2019年10月27日、神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールにて行われた「CHRONO ORCHESTRA 時を渡る翼 CHRONO TRIGGER & CHRONO CROSS」の夜公演の模様をお届けする。

第1部は「クロノ・トリガー」編、クロノの冒険を振り返る

1曲目の「予感/クロノ・トリガー」は、振り子時計の音とピアノの音から始まるゆっくりとしたスタートで、まさにゲームを開始する時を彷彿させる。「クロノ・トリガー」のオープニングや、様々な場面を振り返る映像と共に、会場のファンを「クロノ」の世界へと誘う。

2曲目は「朝の日ざし/ガルディア王国千年祭/ゴンザレスのお歌」のメドレー。まずは「朝の日ざし」と共に、「クロノ」シリーズお馴染みの朝起こされる場面から。千年祭の花火の音などまでしっかりと楽器で再現されていたのが面白かった。「ガルディア王国千年祭」では、思いっきり盛り上がり、踊り出したくなるようなメロディが。そしてそこからの「ゴンザレスのお歌」に続く様にはくすりとさせられつつ、曲にあわせて身体を動かしたくなるような軽快さ。楽しい音楽が続き、コンサートへの期待感も高められてゆく。

曲が終わり、ステージに登壇したのは、「クロノ」シリーズの作曲家である光田康典氏。どの曲もとても思い入れがあり、20年前の思い出がよみがえると制作当時のことを振り返る。特に「クロノ・トリガー」の頃はまだ21~22歳あたりだったこともあり、「改めてこうして聴くと、若かったなぁと思います」と照れ笑いを見せる場面もあった。そして「恥ずかしい部分もありますが、アレンジャーやオーケストラの皆さんによって素敵な音楽に仕上げていただいて、本当に有り難いと思います」と感謝の言葉を述べた。

3曲目は「風の憧憬/カエルのテーマ」。「クロノ・トリガー」の中でも1、2を争う人気曲が2つあわさった贅沢なメドレー。郷愁を感じさせる「風の憧憬」でしんみりとした気持ちに浸り、「カエルのテーマ」はオーケストラによって、より一層雄々しさを増したアレンジに。スクリーンには次々とカエルの名シーンが流れ、こんなに勇ましい曲なのに何故涙が零れるのだろう、というくらい、自然と泣いていた。

続いては、「世界最期の日/ロボのテーマ」。美しい旋律で奏でられる「世界最期の日」から、打って変わって軽快なメロディな「ロボのテーマ」。「ロボのテーマ」は原曲が1ループが1分未満という短めな曲でありながら、今回のオーケストラで大変身を遂げたとも言える。今回のコンサートの筆者の最推し曲ともいえるくらい、原曲よりも更に希望を感じさせるアレンジとなっていた。なのに泣けるのが、不思議でたまらない(それを思い出補正と人は呼ぶ)。

5曲目は「時の最果て」。こちらは大幅なアレンジこそなかったが、むしろオーケストラで忠実に再現されており、じんわりと心に染み入る。

続く「魔王城/錯乱の旋律/魔王決戦」は、中世での魔王との戦いのメドレーで、原曲の不気味さを感じさせるSEまでも、楽器で忠実に再現。そしてそこからの「魔王決戦」では、風の音をウィンドマシーン(※)で再現していたことに驚いた。

※風の効果音として実際にオーケストラで使われている楽器

「時の回廊/サラのテーマ」では、「時の回廊」も「サラのテーマ」も、透明感のある優しい音を中心に構成され、派手なアレンジこそないものの、原曲のイメージがスクリーンに映し出されるシーンと綺麗に重なり、胸が締め付けられた。

再びステージに登壇した光田氏は、「クロノ・トリガー」の制作当時、既に「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」といった大作RPGが世の中にあり、「クロノ・トリガー」という新しい作品でどういう音を作るべきかを考えていたそうだ。

その中で光田氏が行き着いたのが、今までのゲームになかったモティーフの関連性やコード進行を使っての時間の表現だった。例えば「予感」はDsus4(サスフォー)というコードから始まり、ベースの音がファの#に上がってファに戻るというコード進行によって時が戻る、または時が繰り返されることをを表し、エンディング曲の「遥かなる時の彼方」では「予感」と同じコード進行だが、ファの#からファに戻らず、ソ、ラと上がり、時間が進んでいく様を表現してみたのだという。また、「遥かなる時の彼方」のテンポは二分音符=60という早さで実時間と同じ早さで楽曲が進んでいくなど、随所にこだわりが覗える。この秘話を胸に、今一度「クロノ・トリガー」の音楽を聴いてみると、色々と「なるほど」と思うところがあるはずだ。

なお光田氏は「クロノ・トリガー」がデビュー作で、当時はただ曲を作れるということが嬉しかったという。だが、「クロノ・トリガー」の制作陣に、坂口博信氏、堀井雄二氏、鳥山明氏という巨匠が参加しているのだと知って、それからはプレッシャーがのしかかり、最後のほうでは胃が痛くなった、と当時のことを振り返って笑った。

