16ビット風王道RPG「エアラフェル」をレビュー。2016年にSteamでリリースされた同名作品が、「拡張版」としてスマートフォンを含めたさまざまなハードに対応。iOS版をベースにその魅力を紹介する。

目次
  1. 一人の少女の物語がオープニングから丁寧に描かれる
  2. これぞ16ビット風RPG!マップを探索する冒険の旅
  3. スキルを組み合わる楽しさが味わえるバトルシステム
  4. 一見地味だが丁寧に作られた良作RPG!じっくり楽しませてくれる作品

「エアラフェル」はStegosoft Games開発、DANGEN Entertainmentから配信されている16ビット風RPG。2016年にSteamでリリースされた同名作品が、この度「エアラフェル(拡張版)」としてリリースされた。この「拡張版」は、Steam版、PS4版、Xbox One版、Switch版のほか、iOS版やAndroid版もリリース。あらゆるハードでプレイできる環境が整ったことで、好みのプレイスタイルに合わせて楽しむことが可能になった。そこでこの記事では、今回追加されたiOS版をベースにプレイレビューをお届けしたい。

一人の少女の物語がオープニングから丁寧に描かれる

本作の世界観は、王道ファンタジー。舞台となるのは、空に浮かぶ島、エアラフェル。その昔、この島は崩壊の危機にあったが、エルフの魔術師たちが魔法を使うことで救われたのだという。しかしその後、エルフ達はヴァンパイアとの戦いに敗北、石化してしまった…。

いかにも王道ファンタジーといった趣のある、スケールの大きなバックグラウンドストーリー。しかし、本作の物語は、極めて日常的なスケールから幕を開ける。幕開けとなるのは、リタ・ルコッタという少女が、その友人、エイドリアン・オマニに連れられて秘密の洞窟を訪れるシーン。

エイドリアンは、洞窟にある魔法の指輪を持ち帰れば大金が得られるという。途中、不気味なミュータントとの戦いや、エイドリアンとはぐれてしまうといった事態が発生するものの、なんとかリタは魔法の指輪をゲット。しかし、洞窟からの脱出できなくなってしまう…。

洞窟で一夜を明かした翌朝、エイドリアンが連れてきた村の大人たちによって無事リタは救出される。心配する父親とケンカしつつも、リタはアーチェリーコンテストへと向かう…というのが冒頭の流れ。起きる出来事は、平和な村のちょっとしたトラブル…といったスケール。派手さはないが、少女の周りの環境や登場人物を丁寧に描いているため、深い感情移入を促してくれる。

昨今のスマホRPGでは、プレイヤーを序盤から一気に引き込むため、冒頭に巨大なモンスターとのバトルなど、ド派手な演出を用意することが多い。これはこれで楽しいのだが、16ビット時代のRPGには、村の若者がゴブリンやスライムといった小さな脅威と戦いながら、徐々に成長していく…という物語が多かったように思う。この点で本作は、いかにも16ビット時代の王道RPGといった空気を感じさせてくれる。

これぞ16ビット風RPG!マップを探索する冒険の旅

16ビット時代の息吹を感じさせてくれるのは、序盤のストーリーだけじゃない。見た目のドット絵もさることながら、本作のゲーム性そのものが、古き良き王道RPGの楽しさを感じさせてくれる。

本作のゲームの流れは、クエストを受注して目的地へと向かい、特定の敵を倒したり、アイテムを手に入れたり…というもの。この流れ自体は、最近のスマホRPGと大きく変わるものではない。

しかし、クエストを受注したり達成るためには、探索が必要という点が、最近のスマホRPGとは大きく異なる。街では人々の話を聞き込む必要があるし、マップはパズル的に作られていて、ただ目的地へと向かうだけではクエスト達成はできない。しっかり「探索」する必要があるのだ。

マップ移動にパズル性を生み出している要素が、「ジャンプ」「しゃがむ」といったアクションと、「ギミック」。「ジャンプ」を使えば1キャラクター分の穴や段差を飛び越えることができ、「しゃがむ」を使うことで、天井が低い場所へ入りこむことができる。マップはこうしたアクションを使うこと前提で作られているため、ただ移動するだけじゃなく、「ジャンプ」や「しゃがむ」が使えないか、じっくり観察しなければならない。

こうしたアクションに加えて、アイテムがないと進めない場所や、スイッチを使って開閉しなければならない扉といった「ギミック」が存在することで、パズル性が生まれている。どうやってあの場所に行けばいいんだ?と頭を悩ませるのは、16ビット時代のRPGで強く味わった感覚だ。

