マーベラスが2020年11月12日に発売する、PS4/Nintendo Switch用ソフト「天穂のサクナヒメ」。日本伝統の手法を取り入れた米づくりと、手触りが気持ちいい爽快コンボが魅力の和風アクションRPGです。
「米は力だ!」というキャッチコピーで圧倒的な存在感を放つ和風アクションRPG「天穂のサクナヒメ」。我々日本人としては、思わず頷いてしまう謎の説得力があります。
そんな本作は、主人公・サクナとなって、「ヒノエ島」を舞台に、島を支配する鬼たちと闘う爽快な2Dコンボアクションと、日本古来の米づくりの手法を取り入れたシミュレーション要素が融合したユニークな遊びが体験できるタイトルです。
今回発売に先駆けて本作のPS4版をプレイすることができたので、そのインプレッションをお届けしていきます。
ぐうたらな生活から一変!サクナの成長物語に注目!
本作の主人公「サクナ」は、武神タケリビと豊穣神トヨハナの間に生まれた格の高い上級神です。両親が不在の中、育ったためか責任感に乏しく、財を食い散らかして日々ぐうたらな生活をおくっています。
しかし、そんなある日、神々が住まう「頂きの世」に、お腹を空かせた人間たちが迷い込んでしまいます。サクナは、神として人間たちを元の世界に帰らせなければいけませんが、お酒を飲んで酩酊している様子……。うっかり侵入を許してしまいます。
あげく、主神・カムヒツキ様に献上する米を食われ、逆上。怒りに任せて人間たちを追い払おうとしたところ、うっかり酒や油に火をつけ、全て台無しにしてしまうという大失態を犯してしまったのです。
罰として、鬼が支配する「ヒノエ島」の調査を命じられ、都を追放されてしまうサクナと人間たち。果たしてヒノエ島でサクナを待ち受けるものとは……! というのが本作の大まかなストーリーになります。
本作をプレイして一番に驚いたのがサクナのキャラクター。お米を作りながら冒険をするゲームということから、「貧しいけど頑張り屋」みたいなキャラクター像を漠然と持っていたのですが、その幻想は早くから打ち砕かれることになりました。
自堕落な生活から一転、日々の食い扶持もままならない環境に放り込まれたサクナ。頼りの(?)人間たちも危険な鬼が蔓延る島の中では、大きく活動することもできず、生きるも死ぬもサクナしだいという状況に追い込まれます。サクナは自分の力で稲を育て、鬼たちと戦っていく中で精神的に少しづつ成長していきます。そんなサクナの成長物語が、本作の一つの見どころです。
もちろん、サクナと一緒に島へ追放された人間たちも濃いキャラクターたちが揃っています。戦から逃亡して山賊に身を落とした「田右衛門」、両親を失い姉とも生き別れてしまった戦災孤児の「きんた」、物腰が柔らかいようで狡猾な立ち回りをすることもある「ゆい」、ヤナトに立ち寄った宣教師団の一人「ミルテ」、田右衛門が身を寄せている山賊一味の頭領の息子「かいまる」。
時としてサクナすらもタジタジになってしまう、彼らの活躍にも注目です。
手間ひまかけてつくったメシはうまい!
続いて、本作の最も特徴的な「米づくり」と、それに付随するシステムを紹介していきましょう。本作では、日本伝統の手法を取り入れた米づくりを、ゲーム史上類を見ない深さで体験することができます。田植、育成、刈り取りなどひとつひとつのの工程をプレイヤー自身が実際に体験することができるのです。
「ヒノエ島」になんとかたどり着いたサクナ一行。鬼が支配する島ではありますが、サクナの両親が昔使っていたという住居と田んぼを見つけます。サクナたちはここを拠点に、島を開拓しながら備蓄となる米を作っていきます。
本作は米づくりに並々ならぬ情熱が注がれています。簡素化されたシステムであれば、「田植え」→「水やり」→「収穫」と3ステップ程に納めることも可能かと思いますが、本作では、「田起こし」→「種籾選別」→「育苗」→「田植え」→「 育成管理 」→「稲刈り」→「稲架掛け」→「脱穀」→「籾摺り」と、驚きの9ステップを踏むことになります。
しかも、最初はシステムとして正解がプレイヤーに表示されない点にも驚きました。クワで田んぼを耕す「田起こし」もどれだけ耕すのが正しいのか、田植えをするときに苗の間隔はどれくらい空けるものなのか、田んぼの水量はこれで足りているのか、などなど全てがトライ&エラーの連続です。プレイヤーは、これまでぐうたらしていたサクナ自身となって米づくりを一から学び、その大変さをゲームを通して体験することになります。筆者も本作をプレイすることで、毎日お米を食べられるありがたみを改めて実感することができました。
無事米を収穫することができたらいよいよ実食です。本作では夜の時間になるとみんなで集まって食事をとることができます。米ができるまでは狩りで得た肉やどんぐりなどを料理して食いつなぐことになりますが、やはり主食に米があると食卓も引き締まるというもの! 自分で手間ひまかけてつくったメシはやっぱりうまいです!
