エレクトロニック・アーツが2020年7月14日に発売したPS4/Xbox One/PC向けソフト「ロケットアリーナ」。ここではそのプレイレポートをお届けする。
敵を場外に吹き飛ばして戦闘不能にする、独自性の強いTPS
昨今、日本でも多人数のオンライン対戦型のFPS・TPSが広く受け入れられ、さまざまなユーザーに遊ばれるようになってきた。3対3でのプレイヤー同士のチーム戦がメインモードとなる本作も、そうしたオンラインシューターに区分されるタイトルだと言えるが、他とはひと味もふた味も異なる、かなり個性的なタイトルとなっている。
一般的なFPS・TPSにおいてはアサルトライフルやサブマシンガンタイプの銃器が、ゲームの基本となるオーソドックスな武器として設定されることが多い。その点本作は、登場キャラクターの全員がメイン武器としてロケットランチャーを装備しており、これを主軸に戦う。
さらに本作のキャラクター(ヒーロー)達には、いわゆる体力のようなものは設定されておらず、攻撃を受けた時に「ブラストメーター」と呼ばれるゲージが溜まっていく。これが最大になると、「メガブラスト」状態となり、この状態で何らかの攻撃を受けるとステージの場外まで弾き出され、リスポーンが終わるまで戦線復帰が行えなくなる。
つまりは、「銃で相手を撃ち殺す」のではなく、「ロケットランチャーで相手を場外にふっとばして倒す」という、「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズを思わせるような、TPSとしては異色のルールが採用されているのだ。
メガブラスト状態で吹き飛ばされた時のほかにも、足場を踏み外したり攻撃によって場外に弾き出され、そのまま落下してしまった場合も撃破された扱いになる。
本作では最大3回まで使用可能なジャンプと、自分の足元にロケット弾を打ち込み、その反動で空中に上昇できるロケットジャンプ、密着した状態でロケットを撃つことで壁を登っていけるロケットクライムといったアクションが用意されており、ステージから落下しそうになった際にはこれらのアクションを駆使することで戦闘に復帰することができる。
敵の攻撃に対して僅かな間無敵状態になれる緊急回避も存在し、空中でも使用できるが、再使用には一定のクールタイムが必要で、連続使用はできない。
これらのアクションによって、空中を自在に飛び回りながら攻撃することもできるため、シューターの基本である「遮蔽物に身を隠す」ことのメリットが少なく、互いに空中をジャンプで飛び回りながらエイムを合わせ、攻撃を行うのが基本の動きになる。
ここまでの段階だと「飛び回る相手にエイムを合わせるのは難しいのでは?」と思われる方もいるかもしれない。しかし冒頭でも触れた通り、本作はほぼすべての武器が爆発系で、身体のどこにあたっても大きなダメージが入るため、ヘッドショットを狙ったりする必要性がなく、シビアなエイムはさほど求められない。
武器の中には、相手を自動で追いかけてくれるタイプのものもあるため、思っていた以上に攻撃を当てやすく、むしろ一般的なFPS・TPSよりもカジュアルで、エイムが苦手な初心者でも戦いやすいバランスだと感じた。
3対3と対戦の人数も少なめで、攻撃を受けても、ブラストメーターが最大になるまでは結構猶予があるため、「空中の敵から頭を撃たれて、訳のわからないまま一撃で殺されてしまう」といった、初心者が陥りがちな状況も起こりにくい。その反面、全体マップがないため敵味方の位置を把握し辛い。味方から孤立しないように気をつけながら、逆に孤立した敵を複数人で攻撃するという、立ち回りの重要性が高めとなっている。
個性的なヒーローが多数登場。それぞれのコンボを見つけ出す楽しさも
マッチング開始時にプレイヤーは用意された複数のヒーローの中から、操作するヒーローを選ぶことになるが、それぞれが非常に個性的なのも特徴だ。本作の対戦は、主にメインとサブの2つの武器と、1種の特殊能力を駆使して戦うことになるのだが、その3種がすべてのヒーローごとに固有のものとなっている。
ヒーローが装備しているメイン武器はすべてロケットランチャーだが、一言でロケットランチャーといっても、まっすぐな弾道で飛ぶもの、爆発の範囲・弾速を早めるチャージが可能なもの、射程が短いが連射の効くもの、弧を描く弾道で着弾するもの、壁に当たることで反射するもの……などさまざまな種類があり、ヒーローごとにメイン武器の使い勝手もまったく異なる。
サブ武器と特殊能力に関しては、さらにバリエーションに富んでいる。指定した場所にフックを引っ掛けて瞬時に移動する、サーフボードのような乗り物に乗り込んで一定時間飛行したり、同時に攻撃を仕掛けてくれる自分の分身を生み出したりと、使い方次第で窮地を脱したり、瞬時に大ダメージを与えたりすることが可能。加えて本作が非常に優れていると感じたのが、多くのヒーローがもつ武器と特殊能力が、性能的な相性がしっかりと考慮された上で設計がなされていることだ。