また、マップが適度に広く、移動の自由度が高いのも楽しい。自分で探索している!という感覚をしっかり味わわせてくれる。その一方で、その時点で行く必要がない場所はキッチリ通行止めしているのも助かる。必要のない場所を探索して、時間を無駄にしてしまうことがないのだ。

スキルを組み合わる楽しさが味わえるバトルシステム

本作はシンボルエンカウント形式。マップ移動中、敵シンボルに接触するとバトルシーンへと切り替わる。バトルシーンといっても、キャラクターサイズがマップ画面と大きく変わるわけではない。筆者はこの見せ方から、16ビット時代の傑作RPG「クロノトリガー」を連想した。

バトルシステムは、ターン制コマンド選択式。ただ特徴的なのが、スキルを使うためのMPが毎ターン回復していくという点。さらに、バトルが終了するとHP・MPは全回復。このため、一回一回のバトルごとに遠慮なくスキルを使うことができる。ではカンタンで歯ごたえのないバトルなのか…というと、これがそうでもない。

本作はゲーム開始時に難易度選択ができる。筆者が選んだのは、「ほとんどのバトルを苦しまずに進める」というノーマル。確かにスキルをしっかり組み合わせて戦っている限り苦戦することはない。しかし、うっかり気を抜くと、死にかけることに。なので、適度な手応えが味わえる。

スキルを使う際には、単体攻撃か?全体攻撃か?といった点やダメージといった効果も重要だが、どれだけMPを消費するかというコストも重要。というのも、ターン毎のMP回復量を想定してスキルを使うことで、バトル終了まで毎ターン思い通りにスキルを使い続けることができるからだ。

この「ターン毎のMP回復」は育成にも楽しさをもたらしている。本作の育成は、レベルアップ時に獲得したポイントを、各能力値に割り振ることで行う。この時、「賢さ」にポイントを割り振れば、ターン毎のMP回復量がアップしていく。もちろん、他の能力値も重要なので、ポイントの配分はなかなか悩ましい。だがそれだけに、とても楽しい!

一見地味だが丁寧に作られた良作RPG!じっくり楽しませてくれる作品

ここまで本作の魅力について語ってきたが、気になる点にも触れておこう。筆者が本作をプレイして気になった点は2つ。ひとつめは、筆者が今回使用したiPhone 11 Pro では、本来画面に映らない部分まで見えてしまうという点。

ゲームは通常、1フレームごとに画面をクリアし、新たに画面を書き換えるが、それは画面に映る部分の話。画面に映らない部分に対しては画面をクリアを行わない。この結果、本来画面に映らない部分まで移動してしまったキャラクターやマップの画像が溜まってしまい、画面端がバグでおかしくなったかのような表示になってしまう。この段落の下の画像のような表示だ。これはiPhone 11 Proの解像度が引き起こしている問題だと思うので、他の端末だと正常にプレイできるのだと思うが、作品の完成度が著しく下がるので、是非とも改善してほしい。

ふたつめの問題点は、演出が地味すぎるという点だ。もちろんこれは、16ビット風RPGという観点からすると、圧倒的に正しい。ただ、地味なので、本作をスルーするというプレイヤーが出てくるのが残念に感じてしまう。地味かもしれないが、本作は細かい部分まで丁寧に作り込まれた良作RPGなのだ!逆に言えば、一見地味かもしれないが、じっくり楽しませてくれる良作なので、RPGファンであれば、16ビット風の外見にとらわれず是非プレイして欲しい。

エアラフェル(拡張版)

DANGEN Entertainment

PS4ダウンロード

  • 発売日:2020年3月26日
  • 12歳以上対象

エアラフェル(拡張版)

DANGEN Entertainment

XboxOneダウンロード

  • 発売日:2020年3月26日
  • 12歳以上対象

エアラフェル(拡張版)

DANGEN Entertainment

Switchダウンロード

  • 発売日:2020年3月26日
  • 12歳以上対象

エアラフェル(拡張版)

DANGEN Entertainment

PCダウンロード

  • 発売日:2020年3月26日
  • Steam

エアラフェル(拡張版)

DANGEN Entertainment

iOSアプリiOS

  • 配信日:2020年3月26日
  • 価格:610円(税込)

    エアラフェル(拡張版)

    DANGEN Entertainment

    AndroidアプリAndroid

    • 配信日:2020年3月26日
    • 価格:610円(税込)

      ※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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