人で一気に攻撃を繰り出して大ダメージを与えることができるので、戦況に応じて役立つ新要素となっています。
また、戦闘開始前のエンカウント前、フィールド上の敵に対して、背後から攻撃をヒットさせて気絶した状態でエンカウントすれば、プレイヤー側が有利な“奇襲”状態で戦闘が開始できます。
そのほか、背後から敵に接触された場合の「敵先制」などエンカウントの仕方によって戦闘状況が変わったり、敵とのレベル差が大きく開いた際は、フィールド上で攻撃を加えるだけで相手を倒すことができるなど、よりフィールド探索を効率的に楽しめるようになっています。
もちろん、戦闘でも新型オーブメント「エニグマ」により新しくなった導力魔法、仲間と協力して繰り出す「コンビクラフト」「サポートクラフト」など戦闘の幅が広がる新要素も盛りだくさん。「空の軌跡」3部作を経て、着実に進化した戦闘が楽しめます。
「空の軌跡」シリーズの「ブレイサークエスト」に代わって登場するのが「支援要請」。これは「特務支援課」に舞い込んでくる市民からの依頼を達成し、捜査官としての階級を上げていく本作でのやりこみ要素の一つです。単に報酬目的で楽しむのもいいかと思いますが、依頼には面白い内容もたくさんありますので、本編とは違ったコミカルな一面が楽しめます。
そのほか、「料理」「釣り」「カジノ」といった、シリーズ恒例にもなったミニゲームの数々は健在。「料理手帳」のコンプリートや「釣果」による段位認定システムは根気のいるやりこみ要素となっているので、ぜひチャレンジしてみてください。
ストーリーの流れとしては「碧の軌跡」に続く部分もありますが、本作だけでも十分なボリュームなので、まずはこちらをじっくりと遊んでもらうのがいいと思います! 最初はPSP用ソフトとして発売された本作ですが、現在ではPSPに加え、PS Vita版「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」(発売:角川ゲームス)、そしてPC版も遊ぶことができるので、お好みに合わせて選んでみてください!