8曲目は、「世界変革の時/ラストバトル」。ラヴォス戦からのラヴォスコア戦という、まさに「最後の戦い」だ。「世界変革の時」は恐らく演奏されるのではないかと予想していたファンもいたと思うが、ラヴォスコア戦はかなり想定外だったのではないだろうか。実際筆者は「ラストバトル」のサプライズには、かなり驚かされた一人だ。ラヴォスとの一連の戦いがスクリーンに映し出されると共に会場を熱くさせる演奏――思わずぞくりと鳥肌が立った。

第1部の最後を飾ったのは、「エピローグ~親しき仲間へ~」。リーネ広場での、仲間との別れのシーンがスクリーンに映し出される。映像で仲間が順々に去っていくシーンにあわせて、そのキャラクターのテーマが差し込まれているアレンジは、感涙の一言。まさかの映像と音による新たな演出に、客席のあちこちからもすすり泣く声が聞こえていた。

第2部は「クロノ・クロス」編、セルジュの物語はやがて「トリガー」へと重なってゆく

第2部は「クロノ・クロス」のオープニング曲の「CHRONO CROSS ~時の傷痕~」から、ゆるやかに、静かに、そして高まりを乗せて、幕を開けた。

11曲目は、「アルニ村 ホーム/夢の岸辺に アナザー・ワールド」。「クロノ」シリーズといえば、目覚めのシーンから。「アルニ村 ホーム」はセルジュの目覚めと共に始まり、柔らかい音色はそのままに、曲は「夢の岸辺に アナザー・ワールド」へ……セルジュと共に会場のファンもアナザーワールドへと導かれる。

12曲目は「溺れ谷/蛇骨館/幽霊船」。このメドレーは、「クロノ・クロス」編という枠がなければ聞けない、面白い選曲だっただろう。「蛇骨館」や「幽霊船」は不気味さの迫る演奏に、じんわりと背中に嫌な汗が出てしまう。

そして続くは、「疾風/死線」。どちらもとにかく力強く、圧倒される迫力。「疾風」から「死線」に切り替わる繋ぎ方には、実に滾った。この日一番、ティンパニなどの打楽器の重低音が体内の奥深くに響き、まさにこれぞ至高のバトル曲としか言いようがない、最高のメドレーだ。

ステージに登場した光田氏は、ジャズを意識した「クロノ・トリガー」に対し、「クロノ・クロス」ではどういう音楽がいいか、シナリオの加藤正人氏と色々考え、その中で見つけたのが「ラジカル・トラッド」と呼ばれるジャンルの音楽だったと制作当時のことを振り返る。ラジカル・トラッドとは主に北欧地域の民族音楽をベースにしつつ、変拍子や様々な楽器を取り入れ過激に伝統音楽を表現するジャンルのことで、それらに影響を受けつつも、バルカン半島の音楽であったりアフリカ音楽であったりと様々な民族音楽をミックスして作ったのが「クロノ・クロス」の音楽だったそうだ。

また、「クロノ・クロス」の制作時、光田氏はすでに当時スクウェアを退社してフリーの作曲家となっていたが、加藤氏から「クロノの続編を作りたいのでぜひ音楽をやってもらいたい」と声をかけてもらった時は、嬉しくて二つ返事でオーケーしたという。

14曲目は「次元の狭間」。バトル曲で昂った心を癒す楽曲に、ゆったりと心を委ねる。

15曲目は、「星を盗んだ少女/時のみる夢」。「星を盗んだ少女」はキッドのテーマとも言える曲だが、ここに少しサラのテーマが挟み込まれているのが、実に心憎い。そしてしんみりと聞き入ったところで、「時のみる夢」が一気に会場を盛り上げにくる。「クロノ・クロス」は全体的に落ち着いた曲調が多いため、晴れ渡った青空を駆けていくようなイメージの「時のみる夢」はゲーム中でも貴重な一曲で、感動の一言しか浮かばない。

続いては、「運命に囚われし者たち」。ゲーム中でも、切なく胸を締め付けてくるこの曲とイベントがトラウマになったというファンは多いと思うが、セルジュが責められるシーンの映像と相まって、会場にいたファンのトラウマをより一層深く抉ってくれた演出(※誉め言葉である)には、涙。

17曲目は、「凍てついた炎/龍神」。「凍てついた炎」はオーボエの美しさが際立つアレンジに。そしてスクリーンで「凍てついた炎」の目が開くシーンと共に赤いライトが客席に向けられた時の演出には、ドキっとした。「龍神」はまさにオーケストラのためにあるような一曲だ。決して熱いバトル曲ではないが、ラストバトルに相応しい重厚感のある曲は、オーケストラの音の厚みで、より一層深みが増した。

18曲目は「時の闇にて/生命 ~遠い約束~/回想 ~消せない想い~」。ここでは、ステージのライティングによる演出について、更に深く述べたい。もちろん、この楽曲に至るまでも照明を使った演出が素晴らしかったのだが、「生命 ~遠い約束~」では、一音と共にライトが瞬く。もちろん、順番は「黄、赤、緑、青、黒、白」だ。そして、最後の七音目は……「クロノクロス」。涙腺が崩壊した瞬間だった。

