CoolFactoryは、iOS/Android向けアプリ「戦艦帝国」の発表会を、2017年11月30日にウェスティンホテル東京にて開催した。
2014年に創立され、主に中国・日本に向けたゲームのパブリッシング事業を行っているメーカーであるCoolFactory。2015年初頭には海戦ストラテジー「戦艦帝国」を日本向けにリリースし、海外産アプリながら日本国内でも高い人気を博す成功を収めた。
日・中の多数のゲームメディアに加えて、プレイヤーも招かれる形で開催された今回の発表会には、CoolFactory日本社長・増保佑氏、ゲームプロデューサー・板垣伴信氏、軍事アナリスト・小川和久氏らが登壇。増保氏は、発表会の中で「戦艦帝国」をさらに盛り上げるための3つの施策のプレゼンを行った。
板垣伴信氏が、CoolFactory上級顧問に就任! 人気マンガ「ジパング」とのコラボレーションも
まず1つ目の施策として発表されたのが、「DEAD OR ALIVE」など、海外に幅広いファンをもつ作品を多数生み出した板垣氏が、CoolFactoryの上級顧問に就任すること。
きっかけは、とあるゲーム媒体のインタビューで、板垣氏が本作をかなり熱中してプレイしているという記事を、増保氏が目にしたことだ。増保氏はすぐに板垣氏にコンタクトを取り、板垣氏が本作を高く評価している一方で、プロのゲームクリエイターとして多数の改善点を残しているという考えをもっていると知り、アドバイザー的な立場として運営に携わってもらうことを決断したのだという。
増保氏によると、板垣氏を顧問として招く目的は、「品質の向上」と「ゲームのイメージアップ」の2点だ。
既に国内でも高い人気を博している「戦艦帝国」だが、増保氏はまだまだ攻めの姿勢を継続していなければならないと考えている。そこでプロデューサーとして日本国内での成功経験を持ち、なおかつ開発陣とは異なる板垣氏の立場だからこそ気づけるポイントを改善していくことで、よりユーザーに満足してもらえるゲーム運営が可能となる。
さらに板垣氏という実績のあるクリエイターに参加してもらうことで、これまで本作をプレイしていなかった層にも、「あの人が参加しているのなら」という安心感を抱いてもらう効果にも期待を寄せているようだ。
2つ目の施策となるのが、「戦艦帝国」に付随したサービスとして、軍事愛好者に向けたコミュニティサイト。既にサービスは開始されており、「戦艦帝国」のプレイヤーを中心とした軍事ファン間での交流が行われている。(https://www.senkan.jp/)
現在、「戦艦帝国」のゲーム内でも、軍団(プレイヤーが所属するギルド的なもの)の間でプレイヤー同士がコミュニケーションを取ることができるツールは用意されているのだが、機能が必要最低限に抑えられており、改善を望む声が少なくなかった。
加えて、サービスが開始してから3年が経過し、度重なるアップデートによりゲーム内の機能が大幅に増加したことで、初心者にとって敷居が高くなってしまっている問題もあった。今回の掲示板解説には、初心者が他のプレイヤーにゲームについての質問をしたり、お互いに情報交換ができる場所を用意することで、プレイヤー同士の交流をより活発にしたいという狙いがあるようだ。
また、「戦艦帝国」が日本で受け入れられたのは、コアな軍事ファンの支持があったからだと増保氏は考えているようで、「戦艦帝国」の話題に限らない、“軍事”という大きなジャンル全体の情報を得られる場所として活用してもらいたとも語る。
そのためには、全てをユーザー任せにするのではなく、運営側からの様々なアプローチを行っていく予定で、本発表会にも出演している軍事アナリスト・小川和久氏によるコラムもその試みの1つ。現在掲示板では、小川氏への質問が書き込めるようになっており、コアな軍事ファンの知的好奇心を刺激するコンテンツとして自信をもっているという。
「多くの軍事ファンのファーストチョイスとされるよう、今後も様々なアプローチを実施していく」と、コラムだけに留まらない、今後の施策についても意欲を覗かせていた。
そして3つ目の施策となるのが、かわぐちかいじ氏の人気マンガ「ジパング」とのコラボレーション。
「ジパング」は、ミッドウェー海戦直前の太平洋戦争の時代へとタイムスリップした、海上自衛隊の誇るイージス艦「みらい」のクルー達の奮闘を描いた作品だ。ゲーム内では特別なステージが用意され、クリアすることで「ジパング」の原作をゲーム内で読むことができるという試みも行われるという。
増保氏は「ジパング」という、日本でも有名な軍事マンガとのコラボレーションが実現できたことに手応えを感じており、「個人的にも、『戦艦帝国』と『ジパング』は親和性が高いと思っている。多くのプレイヤーに喜んでもらえるのでは」と、その効果に大きな期待を寄せている様子だった。
