パブリッシャーとデベロッパーの関係などゲーム業界の現状と今後が和田洋一氏、山本一郎氏の知見から得られた「黒川塾(十六)」レポート

発表会・イベント取材
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メディアコンテンツ研究家・黒川文雄氏主催によるトークイベント「エンタテインメントの未来を考える会」の第16回、「黒川塾(十六)」が1月23日に開催された。

黒川文雄氏
黒川文雄氏

「黒川塾」は、黒川氏が進行役となり、エンタテインメントにおけるさまざまなテーマをゲストとともに話し合い、参加者の理解を深めることを目的としたトークイベント。

新春放談「ゲームビジネス潮流観測~混迷の時代に新たな萌芽を探す」をテーマに行われた今回は、代表取締役社長の時代からゲーム業界に大きな影響力を持つスクウェア・エニックス 取締役会長の和田洋一氏、そして自身もゲーム開発に携わり、幅広い知見を持つ山本一郎氏が登壇し、議論を交わした。

まず話題に上ったのが、先日今期が250億の最終赤字になることを発表し、3期連続の営業赤字に陥っている任天堂について。任天堂の今後を不安視する声が大きい中、和田氏が指摘したのが、現状を通して「任天堂は死ぬのか、という話にはならない」ということ。つまり、今回のような赤字を続けたとしても、任天堂そのものが本当の意味で倒産する可能性は低いというわけだ。

とはいえ、過去経営が思うようにいかない時期には、当時携帯ゲーム機市場をほぼ独占したゲームボーイという大発明などで挽回してきたが、今回の状況は決して楽観できる状況ではない。そんな中で和田氏、山本氏が共にポイントとして挙げたのが、スマートフォンゲーム市場を競争相手として認識することだ。

山本一郎氏
山本一郎氏

ニンテンドーDSやWiiが好調だった頃、任天堂は脳トレ系のゲームなど、これまでゲームに触れてこなかったユーザーにアプローチし、ゲーム人口を拡大してきたが、スマートフォンの台頭によって、その時獲得したユーザーの大半はスマートフォン市場に流れているという。

また、子供向けの市場に対しても、アドホックモードで協力プレイが楽しめて中高生に人気の「モンスターストライク」(ミクシィが提供)のヒットを引き合いに、「本来だったら任天堂がやるべき仕事」(山本氏)とするなど、子供に対しても1人1人が楽しめる環境づくりに注力する必要性があると話した。

そうしたことを含め、今後どうしていくかという点においては「被っていることを前提にどう戦うか」を考える必要があると話す。ハード、ソフトを備えた上でプロダクトアウトで収益性の高いものを独占している現状を活かしたまま、次の戦略を考えた時にプラットフォームのあり方を考えて再構成していけるのかが焦点になるということだ。

和田洋一氏
和田洋一氏

プラットフォーマーである任天堂の話に続いては、長きに渡ってスクウェア・エニックスを引っ張ってきた和田氏が、ゲームパブリッシャーとして多くのタイトルを展開する同社で行ってきたことについても話題が及んだ。

2001年から同社(当時はスクウェア)の社長となった和田氏は、初期の段階では既存のIP(知的財産)を使ったタイトル展開を容認し、自信をつけさせつつ、その後は新規IPの創造を目指しながらも、キャッシュ・フローによってリスクを分散することを意識したという。

一番下に月額、定額モデルで一定の収益が見込めるMMORPG、その上にF2Pモデル(基本無料)のオンラインゲームやソーシャルゲーム、さらにその上にハイデフなゲーム(HDゲーム)というピラミッド型の3段構造とし、MMORPGが底支えする中で新たなHDゲームを制作していくということができるような仕組みを構築した。

だが、量販店で販売する仕組みが瓦解した昨今、HDゲームをどのようなビジネスモデルにするかは今なお模索中だという。そういったことを踏まえたリスク回避としての上記の仕組みであり、今後はディスク型、一発回収型ではないHDゲームを生んでいきたいという展望を語った。

一方で、これまではデベロッパーが開発し、パブリッシャーがプロモーションを行うというスタイルが確立していたが、現在はネット上でデベロッパー側がファンと繋がることも多く、パブリッシャーの必要性が変化しているという。パブリッシャーがどういった価値をデベロッパー(昨今注目されているインディーズゲームも含む)やファンに提供するのか、そのひとつとして、完成保証のない状況が多いゲーム開発において、完成まで持っていくための手助けを厚くしていくことを述べていた。

最後に行われた質疑応答で「ここ5年でユーザーがゲームに求める気持ちはどう変化したか?」という質問が寄せられると、山本氏は現状がコアユーザー向け、ライトユーザー向けというかたちで市場が分離していると説明。同時に、ライトユーザー層の中でも主婦層や他にお金を使わない通勤客といったユーザーが遊んでいるコンテンツは収益を上げるようになっているそう。

これを踏まえて、和田氏はこれまでコアユーザーとライトユーザーの住み分けとして挙げられていた、お金の使い方やプレイ時間といった部分が分離し、ゲーム人口そのものは拡大しているものの、ゲーム設計はより難しくなっているとまとめた。

※画面は開発中のものです。

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