第2部の最後を飾ったのは、「RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~」。今回はコーラスのないコンサートだったが、演奏にあわせてしっかりと歌声が脳内で再生されるようなアレンジになっていた。ギターの音色は主にハープが担当して、原曲のイメージを壊さない、それでいて新しい「RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~」を聞かせてもらえた。

大きな拍手に包まれる会場の声に応えて、再びステージに戻ってきた光田氏。「裏でずっと聴かせてもらっていましたが、鳥肌が立ちました」とこの日のコンサートの感動を語った。また、こうして25年が経っても愛され、多くのファンがこうしてコンサートに足を運び、素晴らしいコンサートを開催してもらえる作品に自身が作曲家として携われた喜びを述べた。

なお今回のコンサートは4名のアレンジャーに参加してもらったが、「キャラクターのテーマとかモチーフを上手く組み合わせて取り入れてください」と光田氏からお願いをしていたそうだ。実際、楽曲のあちこちで、「あっ」と思う場面があったのではないだろうか。

そしてアンコールとして最後に演奏されるのは、「クロノ・トリガー」から「遥かなる時の彼方へ」。この曲は光田氏が高校生くらいの頃に作成したモチーフをベースにしており、光田氏の大切な友人が亡くなってしまった時に書いたもので、出会いもあれば別れもあるという想いが「クロノ・トリガー」に通じるのではと使ってみたという、秘話が明かされた。「この曲を聞いて前向きに元気になるぞ、という感じで聴いていただければ嬉しいです」と、光田氏はこの日のステージを締めくくった。

アンコールの後も鳴りやまない拍手に、三回もカーテンコールに応えた光田氏。そのたびに何度も何度も客席にお辞儀をして、はにかんだ笑顔を見せていたのが印象的だった。

なお、今回のコンサートで演奏された楽曲の多くは2019年9月4日に発売されたCD、「CHRONO TRIGGER Orchestral Arrangement」と、「CHRONO CROSS Orchestral Arrangement」で聞くことができる。コンサートを振り返りたいファンや、今回は残念ながら会場に足を運べなかったファンは、ぜひこちらのCDを聞いてみてほしい。

会場の貴重な展示の一部をフォトレポート!

この日の会場には、「クロノ」シリーズの貴重な原画などの展示が行われていた。そのほんの一部ではあるが、いくつかをお届けしよう。

セットリスト
1部

1. 予感 / クロノ・トリガー(音楽:光田 康典 アレンジ:山下 康介)
2. 朝の日ざし / ガルディア王国千年祭 / ゴンザレスのお歌(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
3. 風の憧憬 / カエルのテーマ(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
4. 世界最期の日 / ロボのテーマ(音楽:光田 康典 アレンジ:篠田 大介)
5. 時の最果て(音楽:光田 康典 アレンジ:篠田 大介)
6. 魔王城 / 錯乱の旋律 / 魔王決戦(音楽:光田 康典 アレンジ:山下 康介)
7. 時の回廊 / サラのテーマ(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
8. 世界変革の時 / ラストバトル(音楽:光田 康典 アレンジ:山下 康介)
9. エピローグ~親しき仲間へ~(音楽:光田 康典 アレンジ:竹岡 智行)

2部

10. CHRONO CROSS ~時の傷痕~(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
11. アルニ村 ホーム / 夢の岸辺に アナザー・ワールド(音楽:光田 康典 アレンジ:篠田 大介)
12. 溺れ谷 / 蛇骨館 / 幽霊船(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
13. 疾風 / 死線(音楽:光田 康典 アレンジ:竹岡 智行)
14. 次元の狭間(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
15. 星を盗んだ少女 / 時のみる夢(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)
16. 運命に囚われし者たち(音楽:光田 康典 アレンジ:竹岡 智行)
17. 凍てついた炎 / 龍神(音楽:光田 康典 アレンジ:竹岡 智行)
18. 時の闇にて / 生命 ~遠い約束~ / 回想 ~消せない想い~(音楽:光田 康典 アレンジ:竹岡 智行)
19. RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~(音楽:光田 康典 アレンジ:山下 康介)

アンコール

20. 遥かなる時の彼方へ(音楽:光田 康典 アレンジ:マリアム・アボンナサー)

公演概要
公演名

CHRONO ORCHESTRA 時を渡る翼 CHRONO TRIGGER & CHRONO CROSS

日時

2019年9月7日(土)大阪公演
【昼公演】12:30開場/13:30開演
【夜公演】17:00開場/18:00開演
会場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)メインホール
演奏:日本センチュリー交響楽団

2019年10月27日(日) 東京公演
【昼公演】12:30開場/13:30開演
【夜公演】17:00開場/18:00開演
会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

指揮

佐々木新平

トークゲスト出演

光田康典(プロキオン・スタジオ)

主催/企画/制作

スクウェア・エニックス/プロマックス

協力

プロキオン・スタジオ

(C)1995, 1999, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
Characters: (C)1995 SQUARE ENIX CO., LTD. (C)1995 バードスタジオ / 集英社
Character Design: (C)1999 SQUARE ENIX CO., LTD. / (C) 1999 結城信輝

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