Gaea Mobileからリリースされた「Fallout Shelter Online」をレビュー。人気シリーズのスマホ向けスピンアウト作品の魅力を紹介する。
「Fallout Shelter Online(フォールアウト・シェルター・オンライン)」は、スマートフォン向けRPG。タイトルにある通り、核によって崩壊した世界が舞台のRPG「Fallout」シリーズのスピンアウト作品だ。これまでPC、コンシューマーを中心にリリースされてきた「Fallout」シリーズだけに、スマートフォン向けということで、敬遠するファンもいるかもしれない。確かに本作は、典型的なスマートフォンゲームに仕上がっている。しかし、同時にしっかり「Fallout」らしさも持ち合わせた作品なのだ。
監督官としてシェルター「Vault」を管理!
RPGのストーリーは、たいていスタート地点となる村や街を出発し、次々目的地を変えながら最終目的地を目指す…というものになっている。映画で言えば、ロードムービーのような形式。「Fallout」シリーズもこの形式に則っており、プレイヤーは自分の育ったシェルターから旅立ち、様々な村や街を訪れていく。しかし、本作はこうしたロードムービー型ではなく、プレイヤー=主人公自身の住むシェルター「Vault」を中心に物語が展開する。…というのも、主人公が「Vault」の監督官だからだ。
ゲーム冒頭、主人公は次期監督官として「Vault」の管理方法を学んでいく。この部分がチュートリアルという構造だ。そしてチュートリアルが完了したころ、現監督官が「Vault」から失踪してしまう。しかも、「Vault」にとって重要な装置であるテラフォーミング装置を持って失踪。どうやら、現監督官は「Vault」に関わるある情報を知ったことで、失踪せざるを得ない状況に追い込まれたようだ。その情報が何なのかは現監督官を探し出さないとわからない。もちろん、テラフォーミング装置の奪還も必要だ。
フツーのRPGなら、失踪した現監督官を追って主人公が「Vault」を出ていく…という形になるのだろう。しかし、監督官の失踪によって主人公は次期監督官から監督官になってしまう。監督官なしには「Vault」の運営はおぼつかない…ということで、主人公は「Vault」に留まることになる。
プレイヤーが本作でやることのひとつめは、監督官として「Vault」を管理すること。電力、食料といった生活に必要なリソースを獲得。そしてリソースを使って「Vault」内に施設を建設したり、アップグレードしたりしていく。つまり、内政型のシミュレーションゲーム的なことを行っていくわけだ。
前監督官を追え!ウェイストランドを探索
主人公が「Vault」の管理を担う一方、失踪した前監督官探しを担うのは、「Vault」の居住者たち。居住者たちの中からチームを編成し、ウェイストランドの探索へと繰り出すことになる。
マップから探索ポイントを選択すると、探索パートがスタート。このパートは、戦闘を行いつつダンジョンを探索するRPG的なパートになっており、指定された目的を達成することでクリアとなる。目的はたいてい、敵を全滅させるか、敵ボスを倒すかのいずれかだ。
「Fallout」には色んな楽しさが詰まっているが、筆者が魅力を感じるポイントのひとつが、探索のドキドキ感。核によって変異した様々なミュータント。変異していない人間であっても、レイダーと呼ばれる無法者として襲われる場合もある。そんな、何が起きるかわからないドキドキ感に、核崩壊後の無法の世界の空気を感じる。これが筆者の惹かれる「Fallout」らしさなのだ。では、本作の探索にこうしたドキドキ感があるのかというと…ある。
本作のダンジョン内は部屋単位で区切られており、部屋をタップすることで移動する。把握できるのは一度入ったの隣の部屋まで。なので、ダンジョン探索開始時はほとんどの部屋が見えない。どんな敵が潜んでいるのか?何かアイテムは落ちてないか?…など、一部屋ずつ徐々に明らかにしていくのは、とてもドキドキする要素だ。
ダンジョン内でミュータントやレイダーと遭遇すると、戦闘が開始。チーム内のキャラクターは自動的に通常攻撃を行ってくれる。プレイヤーはスキルの使用だけ指示する形だ。スマホRPGでよくある形…と感じる人もいるかもしれない。ただ、難易度にそこそこ歯ごたえがあって緊迫感を味わえることと、主人公=監督官という設定から、本作に合った戦闘システムだと感じた。もちろん本編「Fallout」とは全くシステムが異なる。しかし「Fallout」らしさは崩していないように思う。
ダンジョンを探索することで、メインストーリーである前監督官探しが進行していく。と同時に、アイテムも手に入る。これらの素材アイテムを使用すると、「Vault」の拡張や、探索担当チームの強化が可能。なので、探索と「Vault」管理を並行して行っていくような流れになる。
ちゃんと「Fallout」!ファンならプレイする価値アリの一作
ここまでの内容を読んで、「まんまスマホRPGじゃん!どこがFalloutなの?」と思った人もいるだろう。しかし、プレイしてみるとこれがちゃんと「Fallout」なのだ。これは、巧みな世界観作りによるものだと思う。
「Fallout」らしさを感じさせてくれるのが、まずビジュアル面。もちろん、本作のビジュアルは「Fallout3」以降採用されているようなフル3DCGではない。しかし、「Fallout」シリーズを通して使われてきた「Vault Boy」調の2Dビジュアルが採用されているため、「Fallout」のイメージはしっかり残されている。
また、セリフを通して、核に対する「皮肉交じりのユーモア」を感じさせてくれる点も、「Fallout」らしさを感じさせてくれる点だ。核の存在を茶化したような「皮肉交じりのユーモア」は、「Fallout」の世界観を形作る重要なポイント。従来作でこうした「皮肉交じりのユーモア」を「Vault Boy」調の2Dビジュアルで表現してきたこともあって、本作でも「Fallout」イズムを失わない世界観が生み出せているのだと思う。
さらに、BGMもしっかり「Fallout」だ。「Vault」で流れる音楽はジャズベース。しかもエフェクトが施されており、ラジオから鳴り響いているかのように聴こえる。「Vault」の監督官をしている…という没入感がしっかり味わえるだろう。
ちなみに、タイトルに「オンライン」とある通り、本作にはオンライン要素が用意されている。他プレイヤーと戦うPvPや、ギルドといった要素だ。ただ、「オンライン」要素を期待してプレイできるかというと、そこまで比重の高い要素ではない。ゲーム内の比重から言えば、ソロで行う探索と「Vault」管理がメインといっていいだろう。
結論として、本作はシリーズファンが「Fallout」らしさを感じながらプレイできる、よくできたスピンアウト作品だ。シリーズファンなら、プレイする価値のある作品だといえるだろう。一方、「Fallout」未プレイだと、どこが「Fallout」らしいポイントなのかわからない可能性が高い。単なる施設運営型のRPGとしても楽しめないわけじゃないが、本作の楽しさを堪能するためには「Fallout」本編をプレイしてからの方がいいだろう。