3月24日、東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2019」にて、「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」のスペシャルステージイベントが開催された。
「劇場版 誰ガ為のアルケミスト」は、FgGがiOS/Android向けに配信するアプリ「誰ガ為のアルケミスト」を原作とする劇場アニメで、2019年6月14日からの公開を予定している。今回のイベントにはゲームプロデューサー・今泉潤氏と劇場版の監督・高橋正典氏、そしてエドガー役の逢坂良太さん、総監督の河森正治氏の4名が登壇した。
「マクロス」シリーズなどで有名な河森氏は本作において総監督を務めるだけでなく、原作ゲームではオープニングアニメを担当するなど「誰ガ為のアルケミスト」とは縁が深い人物だ。そのため劇場版に関しても企画の開始当時から話を聞いていたとのことで、ゲームの世界観に興味があり、総監督を引き受けたと振り返る。
この話を聞いた今泉氏は「まさか“世界の河森”が総監督を務めてくれるとは」と当時の驚きを語った。今泉氏としては、「オープニングアニメに携わってもらった以上、話だけでもしておかないとな」くらいの感覚でオファーを出したというのだ。また高橋監督は「河森さんにお願いするからには、河森さんの色を出していきたい」と考えたという。そんな高橋監督について今泉氏は「高橋さんはバランサー」と表現。河森総監督の個性とゲームの個性をうまく融合させた手腕を絶賛していた。
その一方で、河森総監督と高橋監督の間で擦り合わせなければいけないこともあったと明かす。河森総監督は原作のあるアニメを作ったことがなく、その影響もあってかゲームのキャラクターをオリジナルに変えようとする時期があったという。ゲームを知るファンが納得しつつ、河森総監督の考えを活かすにはどうすればいいかを考えた結果、ゲームのエンディングの2年後を描く案に至ったとのこと。
続いてキャラクターに関する話題へ移ると、エドガーを演じる逢坂さんは「とてもしゃべる量が多くてビックリ」と台本を読んだときの率直な感想を口にする。劇場版はゲーム内のエドガーの話が一通り終わった状態であり、「ゲームとは違った一面を見せてくれる」と話す。逢坂さん自身も「ほぼ別物のエドガーを演じています」と感想を述べた。ゲームの配信から約3年が経過し、別物のエドガーを演じることの戸惑いもあったが、「そこに対応するのがプロ」と覚悟を決めて収録に臨んだという。この発言に対して高橋監督が「一発目からばっちりでしたよ」と絶賛する一幕もあった。河森総監督はエドガーについて、「感情の起伏を表現しやすい」と評する。「一見女好きだけど芯がある性格も魅力。映画に映えるキャラクターです」とお気に入りのキャラクターであることを明かした。
そのほか、ゲームでは亡くなった英雄たちを召還したファントムという立場のセツナとザインも登場。この2人はゲームでも使いやすく、「誰ガ為のアルケミスト」を代表するような存在だ。劇場版では物語でカギを握るだけでなく、「ゲームとは違った形で活躍する」と高橋監督は語った。
そして劇場版の主人公となるのが、水瀬いのりさんが演じるオリジナルキャラクターのカスミだ。オリジナルキャラクターを主人公に据えた理由について河森総監督は、「ゲームをプレイしている人と、知らない人では膨大な知識の差があります」と語る。そこで地球の普通の女子高生であるカスミが、異世界に召喚されるエピソードを入れたという。今泉氏はこれに付け加える形で、「劇場版は彼女の成長物語でもあります」とコメント。「ゲームを知らない人でも、カスミに照らし合わせてみてもらえれば」と話した。
河森総監督といえば「マクロス」「アクエリオン」に代表されるメカの存在も欠かせない。本作にも同様の要素があり、会場では闇の魔人のビジュアルが紹介された。「闇の魔人がさらなるパワーアップをしたらどうなるんだろう」という想像から今回の造形が生まれた今回のビジュアル。逢坂さんは「河森さんの数々の作品を見てきたので、河森さんらしさもあるなと思いました」と感動の言葉を残した。
イベントの終盤、今泉氏は本作が全国10の劇場で公開されることに触れると、「劇場に行ったらすごいことが起こります」と自信をのぞかせる。「来たらビックリするようなことが起こります。その仕掛けを多くの劇場で再現することは難しく、今回は10館のみでの上映となりました」と小規模な展開となった理由も明かした。
さらに今後は、ゲーム版でも「河森さんが手がけた有名な作品とのコラボもあります」というサプライズ発言も飛び出した。具体的な作品名については「歌うのか合体するのか、どっちですかね」とはぐらかしていたが、ファンには嬉しい発表となっただろう。