「御簾納直彦ミステリィ 篝火ノ屋敷」第7回は、2000年6月にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたPS2用ソフト「SCANDAL(スキャンダル)」を紹介します。
アニメとゲームの融合に挑戦した意欲的なシリーズ「やるドラ」。PlayStationにて4作(「ダブルキャスト」「季節を抱きしめて」「サンパギータ」「雪割りの花」)をリリースしたのち、同シリーズはPS2へと軸足を移します。DVDの大容量を得て、より進化した「やるドラDVD」として。
そこで登場したのが、やるドラ第5弾「SCANDAL(スキャンダル)」と、第6弾「BLOOD THE LAST VAMPIRE」(共に2000年発売)の2作品。「BLOOD THE LAST VAMPIRE」は、ゲーム以外にアニメーション映画や実写映画など多方面で展開され、さらに「BLOOD+」「BLOOD-C」といった、TVアニメとしてシリーズ化もされているので、知っている人も多いんじゃないでしょうか。
ただ一方の「スキャンダル」は、「BLOOD THE LAST VAMPIRE」ほどの知名度はないため、存在自体知らなかったという人もいるかもしれません。そこで今回は、私的に隠れた良作と評価している「スキャンダル」を紹介してみようと思います(ちなみに連載第5回では「ダブルキャスト」を紹介しています)。
「スキャンダル」は、PS2で展開された最初の「やるドラ」タイトルです。当然と言えば当然ですが、グラフィックは初代PSの4作に比べ大きく進化。さらにメディアがCD-ROMからDVD-ROMになったことによって、ディスクチェンジの手間から解放されたのも大きなポイントです。おかげで、PS時代のやるドラに比べ、かなりストレスフリーになってます。システムは過去のやるドラシリーズを踏襲した形を取っており、プレイヤーは基本的に、アニメーションの随所に挿入される選択肢を選ぶのみというシンプルなゲームデザイン。シリーズ作品としては、まさに正統進化といったところでしょうか。
ストーリーは、世界的ロックミュージシャンのスキャンダルを、契約カメラマンの北沢沙紀(CV:高乃麗)が撮影したことに端を発する事件を描いたもの。何の変哲もない(と思われていた)1枚のスキャンダル写真によって、謎の組織に命を狙われる沙紀。果たして写真にはどんな意味が隠されているのか。
そして彼女の運命は……という感じです。
過去4作のやるドラでは主人公が大学生の男性だったのに対し、「スキャンダル」は大人の女性が主人公。また、これまでは主人公=プレイヤーという側面を持っていたため、主人公が大きく目立つことはありませんでした(「雪割りの花」の主人公は結構前に出てた印象ですが)。しかし今回は見せ方自体が大きく変わっているのか、主人公=プレイヤーというイメージは薄れ、沙紀のキャラクター性を前面に押し出した形になっています。ゲームとアニメの比重としては、ややアニメに傾いたかな、と感じました。
ストーリーはサスペンス色が強く、カーチェイスや銃撃シーン、そして殺人など、過激な描写も多かったりします。一難去ってまた一難の連続なので、沙紀に同情しちゃいそうになることもしばしば。まあ、この慌ただしい展開こそが「スキャンダル」の魅力なんですけどね。魅力と言えば、沙紀自身もなかなか良いキャラクターしてます。見た目はセクシー系のおねーちゃんなのに、意外に子供っぽい一面もあったりして、そのコロコロと変わる表情を見ているだけでニヤッとしちゃいます。
PS時代のやるドラに比べると、話題性という意味でちょっぴり地味な印象のある本作ですが、私的には、かなりフェイバリットな作品。もともとサスペンス系のアニメやゲームが好きなので、最初から最後まで楽しむことができました。ハードボイルド……とまでいくかは分かりませんが、この手のストーリーが好きな人には十分オススメできる作品だと思います。残念ながら現行プラットフォームへの移植やリメイクは行われていないので、プレイするにはPS2が必要になりますが、機会があればぜひ遊んでみてほしい一本ですね。