千葉・幕張メッセにて9月12日より開催の「東京ゲームショウ2019」。セガゲームス/アトラスブースにて試遊出展されている、「初音ミク Project DIVA MEGA39’s」でクリエイティブプロデューサーを務める大崎誠氏、プロデューサー・ディレクターの松並桂一氏へのインタビューをお届けする。
――まず「初音ミク Project DIVA MEGA39's(以下、MEGA39's)」を開発するに至った経緯についてお聞かせください。
大崎氏:2019年はPSPで「初音ミク -Project DIVA-」が出てから10周年で、「初音ミク Project DIVA Future Tone DX」からは2年経っていることもあり、10周年に何かしたいという機運が盛り上がったのが一番大きなところです。社内で初音ミクの定例会を月に1回やっているのですが、10周年にやることとして、我々の選択肢として出てきたのがSwitchでのリリースでした。「Project DIVA」シリーズは最初PSPという携帯機だったこともあり、携帯機と「Project DIVA」の相性がやはり良いんじゃないかと。
松並氏:「初音ミク Project DIVA Future Tone DX(以下、Future Tone DX)」で終わりにしたくないという気持ちも僕らの中にはありました。全員が初音ミクに長く関わっているので、10周年のタイミングで何らかの花火を上げたいよねという話になりました。
大崎氏:実際に、初代「初音ミク -Project DIVA-」の発売日である7月2日に発表して、「初音ミク『マジカルミライ 2019』」では、世界に向けてリリースすることを発表していきましたが、「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project」の10周年を盛り上げるべく準備してきて、ようやく発表できたというところです。
――Switch向けに開発を進められる際、まずはどういったゲームにしようと考えられたのでしょうか?
松並氏:長く愛されるゲームにしたいというのはテーマとして最初からあったので、新たに追加した「ミックスモード」は、低年齢層から上の層まで遊べるものにしたいと考えていました。
元々「Project DIVA Arcade」シリーズは年齢が高めで、逆に「Project mirai」シリーズは低年齢層をカバーしていたので、今回の「MEGA39's」に関してはそういう要素も含めて、幅広い年齢層に親しまれるリズムゲームにしたいなという気持ちは当初からありました。
大崎氏:3DSでリリースした「Project mirai」シリーズは、最初はボタン操作のみだったのですが、「初音ミク Project mirai 2(以下、Project mirai 2)」ではタッチモードを全曲全譜面作りました。タッチモードのEASY(ゲーム中の表記はラクラク)では上画面を見ながら下画面をタッチするだけで遊べるので、幼稚園児の子でもやっていたという話が出てくるぐらいでした。
松並氏:「Project mirai 2」ではゲームデザインから参加しているのですが、大崎と打ち合わせしている時に「(モードを)もう一つ作ったほうが良いんじゃない?」という話があって、当時は「何バカなことを言っているんだ」と思いました(笑)。ただ、その思想を「MEGA39's」では継承していて、2モードにすることで幅広い年齢層をカバーしようという考えがあります。
――家庭用機向けに展開していた初期の「Project DIVA」シリーズタイトルは基本的にボタン操作だった中で、「Project mirai 2」が出たときはタッチ操作を取り入れたことに驚いた記憶があります。
大崎氏:タッチモード自体はめちゃくちゃ判定を甘く作っていました。ボタンであれば押したらその感覚がありますが、タッチはちゃんとできているかどうかを疑うぐらいのデバイスなので、すごくヌルくなるように調整していました。
松並氏:これも当時少しヌルくして大崎に見せたら、もっとヌルくと言われました(笑)。ゲーマー視点よりもさらにゆるめにしました。
大崎氏:ゲームをやって、上手くいかなくて腹が立つというのは良い記憶ではないので、どうせなら買って、上手くいくようこっそりアシストするというのがタッチモードの思想だったので、ミックスモードもそういう存在になれればいいなと思います。
松並氏:ミックスモードを遊ぶ際に、傾きをある程度体感するまでは上手くプレイできないのですが、ボタンを押すサポートモードをオンにすると押しっぱなしで遊べるので、大分楽に遊べます。
大崎氏:ちなみにEASYは片手でプレイできます。あと、「マジカルミライ2019」での試遊出展の時にアンケートをとらせていただいて、いくつかうーん、という意見があったのですが、実は今回の試遊版ではそれを直しています。
(Joy-Conでの操作が)若干ピーキーだったのを、感度をポーズメニューで変えられて、少し緩慢にしています。ジャイロだと動いてしまうのは仕方ないのですが、それを真面目にとって反映させると、見ていて不安になるので動かないようにしました。
――「マジカルミライ2019」で触らせていただいた時との変化は確かに感じられました。
大崎氏:そう言っていただけるのはありがたいです。「マジカルミライ2019」で触って、東京ゲームショウ2019でも来てくれる方がアンケートに答えた甲斐があったと思ってもらえるよう、2週間ぐらいの期間でしたが何とか対応しました。
松並氏:できることしかできていないんですが、指摘いただいたところはいくつか潰しています。
――「ミックスモード」は難易度によって遊び方も変わってくると思うのですが、難しくなってくる部分はどういったところになるでしょうか?
松並氏:HARDになってくると、片方の手で何かをしながら、もう一方の手で何かをするとったシチュエーションがどんどん増えてきます。あと赤は右方向、青は左方向で出るのが基本ルールなんですが、例外的にクロスするノーツも出てきますので、相当難しいところも作れるようになっています。
いわゆるゲーマーが満足できるような難しい譜面も存在しますが、いきなりイベント会場でそれを見ても引いちゃうと思うので出さなかったんです。まずは基本操作を覚えてほしいというのが今の気持ちですね。
――過去作の難易度設定としてある、EXTREMEのような難易度も用意されているのでしょうか?