ちなみに、食事はゲームプレイの中でも重要な意味があり、「ヒノエ島」を探索するアクションゲームパートで、サクナの能力を一時的に上げることができます。食事をとらないとステージ中のHP自動回復すらないので難易度もぐっと上がります。難しいステージやボスに挑む前日は、ぜひ“勝負メシ”をかきこんで挑戦したいですね。
また本作には、いわゆるレベルを上げるという概念が無く、アクションゲームパートでいくら敵を倒してもサクナが成長することはありません(スキルの熟練度を上げるという要素は存在します)。新しいスキル(武技)の習得や、ステータス上昇は全て「米づくり」を通して行われていくのです。キャッチコピーの「米は力だ!」は、まさにそのままの意味だったわけですね。
もちろん質の良い米を作ればそれだけサクナは強くなります。最初は右も左もわからないのであまり良い米はつくれませんが、だんだんとコツを掴んでいくことで効率よくサクナを強くしていくことができるようになるはずです。
米作りは一年をかけて行われるのでゲームテンポが気になる方もいるかと思われますが、本作では春・夏・秋・冬の4か月がそれぞれ3日間、計12日間で一年が経過します。アクションゲームパートで「少し敵が強くなってきたな……」と感じはじめたところで、ちょうど一年が経過。これまで倒せなかった敵を倒せるようになったりと、ちょうど良いサイクルで成長を実感することができるようになっていました。
手触りが気持ちいいアクションは必見!
最後に、本作のもう一つの魅力である爽快なアクションについて紹介していきましょう。本作のアクションゲームパートは、2Dタイプの横スクロールになっています。農具を武器にして繰り出すさまざまなスキル「武技」と、伸縮自在の羽衣を使用した自由度の高いアクションで、鬼が跋扈するヒノエ島を探索していきましょう。
本作のアクションで最もユニークなのが伸縮自在の羽衣です。伸ばした羽衣を壁や天井にひっかけて離れた場所へ移動するといった用途から、羽衣を敵にひっかけて後ろに回り込んだりと多彩な使い道があります。ボス戦では敵の攻撃を羽衣を使って回避しながら自分の攻撃を叩き込んでいくという、スピーディーなバトルが楽しめました。
本作では□ボタン(速い攻撃)や△ボタン(重い攻撃)を連打しているだけでも華麗な連続攻撃を繰り出せますが、筆者が特に気に入ったのが、羽衣を使って自分だけのオリジナルコンボを考えることができる点です。
空中に打ち上げた敵を羽衣で追いかけて追撃したり、羽衣使って敵をぶん投げたりと自由自在なアクションはとにかく手触りが気持ちいい! 羽衣を使ったアクションは「米づくり」を通じてどんどん増えていくので、新しいアクションが手に入ったら色々と試してみたくなってしまいます。
以下に、本作のコンボの一例を挙げてみたのでぜひ映像でチェックしてみてください。
また、「天穂のサクナヒメ」を開発した、えーでるわいすの過去作品「花咲か妖精フリージア」で好評だった、「吹っ飛ばした敵を別の敵にぶつけ、跳ね返ってきたたところをさらに追撃する」といった要素が、本作にも引き継がれています。最初は少し難しいかもしれませんが、慣れてくると爽快感は抜群です! 特にボス戦などは、雑魚敵が無限に湧いてくるシチュエーションもあるので、ぜひマスターしておきたいところです。
日本古来の米づくりと爽快なコンボアクションが融合した傑作!
今回のプレイを通じて、細部にまで徹底的にこだわったという「米づくり」はもちろん、とにかく手触りが気持ちいいアクションパートにはとても驚かされました。島にはトレーニングモードのような場所もあり、出現する敵の種類や数を設定できます。新しいアクションを習得すると、ついつい籠ってしまうほどの魅力があるので、特に格闘ゲームが好きな人は絶対にハマるんじゃないかと思いました。
登場キャラクターたちもサクナを筆頭に、魅力的な面々がそろっており、時に協力し、時に衝突する彼らの今後も気になるところ。サクナたち一行は、果たしてヒノエ島の調査を終わらせることができるのでしょうか。続きは、是非自身の目で確かめてください!