セガより発売中のPS4用ソフト「龍が如く7 光と闇の行方」。4月9日からの有償DLC「プレミアム・マスターズパック」配信に併せて、改めてその魅力を紹介する。
2月の「セガなま」では、累計出荷本数が40万本を突破したことが発表され、2020年4月9日からは、難易度選択や、高難易度ダンジョンなどのやりこみ要素が追加される有償DLC「プレミアム・マスターズパック」の配信がスタートするなど、発売から時間が経ってもまだまだ大きな盛り上がりを見せている「龍が如く7 光と闇の行方」(以下、龍が如く7)。
シリーズファン・新規プレイヤーから高い評価を受けていることも、その盛り上がりが続く要因の一つとなっているが、大幅なシステムの一新や主人公の交代などもあり、発表時にはシリーズファンからの賛否が別れることになったのも記憶に新しい。そこから「龍が如く7」が、なぜ成功を収めたのかを振り返る意味で、改めてその魅力を紹介していこう。
等身大の新主人公・春日一番がもつ魅力
これまで、様々なキャラクターが「龍が如く」シリーズの主人公を務めてきていたが、それは「桐生一馬」という絶対的な存在があることが前提だった。日本の裏社会を描いたシリアスなメインストーリーと、ぶっ飛んだサブストーリーの両立も「龍が如く」シリーズの魅力の一つといえるが、それには桐生一馬という普段はクールなキャラクターが見せる、ギャップによる面白さがあってこそ。しかし桐生一馬の物語は、前作「龍が如く6 命の詩。」で幕を閉じることになる。
そうして、桐生一馬の後を継ぐ形で新主人公に選ばれたのが、本作の主人公でもある春日一番だ。筆者は正直、最初に春日一番という新キャラクターを単独主人公に据えたことを知った時には、かなりの冒険をしたと感じていた。「龍が如く」シリーズには、桐生以外にも真島吾郎や秋山駿など、過去作で主人公を務めた人気キャラクターが複数おり、そうした主人公経験のあるキャラクターとの複数主人公という形にすれば、従来のファンも受け入れやすいのではないかと思っていたからだ。
しかしこれに関しては、本作のエンディングを迎えた今、完全に的はずれな意見だったと改めて感じた。「龍が如く7」は一番の存在を中心としてゲームデザインがなされた作品であり、彼以外に主人公を務められるキャラクターはいないからだ。
一番は、普段はひょうきんなお調子のものながら、困った人を放っておけない人情深さと、誰にも譲れない心の熱さを秘めているキャラクターだ。普段は頼りにならなさそうに見えても、ここぞの場面では突然の機転を働かせ、得意の口達者っぷりで難局を乗り越えたりと、桐生とは違った独自の魅力をもっている。
物語のスタート時から「堂島の龍」として裏社会では名のしれた存在であった桐生とは異なり、ヤクザとしてもただの下っ端であった一番には桐生ほどの腕っぷしはないのだが、その分天性の人たらし能力とも言うべきものをもっており、周囲の人間を次々と巻き込み、自分たちの仲間にしていく。
その範囲は、パーティの仲間たちだけにとどまらず、「こんな面々とまで仲良くなるの!?」という驚きの対象にまで広がっていくのだが、不思議と一番の人柄を見ていると、それも納得できてしまう。新主人公である春日一番のキャラクター性がもつ魅力は、「龍が如く7」の大きな成功の要因になったと言えるだろう。
これまでのシリーズの面白さと、新しさが両立したストーリー
「龍が如く」シリーズといえば、やはりストーリーの面白さに重きをおくプレイヤーは少なくないだろう。シリーズ中、ストーリー面の評価が高い作品としては、桐生一馬と真島吾郎の若き時代を描いた「龍が如く0」や、龍が如くスタジオが手掛けた新作「JUDGE EYES:死神の遺言」が筆頭に上がることが多いが、個人的には「龍が如く7」も、それらのタイトルに匹敵する傑作となったと感じている。
「龍が如く7」の物語の特徴は、とにかく最初から怒涛の展開が押し寄せるということ。18年の服役を終えた一番が、もっとも信頼していた存在である荒川に撃たれるという衝撃の序盤から、命からがら横浜・伊勢佐木異人町に流れ着いたあとも、春日のポケットに入っていた偽札の存在、春日たちの面倒を見てくれたソープ屋の店長・野々宮が不審な自殺を遂げるなど、謎が謎を呼ぶ展開が続く。
日本の裏社会を結びついたシリアスなストーリーは、従来の「龍が如く」シリーズのシナリオの完成度をさらに高めたような仕上がりで、とにかく先の展開が気になる作り。様々な伏線が序盤から張り巡らされており、終盤に明かされる一番に関するあるどんでん返しについては、筆者も思わず「やられた!」と唸らされたほどだった。