松並氏:難易度としてはEASY、NORMAL、HARDですが、HARDの中で簡単なHARDと難しいHARDに難易度表記で分かれる感じです。
――難しいHARDというのは…。
松並氏:もうメチャクチャ難しいです(笑)。
大崎氏:「Project mirai 2」と同じような感じですね。「骸骨楽団とリリア」とかはトコトンも普通にやばかったので。
――従来の遊び方に近い「アーケードモード」については、Switchで展開するにあたって調整されている点はありますか?
松並氏:アーケードモードについては調整、というよりはアーケードのゲームプレイヤーが満足できる状態を実現できるかということに徹底的にこだわっています。改善というよりは、同じだよねと思ってもらえることを意識しています。
大崎氏:ハードが違うと作っても同じにならないんですよね(笑)。
松並氏:そもそも60fpsの実現も相当大変なので、どうしようという時期もありました。
大崎氏:さすがにアーケードとPS4で60fpsになっているのに、Switchで30fpsになるのは…。
松並氏:許されないですよね(笑)。今も相当無理して動かしている感じです。
――今回の試遊版でプレイできるのはリズムアクションの部分だけですが、Switchで展開するにあたって、意識している点があればお聞かせください。
松並氏:「Future Tone DX」がある意味決定版として市場に出ているので、Switchで出す上では差別化が必要だと思っていろいろやっていますが、いただいた質問に対して適切なのはTシャツをお客さんがエディットできるところです。実際、お子さん向けに出すタイトルでもありますので、お子さんが絵を描いて、それを着て初音ミクが踊るというところは面白い要素だと思います。
大崎氏:グラフィックをアニメ調にしたのも、そういうところも意識しています。アーケードのリアルなシェーディングは人を選ぶところが正直あったので、「Future Tone」にもアニメシェーディングのPVはいくつかあったんですが、それがほとんどの人から人気もあって、中には全部これでやればいいのにというコメントもあったので、それであればやってやろうと(笑)。
一回見たかったというのもあるし、元々のPSPの「Project DIVA」がセルシェーディングのような感じだったというのも理由としてあります。日本では文化的にもやはりアニメシェーディングだと思うので、一般のお客さんが受け入れやすいのはこちらではないだろうかと。Switchで展開するにあたって、ピーキーさよりも受け入れやすさを選んだという感じですね。
松並氏:より大勢の人に長らく愛されるタイトルにしたいというのは根底にあります。
――アニメシェーディングにする上で苦労された部分はありますか?
大崎氏:フォトリアルのシェーディングって光源とかで色が白飛びしてもそんなに変じゃないんですけど、アニメシェーディングでそれをやるとすごく変になっちゃうんです。それを調整しないといけないので、PVに関しては全見直しになりました。
松並氏:セル表現で可愛くなるライト調整、パラメータ調整を全カットにわたってやっています。
あとアニメ表現にすればするほど鼻と口の線が描けないんです。目だけがある感じになってしまうので、最初は鼻に輪郭線を描いたんですけどなかなかいいバランスにならず、そこには苦労しました。
大崎氏:距離感によっても変わってきます。漫画の表現でも遠くで見る時に若干口を消している描く人もいると思うんですが、初音ミクは口を開けて歌うので、そこが分からないのはまずいという問題もありました。
松並氏:あまり描かないと口を閉じた時に線が消えてしまうんですよね。表情の書き方は結構大変な思いをしています。
――新規楽曲として10曲が追加されていますが、その選定にはどのような意識がありましたか?
松並氏:はじめにテーマを決めていきました。最近の楽曲の中から数曲、「Project DIVA」シリーズに貢献していただいた楽曲Pさんの中から何曲か、といったように10曲の内訳を決めて選定していきました。
大崎氏:あと大前提として、音ゲーに合うというのもあります。ミックスモードに合わないものもあるので、難しいところではありました。
――話は変わりますが、東京ゲームショウ2019で試遊させていただいた際、試遊の楽曲に「どりーみんチュチュ」が増えているのを見てビックリしました。これは出展に間に合わせたという感じなのでしょうか?
松並氏:もちろんそういう話ですね。東京ゲームショウ2019に出展するのであれば入れようかと。多少の無理はしていますが(笑)。
――15日に行われるステージについての見どころもお聞かせください。
大崎氏:ステージでは楽曲の情報を新たに公開します。また、クリプトン・フューチャー・メディアさんのサイト「piapro(ピアプロ)」ではプリセットで入れるフルグラフィックのTシャツ案を募集していたんですが、500件以上の中から選考したものを発表しますので、お楽しみに。あとは久しぶりの登場となる、ミクダヨーとミクナノーが頑張ります(笑)。
――ファンの方に向けてメッセージをお願いします。
松並氏:ミックスモードですが、“いいね”持ちをして左右に傾けるというのをまず学んでいただかないと、しっかりカーソルを動かせないので、遊んでいただく方はぜひその持ち方、倒し方をしっかりと理解した上で遊んでいただきたいなと思います。もし試遊の際に分からないと思ったら、今回のバージョンについては、ポーズボタンを押すと止まった状態のままカーソルが動くようになるので、実際に操作を理解してもらえればと思います。
大崎氏:Switchに初めて「Project DIVA」の名前がつくタイトルを出すことになるので、こちらも気合を入れて作っております。これまで申し上げた新要素もありますし、ミックスモードもアンケートの意見を受けて直してきました。今回の出展でもアンケートを用意していて、ご意見をお寄せいただければ、今なら直せますし、ちゃんと応えますので、来られた方はぜひ書いていただければと。
――ありがとうございました。