詳細な時期はまだ決まっていないものの、年内の実施を予定しているとのこと。今後の続報に期待したい。
ゲームと軍事のプロフェッショナル・板垣伴信氏と小川和久氏も、それぞれに熱弁を振るう
増保氏からの説明が行われた後には、板垣氏と小川氏が登壇し、それぞれの立場から「戦艦帝国」と軍事掲示板についてのトークを行った。
まずヴァルハラゲームスタジオの代表取締役を退任、現在は最高顧問という形で同社と関わっている板垣氏だが、現在氏は、ローマにある大学でゲームデザイン科の教授として教鞭もとっている。
これは50歳という節目の年齢を迎えたことで、「これまで自分を育ててくれたゲーム業界と、応援し続けてくれたゲームファンのため貢献したい」と考えるようになったからだと明かす。特に海外でも高い知名度をもつ板垣氏のファンは中国にも大勢おり、今回の上級顧問への就任は、そうしたファンに恩返しできるまたとない機会と考え、オファーを受けたのだという。
また板垣氏は、上級顧問に就任するにあたり、「常にプレイヤーの側に立つ」ことを決めていると明かす。
純粋に1プレイヤーとして本作に入れ込んでいる板垣氏だが、1年以上もの間他のプレイヤーに混じってゲームを遊んでいると、どういった改善をして欲しいかという声が自然と聞こえてくるそうだが、その意見はあまりにも膨大。ゲーム制作のプロフェッショナルである板垣氏には、その中からある程度実現可能なものとそうでないものの判別をつけることが可能なため、有意義な意見を取りまとめて開発に届けることが、板垣氏の主な役割となるという。
それにより改善が実現した具体例として挙げられていたのが、先日行われた大型アップデートで実装された、プレイヤーが所属する陣営を変更する機能。「戦艦帝国」では、それぞれのサーバーごとにプレイヤーは3つの陣営の内の1つに所属することになるが、プレイヤー同士の気が合わない場合などにプレイを継続し辛かったり、弱い陣営に所属すると育成が難しいなどの問題が発生することも少なくなかった。
そこで板垣氏は、「ゲームバランスが崩れないよう、こうした条件を満たすことで陣営を変更できるようにすればいいのでは」という提案をし、その案が採用される形で実装が行われたのだという。
なお板垣氏は、これまでも今後も、ゲーム内通貨などのアイテム類は一切運営から受け取らないようにしており、「今後も1プレイヤーであり続ける」ことを強調。これは、どれくらい課金するか頭を悩ませるのもゲームの楽しさの一部であると氏が考えているからで、立場上確認が可能な内部データなどにも目を通さず、あくまでゲームプレイを通して感じられたことを重視していくという。
一方の小川氏は、「この会場に来るまで、『戦艦帝国』の名前も知らなかった」と告白して笑いを誘いつつ、コラムを掲載などで関わる軍事掲示板について「いずれは、アメリカのスミソニアン博物館のような役割を果たして欲しい」と熱弁。
小川和久氏。自衛官から新聞・雑誌記者を経て軍事アナリストへ転身という経歴の持ち主で、当時は世界に通用する軍事の専門家が少なかったことから、「本気で勉強すればこれで飯を食えるのでは」と考え、軍事アナリストの道を志したのだという。 |
スミソニアン博物館の国立航空宇宙博物館は、日本国内には存在していない貴重な戦争資料の数々が展示されている施設で、アメリカでは多くの子供達が自主的に国立航空宇宙博物館に見学に訪れている。小川氏によると、軍事の目的は平和であり、まず軍事について知ることが、平和を実現するために重要なステップになるのだという。
さらに小川氏は「軍事問題を特殊なものをして扱っている間は平和は実現できません。本掲示板が軍事について学んでもらうための役割を果たし、私自身もその中のお役に立てられれば」と期待を寄せていた。
発表会では、客席からの質問に登壇者が直接回答する一幕も。「戦艦帝国」の魅力についての質問を振られた板垣氏は、「今の日本のゲーム業界は、ニッチな層に向けた作品ばかりになってしまっており、個人的にも危機感を抱いている。その中でも『戦艦帝国』は硬派で本道を突き進んでいる貴重な作品で、応援したいと思った」とその熱い胸中を明かしていた。 |
最後に増保氏は、「まず日本の皆さんに満足していただける作品作りを第一とした上で、将来的には日本と中国だけではなく、世界中にゲームを提供できる会社になれるよう、ラインナップをさらに拡張していきたい」と攻めの姿勢を続けていくことをアピール。「戦艦帝国」で勢いに乗る、CoolFactoryの次なるチャレンジにも要注目だ。