例えばヒーローの一人であるイゼルは、射程は短いものの連射速度の速い「スピア・ロケット」をメイン武器にもつキャラクター。必然的に、敵から近い距離で戦うことになるのだが、イゼルはそれに加えて、サブ武器に敵を自身の近くに引き寄せる「ボラ・スネア」と、槍を突き出して大ダメージを与える特殊能力「ジャークアチャージ」という、近距離戦闘において力を発揮するものを揃えている。「ジャークアチャージ」は攻撃力は高いが、発生が遅く、外した時の隙も大きいというリスクがあり、単体ではやや使いにくいのだが、「ボラ・スネア」で敵を近くに引き寄せてから使うことで、攻撃を確実にヒットさせられる。
こうした武器と特殊能力を組み合わせることでより効果的な使い方を見つけ出すのは、格闘ゲームのコンボルートを構築するような楽しさがあり、それが狙い通り対戦で決まった時の爽快感といったら格別だ(実際に、本作において攻撃が連続でヒットした際には、コンボという表示でカウントが行われている)。
ヒーローそれぞれに独自の強みをもっているのだが、個人的なお気に入りは、前線での戦いを得意とする攻撃型のヒーローであるアンフォラ。メイン武器である「チャージドーピド」は、フルチャージ状態で撃つとかなりの高弾速で飛んでいく上に射程も長いため、単発式のライフルのような感覚で攻撃をあてることができる。複数の機雷を同時に投擲するサブ武器の「バウンシーマイン」には敵を自動で追尾してくれるという性質もあり、2つの武器が共にクセがなく扱いやすい。
一方、特殊能力の「ハイドロフォーム」は、一定時間の水の塊に変身して自由に移動しつつ、任意のタイミングで巨大な水柱を形成し、上空に一気に舞い上がりながら元の姿に戻るという、一風変わった性能。水の塊になると移動速度が上がるうえ、身体が小さくなるため敵に見つかりにくく、敵の包囲から脱出する際などに重宝するのだが、面白いのは出現する水柱自体にも攻撃判定があること。敵の間近で元に姿に戻ることで、水柱でダメージを与えながら上空まで敵を打ち上げ、そこにメイン武器での追撃を当てて一気に敵をふっとばす……といった連携が強力。正攻法だけではなく、相手の虚をつくトリッキーな動きができるのも、使っていて楽しいヒーローとなっていた。
多彩なルールにヒーローの成長もあり、やりこみ要素も豊富
本作には、いわゆるチームデスマッチに相当する「ノックアウト」の他にも、拠点を奪い合って確保したロケットの数を競う「メガロケット」、マップ内の宝箱とコインを奪いあう「トレジャーハント」など複数の対戦ルールがあるのだが、とくに個性的なルールだと感じられたのが「ロケットボール」。
これはマップに1つだけ配置されているロケットボールを2チームで奪い合い、敵の拠点にあたるゴールにボールを入れた側のチームが勝利となる、サッカーのようなルールだ。序盤のロケットボールの奪いあいでは、素早くボールの元にたどり着ける移動系の特殊能力をもつヒーローが圧倒的に有利なのだが、ボールをもった状態だとあらゆる特殊能力が使用不能になるため、そこからゴールまでボールを運ぶのは容易ではない。
ゴール付近で待ち受ける敵に対し、ボールをもったプレイヤーを援護するには、攻撃性能の高いヒーローの存在も重要となり、マッチ開始前にどのヒーローを選ぶかの戦略も含め、チーム内の連携がとくに重要なルールとなっていた。
マップに配置されているアイテムボックスからは、いずれかのアイテムがランダムで出現。 ロケットで追撃することで爆発させられる爆弾や、敵のロケット弾を吸い寄せるもの、 移動速度や回避性能を一時的に強化するアイテムなどが出現する。 |
ヒーローのレベルや、能力値の上昇やクールタイムの短縮などさまざまな効果をもつアーティファクトといった成長系の要素も存在する。対戦を重ねていくと、使用できるスキンが増えたり、装備できるアーティファクトの種類・性能が向上していく。
またTPSとしてはかなり独特の立ち回りが必要になる本作だが、キャラクターの操作を確認できる練習モードや、BOTと対戦するPvEモードも用意されている。PvEモードでも、ヒーローの経験値は獲得できるので、こちらでキャラクターのレベルを上げ、スキンを開放したりすることもできるのもありがたい。
格闘ゲームのエッセンスも盛り込まれた、独自の魅力をもつ新感覚のTPSである「ロケットアリーナ」。オンラインシューターは、一人一人の責任が重くなる少人数のチーム戦になるほど競技性が高まり、敷居が上がる傾向があるが、本作はカジュアルさと競技性が絶妙なバランスで両立しており、FPS・TPSを普段遊んだことのないプレイヤーでもかなりとっつきやすい作品となっていると感じられた。
操作性・ゲーム性の両方が,既存のどのTPSとも大きく異なっているため、発売からさほど時間の経っていない今なら、多くのプレイヤーが同じ土俵で戦うことができるということでもある。7月28日からは、近い実力のプレイヤー同士で対戦ができるランクマッチも正式にスタートする。既存のオンラインシューターにマンネリ化を感じていたり、今までにない斬新なTPSを遊んでみたいという方には、自信をもってオススメできる作品だ。