一方で、「龍が如く7」ならではと言えるのが、あらゆるものを失った一番の成り上がりストーリーとゲーム内のバランスのシンクロだ。ホームレス生活というドン底にまで落ちた当初は、ゲーム内でも常に金欠で、HPの回復にすら苦労する状態は続く。そこから新しい仲間や自分の部屋などを得ていくに従い、金策手段が増えると共にゲーム内の金銭事情も改善されていく。
主人公が成長・出世を果たしていくという流れは、RPGで時折見られるが、「龍が如く7」のパーティキャラクターたちは、前科持ちの中年男性2人、警察をクビになった元刑事と、到底立派な大人とは言い難い面々。それぞれが等身大のキャラクターとして描かれており、舞台が現代日本ということも加わって、非常に感情移入がしやすいのが特徴だ。個人的にはゲームの序盤、アパートの一室を借りられるようになった一番とナンバが、互いの将来について酒を飲みながら語り合う場面は、本作だからこそ生み出された名シーンだと考えている。
また本作では、主要登場人物がほぼ一新されていることもあり、いきなり「龍が如く7」からプレイするシリーズ初心者にとって優しい作りにもなっている。東城会や近江連合など、シリーズ独自の組織設定をある程度把握する必要はあるが、それもゲームをプレイしていれば自然と理解できるようになっている。主人公である一番は、18年を刑務所で過ごし、ほぼ何も知らない状態で娑婆へと戻ってくるため、一番とほぼ同じ目線で楽しめるのも、初心者に嬉しいポイントだ。
桐生一馬や真島吾郎など、過去シリーズのキャラクターも何人か登場するが、あくまでもファンサービス的な位置づけに収まっており、大きく本筋に関わってくることはない。「ストーリーが地続きだから」という理由で、「龍が如く」シリーズを敬遠していたプレイヤーにこそ、是非ともプレイしてみてほしい作品となっている。
従来のシリーズの要素と、RPGの親和性の高さ
「龍が如く7」では、ジャンルが従来のアクションアドベンチャーからRPGへと変更になっているが、本作から「龍が如く」シリーズをプレイした人は、最初からRPGのシリーズだったと勘違いしてしまいそうなほど、元々存在していた要素との親和性が高い。
「龍が如く」シリーズといえば、メインストーリー以外にも膨大な数のサブクエスト、ミニゲームなどの、いわゆる「寄り道」的な要素が多数用意されているのだが、それぞれの要素に対してゲーム的なメリットがやや少ないという欠点も抱えていた。
ジャンルがRPGとなった「龍が如く7」では、仲間たちの絆、武器防具の装備とそれの生産に必要な素材、転職に必要になる一番の人間力と、ゲームに影響するパラメータや要素が大幅に増え、それぞれの成長につながる報酬を獲得できるようになったので、寄り道要素をこなすメリットが明確になった。元々「龍が如く」シリーズは、次々と発生するサブイベントやミニゲームを延々とこなしていく内に、メインストーリーを進めるのを忘れてしまいそうになる中毒性があるのだが、本作はそれがより高まっている。
また本作の目玉にもなる新しいミニゲーム、会社経営が非常に楽しいのもポイント。寂れた菓子店である一番製菓の社長として、様々な物件を買収、雇った人材を物件に求められるパラメータの人材を配置することで利益を得て、株主総会に挑み、株主からの評価を上げていくことで株価ランキング1位の会社にまで育て上げるのが主な流れ。
最高効率で利益を上げるには、高いパラメータの人材を物件に配置する必要があるのだが、人材はバイト→契約社員→正社員といったように役職を上げていかなければ、レベルの上限に達してパラメータの成長がすぐに頭打ちになってしまう。かといってパラメータを上げるために昇格を行うと、人材を雇うために必要や給料の額が上がり、人件費が増した結果的に利益が落ちてしまう……などの、現実の経営者さながらの悩みが発生したり、なかなかに本格的な作りとなっている。
最初は難しそうな印象を受けがちだが、実は株主総会さえ乗りきれば自然とランキングは上がっていくため、難易度はそれほど高くない。一度コツを掴んでしまえばサクサク経営が進むようになるので、ついやめ時を失ってどんどん先に進めたくなる。
