スクウェア・エニックスの海外ゲームタイトル専門レーベル・SQUARE ENIX EXTREME EDGESから、2018年6月7日に発売予定のPS4/Xbox One/PC向けソフト「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」。ここではエピソード1のプレイインプレッションについてお届けする。
本作は、プレイヤーの選択によって物語の内容が変化するアドベンチャーゲーム。前作「ライフ イズ ストレンジ」は5年ぶりに故郷のアルカディア・ベイへ戻ってきた主人公・マックスが時間を巻き戻す力を手に入れ、親友のクロエと共に失踪した少女・レイチェルの事件、そしてマックスが何度も白昼夢として目にする巨大な竜巻の真実に迫ることとなる。
アメリカ・オレゴン州の田舎町を舞台としたどこか懐かしさを感じる空気感、サブキャラクターに至るまで緻密に描かれた登場人物の描写、そしてゲーム内で迫られる数々の“選択”とその結果がプレイヤーの心に深く突き刺さり、英国アカデミー賞や日本ゲーム大賞などでも高い評価を受けている。筆者もたいへん感銘を受けたプレイヤーの一人で、記憶を消してもう一度最初からやり直したいタイトルの一つ。そのため前作の内容も交えて紹介していくが、ストーリーのネタバレには触れていないので安心してほしい。
父親やマックスを失い、レイチェルと出会ったクロエの心情をより深く描く
「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」は「ライフ イズ ストレンジ」の前日譚にあたり、今回はクロエにスポットを当てたストーリーが展開。舞台は同じオレゴン州の田舎町で、優しかった父親・ウィリアムが事故で亡くなり、心の支えとなっていた親友のマックスも引っ越してしまい、母親・ジョイスの新たな恋人・デイビッドとの関係は最悪という辛い現実がのしかかっている。
前作のクロエは19歳だったが、本作でのクロエは16歳。前作以上に父を亡くした傷は深く、世の中のすべてに嫌気がさして自暴自棄になっている様子が伺える。前作でもある程度はクロエの心情も語られていたが、今回はその内面をより深く体感できるのが特徴だ。
例えば、クロエが今考えている心の声が聞こえるというのもその一つ。マックスは物事に対して内心ではロマンチックというか、空想的なリアクションを取っていたが、クロエも同様に詩的な表現で捉えていることが度々あるのが分かる。「実際に口に出した言葉」だけでなく「実はこんな反応もする子」というのが分かり、よりクロエ自身の繊細な本質を感じられるだろう。
これはフォントにも表れていて、クロエが主人公の本作はマックスが主人公の前作よりもややシャープな文字を表示。ゲームのフォントといえば視認性や統一感などを重視するものだろうが、この「ライフ イズ ストレンジ」では“キャラクターらしさ”のほうに重きを置いた選び方になっているように思える。こうした細やかな部分にも注目してみると、ゲームをより楽しめるだろう。
また、前作にはマックスがストーリーを記録していく「日記」があったが、本作ではクロエが「マックスに出せなかった手紙」という形で記録されていく。携帯電話でのメッセージのやりとりが垣間見える要素も健在なのだが、ここからもクロエがマックスに連絡を取りたがっていたにも関わらず、マックスはあまりクロエに連絡をしていなかったことが分かる。
クロエのメッセージを目にすると「クロエはマックスにこんなにも言いたいことがたくさんあったのに、何も言えずに溜め込んでいたのか…」と少し感傷的になってしまった。前作でクロエが登場した際つっけんどんな態度だったのも頷けるし、マックスも親友の父の死に戸惑っていたのは分かるのだが「そりゃクロエだって一言言いたくもなるよな…」とクロエに同情せざるを得ない。
そんなクロエと運命的な出会いを果たすのが、ブラックウェル高校の同級生であるレイチェルだ。容姿端麗で演劇科の花形役者であり、順風満帆な人生を歩んでいるように見えるレイチェルとクロエは同級生という以外ほぼ接点はない。しかしある夜に偶然出会ったことで、クロエはレイチェルが周囲には見せない不安定な一面を知る。思ったよりも行動的だったり、大胆だったり、過激だったりと、最初の印象とは大きく異なるので多くのプレイヤーがクロエと同じように驚いたり困惑するだろう。
もちろんエピソード1の時点で詳しいことは分からないものの、複雑な想いを抱く2人がこれからどのように心の距離が近づいていくのか非常に気になり、さらに発売が待ち遠しくなった。
クロエが論戦を仕掛ける新システム「バックトーク」
前作でマックスは時を戻す能力を得たが、今作のクロエは「バックトーク」と呼ばれる論戦を仕掛けることになる。これは会話をしている相手を自分のペースに巻き込み、説得したり言い負かしたりするような展開へ持っていくことができる新たなシステムだ。