会社経営のイベントは本編とは時系列が分離されており、要素が解禁された段階で最後までプレイできるようになっているが、特定のサブイベントをクリアしたり、メインストーリーが進むことでより優秀な人材をスカウトできるようにもなるため、ある程度ストーリーを進めてからの方が会社経営の難度も下がる。
ただ、上述したように会社経営そのものが楽しい上、最終的に獲得できるようになる役員報酬がゲーム的に非常に美味しいため、早めに会社経営を進めすぎたあまり、終盤に登場する人材にほとんど意味がない状態になりがちなのが惜しいポイント。ランキング1位の会社になったあとのやりこみ的な要素が、もう少し欲しかった部分かもしれない。
成長と同時にテンポが改善されるバトルシステム
発売後に最も賛否が分かれる要素となったのが、アクションからコマンドへと変更になったバトルシステムだろう。
本作には、「ライブコマンドRPGバトル」と呼ばれるコマンド方式のバトルが採用されている。敵味方の立ち入りがリアルタイムで入れ替わるのが特徴で、攻撃を選択時、近くに攻撃に利用できるオブジェクトがあれば自動でそれを使ったり、敵が密集したタイミングに範囲攻撃で複数人をまとめて攻撃したりと、コマンドを入力するタイミングが重要。敵の攻撃にあわせてボタンを押すことでダメージを軽減できるジャストガードや、タイミングよくボタンを押すことで極技の威力が上昇する、従来のヒートアクションに相当するジャストアクションといった、ある程度のアクション要素も盛り込まれている。
筆者としてはこのバトルシステムも従来のアクションバトルと同様に楽しめたのだが、評価が分かれた大きな要因になったのはゲーム序盤のバランスの辛さではないかと思っている。
ストーリーの項目でも述べたが、春日がホームレスにまで落ちる序盤は、所持金を稼ぐ手段そのものが少なく、外食はおろかコンビニや自販機で回復アイテムを購入することすらハードルが高い。範囲攻撃を使うには、MPを消費して極技を発動する必要があるのだが、MPを気軽に回復できない序盤は極技を簡単に使うことができず、必然的に通常攻撃で殴り合うだけの単調な戦闘になりがちで、町中にいるザコを倒すのにも結構な時間が掛かってしまっていた。
ただこれについては、中盤、終盤とゲームが進み、極技の選択肢やMP回復を気軽に行えるようになっていくと、ゲームテンポも一気に変わってくる。とくにゲームの終盤になると、強力な全体攻撃を連発することが可能になり、所持金を消費して強力な効果を発揮するデリバリーヘルプも躊躇なく使用できるため、劇的にテンポが改善される。それまで時間の掛かっていたバトルがあっという間に片付くことが多くなり、キャラクターの成長と爽快感を同時に感じられるようになった。
ザコ敵との戦いに慣れていく一方で、ストーリーが進むにつれボスは手強くなっていく。ゲームの序~中盤のストーリーの敵はさほど手強い存在ではなく、町中にいるザコ敵の方がよほど脅威だと感じていたほどだったのだが、終盤に戦うことになる一部のボスは、他の敵とは次元が違う強さに設定されている。
そうしたボス戦では、敵味方を強化・弱体化するバフ・デバフ、回復技に属性の弱点などをフル活用しながら挑む必要があり、頭を使っての戦いが求められる。キャラクターの育成がしっかりと進んでいない場合の苦戦は必須で、難しすぎると感じたプレイヤーも多いかとは思うのだが、個人的には良いアクセントとして楽しむことができた。
ただ、そうした飛び抜けた強さは、おそらく作り手が意図的に設定したもので、戦うことになるキャラクター自身の格として、その強さも頷けるものになっている。「このキャラが弱いのは納得がいかないよな……」という意味でも、シリーズファンとしては納得のポイントだった。
多くのシリーズファン、及び新規プレイヤーから高い評価を受けた「龍が如く7」。冒頭でも触れたが、2020年4月9日より配信されるプレミアム・マスターズパックでは、クリアデータを引き継いでNORMAL、HARD、EX-HARDの3種類の難易度で周回プレイが楽しめる「PREMIUM NEW GAME」や、最難関ダンジョン「スーパー・ファイナルミレニアムタワー」の追加、ジョブランクの上限解放など、すでに本編をクリアしたというプレイヤーにも新たな遊びが提供される。
2020年4月9日~5月6日の期間は、限定価格の7円(5月7日以降は980円※ともに税込)と、かなりお得に購入できるようにもなっている。新規プレイヤーはもちろん、すでにゲームをクリアしたプレイヤーも、このタイミングに再度「龍が如く7」の世界に飛び込んでみてはいかがだろうか。