具体的には、画面内の選択肢に「バックトーク」の表示が出るので、これを選ぶとスタート。クロエ側のゲージと相手側のゲージが表示され、砂時計が落ちるまでの時間内に選んだ答えがクロエにとって有利に働けばゲージが進み、先に中央まで到達すれば“勝ち”といえる状態になる。選択肢は「バックトーク」に突入する前にオブジェクトを調べたり、人と話したりして得た情報により変化するので、さまざまな場所を調べておくとよりバラエティに富んだ「バックトーク」を見ることができそうだ。
なお、勝てなくてもゲームオーバーということはなく、そのままストーリーは進んでいく。これこそ前作と本作で共通している「ただし、今は良さそうに思える選択が、後々良い結果をもたらすとは限りません……」という部分で、論戦に勝てば単純に気持ちが良い場合もあるが、それが人物や出来事にどのような影響を与えるのかは後になってみないと分からないのだ。
例えばエピソード1には、クロエがデイビッドと口論をする「バックトーク」がある。母であるジョイスに心配をかけないよう説教するデイビッドに対し、うっとおしいと思うクロエが勝てばそれはそれで気持ちがスッキリするかもしれない。しかし負けてしまってもデイビッドが不器用ながらクロエを気にかけているようなシーンに繋がるので、筆者としてはこれが決して悪い展開だったとは思えなかった。前作の時間の巻き戻しとは状況が違うものの、同様に「これで本当に合っているのだろうか…」「ああしておいたほうが良かったんじゃ…」とプレイヤーを悩ませる選択が随所にちりばめられており、選んだ行動に大きな責任が付きまとうことは間違いないだろう。
ちなみに、前作と同じく他のプレイヤーがどんな選択を選んだのかが分かるオンラインでの集計機能もある。気がつかなかった選択肢を見つけられたり、自分がこれしかないと思った選択が意外と少数派で驚いたり…と同じように楽しめるのは嬉しいところ。
クセのあるサブキャラクターも健在!TRPGを遊べる要素も
このほかにも、本作らしいユニークな要素やキャラクターが色々と用意されている。前作では写真家を目指すマックスがゲーム内で色々なオブジェや風景などを撮影し、それがそのままトロフィー要素となっていた。クロエの場合はグラフィティで、さまざまな場所を調べるとポスターに落書きをしたり、貼ってあるものを剥がして壁に書いたりといった行動を取る。同じトロフィー要素でありながら、マックスとクロエそれぞれでアプローチ方法が違うのが面白いと感じた部分だ。
マックスが通っていたブラックウェル高校も登場し、ネイサンやビクトリアといったお馴染の顔ぶれもあれば、本作で初めて出会う学生たちも。なかでもマイキーとステフとは実際にちょっとしたTPRGを楽しめるので、ストーリーの合間にぜひ会いに行ってほしい。ちなみに筆者も試したところ自身のキャラクターは死んでしまうし仲間は傷つけるし散々な流れになったのだが、この展開は良くも悪くもそのまま引き継がれていってしまうそうだ。TRPGに覚えのあるプレイヤーはぜひベストな展開を目指してみてほしい。
個人的に気になったのは、クロエに好意を寄せている青年・エリオットだ。前作ではマックスへアプローチするウォーレンが登場していて、彼と似たような立場になりそうなのかなと思いきや、ウォーレンよりもだいぶ押しが弱い印象だ。そのためマックス以上に気が強いクロエを相手にするなら「もっと押せよ!!」とつい言いたくなってしまう。エリオットがどこかで男をみせるのか、今後の動向に注目したい。
最後に、まだ前作「ライフ イズ ストレンジ」をプレイしていない方へ。6月7日に発売を控え、前作をプレイしようか迷っている人もいるだろう。もちろん登場人物などに関連性はあるが展開上、前作を知らないと引っかかるような描写はないように思う。「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」をいきなり遊んでも問題なく遊ぶことができるだろう。
そして、ここであえて「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」をプレイしてから「ライフ イズ ストレンジ」をプレイするという流れもオススメしたい。今回のプレイインプレッションを通じ、既に遊んだプレイヤーとはクロエやマックスに抱く感情が少し変わるのではないかという予感がしたからだ。これは既に遊んでしまったプレイヤーには絶対にできない遊び方なので、一つの選択として心に留めておいてくれれば幸いだ。
大袈裟かもしれないが、筆者はこの「ライフ イズ ストレンジ」を、ゲームをたしなむ全世界のプレイヤーが遊んでくれればいいと本気で願っている。ぜひ、切ない青春を描いた“選択”の物語「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」を楽しんでほしい。
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